こいごころ
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#332 [向日葵]
たすきを袋に入れていると、異変に気づいた綾香が恐る恐る尋ねる。
「違った……?」
「……うん」
また気まずい空気が流れる。
「怒った?」
さりげなく微笑み、茉里は首を横に振る。
「でも正直に言っちゃうと、私は宗助が好きだったよ」
驚いて振り向く綾香だが、茉里の顔を見て状況を悟ったのか、小さく「そう」とだけ言った。
:09/09/13 17:46
:SH05A3
:☆☆☆
#333 [向日葵]
何も言えなくて、また2人は黙る。
会場の体育館に、竹刀や声援が響くのをしばらく聞いていた。
「綾香ちゃんは好きな人いる?」
静かな問いに、綾香は茉里の隣に座り直し、こくりと頷いた。
「片思いだけどね。でも、そばにいれて、何気ない会話が出来たら、それだけでもう満足って言うか、嬉しいの」
少し頬を染めて笑う綾香は、なんて可愛らしいんだろうとぼんやり思う。
こんな風に、綺麗な気持ちで好きでいられたら良かった。
:09/09/13 17:49
:SH05A3
:☆☆☆
#334 [向日葵]
いつだって、独占欲や嫉妬心でいっぱいで、泣きじゃくって、足掻いて……。
私の心は、こんなにも汚い……。
「フラれたくせに、まだ好きだなんて、格好悪い……」
「どうして?」
「見込みないから」
あの日の宗助が、瞼の裏によみがえる。
泣きそうになる。
「無理に諦めなくてもいいんじゃないかな」
竹刀の音の隙間に、綾香の声を聞いた。
体育館に響いている音に比べれば、微かな音量なのに、何故かはっきりと聞こえた。
:09/09/13 17:54
:SH05A3
:☆☆☆
#335 [向日葵]
「茉里ちゃんが一途なのは見てればわかるよ。それを急に諦めろなんて無理な話だよ。それに好きだった人を思い続けるのは、格好悪いの?」
過去の茉里であれば、一途なことは素敵なことで、自分にとって、恋で一番大事だと思った。
でもあの日、宗助にフラれた日、一途の重さや苦しさを知ってしまってから、一途なことが大事なのかわからなくなった。
というか、恋愛自体がなんなのかがわからなくなったのかもしれない。
「でも一番大事なのは、無理に気持ちを封印させないことだと思うよ。気持ちを押し込めるのは、とても苦しいから」
:09/09/13 17:59
:SH05A3
:☆☆☆
#336 [向日葵]
そう言って、綾香は面をつけ始めた。
気持ちを押し込める……。
でも気持ちをさらけ出しても苦しいときは、どうしたらいいんだろう。
「あっ!」
綾香が面越しに声をあげる。
「どうしたの?」
「笹部くんが倒れた!」
えっ?!
宗助の試合場を見れば、確かに誰か倒れていた。
そして動かない。
茉里は慌ててそこへと向かう。
:09/09/13 18:02
:SH05A3
:☆☆☆
#337 [向日葵]
>>331「先に帰るね」の言葉は、操作ミスですんで、気にしないでください

:09/09/13 21:04
:SH05A3
:☆☆☆
#338 [向日葵]
「どうしたの?」
宗助を応援していた男子の後輩に茉里は訊いた。
「相手に無理矢理、場外に押し出されたんですが、バランス崩したみたいで、頭打ったみたいなんです」
宗助はやっぱり動かない。
どうやら脳震盪らしく、気を失っている。
防具を取り、宗助は医務室に運ばれることになった。
他の部員は試合がある為、スコアなどを任せて、茉里は宗助についていく事になった。
:09/09/23 16:40
:SH05A3
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#339 [向日葵]
頭の打ち所が悪くなければいいんだけど……。
無意識に、スカートに入れていた、面紐が入っている袋を取り出し、握りしめる。
今日、初めて宗助の顔をまともに見た。
眼鏡を外せば、整った顔がそこにある。
顔を見てしまえば、やっぱり切なくなってしまう。
涙がじわりと、出てきてしまう。
[好きだった人を思い続けるのは、格好悪いことなの?]
:09/09/23 16:40
:SH05A3
:☆☆☆
#340 [向日葵]
綾香の言葉が、頭をよぎる。
今までは、フラれたら「またか」とすぐにではなくても諦めることが出来た。
フラれる理由が一緒だからだ。
でも宗助は違うから。
茉里の中身をちゃんと理解してくれる人なんて、初めてだったから……。
諦められない。……いや、諦めたくない。
依存だとか、往生際が悪いって言われても、これが本当の気持ち。
宗助を諦めるなんて、絶対出来ないんだ……。
:09/09/23 16:41
:SH05A3
:☆☆☆
#341 [向日葵]
叶わない恋なのにと、自分で呆れる。
素晴らしいくらいに馬鹿だ。
この目に、自分が映る日なんてこないのに。
いつの間にか、涙が頬を伝う。
袋を握りしめている手に、ぼたりと雫が落ちる。
すると、その音にまるで気づいたかのように、宗助が目を開けた。
その瞬間を見逃していた茉里は、起きた事に驚き、涙を拭く余裕がなかった。
そして涙を流している茉里に気づいた宗助は、驚いて目を見開く。
「あ……アンタ、なんで泣いて……」
:09/09/23 16:41
:SH05A3
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