微妙な10センチ。〜最終〜
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#796 [あき]
西条さんは、もう意地になっているしか思えなかった。私と別れたくないんじゃない。
ただ、意地になっているだけ。
『…どうしよ…』
一向に、鳴り止まない携帯電話。
『さぁ。でも、このまま無視してたからって、収まるとは思えないけどな。』
『…私も思います…』
二人でそれを見つめる。
どうしろってんだよ!!くそーっ!!!
:09/12/14 02:03
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#797 [あき]
西条さんが、諦める事はひとつ。聞いてきた過去の恋愛経験。
《俺さ、浮気されたら、もう許せない。》
彼の性格。異常な束縛心。それらを総合すると、やはりこれしかない。どうせ怒ってるんだ。怒り狂って、私が捨てられた事にすりゃ、話は早い。
《俺、女運なくて…いつも浮気されちゃう。》
まさかまさかだけれど?過去の彼女達も、もしかしたら、これが最終的手段だったのかもしれない。私が、挑もうとしている事で、今はそう思えてならないけれど。
どうせ傷付けたんだ。
とことん傷付けて、恨まれなきゃ。
私は西条さんからの呪縛も解けないし。
震える携帯電話を見つめ、西条さん自身にも申し訳ないような気がしてきた。
:09/12/14 02:27
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#798 [あき]
『あの…』
この決断をなおちゃんに言うか言おまいか悩みながら声を発した。なおちゃんは、私の顔を見るなり、呆れたように笑った。
『はぁ…だから、俺は初めから言ったろ?』
『……でも…やっぱり、傷付けるよね。トドメ刺しちゃうよね…』
もじもじと、ライターを鳴らす私に、なおちゃんは、言った。
『だろな。』
『…これしかないのかな…』
『知らん。』
『………』
:09/12/14 02:34
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#799 [あき]
携帯電話を見つめる。
相変わらず、分刻みで震え続けるそれは、西条さんの怒りでもあり、叫びにも聞こえた。
このままじゃいけない事だけは、わかる。
『……やる。』
『ほーか。』
携帯電話を握りしめ。
次の電話を待つ。
握りしめて直ぐ様、それは鳴った。
『鳴ったぞ?出るか?』
『よしっ…出る。』
なおちゃんの部屋で、ジャッジが着かなかった勝負。これが、本当の最終ラウンド。
心の中で、ゴングが鳴り響いた。
:09/12/14 02:42
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#800 [あき]
―――――――
『はいっ。』
《…どうして電話に出ないんだよっ!!》
『…出先だって言ったしっ。それに、もう別にいいでしょっ!!関係ない!!』
先ずは、強気作戦。
しかし、相変わらずのびびりヘタレっぷり満開の私の手は、しっかりと、なおちゃんの膝を掴んでいた。
《…はぁ?本気なのか?》
『まだ言ってんの?本気だってば!!』
膝を握る手に力が入る。なおちゃんは、いてぇわとジェスチャー。
そして、貸せと手を差し出した。
:09/12/14 02:47
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#801 [あき]
私は、首をプルプルと横に振り、待ってとジェスチャー。
これは、最終手段。
いや。出来る事なら使いたくない。
本当は話し合いで、円満解決したいんだもの。
『私に、どうしろって言うの?』
《どうもしない。本気かって聞いてんだよ。あきは、これでいいのかって?このまま、さよならしていいのかって。》
突然の敵…いや、西条さんの優しい声。
哀しそうな声に
完全に強気発言で応戦体制に入っていた戦意は喪失しそうになる。
『そ…それでいいっ!』
それを慌てて奮い起こした。
:09/12/14 02:55
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#802 [あき]
《そっか…。》
更に響く寂しそうな声。その声に心が折れそうになる。
なおちゃんの膝を強く握る。
『…考えたけど。
やっぱり、もう付き合えない。』
私のその言葉に、なおちゃんは細く息を吐いた。コンコンと膝を揺らし、私の顔を覗き込む。私は、小さく頷いて、目を反らした。
《自由がいいって事か?》
『そうじゃなくて』
《わかった。もういいよ。好きにすれば。》
諦めたのか、はたまた何かを感じ取ったのか、私の言葉に、西条さんはそう返事した。
:09/12/14 03:08
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#803 [あき]
『…ごめんなさい。』
《俺も、あきの暮らしには、耐えられそうにないわ。》
『……』
《今の出先も、男といるんだろ?》
ここで、そうだと認めれば、話は早いのに、どうしても、言えなかった。なのに、西条さんは、電話の向こうで、笑って言った。
《否定しないんだな〃あ〜あ…やっぱり無理だったか…〃》
気付いてたんだ。
私と、なおちゃんの繋がり…
:09/12/14 03:17
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#804 [あき]
『……』
《やっぱり駄目だったか!距離には勝てないのか〜っ。〃》
『…距離じゃないよ。私は、そんなの関係なかった。』
嘘じゃない。
あの時、私は間違いなく、近くのなおちゃんより、遠くの西条さんを選んだ。その気持ちは嘘じゃないのに。
《…どうだか〃》
ズキンと胸が鳴る。
最後の最後まで、西条さんは、私のそんな気持ちすら信じてくれていなかった。
やっぱり私達は、駄目なんだ。
そう改めて認識した。
:09/12/14 03:24
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#805 [あき]
『それが駄目になった原因じゃん?
最後まで、西条さんは、私を信じてはくれないじゃない。
……私達は距離なんかじゃないよ。
気持ちが遠かったの。お互い歩み寄れなかったんだよね。〃』
《……その彼は、違うって?》
その質問に、私はちらりと、なおちゃんを見た。なおちゃんは、何か?と言わんばかりの顔で私達の話を聞いていた。その間抜けな顔に、私は、ぷっと吹き出してしまう。大丈夫だからと合図を送ると、納得したように、ソファーに座った。そして、私は、その部屋から出て行った。
:09/12/14 03:40
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