微妙な10センチ。〜最終〜
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#457 [あき]
私は、財布だけを、そのドラ○もんバックから抜き取り、念の為、バックを助手席の足元に置いた。
さらに、ぐぐぐいっと奥底に押し込む。

(少しだけだし…〃)

車を降りて、ロックをかける。
一応、窓から車内を確認してみると、日の暮れた駐車場で、助手席の足元奥底に押し込んだ黒いバックは、簡単に同化して、見えなくなっていた。

(完璧〃大丈夫だっ!)


私は、財布だけを握りしめて、些細な日用品を目指して、店内へと入って行った。

⏰:09/09/16 02:34 📱:W64S 🆔:pph25.Ww


#458 [あき]
店内に入り、目指す物は、直ぐに見つけられた。

それを手に取り、直ぐ様レジへと向かう。

そして、袋をぶさらげて、駐車場に戻って来た。
愛車の傍に寄り、ロックを外して車に乗り込んだ。



時間にすると…

約五分。

⏰:09/09/16 02:55 📱:W64S 🆔:pph25.Ww


#459 [あき]
鍵を挿し、セルを回して、デッキが淡く光り、BGMがまた流れ出す。

ついたデッキの光りで、車内が見える。

そして、ふと気付く。


車内に広がる
どことなく、何かが違う違和感。



私は、視線を助手席足元に移す。

⏰:09/09/16 03:00 📱:W64S 🆔:pph25.Ww


#460 [あき]
『……あれっ…?』


私は、体をベンチシートに横たえて、腕を伸ばしてみた。

私の手は、空を切る。


『…あれっ??』

体を潜り込ませ、助手席足元を再度覗き込んだ。そして、両手で、そこにあるべき物を探す。

やっぱり両手は空を切った…

⏰:09/09/16 03:03 📱:W64S 🆔:pph25.Ww


#461 [あき]
人間、思いもよらない事が起きると、現状を理解するのに数分時間がかかる。そして、バクンと鳴った心臓を抑えて必死に考える。

『あれ?助手席に置かなかったっけ…後ろだっけなぁ…?』

独り言を言いながら、私は、車を降りて、後部座席を覗き込んだ。
たかが五分前の事。
記憶に間違いはないはずだと思いながらも、もしかしたらと考える。バクバクした心臓を押さえながら、あるべきはずの物を必死に探す。

『…トランクに入れた??』

トランクまで開けてみる。

『一回、家に帰ったっけ…?』

まさかの飛んだ馬鹿発言までして自分に問うてみる。

⏰:09/09/16 03:10 📱:W64S 🆔:pph25.Ww


#462 [あき]
そして、隅々まで車内を探した後、やはり、あるべき物が、忽然と消えた事を理解し。

バクバクした心臓が破裂せんばかりに、早く脈打って、身体中が、ワナワナと震えだし、グルグルと思考が回転し始める。



(…やばいっ…盗られたっ!!!!)



この一件が、私の
逃げられない

―今―

の始まりだった。

⏰:09/09/16 03:15 📱:W64S 🆔:pph25.Ww


#463 [あき]
―――――――

『とにかく落ち着いて。珈琲飲んでみたら?』

珈琲の匂いが私の目の前で湯気立っている。
だけど、私は、震えたまま、訳の解らない言葉を繰り返し、話にならなかった。

『…会社に電話しなきゃ…番号…何番だっけ…やばい…どうしよう…』

さっきから、震える手で、お巡りさんに借りた電話を握りしめ
震える指で、番号を押してはみても、全く見ず知らずの場所へ繋がってしまう。

毎日毎日、嫌という程かけている番号がわからない。

⏰:09/09/16 03:25 📱:W64S 🆔:pph25.Ww


#464 [あき]
『携帯も盗られちゃったし…わかんないよ…』

いい歳こいて、半べそでお巡りさんに訴える。

携帯電話が普及した今、簡単に互いの番号を登録出来てしまう。
今は番号を覚える事をしなくなったのだ。

携帯電話。
現代は、これが全ての情報基準だった。

『会社ならタウンページは?載ってるんじゃないの?貸してあげるからっ』

『…今は時間外だから。その番号は繋がりません…』


私はせっかくのお巡りさんのアドバイスも、震える声で、否定した。

⏰:09/09/16 03:32 📱:W64S 🆔:pph25.Ww


#465 [あき]
だいたいの会社には、表番号と裏番号というのが存在する。

表番号というのは、タウンページに載るような、誰でも繋がる番号だ。ただし営業時間が過ぎると、たとえ、そこに人間がいようとも、だいたいが機械音に変わる。
だから、どこの会社にも、裏番号というのが存在していて、それは、勿論社員しかしらない番号であり、表番号がストップしても、直接繋がる番号なのだ。

『…わかんない…わかんないよ…どうしようっ…』

⏰:09/09/16 03:38 📱:W64S 🆔:pph25.Ww


#466 [あき]
パニックに陥っている私は、その裏番号の番号が、思い出せない。

私達の会社は、日中でも、社員は裏番号に掛けるよう暗黙のルールがあった。
もう何年も毎日毎日、何度も掛け続けた番号なのに、掛ける度に、目にしていた番号なのに、いざとなると、出てこないのだ。

『…とにかく…会社に知らせなきゃ…どうしよう…』

盗られたバックには明日からの仕事の全てが詰まっている。
あのバックが無ければ、私は何も出来ないのだ。そんな事になれば、明日の仕事が駄目になる。

震える指で、必死に番号を押す。
けれども、何度押しても違うどこかへと繋がった。

⏰:09/09/16 03:45 📱:W64S 🆔:pph25.Ww


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