微妙な10センチ。〜最終〜
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#51 [あき]
渡された資料と同時に、迎えの人として聞いていた名前を、とりあえず言ってみる。
胡散臭い男は、すっくと立ち上がり、ちび助の私には迫力満点の威圧感を出しながら、私の名前を確認した。今度は私が返事をして頷く。

『遠いところ、お疲れ様でした。宜しくお願いします〃』


胡散臭い…いや西条さんは、くわえていた煙草を、携帯灰皿にくしゃりと押し込むと、サングラスを取って微笑んだ。

その衝撃はEXI○Eのあ○しばりだった。

⏰:09/07/10 00:21 📱:W65T 🆔:VckcM2.Y


#52 [あき]
『お待たせしてすみません。』

あまりの衝撃に吹き出しそうになるのを、ぐっとこらえて、私はそつない挨拶をする。
そんな私に、西条さんは、笑顔を向けて

『いえいえ。時間通りですよ』


と…言ったはず。

いや。私も標準語とは言いませんが、さすがに、仕事中は、なるだけイントネーションには気をつけて話ますよ。
それをこのお方は、爽やかな笑顔で、一瞬躊躇する程の方言。
あまりのダブルパンチに腰が砕けるかと思った程だった。

⏰:09/07/10 00:29 📱:W65T 🆔:VckcM2.Y


#53 [あき]
まあ、そんな事は、彼自身、もちろん気付いてない訳で。

立ち尽くす私の手に握りしめられた、一週間分の荷物を、乗せますよと言うように、手を差し出してくれた。
私は、放心に近い状態で、バックを渡す。
細い体が、重い荷物を軽々とトランクに詰め込んでくれた。

『とりあえず、今日は、エリアを経由してホテルまでお送りします。それでよろしいですか?』
(※何度も言うが、おそらく、彼はそう言ってると解釈した。)

『はい。今日の予定は、特に急ぎではなかったはずなので、お任せします。』

会話が成り立ってるか不安だったが、そう答えてみた。

⏰:09/07/10 00:36 📱:W65T 🆔:VckcM2.Y


#54 [あき]
なんとか、成り立ったみたいだった。

西条さんは、一世風靡したヨ○様ばりの微笑で、運転席に回る。

チンピラかと思ったら
ゴルフの、り○う君?スマイルで。
美しい日本語を使うかと思ったら、なまり万歳で。
もやしかと思ったら、大根で。
挙げ句にヨ○様ですか…

私は、あまりの衝撃に、運生まれたての仔羊のような足腰で(※実際は違うけど、そんな気分)なんとかヘナヘナと車に乗り込んだ。

⏰:09/07/10 00:45 📱:W65T 🆔:VckcM2.Y


#55 [あき]
この衝撃的な彼。西条さんが、後に、私と、なおちゃんの別れ道のキーマンになってくる。

まだまだ、この時は、そんな事は、蚊の脳みそサイズ程思ってもいない。


私の未来は…

あの懐かしい田舎街で。
口が悪くて、偉そうで。
へんこつ野郎で、ついてけないけど、本当は寂しがり屋で優しい…

あいつの隣にあると、まだまだ思っていた。

⏰:09/07/10 00:54 📱:W65T 🆔:VckcM2.Y


#56 [あき]
―――――――

暖かい日差しの中で、車は進んで行く。
簡単な打ち合わせを済ませた後、目的地までしばらく移動になる事を知った私は、流れる景色を見ていた。
西条さんは、真っ直ぐに前を向いて、ゆっくりと前に車を進ませる。

ラジオから、楽しそうな話題が流れ、DJが楽しそうに笑っている。
時折、世間の流行りらしい音楽が車内を華やかにする。
遠い世界のようだった。

膝に置いたバックの中。
マナーモードにしたままの携帯電話は、いっこうに震えない。
そのくせ、スーツのポケットに入れた携帯電話が、望んでもいない着信音で、時折、私を呼ぶだけだった。

⏰:09/07/10 01:43 📱:W65T 🆔:VckcM2.Y


#57 [あき]
『お疲れですか?』

市をまたぎに、またいで、目的地まで、あと少しといった所で、西条さんが、そう声をかけてきた。
駅で会って以来の声だった。

『いえっ…〃あまりにもいい天気で〃』

無難な答えを咄嗟に放つ。そんな私に、西条さんは、昨日までは雨だったんですよと教えてくれた。
そうですか。と笑って見せて、私は、どうりで暑いと思った。なんて話をつなげる。
西条さんは、そろそろ、本格的な梅雨ですねと笑って言った。
嫌な季節になりますね。と私も笑った。

⏰:09/07/10 01:55 📱:W65T 🆔:VckcM2.Y


#58 [あき]
天気なんてどうでもいい。

早く、一人になりたい。
一人になって、震えない携帯電話を確認したい。
もしかしたら、震えてた事に気付いてないだけかもしれない。それなら早く返事しなきゃ。

何してた?
ごめんね。気付かなかったよ。
元気?
私ね、今出張で、○○に来てるよ。
一週間くらいかかるかな。お土産何がいい?


言わなきゃ。

全ての思いを、また押し込んで、私は西条さんに笑いかけた。

⏰:09/07/10 01:59 📱:W65T 🆔:VckcM2.Y


#59 [あき]
出張一日目は、一週間中の担当エリアの下見をして、現地責任者と軽い打ち合わせもどきをして、そのままホテルへと向かった。

ホテルへ向かう間も、相変わらず、西条さんは黙々とハンドルを握って、ゆっくりと前へ進めるのみ。

これから一週間。
私は、この謎の西条さんと、行動を共にする。
いわゆる、彼は私の現地パートナーであり、私の補佐だったのだ。

名刺には

西条 祐介。

ご丁寧に、携帯番号に携帯メールアドレスまでが記載されていた。

⏰:09/07/10 02:06 📱:W65T 🆔:VckcM2.Y


#60 [あき]
ロータリーで交わした名刺を、今更ながら、眺めていると、彼は、今ですか?とクスクスと笑った。
すいません。と照れ笑いをしながら、私は、手帳に挟む。そうしていると、ホテルの駐車場へと滑り込んだ。
我ながら、やりすぎたと思える程の馬鹿でかい荷物を、車からひょいとおろすと、彼はまた運転席に戻った。

『じゃ。明日、9時に迎えに来ますから。』

『はいっ。有難うございました。お疲れ様でした〃』

『何か不都合があれば、連絡下さい。その名刺にねっ〃』

悪戯な笑顔で、さらりと言う。見かけによらず、嫌みなやつだ。

⏰:09/07/10 02:15 📱:W65T 🆔:VckcM2.Y


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