こいごころ
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#763 [向日葵]
最終的には、家族でどうにかしていかなければならないのだから。
何か役に立てればと意気込んだ自分としては、どこか情けないし切ない気もするが、茉里がもう苦しまずにいると思えば、自然と笑みが口元にあらわれる。
「きっとね……」
馨は戸口をみつめながら、そっと微笑み、宗助に話しかける。
「茉里はきっかけが欲しかったんだと思うの。引くに引けなくて、しかもなんで自分が引かなきゃならないんだとか葛藤しながら」
「きっかけもですけど、茉里の……っと、すみません。茉里さんの心に、小さな変化があったから、良い方向へ行ったんだと思います。それに……。……あの、なにか……」
:11/06/05 22:26
:SH05A3
:☆☆☆
#764 [向日葵]
馨がじっとみつめるものだから、宗助はなにか間違ったことを言ってしまったのではないかと不安になった。
馨の目は、全てを見透かしてしまいそうだ。
悪いことを考えていなくても、なんだかソワソワしてしまう。
居心地が悪いわけではない。
いや……悪いのかもしれないが、特別「もうみないでくれ」と思うほどのものではない。
「ああ、ごめんなさいね。私、人をみつめるのくせで。続けて続けて」
:11/06/05 22:27
:SH05A3
:☆☆☆
#765 [向日葵]
人をみつめるのはくせになるものなのか……?
そういえば、茉里もじっとみつめてくる。
「いえ……もうやめときます。偉そうに語るものでもないですし」
「あら、遠慮しなくていいのに。私たちが育てた娘が、どんな風に周りからみられてるか、気になるもの」
「付き合いの短い奴が、17年間手塩にかけた娘をとやかく言われるのは、嫌ではないですか?」
:11/06/05 22:27
:SH05A3
:☆☆☆
#766 [向日葵]
馨はきょとんとして宗助をみつめる。
改めてみると、馨の顔は少女のように幼く、そして綺麗だ。
肌だって、まだスベスベしていそうだし。
馨は目尻を下げると、くすくす笑いだした。
「あなたは真面目ね。そこまで考えなくていいのよ。それにね、例えあなたからみた茉里と私たちからみた茉里が違っていてもいいのよ。中と外では人の顔は違うものだから」
「けれど……」
「あなたがもし茉里を馬鹿だと思っていても、愛情があればいいのよ。愛情もなく、本当に馬鹿にしてたら、例え外の茉里が馬鹿でも、それはカチンとくるわ。それこそ、手塩にかけた娘を、少ししか付き合ったことがないあなたになにがわかるの!ーーってね」
:11/06/05 22:27
:SH05A3
:☆☆☆
#767 [向日葵]
ふわふわと話しているのに芯がある馨の話し方が、宗助はききやすかった。
その姿、考え方をみながら、ききながら、「この人は、茉里の母だなあ」と思った。
馨の、愛情の深さを感じて、そう思った。
ーーーーーーーーー…………
「泣きやめそう?」
しゃっくりが出て、涙と鼻水でぐしゃぐしゃな茉里に、裕之が優しく問い掛ける。
:11/06/05 22:28
:SH05A3
:☆☆☆
#768 [向日葵]
「う……う、ん……っ」
ひどいことを、泣きながらたくさん言ってしまった。
節操なしだとか、大嘘つきだとか、父親失格だとか。
あと馬鹿と大嫌いをとにかく連呼した。
それでも裕之はにこにこしていた。
冷たい態度をとられることと思えば、感情のままにぶつけてきてくれるのが、たまらなく嬉しいとでもいうように。
「許してもらって……いいの……?」
戸惑っているように微笑み、裕之のハンカチで顔を拭っている茉里に問い掛ける。
:11/06/05 22:28
:SH05A3
:☆☆☆
#769 [向日葵]
「なによ不満なわけ!?」
せっかく泣き止みそうなのに、またギャンと叫ぶ。
「せっかくせっかく!私がもういいって言ってんのに、罰の役をまだ私にやらせるつもり!?」
「罰の役?」
「宗助からきいたわよ。私が許さないのが唯一の罰だからそれでいいみたいに言ったらしいじゃない。言っておくけど……っ、私は、そんな役はっ、ごめんよ……っ!!」
涙でまた声が詰まりそうになるのを必死で堪えた。
:11/06/05 22:28
:SH05A3
:☆☆☆
#770 [向日葵]
「アンタへの罰は、アンタが決めるんじゃない、私が、私やお母さんが決めるの」
「じゃあ、僕の罰はなに?」
「苦しみなさい。一生。お母さんや私の優しさ、恵まれた家族に、自責の念で苦しめばいい」
「うん……」
「でもその代わりに、私がアンタを許す。ちゃんと、ね。それでこの話は終わりよ。ご飯だからリビングに来て!」
「行くけど、茉里はそんな顔で笹部くんの前に行っても大丈夫かい?」
鼻も目も真っ赤だろうし、目にいたっては腫れてるだろうし。
宗助が茉里の顔を見れば、眉間にシワがたくさん増えるだろう。
:11/06/05 22:29
:SH05A3
:☆☆☆
#771 [向日葵]
油断すればまだ涙が出そうだ。
何年もためてた鬱憤は、そう簡単にはなくならない。
あんな大声をあげて「うえっうえっ」泣いても足りない。
和解しただろうことは宗助も馨もわかっているだろう。
だから余計、2人の笑顔をみれば、泣いてしまいそうだ。
実際、今顔を思い浮かべただけでも泣きそうなのだ。
「と……とりあえず、水で顔を洗うわ……」
「その方がいいね」
:11/06/05 22:30
:SH05A3
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#772 [向日葵]
:11/06/11 16:45
:SH05A3
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