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#183 [我輩は匿名である]
第8章 〜禁じ手〜
「どうも太郎です。今日はナナシ先生に内緒で戦闘シーンを書いてきたぜ」
「やるのか太郎!」
「ふはは、殺してやるぜナナシ!」
ガキン! ギィン!
バァン!
「け、剣が!」
「ふはは、覚悟しろナナシ!」
「この手に汗握る展開…我ながら素晴らしいな」
「これはひどい、ひどすぎる!! 貴様それでも俺の弟子カァアァァァ!!」
「うおっまぶし」
:08/12/03 21:58 :P903i :WSbGktfI
#184 [我輩は匿名である]
「一体何だこれは?」
「ナナシ先生、いたのか…」
「まあね。ところでさっきの文だが。
この戦闘は一体何をしてるの?」
「ナナシの剣と太郎の槍のぶつかり合いだ」
「え? 太郎は槍持ってたの?」
「当たり前じゃん」
(こいつ…! 情景描写で何をしていたんだ!!)
:08/12/03 21:59 :P903i :WSbGktfI
#185 [我輩は匿名である]
「それでナナシの剣が折れて、ナナシは追い詰められてる」
「僕はナナシの剣が吹っ飛んだと解釈したが」
「え?」
「このバカモンが、何を習ってたんだ。ぶち殺すぞ」
「うっ」
「まぁそこは割愛しても、擬音を使いすぎだな……」
:08/12/03 21:59 :P903i :WSbGktfI
#186 [我輩は匿名である]
8−1 擬音
「初心者の小説でよく見かけるけどね。
擬音を使った描写は、特に厨房が陥りやすい。だが、それでは何をしているのかさっぱり分からん!」
「俺は分かるぞ」
「お前だけ分かっても読者が分からなかったら意味ねーだろボケが!」
「うっ」
「ちょっと書き直してやる」
:08/12/03 22:00 :P903i :WSbGktfI
#187 [我輩は匿名である]
「やるのか太郎!」
「ふはは、殺してやるぜナナシ!」
太郎は薄い笑いを浮かべたまま、その手に持った白銀の槍を構えなおした。
それに呼応するように、ナナシも鉄の剣を鞘から抜き放ち、低く構える。
だが、その瞬間だった。
剣を持つ手が、突然軽くなったような妙な違和感。
刹那、ナナシの剣はバンと鈍い音を立てて、刀身の半ばから折れ飛んだ。
「け、剣が!」
「ふはは、覚悟しろナナシ!」
「擬音は別に使っちゃいけない訳じゃないが、極力使わない方がいい。
上では申し訳程度にナナシの剣が折れる擬音を入れてみたが、擬音を使わず描写した方がいいね」
:08/12/03 22:00 :P903i :WSbGktfI
#188 [我輩は匿名である]
「それに、基本的に擬音はカタカナだ。
カタカナが多い文章は読みづらい上に、稚拙に見えて仕方がない」
「言われてみれば確かに……」
「はっきり言って擬音は手抜きだ。
そんな事をするよりは、細かな描写をして読者の想像を膨らませてあげよう」
「把握したぜ」
:08/12/03 22:01 :P903i :WSbGktfI
#189 [我輩は匿名である]
8−2 単調な文章
「他にも鸚鵡返しやどうでもいい事をダラダラ書いたりなど、やっちゃいけない事はたくさんある」
「おうむがえし?」
「今、君がやったのが鸚鵡返しだ」
「相手の言った事をそのまま返すことか…」
「まぁこれも使っちゃいけない訳じゃないけどね、強調させたい場合にはよく使われるし。
ただ、これも使っていると癖になりやすいんだ。どうでもいい事でいちいち鸚鵡返ししちゃったりね」
:08/12/03 22:01 :P903i :WSbGktfI
#190 [我輩は匿名である]
「そうなのか?」
「気づかないうちに絶対になる。だから日頃から極力使わない努力をした方がいい」
「分かった。じゃあ『どうでもいい事をダラダラ』ってのは?」
「例えばこんな会話」
「やあ太郎」
「こんにちはナナシさん」
「今日はいい天気だな」
「そうですね」
:08/12/03 22:02 :P903i :WSbGktfI
#191 [我輩は匿名である]
「ほのぼの系では別だが、こんな感じで単調な会話を続けていると、読者は飽きる。
この程度なら挨拶をしたという言葉だけで済ませられるだろう」
「なるほど」
「シリアスやミステリーなんかでは、こういった無駄な会話が間を殺してしまう。
無駄な会話や文章は極力省いた方がいい」
「把握したぜ」
:08/12/03 22:03 :P903i :WSbGktfI
#192 [我輩は匿名である]
8−3 社会的なタブー
「知的障害者」
「ん?」
「市町村の合併問題、治療不可能の難病、伝染病などなど。これらを題材に使う場合は注意が必要だ」
「どういうことだ?」
「フィクションもので、実在する場所・人物なんかを使う場合もそう。
いわば、モラルの観点から見た禁じ手さ」
「嫌がる人もいるってことか」
「まぁそうなるかな。少なくとも誰かが傷つくような書き方はしちゃいけない。
でも大事なのは、それら『タブー』となっているテーマをいかにして書くかだ」
:08/12/03 22:04 :P903i :WSbGktfI
#193 [我輩は匿名である]
「どうするんだ?」
「最低限のルールとして、それらについてきちんと調べること。嘘は絶対にダメだ。
そして、フィクションであっても客観的に書くこと」
「偏りなく公平に、ってことか」
「そうだね。でもこれがなかなか難しいし、少し間違えれば多大な批難を浴びたりする。
だからそういう題材を扱う場合は、名前だけ架空のものとして出したりする。作中で病名を存在しないものに変えたりとかね」
:08/12/03 22:04 :P903i :WSbGktfI
#194 [我輩は匿名である]
「下手に扱わない方がいいのか?」
「初心者はそうした方がいいかもね。
最近は恋人が植物人間になったりだとか、それらのテーマが安易に使われやすいけど、あまりよくない。
そして、やるなら最後まで責任を持って書ききること。それがルールでもある」
「把握したぜ」
:08/12/03 22:05 :P903i :WSbGktfI
#195 [我輩は匿名である]
8−4 推理小説などでの禁じ手
「推理小説やオカルトなど、謎解きがメインとなる小説では細かい縛りが多々ある」
「ほう」
「犯人やトリックに関するものが特に多いかな。
読者が推理できない、又は与えられた情報からは推理できないようなトリックなどを使ってはいけない。面白くないからね」
「たとえばどんな?」
「犯人に関しては、『自分(語り手)が犯人でした』はダメ。
ただし、犯人が語り手であると前提を置いた上で話を進めるのはアリだ。
また、推理段階で名前すら出てきていない人物を犯人にするのもダメ」
「ふむふむ」
:08/12/03 22:05 :P903i :WSbGktfI
#196 [我輩は匿名である]
「双子を使ったトリックは、たとえ双子である事を明言していてもダメ。
密室モノで、『実は秘密の通路がありました』もダメ」
「確かに推理のしようがないな」
「推理段階で本文中に書いてなかった事を、種明かしの段階で『実は○○だったんだよ』みたいに登場人物に語らせるのもよくない。
言わなくても分かるだろうが、推理小説では読者があれこれ推理するのが一番の面白さだ。
なので、考えれば必ず犯人が分かるように、作者が情報を出していかないといけない」
「確かにそうだな」
:08/12/03 22:06 :P903i :WSbGktfI
#197 [我輩は匿名である]
「だから、語り手が嘘をついちゃいけない。
たとえば、『妻が死んでいるのを発見した亭主』が語り手だとしよう」
「うん」
「家に帰ると妻が死んでいる。そして語り手としての心理描写が書かれる。
そこに『ビックリした』なんて書かれていたら、その人はもう犯人ではあり得ない」
「犯人ならビックリしないな」
「そうだね。ところが、話を進めていくとその亭主が犯人だった、としてしまうと、これはもうルール違反だ」
「そりゃ分からないもんな」
:08/12/03 22:06 :P903i :WSbGktfI
#198 [我輩は匿名である]
「ただ、会話ならセーフだ。
警官に『殺害したのはお前か』と聞かれて『私ではありません』と答えるのは当然だからね。
それが地の文で書かれた心理描写になるとアウトだ」
「ふむふむ」
「推理小説に限らず、視点が固定された小説では重要なんだけどね。
ファッションに疎い子が語り手だとして、前からお洒落な人が来たとしよう。
この場合、語り手には服の種類が分からないから、『ひらひらした可愛い服』くらいの描写しかできないんだ。ファッションに疎いわけだからね」
「なるほど」
:08/12/03 22:07 :P903i :WSbGktfI
#199 [我輩は匿名である]
「特に初心者の小説ではこういった事が目立つね。
小説というのは描写から場面や人物像を想像させなきゃいけない。
こういう描写の違和感は気にされないけど、作者と読者のイメージの相違に繋がるから注意が必要だ」
「把握したぜ」
「他にも『夢オチ』もあまりよろしくないな」
「今までの出来事は全部夢だった、ってヤツか」
「そう。夢オチは展開に詰まった作者が無理やり打ち切る場合なんかによく見られる。
夢オチは、はっきり言って逃亡と同義だ。必ず話をきちんと締めること」
「把握したぜ」
「では、おさらいだ」
:08/12/03 22:07 :P903i :WSbGktfI
#200 [我輩は匿名である]
〜8章のおさらい!〜
「擬音を乱用しないこと。読者には何をやってるのかさっぱり分からないぞ!」
「どうでもいいことは綺麗に省く。鸚鵡返しもよくない」
「社会問題など、人権が関わってくるテーマを扱う場合は注意が必要。
嘘は書かない、主観論は書かない、実例又は実在する事柄は書かない。この3つを守ろう」
「推理小説などでは縛りが多いぞ。
自分が考えたトリックがルール的にアリなのか、書く前に調べておこう」
「描写を怠るな! 推理小説などでは特に描写が重要だ。トリックに必要な事は必ず描写すること!
また、その話を語り手がしておかしくないか、必ず確認すること」
「夢オチはつまんないからやめろ」
:08/12/03 22:08 :P903i :WSbGktfI
#201 [我輩は匿名である]
「そろそろ教えることも少ない」
「次は何をやるんだ?」
「小説によくある技法を教えよう」
>>183-201第8章 〜禁じ手〜 完
次回は
第9章 〜知っておきたい技法たち〜
:08/12/03 22:09 :P903i :WSbGktfI
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