吸血鬼死重奏
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#75 [渚坂]


チャンスは一度。
誰太君の懐に入ったその一瞬のみ。急かされるようにせわしなく足を動かしながらポケットから護身用の小さな金色の十字架を取り出す。

これは入学した誰もに渡されるただの備品。
吸血鬼の生徒たちには十字架になれるために渡されたようだが、今の私にはどんなものより心強い武器となっていた。

⏰:09/08/05 18:53 📱:F905i 🆔:zDPjXS.w


#76 [渚坂]


感想お待ちしてます(^ω^)

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⏰:09/08/05 18:54 📱:F905i 🆔:zDPjXS.w


#77 [渚坂]


……十字架なんて必要ないと馬鹿にした私が馬鹿でした。まさかこれがこんな風に役立つ日がくるなんて、ね。


私自身の体重を乗せて尖った部分を胸部に振り下ろせば、魔王の動きを鈍らせることぐらいできるだろう。

⏰:09/08/16 23:58 📱:F905i 🆔:Lqbduplk


#78 [渚坂]


魔王との距離はあと数メートル。

じわじわと手を濡らす汗で滑り落ちそうになる十字架を強く握りなおす。


「っ……!」


そして私は勢いよく“三國 誰太”の懐に体当たりしたが、もちろん私ごときの勢いで誰太君がよろめくわけもなく、逆に顎を捕まれ腰を引き寄せられた。端から見れば、まるでキスでもされそうな構図である。


……もう、逃げられない。

でも、これでいい。

⏰:09/08/16 23:59 📱:F905i 🆔:Lqbduplk


#79 [渚坂]


私は手に持っていた十字架を誰太君の体に振り下ろした。
……が、私が腕を振り下ろした瞬間、あろうことか魔王はあれだけ密接に接触していた私の体を突き飛ばしてきた。

ゆっくりと視界が反転する。


「……へっ?」


あれだけ意気込んでいたにも関わらず、気の抜けるような声を発しながら私はしりもちをついてしまった。


⏰:09/08/17 00:00 📱:F905i 🆔:SlJXxl/w


#80 [渚坂]


「ははは!残念だったな。お前の考えなど手に取るように分かるぞ」


魔王の乾いた笑いが響く。
ごめん綾辻。私やっぱり何も出来なかった……。

「くっ……!!」

今はただ魔王を睨みつける。虚勢にしかすぎないのだけど、そうでもしないとこの毒々しい空気にのまれてしまいそうで……。

⏰:09/08/17 00:01 📱:F905i 🆔:SlJXxl/w


#81 [渚坂]


「おお!その挑戦的な顔いいな。俺は威勢のいい女は割と好きだぞ」

「五月蝿いっ!お前は綾辻を……」


私の火照った頬を冷やすように一筋の滴が流れ落ちた。泣いてもどうしようもないことぐらい分かってるけど、一回溢れ出した涙は止め処なく私の頬を濡らす。

⏰:09/08/17 00:01 📱:F905i 🆔:SlJXxl/w


#82 [渚坂]


「さて、邪魔者もいないことだ。思う存分いただくとしよう」

そして私は腕を捕まれ無理やり腰を上げた。先ほどと同じように腰に手を回され、互いの吐息が混じり合うほどに顔を近づけられた。


「や、だ…。やだぁ……!!」


必死で魔王の胸を押し返すも、残りの手で頭を押さえられ、抵抗も虚しく私はあっさりと唇を奪われた。

⏰:09/08/17 00:03 📱:F905i 🆔:SlJXxl/w


#83 [渚坂]


触れ合った“誰太君”の唇は氷のように冷たく、人間味のない無機質な感触がした。

「ふっ……!ん゙ん゙ー!!」

唇を塞がれたまま魔王の腕の中で暴れ回るが、より強い力で頭を押さえつけられ、より深く唇を当てられる。

⏰:09/08/20 18:49 📱:F905i 🆔:ZnOLqX92


#84 [渚坂]

今の吸血鬼は滅多なことがない限り首筋から血を吸ったりはしないと誰かが言っていた。
ということは、こうやって唇を合わせている間にも私の血はどんどん吸い取られている……のだろう。


あ、なんか眠たくなってきた……。雪山で寝てはいけないように、この状況で瞼を落としてしまったら完全に魔王の思うがままである。
しかし、容赦なく押し寄せる睡魔の波に頭が霞んでくる。ね、寝ちゃだ…め……

⏰:09/08/20 18:50 📱:F905i 🆔:ZnOLqX92


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