微妙な10センチ。〜最終〜
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#7 [あき]
だけど、それを口には出さなかった。
それは、なんて事ない。

強くなった私

それを見せたかった。
ただそれだけ。

すぐに弱音を吐き捨てて。逃げ言葉を吐き捨てて。
泣きつく私から…

大丈夫だよ。
何とかなるよ。

そう笑って日々を生活する強くなった私。

それを見せたかっただけ。
強くなったな。
そう笑って言って欲しかった。
ただそれだけだった。

⏰:09/07/08 01:42 📱:W65T 🆔:Uanw3whY


#8 [あき]
ちょうどその頃。
彼もまた、抱えきれない程の、不安、不信、ストレスを抱えていたんだろう。

介護疲れしている母のフォローに。
彼自身の慣れない介護。
いちからやり直す、彼の城。それに基づく、桁違いの資金。

頭では彼の不安やストレスを理解していても。
昔のように気持ちが、彼に添えなかった。

私自身が、押し潰されそうな不安やストレスに、彼を支える力なんて残っていなかった。
また彼も私の思いに頭では理解していてくれても、自分自身が押し潰されそうで私を支えられる力を残してはいなかった。

結局、私達は昔のように優しく寄り添えなかったんだ。

⏰:09/07/08 01:51 📱:W65T 🆔:Uanw3whY


#9 [あき]
結局、互いに出てくる言葉は

大丈夫だよ。
元気にやってるよ。

なんて、笑いながら、精一杯の強がりを言うだけだった。

互いに、弱さに気付いているのに、その上辺だけの強さに、甘えて。逃げて。

私達は、いつしか、何も言わなくなっていった―…

⏰:09/07/08 01:54 📱:W65T 🆔:Uanw3whY


#10 [あき]
《…飯くった?》

『…まだ。』

《俺も。…腹減った?》

『うーん。とくに?今日も疲れた。』

《あっそ…。じゃ。寝るわ》

『うん。じゃっ。』


こんな会話を、冷たく交わす夜。
電話を切って思う。

苦しいよって泣けば。
逢いたいよって泣けば。

今すぐに会えるのかなって。

⏰:09/07/08 02:04 📱:W65T 🆔:Uanw3whY


#11 [あき]
電話を切った後。

彼も、私に会いたいと思ってくれてたのかなって。
そう気付く。

もう遥か遥か昔。
今よりも、もっともっと遠く離れた距離にいた頃。
彼の助けてが
《腹へった。飯行く?》
だった。

今もそう。
前なら簡単に言えた言葉で、簡単に成し遂げられたそれも。
離れた街に暮らす今は、それが、彼の唯一の表現だったのかもしれない。
それを《疲れた》と自然に漏らす私の言葉で、彼は全てを飲み込んだ。
そう気付くのは、いつも遅かった。

⏰:09/07/08 02:13 📱:W65T 🆔:Uanw3whY


#12 [あき]
そうやって私達は。
日々を重ねるだけ重ねて、時間は全くさっぱり重ねなくなっていた。


だけど。
妙な自信と
妙な安定。

会わなくても、話さなくても。何年も繋ぎ合わた時間だもの。

たった数ヶ月で。

大切なものを
失いかけているなんて。
考えてもいなかった。

⏰:09/07/08 02:28 📱:W65T 🆔:Uanw3whY


#13 [あき]
―――――――

『じゃぁ。そろそろ帰るねっ。』

よいしょと立ち上がり、バックを肩にかけた。
ガチャガチャと、テーブルに散らばった、携帯、煙草をバックにしまって、くるっとお尻に持っていく。

『おうっ。気をつけろよ』

『うんっ。』

適当に返事をして、肩に食い込んだ紐を直した。


久しぶりに重ねた時間は、あっという間で。
特にたいした会話もしないで、特にたいした事もしないで。
タイムリミットだ。

⏰:09/07/08 13:15 📱:W65T 🆔:Uanw3whY


#14 [あき]
『体気をつけてね?』

『ぉおっ。…そっちも、無理すんなよ。』

『…うん。』

本当は、もっともっと話をしたかった。

もっともっと、話を聞いて欲しかったし。
もっともっと、話を聞いてあげたかった。
だけど。
そう思っていても、私達は、互いに、話出すきっかけがなくて。
結局、何も言えず、帰り際に、たった、二言、三言、そう交わすのが精一杯。

薄々、気づいていても、それ以上、お互いがお互いに、踏み込めなかった。

⏰:09/07/08 13:27 📱:W65T 🆔:Uanw3whY


#15 [あき]
昔の私達なら。
時間も忘れて、何もかもを忘れて、夢中で話た。
悩みや愚痴、怒りや、悲しさ、くだらなさすぎる言から、些細な出来事まで。
共に、怒って、共に泣いて、共に悩んで。共に笑った。少しでも様子が違えば
何があっただの
どうしただの
掘り返し掘り返して、結局、勢いに飲まれ、気付けば、一から百まで胸の中をぶちまけたのに。
いつしか、何も言わなくなったし。聞かなくなった。重ねすぎた、月日が、そうさせたのかもしれない。

何かあれば。
どうしようもなければ、言ってくる…

そんな妙な自信が。
私達の間に見えない壁を作ってしまったのだ。

⏰:09/07/08 13:37 📱:W65T 🆔:Uanw3whY


#16 [あき]
おもむろに立ち上がった、なおちゃんが、私の後ろに立つ。
背中から、ふわりとなおちゃんの匂いがした。

『んっ?なんか悪戯したでしょっ!』

くだらなさすぎる悪戯が大好きな、なおちゃん。
隙を見せると、かっこうの餌食にされるのだ。

『するかっ!』

『怪しいっ!』

私は、バックをポンポンと触ってみたり、背中に手を回してみたりと、悪戯の痕跡を探す。

『信用ねぇなぁ〃』

『ないねっ〃』

⏰:09/07/08 13:40 📱:W65T 🆔:Uanw3whY


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