こいごころ
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#773 [向日葵]
普通に会話出来ることが不思議だった。
そして嬉しかった。
なにも気にせず、ほのぼのと過ごせることが幸せだった。

……とはまだ言ってはやらないけれど。

「茉里」

「なに?」

「抱きしめてもいい?」

「恋人かアンタは」

でもまあ……、いっか……。

茉里は自分から裕之の胸にだきつく。
柔らかく香る匂いがした。
おそらく香水だろう。
この匂いを、茉里は知っていた。

あの頃と、何も変わらないのね、お父さん。

⏰:11/06/11 16:46 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#774 [向日葵]
小さい頃、裕之に抱きつくとき、いつもこの匂いがした。
茉里はこの匂いが大好きで、顔を裕之の顔に押し付けてひそかに堪能していた。

裕之の腕が、優しく茉里の体に巻き付く。

あの日以来、初めて茉里は裕之に、心から「おかえりなさい」と思えた。

ーーーーーーーー…………

夕飯をみんなで済ませ、ひと息ついた頃には時計が10時をさしそうになっていたので、宗助は帰ることとなった。

⏰:11/06/11 16:46 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#775 [向日葵]
「ーーーの前に、宗助、渡したいものがあるから部屋に来てくれる?」

と茉里が言ったので、2人は再び部屋に来たのだが。

「茉里、いつまでそうしてるんだ」

部屋に入った途端、茉里は宗助の背中にぎゅっと抱きついたまま離れない。
3分ほどこのままだ。

何回か呼びかけてはみたものの、茉里はじっとしたままなので、宗助は動けずにいた。

⏰:11/06/11 16:46 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#776 [向日葵]
「色々、ありがとうね」

ぽつりと茉里が言った。

「仲直りする前はわからないとか言ってたくせに、……いや実際わからなかったけどさ、仲直り出来てすごく嬉しいの。それは宗助が、わからないままでいいって、許してくれたからだと思う」

許せない思いが、この黒い気持ちがあったままの自分でもいいと言ってくれたから。
それがなんだかほっとした。

宗助はゆっくりと振り返って、茉里を優しく抱きしめる。

「そっか……」

「だから宗助、キスして」

⏰:11/06/11 16:47 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#777 [向日葵]
宗助はまるでマネキンかのようにそのまま固まる。

「あのままの気持ちでキスなんて出来ないもの。今はもう大丈夫。だからキスして」

「“だから”の意味と理由がまったくわからないんだけど……」

「なによ、宗助はしたくないの?」

「したくないって言ったら嘘になるけど、また前みたいに腰が抜けられても困るんだけど」

⏰:11/06/11 16:47 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#778 [向日葵]
「誰がそこまでしろっつってんのよ!!」

ムードのかけらもない宗助に、茉里はふうとため息をついた。

「もういいです……。はい」

ふらりとしながらドアノブに手をかけようとした時、目の前のドアに骨張った手が見えた。
行く手を阻むようにしたその手は宗助のもので、どうしたのかと振り向くと、宗助の顔が近くにあった。

眼鏡越しの目が、射抜くように茉里を見つめているから、茉里は心臓がどくりとはねた。

「そうす……」

「言っただろ。したくないって言ったら嘘になるって」

⏰:11/06/11 16:47 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#779 [向日葵]
そう言って顔を近づけるものだから、茉里は目が回りそうになりながら宗助の顔を両手で止める。

「ごめん!すみません!すみませんでした!また次の時にお願いします」

「ワガママだなアンタは。しろって言ったりすんなって言ったり……」

呆れたように息をはき、宗助は鞄を持つ。


茉里は苦笑いを浮かべながらそろりと宗助の顔を覗く。
前髪が長いその表情はもともとわかりにくいけれど、空気がなんだかピリピリとしていたから、怒っていると思った。


「怒った……?」

⏰:11/06/11 16:48 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#780 [向日葵]
「怒ってるって言ったらキスすんの?」

「ええっと……」

更に苦い苦笑いを浮かべて、頭をポリポリかく。

「アンタ俺のことなんか勘違いしてない?」

「勘違い?」

「草食男子だとか思ってない?」

「宗助と草食って似てるね」

「ダジャレ言ってる場合か」

そりゃそうだ。

⏰:11/06/11 16:48 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#781 [向日葵]
確かに宗助は、スキンシップは控え目だし、甘い言葉は特別はかない。
たまに真っ赤になってしまうようなことは言うけれど、それは普段の宗助が宗助なだけに、破壊力がすごいのであって。

キスも抱きしめるのも、どちらかと言えば今みたいに茉里からだし、そう思えば宗助は草食男子なのだろう。

肉食でないことは確かだ。

腰が抜けるほどのキスは、そんな草食な宗助の少しぐらいしかないんじゃないかという欲望的なものがたまたま発動したわけで、いつも茉里をそんな風にしたいかといえば違うと茉里は思っている。

⏰:11/06/11 16:48 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#782 [向日葵]
宗助は基本的に真面目だし、たまに肉食男子のようなワイルドさは欲しいとは思うが、そんなまっすぐ気持ちを向けてくれる宗助が好きだから、これと言って不満はない。

「中立な感じかな。どちらかと言えばベジタリアンなほうなだけで」

「草食のことをベジタリアンって言ったの初めてきいたぞ……。まぁやっぱりそう思ってたわけだ」

「違うの?」

きょとんとして、本気で訊く。
大体、肉食な宗助なんか思いつかない。

「本当の草食男子は見たことないから、みんながみんなそうだと断定しないけど、大抵好きな人には肉食に変わるもんなんじゃないか?」

⏰:11/06/11 16:49 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


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