こちら満腹堂【BL】
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#31 [ひとり]
長谷部さんちの、酒の匂いが充満して換気もされてないこの部屋で。
みんなが横で寝ているこの部屋で。
『みみすま』とやらのエンディングロールが流れるこの部屋で。

あんたが好きなんだ

って。





そんなん

⏰:09/12/09 09:24 📱:F01B 🆔:vju6tYo2


#32 [ひとり]
「言えるわけねぇし・・・」

「ん?」

「いや、とにかく帰るんで離して下さい」

「店長の俺がこんなに言ってんのにお前は帰んのかよ根岸ー」

「帰ります」

「そっけなー」

三田さんは言いながら掴んでいた俺の腕を放るようにして離した。

⏰:09/12/09 09:30 📱:F01B 🆔:vju6tYo2


#33 [ひとり]
「じゃ、お疲れした」

俺が言って後ろの扉へ向かおうとすると

「おぅ、待てコラ」

「なに?」

「なにじゃなくて、送るし」

三田さんはふらふらと立ち上がった

「うぁ゙!!足痺れた気持ち悪りぃー」

それから痺れたらしい足にできるだけ刺激を与えないように、変な歩き方で俺に近付いてきた。

「ホレ、帰るんだろ?」

⏰:09/12/09 09:38 📱:F01B 🆔:vju6tYo2


#34 [ひとり]
「送るってあんた、俺チャリなんだってば」

「だからその辺までだよ、俺も風に当たりてぇし、付き合え」

そして俺より先に部屋を出ていってしまった。

「・・・・・・勝手だなぁ」

仕方なしに後に続く。

⏰:09/12/09 09:42 📱:F01B 🆔:vju6tYo2


#35 [ひとり]
「ちべ(冷)てぇー」

「もう12月っすからね」

「12月かよー1年早えーなオイ」

「その発言、かなりおっさんじみてますよ」

「ほっとけ!!」

俺達はチャリを挟んで横並びで歩いた。
二人分の白い息が、尖った冬の空気に溶けて消える。

⏰:09/12/09 09:48 📱:F01B 🆔:vju6tYo2


#36 [ひとり]
「今年のクリスマスも、このままじゃクソスマスで終わりそうだなー」

「三田さん彼女作んないんすか?」

「お前はっ倒されたいの?作んないんじゃねーよできねんだよ!!」

「ふーん」

「はい出た!!根岸の"ふーん"返し!!!!」

「あんた声デカいって」

⏰:09/12/09 09:55 📱:F01B 🆔:vju6tYo2


#37 [ひとり]
もう既に三時になろうかというところ、寝静まった家々。俺達以外誰もいない道に三田さんの声はよく響いた。

「つぅかあんたそろそろ戻らないと」

「え?」

「いやだって、あんま行くと帰り面倒いでしょ」

「あ〜〜〜・・・・うん」

「・・・・・・・あんた」

「そうだね、帰り道がね、うん」

そっかそっかと頷く姿に、嫌な予感がよぎる。

「あんた俺を"送ってる"ってこと忘れてたでしょ」

現にもう一駅分は歩いてきてしまっている。

⏰:09/12/09 10:17 📱:F01B 🆔:vju6tYo2


#38 [ひとり]
「店長にあんたとか言わないのー」

「話し逸らさないで下さい」

「んー・・・・うん、まぁアレだよ、つまり」

目が右へ左へ泳ぎに泳ぎまくっている。
俺の予感は確信に変わった。

「根岸んち泊め「嫌です」

最後まで言わせずに遮ると、口をものっそい勢いでへの字に曲げた。

⏰:09/12/09 15:06 📱:F01B 🆔:vju6tYo2


#39 [ひとり]
「お前言わせろよそこは」

「だって嫌っすもん」

「送ってやった俺の優しさをそんなぞんざいに蹴っていいのか」

「"やった"っつーかムリと付いてきただけでしょーが」

「んなッッ!!!!元も子もない事言うなよ!!!!」

「事実でしょーが!!!!」

立ち止まり、向き合った俺達は言い合いになる。正面から見た三田さんの顔はもう酔いが引いたようで白っぽく、闇にぼんやり浮かび上がっている。その中にあって、鼻の頭と少し覗いた耳だけが赤い。

⏰:09/12/09 19:43 📱:F01B 🆔:vju6tYo2


#40 [ひとり]
「泊めろ!!」

「嫌です!!」

「泊めろって!!」

「嫌ですってば!!」

頼むから大人しく帰ってくれ。俺はこのもやもやを、密室に二人きりで隠し通せる自信がなかった。

「頑なかっっ!!!!」

「そりゃあんたでしょ!!!!」

⏰:09/12/09 19:51 📱:F01B 🆔:vju6tYo2


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