こいごころ
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#326 [向日葵]
そこに、小さな袋が入っていた。
中身は、宗助の面紐だ。
前にもらったものを、小さく切って、リボンのように結んで、袋にお守りのようにいれた。
宗助だけでなく、皆の必勝祈願の意味も込めて……。
でも誰を1番応援したいかなんて、もう分かっていた。
でも、応援出来るだろうか。
応援してほしいのは、いつだって……。
「茉里ちゃん?」
綾香の声に、茉里がハッと我に返る。
:09/08/14 03:28
:SO906i
:☆☆☆
#327 [向日葵]
「あ、ごめん」
会場近くまで行くバスに乗り込む。
バスで10分ほどだ。
着けば他校の人たちもいて、茉里たちは挨拶する。
その中に、見慣れた人物がいた。
「おはよう、加賀さん」
「沢口くん……」
夏祭り以来、口をきくのは久々だ。
地区大会もあったりしたが、姿を見ても喋ることはなかった。
:09/09/13 17:39
:SH05A3
:☆☆☆
#328 [向日葵]
「おはよう」
「寒いね、山奥だから余計に」
無邪気に微笑まれれば、罪悪感が胸をよぎった。
そんな茉里に気づいた沢口は、少し困ったように笑う。
「フラれたくせに、喋りかけるのは、迷惑だったかな?」
「ち、違うの!普通に喋ってくれて、すごく嬉しいから」
そういえば、沢口はまたいつもの微笑みにもどり、茉里はホッとした。
「先生がいた。行くぞ」
:09/09/13 17:39
:SH05A3
:☆☆☆
#329 [向日葵]
宗助が皆に言った。
タイミング的に、沢口との会話を遮ったような気がしたが、自分の良いように考えすぎだと頭を切り替える。
沢口に「また」と言って、茉里はその場を後にした。
茉里の背中を見ていた沢口は、視線を感じたのでその方を見る。
その視線の先には、宗助がいた。
沢口をじっと見つめる。
確か茉里は彼の事が好きだったはずだ。
彼も、彼女が?と首をひねるが、なんだか違う気がする。
:09/09/13 17:40
:SH05A3
:☆☆☆
#330 [向日葵]
恋人同士にしては、2人に距離を感じた。
そして茉里も、夏休みに、彼女に会いに行ったときのような雰囲気をまとっていた。
つまり、恋人がいるから、幸せという感じではない。
あの2人は、一体どういう関係なんだ?
沢口はそう思いながら、会場へと入っていった。
―――――――――…………
試合が始まれば、応援にスコアの記録に、水分の用意。
マネージャーとしての仕事に、茉里は忙しく動いていた。
:09/09/13 17:40
:SH05A3
:☆☆☆
#331 [向日葵]
何人かは負けてしまったが、綾香と宗助、そして男子副キャプテンは残っている。
そして沢口も。
決勝までいけば、宗助と沢口はあたることになる。
「私たちの勘違いだったんだね」
試合待ちをしている綾香が言った。
茉里は綾香のたすきを赤から白に変えている途中で、綾香の言葉に首をひねる。
「なにが?」
「先に帰るね」
「笹部くんと付き合ってると思ったら、沢口さんと付き合ってたんだ」
茉里は口を閉ざす。
:09/09/13 17:41
:SH05A3
:☆☆☆
#332 [向日葵]
たすきを袋に入れていると、異変に気づいた綾香が恐る恐る尋ねる。
「違った……?」
「……うん」
また気まずい空気が流れる。
「怒った?」
さりげなく微笑み、茉里は首を横に振る。
「でも正直に言っちゃうと、私は宗助が好きだったよ」
驚いて振り向く綾香だが、茉里の顔を見て状況を悟ったのか、小さく「そう」とだけ言った。
:09/09/13 17:46
:SH05A3
:☆☆☆
#333 [向日葵]
何も言えなくて、また2人は黙る。
会場の体育館に、竹刀や声援が響くのをしばらく聞いていた。
「綾香ちゃんは好きな人いる?」
静かな問いに、綾香は茉里の隣に座り直し、こくりと頷いた。
「片思いだけどね。でも、そばにいれて、何気ない会話が出来たら、それだけでもう満足って言うか、嬉しいの」
少し頬を染めて笑う綾香は、なんて可愛らしいんだろうとぼんやり思う。
こんな風に、綺麗な気持ちで好きでいられたら良かった。
:09/09/13 17:49
:SH05A3
:☆☆☆
#334 [向日葵]
いつだって、独占欲や嫉妬心でいっぱいで、泣きじゃくって、足掻いて……。
私の心は、こんなにも汚い……。
「フラれたくせに、まだ好きだなんて、格好悪い……」
「どうして?」
「見込みないから」
あの日の宗助が、瞼の裏によみがえる。
泣きそうになる。
「無理に諦めなくてもいいんじゃないかな」
竹刀の音の隙間に、綾香の声を聞いた。
体育館に響いている音に比べれば、微かな音量なのに、何故かはっきりと聞こえた。
:09/09/13 17:54
:SH05A3
:☆☆☆
#335 [向日葵]
「茉里ちゃんが一途なのは見てればわかるよ。それを急に諦めろなんて無理な話だよ。それに好きだった人を思い続けるのは、格好悪いの?」
過去の茉里であれば、一途なことは素敵なことで、自分にとって、恋で一番大事だと思った。
でもあの日、宗助にフラれた日、一途の重さや苦しさを知ってしまってから、一途なことが大事なのかわからなくなった。
というか、恋愛自体がなんなのかがわからなくなったのかもしれない。
「でも一番大事なのは、無理に気持ちを封印させないことだと思うよ。気持ちを押し込めるのは、とても苦しいから」
:09/09/13 17:59
:SH05A3
:☆☆☆
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