微妙な10センチ。〜最終〜
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#327 [あき]
―ピッ…プルル〜
《おうっ。》
相変わらずの愛想もない返事。
もっと違う言葉ないのかな。
『わたしっ。』
でも、私も私だ。
相変わらず可愛げのない言い方。いつからかな…こうなったの。
《んあ。てか、遅ぇよっ。昨日、かけ直すって言ったのはそっちだろ?俺、かなりご立腹なんだけど?》
怒られた。
なのに、これは昔から悪い気はしなかった。
『帰ったら電話するって言ったじゃんっ〃』
案の定小憎たらしい言い草。
自分でも笑っちゃう。
:09/08/17 19:06
:W65T
:FF5wDsUw
#328 [あき]
《んだそれっ。はい言い訳っ!!〃》
ああっ。
今日は機嫌良いんだ。
…良かった。
『うっせ!〃だから、電話したのっ。』
可愛くないなぁ…私。
これが。最後なのにっ。
たぶん…最後なのに…
《はぁ?なにっ。帰ってない訳っ?ますますウゼー〃》
冗談じゃないよ?
本気だよ。
…本気なの。
『あの彼と一緒だったっ。さっき帰ったけどっ?〃』
ねぇ。どう思った?
どう感じてくれた?
なんて言う…?
:09/08/17 22:28
:W65T
:FF5wDsUw
#329 [あき]
《…ふーん。そう。》
で…ですよねぇ〃
アナタは私に何の干渉もないものねっ。
私に幸せになって欲しいんだもんねっ。
そうだよねっ…
うん…やっぱりね…
そう言うと思った…
『………』
あれっ。
自分で言い出したのに。
解ってた答えなのに。
考えた小憎たらしい台詞。
出て来ないやっ…
《まっ、要件は昨日だったからっ、今日じゃ遅ぇしっ。と、いう事で。じゃっ!》
『うん…』
―プチッ。プー…プー…
私の返事を聞いたのか聞いてないのか。なおちゃんの電話は切れた。
:09/08/17 22:51
:W65T
:FF5wDsUw
#330 [あき]
ハンドルを握りしめて、流れる景色の前を見据える。
これでなおちゃんは、もうかけてこない。
そう感じた。
私もかける事はない。
そう決めた。
これでいい。
そう思った。
私は西条さんを選んだ。
不器用だけど、真っ直ぐな愛を向けてくれる彼を選んだんでしょ?
未来が欲しいんでしょ?
そう言い聞かせた。
なのに涙が溢れた−…
:09/08/17 23:08
:W65T
:FF5wDsUw
#331 [あき]
ひとしきり高速道を突き進む。
遥か遠くまで続く直進道路。
流れる景色はとても早い。
そんなのお構いなしに、アクセルを踏み込んで、ハンドルを両手で握り目一杯の操作で突き進んだ。
高速道。何故こんなにも涙が出てくるのかは、わからないけれど、とにかくそのままにしておいた。
小一時間程走ると、一般道へ突入。ただ見慣れた景色が淡くぼやけて見える。
もう涙も出なかった。
そこからはただ、淡々と自宅を目指していた。
:09/08/21 20:26
:W65T
:LWywvFt.
#332 [あき]
幸せになりたい。
そう決意した、私の選択。
だからそこ、西条さんを選んだ。
だけど……
そもそも[幸せ]なんて私は知らなかった。
どんな事が[幸せ]かなんて、親も先生も教えてはくれなかった。
だから、幸せというものは、自分の理想や、描いたものでしか図れなかった。
だからこそ、その掴みかけた幸せに固執した。
(違う…)
現実の世界の幸せを知らない私が、そう知った時には、もう後戻りができないまでになっていた―…
:09/08/21 20:56
:W65T
:LWywvFt.
#333 [あき]
―――
『…うん』
《どうして、俺の気持ちがわからないんだっ!!》
『だからっ…私にも…』
《そうじゃないだろっ!!約束だろっ!?あきが悪いよなっ!》
『うん……』
彼の独占欲は日に日に増していった。出会った頃は優しかった彼は、あれ以降、よく感情を露わにする。怒鳴りつけられる事に恐怖を感じる私は、ただ頷き、謝り、彼の怒りの炎が消炎するのを待つしか出来なかった。
:09/08/21 21:08
:W65T
:LWywvFt.
#334 [あき]
露わにする彼の怒りの原因はいつも一緒だった。それは私が[約束]と言われるものを[破る]からだ。いつも、それが原因。彼は、会えないぶん、密なる連絡をして欲しいと言った。
私は、遠距離恋愛たるものそうゆうものなのかと、とまどいながらも、了承したのは事実。
だけど、いざ、やってみると自由奔放に生きてきた私には、過去の恋愛中も求めた事も、求められた事もない。彼が初めてだった。だから、ついつい忘れてしまう。
おまけに、世には携帯依存症という新たな現代病があるらしいが、私には無関係な話。
逆に、携帯電話に縛られた生活をしているのが仇となり、オフモードに入ると、ますます携帯電話というものを、意識から消し去るクセがある。
おかげで、彼からの連絡に気づかない事も多々あった。
連絡もない。
返事もない。
それが、いつも彼を苛立たせる原因だった。
:09/08/21 21:32
:W65T
:LWywvFt.
#335 [あき]
そして彼は言う。
《また男だろ!》
《また遊んでんだろ!》
《何か電話に出られない事してんだろ!》
苛立ちの二言目には、私に疑惑を押し付け、それを爆発させる。この言葉を投げつけられる度に、私は小さく溜め息をついて、またかと思うのだ。
『私、何も悪い事してないのに…少しは信用してよっ…』
そして小さく反論をしてみる。
《はぁ?そんな事わかんないだろっ?》
また同じ言葉を返されて、信用されてないんだと。痛感する。だけど、これは彼の愛情の現れなんだからと自分に言い聞かすんだ。
:09/08/22 01:56
:W65T
:ups8JnIw
#336 [あき]
これが、俗に言う[束縛]というものならば、私は仕方がないと諦めるしかなかった。
彼は、過去にとても大きな傷を追っている。
積み重なった小さな傷が、彼の心をボロボロに切り刻み。
臆病になっていた。
自分に自信を失っていた。
結果、もう何年も彼を恋愛から遠ざけていたらしい。
それが、数ヶ月前、彼の前に私が舞い降りた事で、彼は消し去った記憶を呼び覚まし、私と過ごす何気ない日々が、彼の心を目覚めさせた。
ただ、彼は、その経験から、異常なまでに何事にも過剰に反応し、不安になり…何よりも愛を確かめたがった。
その術が[束縛]につながってしまったのだ。
私の1日の行動を把握し、少しでも連絡が取れないと、苛立ち、怒りがこみ上げる。
だからこそ
また男か。
この台詞も、仕方のない事だった。
:09/08/22 02:18
:W65T
:ups8JnIw
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