こいごころ
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#818 [向日葵]
「どうせ、見た目でしょ。性格がこんなだって知ったら別れようなんて輩、これまでに多々いたわ」
「密かにナルシスト発言が入ってるぞ久瀬」
「ってか見る目ないよね。ミュシャは十分可愛くてしっかりした人なのに」
そう言う茉里の手を、ミュシャはギュッと握って、意味深に見つめる。
「私は、そういうアンタがいるだけで十分だわ」
:11/07/09 03:37
:SH05A3
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#819 [向日葵]
どこからか百合の香りがしてきた気がして、宗助は辺りに百合があったか探すようにわざとらしくキョロキョロする。
茉里はそんなミュシャの悪ふざけにのるように、「ミュー……」と呟いて、その手を握りかえす。
「ハイハイ。もうわかったから」
百合の香りをかき消すべく、宗助は二人の間に呆れたようにはいる。
ミュシャと茉里はくすくすと笑った。
「女でも茉里をとられるのは嫌ってわけか……。案外嫉妬深いのねアンタ」
「そういうわけじゃない」
:11/07/09 03:37
:SH05A3
:☆☆☆
#820 [向日葵]
「え!?じゃあ宗助は私なんかどうでもいいってわけー!?」
先程のミュシャのように、茉里は悲しくなさそうに「うわーん」と言って泣き真似をする。
そんな茉里に、ミュシャが「ひっどーい」と言う。
ああ、姦しい……。
宗助は女の子のノリについていけず、ツッコむことさえ出来ずに呆れた。
「えーと……。あ、いたいた!茉里ちゃん!笹部くん!」
:11/07/09 03:37
:SH05A3
:☆☆☆
#821 [向日葵]
呼ばれたので、二人は声のする方を向くと、教室の入口に同じ部活の綾香がいた。
何の用かわからない二人は、ミュシャにひとこと言って綾香の元へ行く。
「どうかした?」
「色紙のお金もらおうと思って」
「色紙?」
二人そろって首を傾げるものだから、綾香は眉を寄せる。
「忘れたの?先輩を送る会するのにみんなで書かなきゃいけないでしよ?」
:11/07/09 03:38
:SH05A3
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#822 [向日葵]
そこで二人はやっと気づいた。
二大行事どころじゃない。
三年生が卒業するということを忘れていた。
そういえば、自由登校になっていた三年生がいないことに今更気づく。
そして、千早先輩の顔を思い出す。
何故かずっといるものだと思っていた。
卒業するのはわかっていても、それは先の、ずっとずっと先のことで、先輩は、あの変わらない笑顔で自分たちのそばにいると思っていた。
:11/07/09 03:38
:SH05A3
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#823 [向日葵]
その先輩がいなくなる。
それは、先輩が引退して、もう一緒に部活が出来なくなるという寂しさではなく、さっきまで隣にいた人が急にいなくなってしまうような、冷たい寂しさだった。
:11/07/09 03:38
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#824 [向日葵]
:11/07/09 03:39
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#825 [向日葵]
[最終話]君とこいごころ
休みの日、茉里はいつも部活をやっている道場前を訪れた。
先輩の卒業の日が近づいてくるにつれ、茉里はなんだか落ち着かない気分でいた。
寂しさはある。
卒業を祝う気持ちもある。
じゃあどうしてそわそわするのだろう。
道場に来たら落ち着く気がして、父の出かけようという誘いをけってまで来たのだが、自分の気持ちは闇の中のまま姿を現してはくれなかった。
:11/07/23 19:10
:SH05A3
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#826 [向日葵]
うーん、冬だから感傷的になっているのかしら。
そう思えば、そう思わなくもない気がしてきた。
なので回れ右をしようとした時、道場の中から竹刀の音がきこえた。
「え?」と思った茉里は、すぐに道場へと向かう。
道場前の下駄箱を確認すれば、見慣れた靴がそこにあった。
閉まっている戸を開ければ、戸のすぐ近くにある練習用の人形に、宗助が打ち込んでいた。
:11/07/23 19:10
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#827 [向日葵]
急に戸が開いて驚いた宗助は、手を振りかぶったままとめて、茉里の方をみる。
宗助は制服のままだ。
「ああ、アンタか……。びっくりした……」
「宗助なにしてんの?」
「アンタこそ」
「質問に質問で返さないで。今は私がきいてるの」
宗助は振りかぶっていた手を下ろして、沢山の竹刀がささってあるところまで行き、竹刀をなおした。
:11/07/23 19:10
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