微妙な10センチ。〜最終〜
最新 最初 全 
#441 [あき]
《待てない。今、聞きたい。……その新幹線乗る前に、はっきり決めてくれっ。》
彼は、そう言う。
『…何を決めろって言うの?』
落ちた涙も乾き、静かに私は聞いた。
まさかの彼の言葉。
にまた時間が止まる。
《あきと、やり直したい。……あきは?》
:09/09/15 05:03
:W64S
:QiLm6EsI
#442 [あき]
『……ごめんなさい。』
そう言う事で、彼を傷付ける事はわかっていた。だけど、答えを出せない位なら、もうここで終わらせようと、そう思った。
私の気持ちは、そう判断した。
《…終わりって事なのか?》
『…それでいい…』
そう伝えた私に、彼は言葉を失っていた。
:09/09/15 05:09
:W64S
:QiLm6EsI
#443 [あき]
『遊びで付き合ってたつもりはなかったけど…貴方がそう思うなら、そう思ってくれていいから…もういいよ…だから西条さんが決めてくれたらいい。』
そう言った。
言ったら、また涙が溢れて来た。
この台詞も、この涙も卑怯だと思った。
だけど、本気でそう思ったし、涙は自然と溢れてくる。
この姿と言葉が
今の偽りのない
―私自身―
だった。
:09/09/15 05:21
:W64S
:QiLm6EsI
#444 [あき]
《俺に決めろって…どうゆう意味?》
『…散々酷い言葉言われて…やり直したいなんて言われて、はいわかりましたなんて言える訳ないよ。』
《……》
『酷い事言った事わかってるの?傷付いたんだよっ。私。』
《……》
『だから、それが私の答え。』
:09/09/15 05:29
:W64S
:QiLm6EsI
#445 [あき]
《…ごめん。悪かった…》
この言葉を切っ掛けに、壊れていた私達の時計はまた動き出した。
彼が私に向ける愛が本物なのかどうなのかは、わからないし
私が彼に向ける気持ちが、本気なのかどうなのか、まだわからない。
だけど彼は私を必要として、力付くで私を求めていたし。
私もまた、見えない未来よりも、見える未来に執着していた。
それを幸せだと、また錯覚してしまう。
だけど……
:09/09/15 05:51
:W64S
:QiLm6EsI
#446 [あき]
もう一つ。
止まっていた時計。
いや…
私が無理矢理に止めた、あの時計。
その時計が、この数日後に、動き出してしまう。
ただ、壊れた時計の修復に気を取られていた私は、動き出した、もう一つの時計に気付きもしなかった…
それがチクタクと、大きな音を立てて、西条さん以上に力強く動き出して。
私の時計を、人生を狂わせた…
:09/09/15 05:58
:W64S
:QiLm6EsI
#447 [あき]
――――――
重い荷物を肩にかけ、フロアの扉を閉める。
薄暗い廊下を渡り、階段を降りると、淡い光の中に、既にロックの掛かった正面玄関が見える。
警備員のおじさんに、挨拶を済ませると、おじさんは、お疲れ様と労いをくれながら、ガチャリと自動ドアを開けてくれた。
外は、まだまだ蒸し暑い、湿気でどんよりとした空気の中、暗い道程を数百メートル裏手に回る。
朝から置いていた愛車に乗り込み、荷物を助手席にほおり投げるとほっと一息着いた。
:09/09/16 00:58
:W64S
:pph25.Ww
#448 [あき]
事務的に、携帯電話を開き、西条さんにメールを打つ。
[お疲れ様。今から帰りますっ!今日は車で出社したから、今から一時間くらいは電話に出れないよっ。]
ニコニコ絵文字も入れてみたりして、気分とは裏腹の文面を無機質に送信した。
仕事を終えた私には、この一時間と記した文面が重要な訳で
自由の身になれる自由でもあるのだ。
あれ以来、彼はより一層私を〈束縛〉した。
片時も携帯電話が離せない生活。
一時でも、彼の着信、受信に返事がないと、彼は狂ったように怒りだす。
私に課せられたのは、事細かい、密なる連絡だった。
:09/09/16 01:12
:W64S
:pph25.Ww
#449 [あき]
それは、入浴する時ですら、同じである。
一度、入浴中で電話を受けられなかった。
入浴中に鳴っていた数分間隔の不在着信履歴。彼には、入浴する時ですら報告を要するまでになっていた。
もう、すっかり言い返す気力すら奪われた私は、彼の言いなりでしかなかった。
だからこそ、私が編み出した技はこうして、時間を記す事により、私は自由を得ているのだ。
:09/09/16 01:17
:W64S
:pph25.Ww
#450 [あき]
[お疲れ。わかったよ。また帰ったら連絡して。]
西条さんからの受信を確認すると、携帯電話を鞄に入れる。
キーを挿し、セルを回すと、もう年代物の愛車は、ブルンと音を立てて動き出す。
ゆっくりと駐車場から頭を出して、大通りに滑り込ませた。
愛車で出社するのは久しぶりで、この大通りは、なかなかの手強い。しっかりと前を見据えて、車線変更のタイミングを見計らう。
上手く車線変更出来たなら、あとはこっちのもので。
お気に入りのBGMに鼻歌混じりで、ハンドルを握り、煙草に一本火をつけて、至福の時を過ごす。
:09/09/16 01:24
:W64S
:pph25.Ww
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194