こちら満腹堂【BL】
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#551 [ひとり]
アキちゃんは寂しそうに微笑った。その表情(カオ)は恋する女の子そのもので、俺は密かにドキッとしてしまった。

「ダメみたいって・・・せっかく近くにいれるんだから、まだ諦めるのは早いんじゃないかな」

無責任な励ましの言葉。でも、それしか思いつかない。恋愛なんて不慣れな俺が、先輩面して言える台詞なんて、たかがしれてた。

「恋人、いるんです、彼」

うわ、俺の無責任な励ましのせいで、アキちゃんに余計な事を言わせちまった・・・俺のバカ。

⏰:10/02/24 19:55 📱:F01B 🆔:R2AVBU6I


#552 [ひとり]
思ったところで時既に。ひっこみ着かないしここで『あ、そうなんだ、ごめん』なんて言ったらこの場の空気が気まずくなるし・・もう、いっそ励まし倒してしまえ────


しまえ─────


しまえ─────


そう、その安易な考えがきっとよくなかった。いや、今更なんだけど・・・・

⏰:10/02/24 19:59 📱:F01B 🆔:R2AVBU6I


#553 [ひとり]
「彼女ね〜そんなん関係ないでしょ、俺なら気にせずガツガツ行くね、恋愛ってさ、もっと自分勝手で自由にしていんじゃねーの?アキちゃんまだ若いしそんな可愛いんだから、今はオフェンスに徹した方がいいって、うん」


我ながら当たり障りのない台詞だ、自分の引き出しの少なさに笑えてくるよまったく。

とは内心思いつつも、全身全霊テンションあげて俺はアキちゃんを励ました。まぁ、その相手の彼女にしたら第三者が無責任なことぬかすんじゃねぇって思うだろうけど。そんな知らない彼女を気遣うより、今は緩く弧を描くように気分が下降しつつある、目の前のアキちゃんが先決だった。

⏰:10/02/24 20:38 📱:F01B 🆔:R2AVBU6I


#554 [ひとり]
しかし俺の全力の励ましはやっぱり薄っぺらすぎてアキちゃんには届かないのか、まるきり反応が返ってこない。床に視線を落としているらしく、髪が顔にかかって表情はわからないが、でも今彼女の中に芽生えているのが、プラスの感情でないことだけは何となくわかった。

あんまりに白々しすぎて、逆に望みがないとか思わせてしまったんだろうか。

「あの、アキちゃ・・」

「知ったような口聞くな!」

⏰:10/02/24 20:39 📱:F01B 🆔:R2AVBU6I


#555 [ひとり]
それはさっきまでの、例えるなら、んー・・小鳥のさえずりのように可憐な声?とは打って変わり、まるで・・・・まるでー・・・あ、うん。まるで改造したマフラーでふかしたような野太さと、腹に響く迫力を湛えた声だった。

そしてそのことに驚いている間に彼女は俺の腰掛けたスツールに歩み寄ると、その脚を華麗に足払い。上に座っていた俺はもちろんそれごと床に倒れたんだけど、彼女はすかさずそんな俺の腹の上に馬乗りになり、躊躇うことなくこれまた華麗な動作で往復の平手打ちを繰り出したんだ。

そして、一気に両の頬が熱くなった。なったけど、それはあくまで熱いってだけで、痛いとかではまったくなくて。つうか痛いより何より今の一連の出来事に驚いてしまってそれどころじゃなかった。

⏰:10/02/24 20:39 📱:F01B 🆔:R2AVBU6I


#556 [ひとり]
確かに知らない。アキちゃんがどんなに相手の男を好きなのかも、好きな相手には恋人がいるって事実にどれくらい打ちのめされているのかも、今さっきチラッと話しを聞いた程度の俺には想像もつかないよ。

だからって、何で俺が八つ当たりみたいに殴られなきゃならないんだろ。

「え、何々、何で?」

思わず零れ出た当然の疑問に答えることなく、アキちゃんは俺の腹の上、ただ肩を小刻みに震わせていたんだ。

⏰:10/02/25 08:59 📱:F01B 🆔:QEi6v1sE


#557 [ひとり]
それがつい数分前の出来事で、耐えるように肩を揺らす彼女に声をかけるのが偲ばれて、なんとなく黙っていたんだけど俺の筋肉が限界を訴え始めたから、どいてくれと頼んだ。するとかえって来た返事がこれだ


──ゆうちゃん返してよ──


さっきの話しの流れから、何で突然自分が殴られたのか。点と点が、一本の線で繋がったような感覚。

そっか、つまり、そゆこと?
え、マヂでか。

⏰:10/02/25 09:22 📱:F01B 🆔:QEi6v1sE


#558 [ひとり]
「何であなたみたいなおじさんなので?ゆうちゃんを変な道に引き込まないで!お願いだから!お願いです!!」

そんな重ね重ねお願いされても、引き込まれたのはどっちか言ったら俺なんだけど・・・

とは流石に言えなくて、苦しそうに寄せたアキちゃんの小さい眉間の皺ばかりに視線をやった。

「私の方が、先だったのに・・先に好きになったのに・・・・」

⏰:10/02/25 09:26 📱:F01B 🆔:QEi6v1sE


#559 [ひとり]
だからさっきも言ったじゃん。後とか先とか、恋愛ってそうゆうんじゃないって。

でも、これもまた俺は飲み込んだ。アキちゃんにしたら確かにポッと出の、しかもおっさんが恋敵になるだなんて、こんなことって想像できるだろうか。否、ムリでしょ。確実ムリだって。キャパ超えるって。

困り果てて何も言えない俺。するとアキちゃんはふーっと深く長い息を吐いた。それから、さっきまで貼り付けていた苦しそうな表情から一転、読めない無表情で俺を見下ろした。てか、マヂいい加減腹が・・・・

⏰:10/02/25 09:43 📱:F01B 🆔:QEi6v1sE


#560 [ひとり]
「三田さん、下の名前は?」

「はい?」

「下の名前ですよ、三田、何?」

「の、望」

「のぞむ・・・じゃ、のんちゃんね」

「え・・・」

「のんちゃん、さっき言ったよね?恋愛は自分勝手で自由なもんだって」

言った。言ったけど、何だかとっても厭な予感がするのはおじさんの気のせいでしょうか?

「・・・言ったけど」

⏰:10/02/25 09:47 📱:F01B 🆔:QEi6v1sE


#561 [ひとり]
「じゃあ、私まだ諦めなくっていいって事ですよね?」

今関係ないんだけど、この敬語とタメ口が混在する感じが根岸とシンクロする。さすが同じ血が混ざってるだけのことはあるな。つぅか、ただ単に俺が二人共に嘗められてるだけとかだったら、なんか凄げぇ凹むけど。

「うん・・・・え!?!?」

「え、じゃないですよ今更、言ったのはのんちゃんなんだから」

それは事実で、何も言い返せない。

⏰:10/02/25 09:51 📱:F01B 🆔:QEi6v1sE


#562 [ひとり]
「私、諦めないから、つぅか、ゆうちゃん振り向かせるから」

「・・・アキちゃん、戦国武将みたい」

「何言ってんの?」

「ほら、あの時代の武将は、合戦前に互いの陣地から名前を名乗って宣戦布告し合ったらしいじゃん」

「だから?」

「今のアキちゃん、それっぽいな〜って」

「喧嘩売ってんですか?」

「めっそうもない」

俺は相変わらず床と仲良くしたまんまの体勢で、両手を顔の脇に挙げてみせた。

⏰:10/02/25 09:56 📱:F01B 🆔:QEi6v1sE


#563 [ひとり]
「とにかく、そうゆうことなんで、明日っから覚悟して下さいね、私本気になったら、フェアとかそんなん関係ないんで」

そこまで言うと満足したのか、ここでようやくアキちゃんは立ち上る。長いこと押し潰されてた腹から急に圧迫感が取り除かれると、今度はなんだかスカスカして落ち着かなかった。

「あ、それと」

「あ?」

「ゆうちゃんにこの事言ったら・・・」

「んな野望なこたぁしねぇよ」

察してこちらが言えば、今度こそ納得して。『お疲れさまでした〜』と彼女は元気な声で挨拶をして退勤を押すと、颯爽と帰って行った。

⏰:10/02/25 10:04 📱:F01B 🆔:QEi6v1sE


#564 [ひとり]
宣戦布告を叩きつけた彼女は、可愛らしい外見とは裏腹。その内は男気に溢れていて気持ちいい程だった。

彼女が消えた満腹堂の店内で独り。ようやく上体を起こした俺は、そこから勢いをつけて一気に立ち上がった。

フェアとか関係ない───

服を叩きながらさっきの言葉を思い返した。それを前もって言ってしまってることが、もう十分にフェアプレイだってこと、彼女は気付いてんのかな?否、きっとわかってないんだろう。

明日から・・・・あっちがその気なら、俺だって本気だ。根岸は、やらない。

俺は闘志を燃やしながら、残りの仕事に取り掛かろうと倒れたスツールに手をかけ、そこで動きを止めた。

⏰:10/02/25 10:13 📱:F01B 🆔:QEi6v1sE


#565 [ひとり]
なんとなく向けた視線の先に、気になって仕方がないものを見つけてしまったから。


「あのヤロウ・・・・」


スツールを立て直してから、俺は溜め息混じりにそこへ向かう、拾い上げたそれは、そうモップ。


そこにはやりかけのままアキちゃんに置き去りにされたモップと、セットのバケツがあった。

⏰:10/02/25 10:17 📱:F01B 🆔:QEi6v1sE


#566 [ひとり]
【休憩】

こんにちは、ひとりです。
第二十七話完結致しました。アキに殴られた三田、可哀想にwWあんまドロドロし過ぎも違う気がして、軽くまとめたら気持ち悪い青春ドラマみたいになっちゃいました。ごめんなさい。もう少し、ドロっとマイルドにさせても良かったですかね。それにしてもこの話し、皆よく手がでますwW

⏰:10/02/25 10:22 📱:F01B 🆔:QEi6v1sE


#567 [ひとり]
【第二十八話/まだ注文とってる途中でしょうがァァア!!!!】


最近気になる、というか、気に食わない事がある。いつからそんな仲になったのか、三田さんとアキの事だ。

ここ数日、気付いたらいつも二人で何か話している。何の話しか、聞いても二人共答えてくれないだろう事は目に見えているので、敢えて聞かないが、突然どうしたのか。挙げ句、アキが三田さんちにまで付いて来たりする。

⏰:10/02/26 21:27 📱:F01B 🆔:ssYbzadU


#568 [ひとり]
いやいや意味がわからないから。俺達の関係を知らないから、そこ空気読めとは流石に言わないが、それにしたって何がどうしたっていうんだ。

現に、今も進行形で二人はじゃれ合っている。

三田さんにしたら俺の従兄弟で職場の新人なら、そりゃ気にかけてやるのが当たり前なんだろうけど。アキの急激な懐きようは異様だ。

もしかしたらアキ、三田さんの事が・・・なんて、いらない考えまで首を擡げる始末だ。

⏰:10/02/26 21:28 📱:F01B 🆔:ssYbzadU


#569 [ひとり]
いけないいけない。今は目の前の仕込みに専念しなければ。気持ちを切り替えようとした刹那、肩にかけられた手。

「あんた今日暇?」

「あ、はい、暇です」

それはノジコさんだった。

「じゃ、今日はべぇやんちで」

「わかりました」

夜の予定が決まった。長谷部さんち、久々な気がする。

「あんた達もね」

⏰:10/02/26 21:28 📱:F01B 🆔:ssYbzadU


#570 [ひとり]
それはこちらに背を向けていた三田さんとアキにかけられたものだったが、小突き合いをしていた二人は気づかない。ノジコさんは声のボリュームを上げた。

「三田!アキ!あんた達も夜はべぇやんちだからね!!わかった!!?」

聞き分けない子供を叱る母のような口調に、ようやく気付いた二人は、やや驚いたような顔の後『はい』と首を縦にふった。

その動作までが示し合わせたかのように似ていて、また余計な考えに飲み込まれそうになる。

そのモヤモヤを切り刻むように、手元のキャベツを千切りにして気を紛らわせた。

⏰:10/02/26 21:29 📱:F01B 🆔:ssYbzadU


#571 [ひとり]
夜、時間はとっくに十二時を超えている。

満腹堂は基本『客が帰るまでが営業時間』というスタイルをとっている。事前によし皆で飲もうなんて決めた日に限って客足の引きが遅いなんてのは、よくある事だ。

「もうすぐ一時なるし」

「とっとと出て〜」

「酒家にあるん?」

皆思い思いに喋りながら店を出ると、もう春一番も訪れた後の今日の日はとても暖かだった。

⏰:10/02/26 21:47 📱:F01B 🆔:ssYbzadU


#572 [のん]
>>1-400
>>400-1000

⏰:10/02/27 08:51 📱:SH01B 🆔:WMPPJQms


#573 [ひとり]
>>572

のんさん

安価ありがとございます(´ω`)

⏰:10/02/28 09:08 📱:F01B 🆔:xlO7LqJU


#574 [ひとり]
>>571

長谷部さんちは駅の反対側で、民家のやや奥まった所にある。バイクを牽いたりチャリをゆっくりジグザグに漕いだり、皆でのたくらと目的地へ向かう。俺の横には津久井がいた。

「その後どうなん?」

「まぁ、ぼちぼち」

片思いしていた例の相手とお付き合いを始めたんだと、津久井にはもちろん報告してあった。

それを自分の事のように喜んでくれた津久井は気を遣ってか、あまりオフの日に誘ってこなくなった。シフトも今月はうまい事ズレていたりして。だからこんな風にゆっくり話すのは、久々の事だ。

⏰:10/02/28 09:09 📱:F01B 🆔:xlO7LqJU


#575 [ひとり]
「照れんなって、順調なんしょ」

まぁ、確かに順調と言えば順調だし、そうでないと言えばそれもまた然りだ。

「・・ぼちぼち」

繰り返したら、突っ込まれた。

「何だよハッキリしないなぁ、何かあった?」

津久井が俺の立場ならどう感じるんだろうって思ったら『実は・・』って切り出しそうになった。でも俺達の前には、三田さんとアキが、ノジコさんと三人で歩いている。聞かれやしないかと思うと、とてもじゃないが言えない。

⏰:10/02/28 09:09 📱:F01B 🆔:xlO7LqJU


#576 [ひとり]
「いや、まぁ、ぼちぼちなんだよ」

「ふーん」

俺の濁した物言いから察してくれたらしい。津久井がそれ以上突っ込んでくる事はなかった。


長谷部さんちに着くと、皆ぞろぞろといつも決まりの畳部屋に向かう。そこは長谷部さんの寝床であると同時に、俺達満腹堂スタッフの宴会場でもあった。

皆慣れた様子で好き勝手座ったり寝転んだり、曲をかけたり。そんな中で一人だけ浮き足立った感の否めない奴が一人。アキだ。

⏰:10/03/01 09:02 📱:F01B 🆔:vbyvgOo6


#577 [ひとり]
目を大きくして辺りを伺っている。確かに誰でも他人の家に初めて上がった時は、大抵興味津々で、色々見てしまうものだ。アキがそうして好奇心の色を貼り付けた目で観察する部屋の中、何かに視線が止まって、動かなくなった。

それから傍に腰を下ろしていた俺に身を寄せて、耳打ちしてくる。

「ねね、ゆうちゃんゆうちゃん」

「ん?」

「あれあれ、あれって卒アルだよねきっと?」

控えめに指差す先には、確かに卒業アルバムらしいかっちりした濃紺の本が一冊。漫画がごちゃごちゃ詰め込まれた本棚の中に、居心地悪そうに収まっていた。

⏰:10/03/01 09:03 📱:F01B 🆔:vbyvgOo6


#578 [ひとり]
「多分そうなんじゃね」

今まで気にした事もなかったが、よくよく見ればそれ以外にもアルバムたらしき本が数冊、漫画と漫画の間にあるのを見つけた。

「あれ見たい!長谷部さん、あそこにあるのアルバムですよね?」

「え、あぁ、そうそう」

いいタイミングでリキュールやサイダーを両手に抱えて部屋に入って来た長谷部さんに、アルバムが見たいとアキがせがんだ。

「別にいいけど、笑わないでね」

⏰:10/03/01 09:04 📱:F01B 🆔:vbyvgOo6


#579 [ひとり]
長谷部さんは快く了承してくれる。それから運び込んだアルコールを数個あるコップに注ぎ分けて、サイダーやら牛乳やらと割りながら

「他の写真も同じ棚にあるから、好きに見ちゃっていいぞ」

と、漫画で飽和状態の棚を顎でさした。

「やった、ありがとうございます」

アキは待ってましたと言わんばかりの素早い動作で嬉しそうに目当ての棚を物色し始める。すると

「ちょ、バカお前それはやめとけって!」

俺の右隣で寛いでいた三田さんが、突然声を張った。

⏰:10/03/03 08:57 📱:F01B 🆔:vBSyG5To


#580 [ひとり]
「なしたよ突然、ビックリすんだろ」

滝さんが面食らった顔で文句をたれた。

「いや、別に卒アルだけでいんじゃねぇかと思って」

三田さんは場を取り繕うように笑って答えたが、もともと隠し事ができない人だ。何か見られなくないものがあるんですと、顔に書いてある。バレバレ。

そしてそれが卒業アルバムではなく、アキがランダムに手にしたアルバムだって事まで容易く理解ができた。

⏰:10/03/03 08:58 📱:F01B 🆔:vBSyG5To


#581 [ひとり]
「アキちゃんいいから気にしないで、好きにみちゃって」

笑顔を貼り付けたままの三田さんはスルーして、アキに話かけた滝さん。この人も三田さんが隠しだい何かがそこにあるんだって確信のもと、面白がっているのがこれまたバレバレだった。

「おいマヂそれは見てもつまんねぇから仕舞ってこいて!」

「のんちゃんにそんな事いう権利ないでしょ、これは長谷部さんのものなんだから!」

「いいから!」

「よくない!」

ここ最近ですっかり板に着いたじゃれ合いがまた始まって、俺はここでもかとうんざりする。

⏰:10/03/03 09:00 📱:F01B 🆔:vBSyG5To


#582 [ひとり]
「いい子だから!それをこっちに渡しなさい!!」

「何その口調キモイんですけどぉ!!」

「キモイ言うな!傷付くだろーがコノヤロー!!」

「別にのんちゃんが傷付いても私痛くも痒くもないし〜」

「つべこべ抜かしてねぇでいいからよこせ!!」

「ちょっと引っ張らないでよ破けるぅ〜!!!!」

周りで皆が笑っている。もうなんか、二人の活き活きした様を見るのが耐えるに難い・・・・頭、冷やそ。思い立ち表へ出ようと、無言で部屋を後にした。

⏰:10/03/03 20:57 📱:F01B 🆔:vBSyG5To


#583 [ひとり]
【休憩】

今晩は、ひとりです。
第二十八話完結です。またちょっとした行き違いが生じ始めたようです。ここからどう展開しようか、いつも行き当たりばったりで書いてるもんで、ひとり自身まだ検討もつきませんが、どうにかうまいこと着地したい!!しゅわっち

⏰:10/03/03 21:15 📱:F01B 🆔:vBSyG5To


#584 [我輩は匿名である]
更新まってます★

⏰:10/03/04 00:10 📱:SH906i 🆔:☆☆☆


#585 [ひとり]
>>574

匿名さん

応援ありがとござます(^ー^)

⏰:10/03/05 09:02 📱:F01B 🆔:ZO9Mc9Sg


#586 [ひとり]
安価ミス(゚Д゚;;)スマソ

⏰:10/03/05 09:03 📱:F01B 🆔:ZO9Mc9Sg


#587 [ひとり]
>>583

【第二十九話/嗚呼素晴らしき青春の軟骨からあげ】


アキちゃん。なんて呼んでいたこないだまで可愛いニューフェイスだった彼女は、ある一夜を境にして俺のライバルになった。

あの宣誓をたてた次の日から、アキちゃ・・もういっか、アキは何かと根岸や俺の周りをマークするようになった。

てか何で俺んちまで着いてくるかね!?いや、目的はもちろんわかってんだけど。手段を選ばないってよか、場所を選ばないんだねお前は。

⏰:10/03/05 09:04 📱:F01B 🆔:ZO9Mc9Sg


#588 [ひとり]
満腹堂でも、俺と根岸が二人で仕込みをしていれば割って入り、今は仕込みが先決だからと少し根岸から離れてやれば、何故か根岸そっちのけで俺の横に来て脇を小突いてきたりする。

もちろんやり返すけど。黙ってやられてやる程、俺は大人じゃねんだよ。

「オイコラ、せっかく今だけ根岸の横譲ってやったんだから、あっち行って来いよ」

「どうせんな事だろーと思った、そういうのムカつくから止めてよね」

「俺は今仕込みで忙しいんだよ」

アキの相手より夜の仕込みだ。餃子の種を皮の上に乗せながら言えば、アキはフンッと鼻を鳴らして、同様に種を包みだした。

根岸の血筋は皆そうなのか、アキも手先が器用で容量がいい。実家じゃ碌に料理なんてしなかったと言う割に、綺麗に"ひだ"を作っては、正確に並べていく。

⏰:10/03/05 09:05 📱:F01B 🆔:ZO9Mc9Sg


#589 [ひとり]
手伝いさえすれば俺もそのほうが捗るので文句は言わない。

「・・・・・・・」

「ねぇ」

「・・・・・・・」

「ねぇっ」

「・・・・・・・」

「ねぇって!」

ただ、脇腹を小突くのを止めてくれたら、尚嬉しいんだけど。

⏰:10/03/05 09:06 📱:F01B 🆔:ZO9Mc9Sg


#590 [ひとり]
「痛いって、そゆことしてる間に手ぇ動かせお前は!」

「動かしてるじゃん!」

唇を尖らせたアキの顔から視線をスライドさせれば、確かに手元は一定のペースで、それこそ機械みたいに正確なリズムで仕事をこなしていた。ぎゃふん。

「ねぇねぇ、私ゆうちゃんと来月デートに行きたいんだけど、シフト合わせてよのんちゃん」

「バカですか、そんなん言われて誰が『うんわかった』なんて言うんだよ、とんだお人好しだなコラ」

「だってのんちゃんお人好しでしょ?」

コイツ、絶対俺のことナメてるよ。

「でしょくない」

「でしょいよ」

「なんだよ『でしょい』って」

「そっちが先に言ったんじゃん」

⏰:10/03/05 09:09 📱:F01B 🆔:ZO9Mc9Sg


#591 [ひとり]
「どっちでもいいけどそんなん俺に頼んだって無駄だぞ」

第一、休みが合ったところで根岸がアキの誘いに乗るかはまた別の話しだ。

「私、誕生日なんだけど、来月」

「・・・知るか」

「誕生日、好きな人に祝って欲しいって思うのは自然な事じゃない?」

「俺に聞くなよ」

「22日」

「は?」

⏰:10/03/06 21:01 📱:F01B 🆔:VOpDoyjQ


#592 [ひとり]
「私の誕生日ね、22日」

「・・・・・・」

相変わらず等間隔にひだを作り続けるアキの細っぽちな指達を凝視した。その一本一本の指先にちょこんとついたオマケのような爪は、うちでバイトを始めたことで、綺麗に短く切りそろえられている。

誰だって、自分の大切に思う相手に生まれた日を祝ってもらえたら嬉しいさ。そりゃそうだろ。根岸とアキはいっても従兄弟で、根岸がまずアキを眼中に入れていない訳だし、今年大学へ入ったばかりの彼女の今の年は18で、すると来月の22で19になる訳で、19ったら十代最後の誕生日ってことになるからつまり・・・

⏰:10/03/06 21:13 📱:F01B 🆔:VOpDoyjQ


#593 [ひとり]
「三田!アキ!あんた達も夜はべぇやんちだからね!!わかった!!?」

突然、考えに没頭していた背にかけられた声に驚いて振り向くと、アキも同じタイミングで体を反転させていて、アキはどうだか知らないが、俺はノジコの有無を言わせぬ迫力に、気付けば素直に頷いていた。

よくわかんねぇけど、今日はべぇやんちらしい。なんか、久々だな。

⏰:10/03/06 21:21 📱:F01B 🆔:VOpDoyjQ


#594 [我輩は匿名である]
あげ

⏰:10/03/08 21:57 📱:SH906i 🆔:☆☆☆


#595 [ひとり]
>>594

匿名さん

あげありがとございます(`∀´)

⏰:10/03/11 21:12 📱:F01B 🆔:bk4/GH5o


#596 [ひとり]
>>593

営業後。やや時間はくるったけど、予定通りべぇやんちに向け俺達は繰り出した。

最近は本当暖ったかくて、嗚呼、春だなぁ〜と。向かう途中の桜の木を見て思う。あ、そいや花見もまだしてねぇよオイ。

花見、してぇな。ワンカップ片手に夜桜。たまらんね。皆でワイワイやろう。あと、二人でも行きたい。夜なら手とか、繋いでもバレないかな。

⏰:10/03/11 21:13 📱:F01B 🆔:bk4/GH5o


#597 [ひとり]
って、俺ってばとんだ乙女ちゃんだな。

一瞬自分で自分にひいた。

不規則にフラフラとべぇやんちへ向かう道中。俺の両サイドにはノジコとアキ。両手に華・・あはは、言ってて悲しくなる。花ってよりも、食虫植物だろコイツらは。

やたら絡んでくるアキと、滝並に俺をからかうノジコに挟まれながら、俺の神経は背中に集まっている。だって後ろには、根岸がいるから。

何喋ってんだろ。

⏰:10/03/11 21:13 📱:F01B 🆔:bk4/GH5o


#598 [ひとり]
根岸の隣には、津久井がいる。二人はうちの店で知り合って以来仲がいい。根岸曰わく、今恋人がいるってことも津久井には言ったらしい。でもまさかそれが俺だとは思うまい、津久井よ。

ここのところは喩えではなくリアルに邪魔のされどおしで、二人でゆっくりもできていない。

楽しそうな声が背中にあたる。俺も、そっちに加わりたい。

なんて思っていたら、べぇやんちの青い瓦屋根が見えてきた。

家に上がったら、流石にアキと距離を置きたい。できれば、さり気なく根岸の横も、キープしたい。

⏰:10/03/11 21:14 📱:F01B 🆔:bk4/GH5o


#599 [ひとり]
靴を脱いで、皆が列を作って一直線に"いつもの部屋"に向かう中、俺は気取られないよう自然に、且つ素早い動きで便所へ向かった。

別に用を足したい訳じゃあない。こうして時間をかせいでアキとは距離をとり、尚且つ先に部屋に腰を落ち着けている根岸の横を、後から行ってさり気なく、ここを強調したい。さり気なく確保するのが目的だった。

根岸本人に『あ、コイツ俺の横に来たかったんだな』なんて悟られるのは癪だから。絶対に"さり気なく"ないといけない。

⏰:10/03/11 21:27 📱:F01B 🆔:bk4/GH5o


#600 [ひとり]
問題は、アキが根岸の横にピッタリとマークしているんじゃあないかってことなんだけど。この可能性はかなり高い。どんくらい高いかって、フランダースの犬を観てその内何回泣くかってくらいの高確率だ。てことはつまり100パーだ。100パーピッタリだ。

でも、例えば俺がスムーズに部屋に入ったとする。

俺部屋入る

根岸の横座る

アキに気づかれる

間に割り込まれる

⏰:10/03/11 21:36 📱:F01B 🆔:bk4/GH5o


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