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#64 [我輩は匿名である]
第4章 〜小説を書く前に 正しい日本語編〜
「さて、今から最低限の正しい日本語を教えていくんだが、まずはじめに1つ言っておくことがある」
「なにさ?」
「日本語…いや、言葉に関して『絶対』は存在しない」
「どういうことだ?」
:08/11/20 00:10 :P903i :TDftdaZo
#65 [我輩は匿名である]
4−1 まず、はじめに
「そうだな、これは例を挙げた方が分かりやすいだろう。
『新しい』という言葉があるね。意味は…言わなくても分かるよね」
「ああ。1度も使われてない、とかそんな感じだろ」
「うん。でもね、この『新しい』という言葉、実は誤用、つまり誤りなんだ」
「えっ、マジで!?」
「『新』という字の訓読みはわかるかい?」
「“あらた”だろ?」
「では、その“あらた”と読む『新』に『しい』という送り仮名をつけると…」
「“あらたしい”……あれ?」
:08/11/20 00:11 :P903i :TDftdaZo
#66 [我輩は匿名である]
「そう、この『新しい』という言葉は、『新』という字を“あたら”と読み間違え、そこから“あたらしい”になったと言われている。いわゆる『音便に変化した言葉』なんだ」
「音便に変化した言葉…?」
「口語がそのまま読み方として定着している言葉のことさ。
典型的なものとしては『すいません』だね。正しくは、『済まない』だから『すみません』。まぁこの『すみません』も『済みませぬ』の音便に変化した形だったりするんだけど…」
:08/11/20 00:11 :P903i :TDftdaZo
#67 [我輩は匿名である]
「えーっと……じゃあ“あたらしい”は間違いなのか?」
「そんなことはない。“あたらしい”は正しい読み方として完全に浸透してるし、国語の読み仮名テストで“あらたしい”なんて書いたらバツ印をもらっちゃうだろうね」
「じゃあ“あらたしい”が間違いなんだな」
「そうとも言えない」
「え?」
「さっきも言ったが、言葉に絶対はない。『新しい』だって、今なら“あらたしい”は間違いだけど、この言葉ができたころは“あらたしい”と読まれていたんだ。
時代によって、言葉は読み方も使い方も、意味すらも変わってくる。
他にも…例えば『全然』という言葉」
:08/11/20 00:12 :P903i :TDftdaZo
#68 [我輩は匿名である]
「読み方は“ぜんぜん”だよな?」
「ああ、それで合っている。違うのは使い方さ。
『全然』というのは普通、否定形の言葉の前に使う。『全然新しくない』という感じにね。
ところがどっこい、最近は若者の間で急速に誤用が広まっている」
「『全然新しい』みたいなヤツか?」
「お、分かっているようだね。その通り、肯定を表す使い方が急速に広まっているんだ」
「でもそれは間違いなんだろ?」
:08/11/20 00:12 :P903i :TDftdaZo
#69 [我輩は匿名である]
「それが、そうとも言い切れない。
実はかの文豪、夏目漱石もこのような表現を用いていたことがわかっているんだ。
もちろん夏目漱石が正しいなんてことはあり得ない。だが、少なくとも『全然』を肯定に使う用例は、それだけ前から存在したってことなんだ。
こういった例は他にも数えきれないほどある。言葉というのは、日々進化しているんだ」
「じゃあ『全然』も進化中ってことか?」
「そういうことになるかな。言葉における唯一のルール、それは“広まったもん勝ち”だ。
間違いであっても、広まってしまえば正しくなる場合もある。それが言葉の面白いところでもあり、怖いところでもある」
:08/11/20 00:12 :P903i :TDftdaZo
#70 [我輩は匿名である]
「なんか曖昧なんだな」
「言葉なんてそんなもんさ。何が正しくて何が間違っているなんて、誰にも決めることはできない。
今から君に教えることも、間違っているとは限らない。正しい日本語とはつまり、よく間違う言葉の正しい使い方を教えるわけだからね」
「じゃあそんなのやっても意味ないんじゃないか?」
:08/11/20 00:13 :P903i :TDftdaZo
#71 [我輩は匿名である]
「そうかもしれない。でも、君はこれから小説を書くんだ。正しい日本語は意識するべきだと僕は思う。
ただ、あまり深く考えないでくれってことだ。三人称の地の文では正しい日本語を使うべきだけど、会話文なんかはニュアンスが大事だったりするしね。
ただ、読者の中には誤字があるだけで読まないっていう人もいる。よりたくさんの人に読んでもらいたければ、地の文だけでも正しい日本語を使うべきだと思うよ」
「なるほどね。つまり、あくまでも参考に、ってことか」
:08/11/20 00:14 :P903i :TDftdaZo
#72 [我輩は匿名である]
「そうだね。はっきり言って、この章を見る必要はまったくない。
誤字脱字を気にしないならこの章の内容なんて知る必要がないし、正しい日本語を使いたいならその都度辞書をひくべきだしね。
ただ、『言葉に絶対はない』。これだけは把握していてくれ」
「ああ、わかった。肝に銘じとくよ」
「よし。じゃあ、前置きが長くなったけど本題に入ろう。まずは『誤字』だ」
:08/11/20 00:14 :P903i :TDftdaZo
#73 [我輩は匿名である]
4−2 よくある誤字
「ここでいう『誤字』とは、変換ミス等のいわゆるケアレスミス(不注意による間違い)ではなく、思い込みによる間違いだ」
「思い込み?」
「ああ。さっき言った『すいません』もその1つだ。それだと、何を吸わないの? ってなっちゃう」
「そりゃそうだ」
「こういった誤字はたくさんある。実際に言葉にすると若干のニュアンスの変化があるからね、それで間違えてしまうんだ。
代表的なものをリストアップしていこう」
:08/11/20 00:15 :P903i :TDftdaZo
#74 [我輩は匿名である]
こんにちわ→こんにちは
足元をすくう→足をすくう
三身一体→三位一体
脳ある鷹は爪を隠す→能ある鷹は爪を隠す
責任転換→責任転嫁
責任追求→責任追及
的を得る→的を射る
:08/11/20 00:15 :P903i :TDftdaZo
#75 [我輩は匿名である]
喉が乾く→喉が渇く
味あわせる→味わわせる
シュミレーション→シミュレーション
雰囲気(ふんいき)→ふいんき
一部の隙→一分の隙
可愛そう→可哀想(可哀相)
この後に及んで→この期に及んで
家宝は寝て待て→果報は寝て待て
死に者狂い→死に物狂い
言葉使い→言葉遣い
:08/11/20 00:16 :P903i :TDftdaZo
#76 [我輩は匿名である]
「……と、まぁこんなものかな。
これは氷山の一角で、他にもよくある間違いはたくさんある。
どうだい、間違えて覚えていたものはあったかい?」
「半分くらいあったかな……」
「最近は誤字の境目が本当に曖昧になってきていてね、どの辞書にも載っていないような言葉が、携帯電話の変換リストに出てきたりもするんだ。
携帯で変換したからといって正しいとは限らない。見る人が見れば分かっちゃうから、注意するように」
「ああ、わかった」
「では次は、よくある『誤用』についてやってみよう」
:08/11/20 00:16 :P903i :TDftdaZo
#77 [我輩は匿名である]
4−3 よくある誤用
「またリストアップしていくのか?」
「いや、誤用は誤字と違って、間違いを一言で表しにくい。1つずつ解説していこう。まずは、下の文章を見てくれ」
「ふん、貴様らごときでは、ワシの相手をするには役不足じゃわい!!」
「……特に問題ないと思うけど…」
「まぁ、そう思うのも無理はない。
この誤用は、プロの小説家や漫画家でさえ間違えることがあるんだ」
「マジか」
:08/11/20 00:16 :P903i :TDftdaZo
#78 [我輩は匿名である]
「ここで注目してほしいのは『役不足』という言葉。『役不足』の意味は知ってるかい?」
「役が足りてないから……まだまだ相手に対して力及ばない、って意味なんじゃないのか?」
「実はその逆なんだよ。『役不足』とは、ある人物の力量に対して、与えられた役目が軽すぎることを指す」
「なんと!!」
:08/11/20 00:17 :P903i :TDftdaZo
#79 [我輩は匿名である]
「これは多分、“不足”という言葉からマイナスイメージが連想されるから間違うんじゃないかな」
「まったく逆の意味だったのか…間違えたら言い訳できないな」
「うん。『役不足』、この言葉には特に要注意だ」
「他にはどんな誤用があるんだ?」
「よし、じゃあ下によくある誤用と正しい意味をいくつか説明していこう」
:08/11/20 00:18 :P903i :TDftdaZo
#80 [我輩は匿名である]
『姑息』
× 卑怯、卑屈
○ その場逃れ
『触り』
× 話の冒頭部分
○ 話の一番の聞かせどころ
『ぞっとしない』
× 恐ろしくない
○ 感心しない、面白くない
『自首』
× 犯人が自ら捜査機関に罪を報告すること
○ 犯人が発覚する前に捜査機関に申告すること
『情けは人の為ならず』
× 情けは人の為にならない
○ 情けは巡り巡って自分に良い報いとして帰ってくる
:08/11/20 00:18 :P903i :TDftdaZo
#81 [我輩は匿名である]
「さぁ、間違えて覚えていたものはあるかい?」
「『自首』がよく分からないんだけど…何が違うんだ?」
「これはね、犯人が自ら名乗り出ることを『自首』と勘違いしてる人が多いんだ。
捜査機関側が事件の発覚を知らない、又は知っていても犯人についてまったく分かっていない時に、犯人自ら捜査機関に申告する事が『自首』だ。
つまり、指名手配犯が警察に自ら出頭しても『自首』にはならないってこと。間違えてる人が多いんだけどね。
別に些細なこととか思うかもしれないけど、今の法律では自首とそうでない場合とでは刑の重さが違ってくるからね」
:08/11/20 00:19 :P903i :TDftdaZo
#82 [我輩は匿名である]
「なるほど、気をつけないとな」
「あとは……最近特に多いのが『爆笑』と『失笑』かな。下の文を見てごらん」
俺は爆笑した。
「どこが間違いが分かるかな?」
「短すぎてわからねーよ…」
「これは文脈は関係ない」
「……前提が間違ってるってことか?」
:08/11/20 00:19 :P903i :TDftdaZo
#83 [我輩は匿名である]
「正解、分かってきたじゃないか。
そもそも『爆笑』というのは“大勢の人が一斉に笑いだす”という意味だ。つまり…」
「1人ではこの言葉は使えない?」
「そう。1人で使う場合は『大笑い』が適切だ」
「よく聞く言葉だけど、それだけ誤用が多いってことなんだよな……」
「まぁ、次から気を付けるようにすればいい。次は『失笑』だ」
:08/11/20 00:19 :P903i :TDftdaZo
#84 [我輩は匿名である]
彼のあまりにも笑えない馬鹿な発言に、俺は失笑した。
「まさに馬鹿にしてる感じだな」
「そうだね。でもこれも間違い」
「またかよ……」
「これは『失笑』という文字の形からか、笑いがその場から失われるといった意味だと思っている人が多い。
しかし本当の意味は“(笑ってはいけないような場面で)おかしさを堪えきれずに吹き出してしまうこと”だ。全然違うよね」
:08/11/20 00:20 :P903i :TDftdaZo
#85 [我輩は匿名である]
「葬式で屁こいて吹き出したりした時に使うのか」
「ま、まぁ…そうかな。少なくとも相手を馬鹿にするような意味ではない」
「そういう時はどういう言葉がいいんだ?」
「そうだな…『冷笑』が一番しっくりくるかな。
ただし言葉に絶対はない、『冷笑』が一番いいってわけではないよ。『失笑』では駄目だけどね。
誤字についてもそうなんだけど、こういう場合は辞書なんかで調べてみるといい。ウィキペディアでもいいかもね」
「なるほど、わかったよ」
:08/11/20 00:21 :P903i :TDftdaZo
#86 [我輩は匿名である]
4−3 おざなり? なおざり?
「おざなり、なおざり。
この2つの言葉は混同されやすい」
「そりゃまたなんで?」
「1つは意味が似ているから。もう1つは語呂が近いからだ。
さらに、この2つの言葉は音転倒(メタテシス)という現象に類似している」
「メタテシス…?」
「言葉の一部がひっくり返ってしまうことさ。エレベーターをエベレーターと言い誤ったり、おたまじゃくしをおまt…いやいや。
おざなりとなおざりも、『おざ』と『な』の位置が入れ替わっているだろう?」
「ああ、本当だ」
:08/11/20 00:23 :P903i :TDftdaZo
#87 [我輩は匿名である]
「話を戻すぞ。『おざなり』と『なおざり』だが、もちろん語源も意味も別物だ。
語源については、なおざりの方が諸説あって話がややこしくなるので、ここでは省く」
「じゃあ、意味はどうなんだ?」
「おざなりは漢字で書くと『お座なり』、読んで字のごとくお座敷などで使われていた。
意味は“その場での間に合わせ”だ」
「なおざりの意味は?」
「漢字で書くと『等閑』。
意味は“(物事などに)あまり注意を払わず、おろそかにするさま”だな」
「…違いがよーわからん」
:08/11/20 00:23 :P903i :TDftdaZo
#88 [我輩は匿名である]
「つまりだな。
『お座なり』は“(いい加減なその場しのぎではあるが)一応、物事をすること”
『等閑』は“無視して放置すること”だ」
「ああ、そういう事か」
「意味が分からない内は、するか・しないかで分ければいいさ」
「把握したぜ」
:08/11/20 00:23 :P903i :TDftdaZo
#89 [我輩は匿名である]
4−4 で、結局『正しい日本語』って何?
「さて、これで粗方終わりなわけだけど」
「まだ何かあるのか?」
「いや、もう特にはないさ。あとは気構えの問題だ」
「気構え?」
:08/11/20 00:24 :P903i :TDftdaZo
#90 [我輩は匿名である]
「うん。繰り返すようで悪いが、言葉に絶対はない。
今回教えたことも、参考程度に考えてくれ」
「やけにこだわるな」
「うーん、普通の書籍小説のレクチャーならキッパリ『正しい日本語を使え!』と言えるんだけどね。
携帯小説っていうのは手軽に読めるのがウリだから、あまり言葉にこだわりすぎるのもよくないんだ」
「でも、俺はある程度ちゃんとするべきだと思うな。間違った日本語があると読まないような人もいるんだろ?」
:08/11/20 00:25 :P903i :TDftdaZo
#91 [我輩は匿名である]
「うん。あくまでも『小説』だからね。
ただ、こういうのはリアリティーが大事なんだ。会話文はニュアンスに任せても別にいいと僕は思う」
「確かに、若者どうしの会話でガチガチの日本語使われてもアレだしな」
「うん。そして正しい日本語を使いたいなら、そのつど辞書をひけばいい」
「そうだな」
:08/11/20 00:25 :P903i :TDftdaZo
#92 [我輩は匿名である]
「特に、日本という国は独自の言語表現が非常に多い。
方言や略し言葉もそうだし、ネット言語…いわゆる『2ちゃんねる語』なんかもそうだ。
そして、それすらも愉しもうとする文化が日本にはある。
あまりにも稚拙な小説は考えものだけど、完全に正しい日本語で小説を書け、というのはナンセンスだと思うね」
「『すみません』より『すいません』の方が情けなく聞こえるから、失敗ばかりの人のセリフに使ったり?」
:08/11/20 00:27 :P903i :TDftdaZo
#93 [我輩は匿名である]
「そうだね。同じ意味の言葉でも、使い分ける事で表現の幅が広がる。
そしてそれが日本語の面白さでもある。英語なんかじゃこんな事はありえないからね」
「やっぱり、ニュアンスが大事ってことなんだな」
「そう。言葉に絶対はない、これを忘れないでくれ」
「ああ、わかった」
「じゃあおさらいだ」
:08/11/20 00:27 :P903i :TDftdaZo
#94 [我輩は匿名である]
〜4章のおさらい!〜
「誤字は、口語をそのまま文章にしようとするために間違える。
自信がなければ辞書をひこう」
「誤用は自分では気づかないことが多い。
特によく聞く言葉を使う場合は、意味をきちんと調べておこう」
「変換機能をアテにしないこと! 意外と間違いが多いので注意!
また、間違って同音異義語を使ったりしたら恥ずかしいぞ。ちゃんと辞書で調べよう」
「言葉に絶対はない。
正しい日本語を使うのもいいが、ニュアンスを重視してよりリアリティーのある言葉を選んでいこう」
:08/11/20 00:28 :P903i :TDftdaZo
#95 [我輩は匿名である]
「さて、これで小説を書く前の基礎知識はすべて終わりかな」
「てことは?」
「次からは、実際に小説を書いていくよ」
「ようやく本番だな」
>>64-95第4章 〜小説を書く前に 正しい日本語編〜 終
:08/11/20 00:30 :P903i :TDftdaZo
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