こいごころ
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#733 [向日葵]
幼い心に刻まれてしまった深い闇は、色を増していくばかり。
その闇を、どうすれば、薄めてやれる?
あとどれぐらい白を混ぜれば、灰色になる?
そして、白くなる?
茉里も宗助の目をみつめかえす。宗助の目はとても好きだ。
真面目で、けれど柔らかく自分を見守ってくれているから。
けれど今は、まるで脳天からまっすぐ棒をいれられたように突き抜けそうで、怖くて、そらしたくて仕方ない。
「…………っ」
:11/05/14 22:50
:SH05A3
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#734 [向日葵]
何を言えばいい?
宗助は私に、どんな言葉を待っているの?
私に許せというの?
あんなひどいことした奴のことを?
私は許したい?
あの大きな手でまた、頭を撫でてもらいたい?
私は…………。
「わからない…………」
一粒だけ、涙が落ちた。
何が悲しいかわからない。
もしかすれば、嬉しいのかもしれない。
そんな感情すらも、わからなかった。
:11/05/14 22:51
:SH05A3
:☆☆☆
#735 [向日葵]
「本心は、許したいとか……思ってるかもしれない。でもそれはすぐに、大嫌いとか、許したくないとか、そんな思いに潰されて消えていく……。じゃあ許したいと思ったのは、偽善みたいなもので、もしかしたら、それよりひどい、あいつを憐れに思う心からくるものなのかなとか……」
許したい。
許さない。
大好き。
顔もみたくない。
光と影のように、いつも心にその2つはあって、結局自分は、どちらの思いが強いか、わからなくなっていった。
考えれば考えるほど、混乱して、吐きそうになって、考えるのをやめにした。
:11/05/14 22:51
:SH05A3
:☆☆☆
#736 [向日葵]
許したい。
でも許せばあいつばかりが救われる。
許さない。
それが自業自得というものだ。
「いや……。どうして……」
宗助、どうしてそんなこというの……?
近くにあったクッションを急に掴んだ茉里は、宗助に投げつける。
突然のことに戸惑った宗助は、まんまとそのクッションの餌食になった。
けれどそれだけじゃおさまらず、茉里は周りのまだあったクッションやら枕やらを投げてくる。
:11/05/14 22:51
:SH05A3
:☆☆☆
#737 [向日葵]
幸いなのが投げてくるのが柔らかいことだと、次々に飛んでくるものを避けながら宗助は呑気にもそう思った。
「どうして宗助が私の家族関係にそこまで首をつっこむの!!私の家族のことじゃない!!宗助は関係ないじゃない!!」
「ま……っつり……、ちょ……!」
「私があいつを許そうが許すまいがどうでもいいじゃない!!」
「茉里!!」
ようやく茉里の腕を掴んで制止させると、そのまま引っ張って、抱きしめる。
それでも、茉里は暴れた。
「ほっといて!!もうほっといて!!こんな……こんな思いさせないで!!」
宗助は力をいれておさえようとする。
女の子だと思って油断すると、拳で殴ってきそうな勢いだ。
:11/05/14 22:52
:SH05A3
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#738 [向日葵]
茉里は泣いてない。
ただ混乱して、その混乱の中で更に混乱している。
「大嫌い大嫌い大嫌い!!宗助なんか大嫌い!!私は彼女でしょ!?彼女をこんな風にして楽しいの!?」
「落ち着け茉里……っ」
「帰って!!もう2度と私の前に現れないで!!もう宗助なんか……っ」
「落ち着け!!」
その鋭い声に、茉里はようやく動きを止めた。
力は入っているので、いつまた暴れだすかはわからないが、とりあえずは大人しくなった。
そんな茉里の頭を、慎重に撫でながら、宗助は話す。
:11/05/14 22:52
:SH05A3
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#739 [向日葵]
「まず……、ごめん。こんな風になると思わなかった」
まだ力は入っている。
叫んでいたからか、茉里の呼吸も鼓動も、少し早い。
「あと、俺が心配なのは、茉里の家族関係じゃない。茉里、アンタだ」
もちろん、家族だって大切だ。
でも何より、茉里が壊れてしまうことが恐い。
茉里のことはよく知っている。
辛いのに笑ったり、本当に信頼した人にしか本音を吐かないし、弱音も吐かない。
:11/05/14 22:53
:SH05A3
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#740 [向日葵]
体は1つなのに、体の隅々、足の指から毛の先まで、いっぱいを使って、我慢を蓄積する。
だから、もう、そんなことはしてほしくなかった。
「俺は別に、仲直りしろって言ってるんじゃない。ただ、恨むのは、恨まれるよりもきっと辛い」
それならもう、恨むのを諦めてほしかった。
この体が、壊れる前に。
「茉里に少しでも許そうって心があるなら、行動してみればいい。思っても、すぐに別の思いが邪魔するなら、また次にしよう」
そしてそれが積み重なって、疲れて、もう何も考えたくないと言うならば。
:11/05/14 22:53
:SH05A3
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#741 [向日葵]
「俺がちゃんと、茉里の思いをきくから。今みたいになっていい。だから、全て突っぱねてしまうことだけは、やめよう」
例えば同じ空間にいること。
例えば一緒にご飯を食べること。
全てを拒否してしまえば、機会なんてうまれない。
それなら少しだけ機会が作れるようにしよう。
「…………結局、俺も言いたいことまとまってないよ」
ハハハと渇いたように笑うと、茉里の体の力が徐々に抜け始めた。
宗助はホッと静かに安心する。
茉里は力を抜くと、甘えるように、宗助の胸に頭をぐりぐりと押しつけながら埋める。
宗助は、優しく茉里を抱きしめる。
「……さい」
「ん?」
:11/05/28 20:10
:SH05A3
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#742 [向日葵]
「ごめんなさい……。大嫌いとか……色々ひどいこと言った……」
「あー……。おあいこだろ、この場合」
ようやく元に戻った茉里の頭を、優しく撫でる。
撫でる度、いい香りがした。
裕之が言っていた甘い香りとは、このことだろうか。
「好き……」
「ん」
「『ん』……って……。もうちょっとなんかあるでしよ……」
「なんかって……」
:11/05/28 20:10
:SH05A3
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