夏祭り、恋花火

　
『あ、バス来たで！』

プシュー

扉が開いた。

足をバスへと一歩踏み出す。

『遊希？乗らへんの？』

ガバ
　

｢やっぱり変更。｣　
　

　
そう言われ、
遊希に手を引っ張られたのだと気付く。

『じゃ、じゃあどこに行くんよ!?』

元々、行き先も知らないのに
急に変更とかされて……

ますます分からん！

｢まつりと、
ゆーっくり話せるところ。｣

今度は真剣にゆう遊希。

少し、たじろいでしまう。

『…ゆっくり話せるところってどこよ。』

｢うーん、知らへん。｣

『ファミレスとか、
喫茶店とか？』

｢いいや、違うな。｣

『じゃあどこ？』

　
うんざりと聞く私に、
遊希は

｢あっこ。｣

指差して言った。

その指の向こうには

……ホテル？
　
　

こ、これは！

もしかして…
もしかすると!!

イケナイ関係ってやつ!?

『ちょっ、ちょっと遊希！ふざけんのも、ええ加減にして！
そんな真っ昼間から、なに考えてんのよ！

しかも私には奏がおるし……

ほんまにアカンって!!』
　

　
　
10分後。

｢なあ、まつり。
奏は忘れ、な？｣

私は遊希に迫られてる。

『…遊希。』

あまりにもの真剣な眼差しに流されてしまいそう。

｢な、俺のゆう通りにし。絶対に後悔せんから。
ってか俺がさせへん。｣

　
そんなことゆわれたら…

ごめん。
ごめんな、奏。

『…遊希。

私、遊希のゆう通りに…』

バンッ
　
　
　
『いったー！』
　

　
　
｢おー！ホームランや!!
ホームラン！走れ走れ！｣

遠くで聞こえるオッサンの声。

｢大丈夫か、まつり!?｣

『痛い痛い痛い！
ぜんっぜん大丈夫とちゃうわ!!』

見事に私の額にホームランしたボール。

　
『だから、川原なんて嫌やってゆうたやんか！』

｢ごめんごめん…。
それより、

お前、ほんま最高やな。｣
含み笑いする遊希。

『笑うな！』

言った瞬間、遊希は吹き出した。
　

一回、吹き出してしまうとなかなか止まってはくれないみたいで
遊希はお腹を抱えてる。

｢お腹…ほんま最高！
おもろすぎやろ!!｣

『そんなことで最高ってゆわれても…』

ブーと膨れる。

｢すみませーん。
ボール、そっちに行ってませんか？｣
　