浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#301 [笹]
「あんた位だよぉ?
此処へ来て手を出さないの」
「ほぉう‥そりゃあいい」
「金払ってるんだから
何したっていいんだのに‥」
"好き者だねぇ"と酒を差し出す
:10/02/01 22:34 :D905i :CnOOZU0s
#302 [笹]
「他の輩と‥
一緒にされちゃあ、困りやすから」
他に理由があると言えば
ないとは言い切れません、ね
好きな女にゃ、
金払って手を出す気はないんでね
:10/02/01 22:35 :D905i :CnOOZU0s
#303 [笹]
「全く‥馬鹿な人」
赤い紅を緩ませて
本当はあどけなさが残る
白いお粉で顔を隠して
金で買われる惨めな女
「あたしが抱いてと言っても
抱かないのかい?」
少し不安そうに顔を覗き込む
そんな顔して
‥何を求めてるんで?
:10/02/01 22:36 :D905i :CnOOZU0s
#304 [笹]
「"外"に出たら‥いくらでも」
「それなら、あんたのは
一生お目にかかれないねぇ」
嫌味ったらしく
目を細めて呟いた
ほう‥貴女も好き者です、か
:10/02/01 22:36 :D905i :CnOOZU0s
#305 [笹]
「まだ返し終わりません、か」
心配そうに見つめれば
"一生だよ"と言う
この遊女には莫大の借金がある
自殺した父親の残したものだ
それを返すために
此処で体を売っていると言う
:10/02/01 22:37 :D905i :CnOOZU0s
#306 [笹]
「一生売ってもね、
終わらないんだよ、好き者さん」
煙管を吹かして
煙を宙に漂わせる
それをぼうっと眺めて
消えるのを見送っていた
:10/02/01 22:37 :D905i :CnOOZU0s
#307 [笹]
「‥体に悪いですぜ?」
「知ってるさ、
これで死ねるなら‥死にたいよ」
馬鹿なことを言う人です、よ
「‥金なら、私が代わりに‥」
すると大口を開けて笑った
他の女なら下品な姿だ
:10/02/01 22:38 :D905i :CnOOZU0s
#308 [笹]
「お節介は、よしとくれよ
あんたにゃ関係ないだろう?」
曇った目の奥が
叫んでいるじゃあ、ないですか
"助けてくれ"と
言ってるっというのに
全く遊女は、演技が上手い
:10/02/01 22:39 :D905i :CnOOZU0s
#309 [笹]
「‥好き者さん?」
最期だと甘えます、か
「壱助と、申しまして」
少し躊躇いやしたか
所詮私は貴女の"顧客"
:10/02/01 22:39 :D905i :CnOOZU0s
#310 [笹]
「壱助さん‥抱いとくれよ」
真っ白な華奢な肩
何人がそこに触れましたか
‥私は、何人目で?
「此処では‥控えます、よ」
此を嫉妬と言うならば
‥受け入れ、ましょうか。
:10/02/01 22:40 :D905i :CnOOZU0s
#311 [笹]
「‥汚いからかい?」
「いえ、」
「‥最期に、
あんたに抱かれたいんだよ」
「今日は、これで‥」
あぁ‥貴女と言う人は
私の気持ちを知ってるくせに‥
涙に弱いと知ってお出でで?
:10/02/01 22:41 :D905i :CnOOZU0s
#312 [笹]
「嫌なんだよ‥
一度でいい‥壱助さん」
やっと子供らしくなって
大きな雫をこぼして
"最期"などと言いますか
「‥もう大人でしょうに、
みっともない、ですよ」
:10/02/01 22:41 :D905i :CnOOZU0s
#313 [笹]
力なく抱き締めると
しがみつくように
着物に爪を立ててただをこねる
「馬鹿です、ね‥全く」
軽く口元に口づけた
:10/02/01 22:42 :D905i :CnOOZU0s
#314 [笹]
色がましい声に埋もれて
聞こえる泣き口説く声
背中に訴える枯れた声
貴女を愛した男は
酷く我が儘で
貴女が愛したであろう男は
‥酷く情けなかった
:10/02/01 22:43 :D905i :CnOOZU0s
#315 [笹]
―‥"籠の鳥"
振り返った時には
何も掴めなかった無力の掌と
煙管と白い着物に染み付いた
美しすぎて恐ろしい赤い花
こんなにも‥
お慕い申し上げていたのに、と
嘆いたって宙に浮いて消えるだけ
:10/02/01 22:43 :D905i :CnOOZU0s
#316 [笹]
:
:
「立てば芍薬、座れば牡丹
‥歩く姿は何とやら」
月光に浮かぶ
目の前の小娘を‥
「うぅ‥壱、助さん」
また愛そうなんて、
「‥程遠い、か」
嗚呼‥わからない男です、よ
:10/02/01 22:44 :D905i :CnOOZU0s
#317 [笹]
:10/02/01 22:48 :D905i :CnOOZU0s
#318 [笹]
消毒だと言っているのに‥
"顔に紅葉を散らす"訳を
教えていただけや、しやせんか
:10/02/02 22:52 :D905i :0yxagqRA
#319 [笹]
:
:
:
「ただいまぁー」
たった五日で
お茶の葉一缶終わっちゃうって
‥飲みすぎでしょうよ
だから今日は
三つも買ってきちゃったっ
安くしてもらえたし
んー‥得した気分
:10/02/02 22:53 :D905i :0yxagqRA
#320 [笹]
これで半月はもつよね
って言っても‥半月だけ
「壱助さーん!!
買ってきましたよーお茶の葉」
「‥」
‥無視ですか。
せっかく買ってきてあげたのにぃ
:10/02/02 22:53 :D905i :0yxagqRA
#321 [笹]
「‥返事くらいしてくださいよぉ」
ぷぅっと頬を膨らませて
横になってる背中に訴えた
‥チュンチュン
何も音がしない
静かな日だなぁー
:10/02/02 22:54 :D905i :0yxagqRA
#322 [笹]
窓の外をじっと眺めて
葉から落ちる雫を目で追った
‥チュンチュン
‥チュンチュン
「‥もっしっかっしってぇ」
:10/02/02 22:55 :D905i :0yxagqRA
#323 [笹]
不思議と緩む頬
着物をきっちり整えたまま
左腕を枕にして
横になってる壱助さんに
そろりと近づいた
「‥寝てる?」
‥って言うか、生きてる?
死んでる?って
不安になる程微動だにしなくて
また肌が白いから余計‥。
:10/02/02 22:55 :D905i :0yxagqRA
#324 [笹]
「おーい」
目の前で手を振ってみたり
いろんな角度から覗いてみたり
‥どの角度から見ても
綺麗だよねぇ、と感心。
「‥ふふ」
怪しい笑みを浮かべる
壱助さんの寝顔なんて
‥初めてみた。
:10/02/02 22:56 :D905i :0yxagqRA
#325 [笹]
‥いつも寝てるのかなぁ
あたしが出かけてる時
こうして、寝溜めしてるのかな
伸びきった首筋
伏せられた長い睫
筋の通った鼻
腰の辺りなんてあたしより‥
「‥きれいですねぇ、本当に」
全く抜け目がないから
憎たらしくなる
:10/02/02 22:56 :D905i :0yxagqRA
#326 [笹]
壱助さんの横に寝転がって
ふうっと息を吐く
天井を眺めて
独特の自然の模様を
ぼうっと目に映してみた
よく耳をそばだてると
微かに壱助さんの寝息が
耳をくすぐった
乱れない規則正しい呼吸
:10/02/02 22:57 :D905i :0yxagqRA
#327 [笹]
「‥消毒」
ふと横に顔を向けると
色っぽい唇に目が行く
消毒‥消毒かぁ
本当に触れただけだったけど
柔らかかったなぁ‥
しかも、あったかかった
「‥むふっ」
:10/02/02 22:58 :D905i :0yxagqRA
#328 [笹]
思わずにやけてしまうほど
あの一瞬は
あたしの脳内を満たして
甘ったるい時間をくれた
「"消毒です、よ"なぁんて‥
そんな消毒がありますかぁ?」
人形のように固まった頬に
語りかける
もちろん返事はない
:10/02/02 22:58 :D905i :0yxagqRA
#329 [笹]
なんとなく
あの簡素な返事が恋しくなる
無関心そうな声も
あるとないとじゃ大違いだ
「‥壱助さん?
拾ってくれて、ありがとお」
面と向かって
言えた試しがないから‥
こんな時に言ってみるのは
ずるいかな、
:10/02/02 22:59 :D905i :0yxagqRA
#330 [笹]
こんなに誰かの隣が
居心地いいなんて‥
知らなかったなぁ
‥生きてて良かった。
:10/02/02 22:59 :D905i :0yxagqRA
#331 [笹]
:
:
「風邪‥引きます、よ」
目を開けると
目の前で小さく丸まる猫一匹
羽織物をかけてやると
微かに声を立てた
『‥拾ってくれて、ありがとお』
‥珍しく素直になるもんで、
起きているとも気付かずに
‥本当に鈍いです、ね
:10/02/02 23:00 :D905i :0yxagqRA
#332 [笹]
寝ている時だけは大人しい
子供同然じゃあ、ないですか
目を細めて前髪をそっと撫でた
するすると指の隙間を抜ける
細くて艶のある具合が
何とも垢抜けていて
子供だと言えないほどに美しい
:10/02/02 23:01 :D905i :0yxagqRA
#333 [笹]
「ちょいと‥
無防備すぎやしやせん、か」
裾の辺りが少しはだけて
女らしい脚が見える
小さく開いた手に指を添えれば
赤ん坊のように
ぎゅっと握りしめられた
:10/02/02 23:02 :D905i :0yxagqRA
#334 [笹]
「本当に‥放っておけやしない」
呆れるように溜め息をつき
緩く笑った
:10/02/02 23:02 :D905i :0yxagqRA
#335 [笹]
:
:
:
あぁ‥寝ちゃった。
壱助さんが起きたら
"寝顔見ちゃったぁーっ"って
からかってやりたかったのに
まぁそんなの
‥からかいの内に
入らないんだろうけど
:10/02/02 23:03 :D905i :0yxagqRA
#336 [笹]
「‥んん」
乱暴に目をこすると
辺りがぼやけて見えた
その時の顔と言ったら
相当酷かったに違いない
「あ‥壱助さん、起きてる」
あたしが買ってきた
新しいお茶の缶が開けられていた
:10/02/02 23:03 :D905i :0yxagqRA
#337 [笹]
いつものように
正座してお茶を啜る姿を見て
夢でないと確信する
「あぁ、やっと」
顔をちらりとも向けず
そう言った
自分にかけてあった
壱助さん香りがする羽織物
‥何だかいい目覚め
:10/02/02 23:04 :D905i :0yxagqRA
#338 [笹]
「夢でも見ました、か」
「夢‥?」
夢なんて見たかな‥
覚えてないや
すると壱助さんは
顔だけこちらに向けて
視線を落とした
:10/02/02 23:04 :D905i :0yxagqRA
#339 [笹]
「"壱助さん、
お慕い申し上げておりました"と
寝言で、言っていたもので‥」
一度瞬きをして
一気に顔に熱が走ったのは
言うまでもない。
"鈍い人です、ね"と
壱助はまた茶を啜った
:10/02/02 23:05 :D905i :0yxagqRA
#340 [笹]
:10/02/02 23:08 :D905i :0yxagqRA
#341 [我輩は匿名である]
:10/02/03 19:07 :W53H :IjHWvVJs
#342 [笹]
鈍い上に‥
喜怒哀楽が激しい、ときた
この上なく‥厄介です、ね
‥まだまだ
子供じゃあ、ないですか
"かわいさ余って憎さ百倍"
そんな言葉がありますが
‥この憎たらしさは、どうだか
:10/02/03 21:25 :D905i :s1isUj7A
#343 [笹]
「どうして‥
あんな事したんですか!?」
「大したこと‥
ないじゃあないです、か」
「大した事ない?
鼻血でちゃったんですよ?!
血ですよ?血!血!血ーっ!」
「鼻血くらい
貴女も、出るでしょう」
「それとこれとは別です!!」
「ほう‥、全く鈍い人だ」
:10/02/03 21:25 :D905i :s1isUj7A
#344 [笹]
:
:
:
「伊代さん!!
どう思いますかぁ?!」
せっせと他の客に
団子やらお茶やら運ぶ
女将に訴えた
「んー‥そうだねぇ、
‥はい、団子お待ちーっ」
:10/02/03 21:26 :D905i :s1isUj7A
#345 [笹]
眉間に深くシワを寄せて
ぷうっと頬を膨らます
香夜は物凄い形相で団子を喰らい
一席空けた横に座る
壱助を睨みつけた
「またお茶ですかぁ?
体緑色になっちゃいますよ」
低い声を横に向けて放つ
しかし変わらぬ壱助の表情
:10/02/03 21:26 :D905i :s1isUj7A
#346 [笹]
「‥五月蝿い猫です、ね」
茶を啜って
"やれ、やれ"と軽くあしらった
「んもーっ!!いらいらするぅ」
キーっと頭をかきむしり
落ち着かない香夜の前に
仕事が落ち着いた伊代が座る
「全く、何したってんだぁい?」
:10/02/03 21:27 :D905i :s1isUj7A
#347 [笹]
はぁとため息を付いて
壱助に視線を落とす伊代
「ちょいと、
わからせてやっただけ、ですよ」
「‥何をだい?」
「壱助さん、人殴ったんです!!」
:10/02/03 21:28 :D905i :s1isUj7A
#348 [笹]
:
:
珍しく壱助さんが
買い出しに付いて来てくれた今朝
だけどちょっと
ご機嫌斜めなようで
野良猫にキッと睨みをきかせ
下駄を乱暴に鳴らしてた
:10/02/03 21:28 :D905i :s1isUj7A
#349 [笹]
「あ‥壱助さん
鯛焼き食べましょうよーっ」
「‥甘味は好みやせん」
「美味しいのにー‥」
「食べたら良いじゃあ、ないですか」
そう言われたから
買いに行ったんです。
買いに行っただけ!ですよ?
それなのに‥
:10/02/03 21:29 :D905i :s1isUj7A
#350 [笹]
「鯛焼き一つくださぁーい」
「毎度ありーっ!!
おや、お嬢ちゃん‥
別嬪さんだねぇ」
鯛焼きを売ってたのは
お兄さんって感じの若い人
威勢がよくて粋な感じ
:10/02/03 21:29 :D905i :s1isUj7A
#351 [笹]
「へ?
や、やだなぁーお兄さんっ
そんなお世辞言っても
一つしか買いませんよー?」
とか言いながら
やっぱり内心嬉しくて
顔を赤く染めてしまったんです
「手厳しいなぁー
‥今夜、どうだい?」
まさか鯛焼き屋さんから
そんな言葉でるとは
思いもしないじゃない?
:10/02/03 21:30 :D905i :s1isUj7A
#352 [笹]
だから驚いて
ついついどもってしまって‥
「おや、
照れた顔もかわいいねぇ」
なんて言われて
"あいよ"って鯛焼きを
わざわざこちら側にきて
渡してくれたわけです
「あ、ありがとうございます」
:10/02/03 21:31 :D905i :s1isUj7A
#353 [笹]
突然背筋が凍りついた
後ろから殺気
カラン‥コロン
壱助さんの下駄の音が
だんだんと大きくなる
:10/02/03 21:31 :D905i :s1isUj7A
#354 [笹]
「あぁ、では‥こっこれで」
「ちょいと、お話くらい‥」
鯛焼き屋さんに
腕を掴まれ引き寄せられた
カラン‥コロン
来る‥来るよぉーっ
鯛焼き屋さん離れてくださ‥
:10/02/03 21:31 :D905i :s1isUj7A
#355 [笹]
「‥鯛焼き屋さん、とやら」
低い声がこちらに向かって
刃を剥いた
「んあ?何だぁ?あんた」
たたたたっ鯛焼き屋さん!!
壱助さんに何て口のきき方っ
:10/02/03 21:32 :D905i :s1isUj7A
#356 [笹]
壱助さんの切れ長の目が
鯛焼き屋さんを捕らえた
「私の妻に‥
触れないで、いただきたい」
あたしを捕らえた手がぱっと離れ
鯛焼き屋さんの目が開ききり
口がだらしなく開いていた
「つつ‥妻?!
そりゃあ‥失敬し‥」
:10/02/03 21:33 :D905i :s1isUj7A
#357 [笹]
―‥ドカッ
壱助さんの拳が
勢いよく鯛焼き屋さんの
顔面に吹っ飛んできた
あたしの足元に倒れ込んだ
彼の鼻から垂れる赤い血
有 り 得 な い !!
:10/02/03 21:34 :D905i :s1isUj7A
#358 [笹]
「壱助さん何てこと‥
‥大丈夫ですか?」
"悪いのは俺の方だ"と
軽く笑って謝る鯛焼き屋さん
「壱助さん!!謝って下さい」
正反対にしれっとした顔で
そんな様子も見せない壱助さん
と言うか
まだいらいらしてる模様
眉間にしわが寄っていた
‥人に当たるなんて酷い
:10/02/03 21:34 :D905i :s1isUj7A
#359 [笹]
:
:
:
結局壱助さんは謝らず
あたしが代わりに謝って
鯛焼きをたくさん買って今
「ねぇ?伊代さん
あたし間違ってないですよね?!」
事情を話せばぶり返す熱
自然と声量も大きくなる
「まぁ、いきなり殴るのは
良くないねぇ‥」
呆れ顔で伊代が壱助を見つめる
:10/02/03 21:35 :D905i :s1isUj7A
#360 [笹]
「‥わからない人です、ね」
「ただ手を握っただけでしょう?
それだけで殴るなんて‥酷い!!」
明らかな温度差に
伊代はくすりと笑った
「手をあげるのは良くないけど‥
全く、わかりやすいねぇあんた」
:10/02/03 21:36 :D905i :s1isUj7A
#361 [笹]
「‥」
「香夜ちゃんも、
わかってやんなよぅ?」
わかってやれって‥
人を殴る気持ちなんて
あたしにはわかんないよ
何だか突然泣きたくなった
:10/02/03 21:36 :D905i :s1isUj7A
#362 [笹]
「妻に手出されちゃ‥
誰だって‥ねぇ?」
伊代が目で壱助に訴えると
"全くです、よ"と茶を啜る
そんなのはもう
耳に入らないくらい香夜はご立腹
:10/02/03 21:37 :D905i :s1isUj7A
#363 [笹]
「こりゃあ‥手強いです、ね」
涙目で伊代に訴える香夜を
横目で見つめて呟いた
「"妻"と言う言葉も
ご存知ないんですか、ね」
‥ぽつり呟き微笑んだ
:10/02/03 21:38 :D905i :s1isUj7A
#364 [笹]
:10/02/03 21:41 :D905i :s1isUj7A
#365 [我輩は匿名である]
:10/02/04 08:23 :W53H :1leDQ1V.
#366 [笹]
私の飼い猫は、
幼い頃に親の愛情を
あまり受けてないようで‥
そうとなれば、親代わり
"蝶よ花よ"と育てましょう、か
:10/02/04 19:11 :D905i :5gVCO4/Q
#367 [笹]
:
:
:
またお茶の葉がなくなり
また買い出し
半月もたなかった‥有り得ない
壱助さんを連れてくると
喧嘩の原因になりかねないので
今日はひとりです。
:10/02/04 19:12 :D905i :5gVCO4/Q
#368 [笹]
「‥。」
一枚のチラシが
お茶屋さんの壁に貼ってあった
ぴらぴらと風になびいて
音をたててるもんだから
ついつい目が行った
「‥わぁ」
胸を時めかせた
:10/02/04 19:12 :D905i :5gVCO4/Q
#369 [笹]
:
:
:
「壱助さぁぁああん!!!」
子供みたいに駆け寄って
息を切らせて叫ぶ
「何、か」
珍しくお茶飲んでない‥
って、もう無いんだった
ぼうっと窓の外を眺めて
枝に止まる雀を
愛おしそうに見つめてる
:10/02/04 19:13 :D905i :5gVCO4/Q
#370 [笹]
‥お茶なくても
機嫌良いときあるんだぁ
新しい発見である。
「壱助さん!!今日の夜お祭り!!」
そう
あのチラシは夏祭りの物で
心惹かれたの
:10/02/04 19:13 :D905i :5gVCO4/Q
#371 [笹]
だって小さな時に
数回しか行ったことないんだもん
‥水飴とか食べたいし
「それが何、か」
早く茶を渡せと言わんばかりに
湯飲みをカタカタ鳴らす
‥依存症ですかあなた
:10/02/04 19:14 :D905i :5gVCO4/Q
#372 [笹]
「一緒に行きましょうよーっ!!」
人が勇気出して誘ってるのに
"何、故"と言う
乙女心わかれーっ!!もうっ
「‥水飴食べたいんですぅ」
やっぱり今日は
ご機嫌がよろしいらしい壱助さん
「ほぉう‥よし、よし」
睫を伏せて口角を上げ
一度だけ頷いた
:10/02/04 19:15 :D905i :5gVCO4/Q
#373 [笹]
:
:
「壱助さん早くぅっ!!」
浴衣の袖をひらひらさせて
下駄が忙しなく踊る
「まぁ、まぁ」
と言って出てきた壱助さんは
目眩がするほど美しすぎた
緩く着こなした浴衣
懐から見える白い肌の面積が
いつもより確実に多い
:10/02/04 19:16 :D905i :5gVCO4/Q
#374 [笹]
こりゃあ‥
落ち着いてあるけない‥
いかんいかん!!
しっかりしろ香夜!!
「水飴は逃げやしやせん、よ」
‥それでもって
今日はかなり穏やかだから
少し調子が狂います
:10/02/04 19:16 :D905i :5gVCO4/Q
#375 [笹]
壱助さんの一歩後ろを歩く
‥いい匂いがする。
提灯のぼんやりした明かりが
壱助さんの首筋を照らして
この世の物とは思えないくらい
本当に綺麗で‥
やっぱり女なんじゃないかとか
疑ってしまう
:10/02/04 19:18 :D905i :5gVCO4/Q
#376 [笹]
お昼の街の賑わいとは
また違う雰囲気で
家族連れや恋仲の人達が
たくさんいた
周りの人たちに
あたしと壱助さんは
‥どう映ってるんだろう
一歩の距離がもどかしくなる
:10/02/04 19:18 :D905i :5gVCO4/Q
#377 [笹]
:
:
「お父さん!!金魚すくい!!」
小さな女の子が
父親の浴衣の袖を引っ張った
「おぉ!懐かしいなぁ
やってみるかい?」
目線を合わせて小さく屈んで
答えた笑顔が羨ましい
思わず足が止まった
お父さん‥か
:10/02/04 19:19 :D905i :5gVCO4/Q
#378 [笹]
‥ギュウ
突然手に冷たい感覚
目をやれば真っ白で綺麗な手
「金魚すくい‥やりたい、かい」
視線を前に向けたまま
壱助さんがそう言った
「‥え?」
今日の壱助さんは
やっぱりどこか可笑しい
:10/02/04 19:19 :D905i :5gVCO4/Q
#379 [笹]
きっとこの握った手も
ぎこちない喋り方も
壱助さんなりの気配りだ
‥何となくそんな気がした
何も言わずに
あたしの答えを待つ
器用そうに見えて
案外不器用なのかもな‥
今日二つめの新しい発見
:10/02/04 19:20 :D905i :5gVCO4/Q
#380 [笹]
:
:
結局金魚すくいやって
やっぱり壱助さん器用で
ひょいひょいすくうもんだから
叔父さんも困り顔
言うまでもなくあたしは
一匹もすくえず‥。
と言うか正直な所
壱助さんの横顔に見とれてた
睫‥また伸びてた気がしました。
:10/02/04 19:21 :D905i :5gVCO4/Q
#381 [笹]
"猫のくせに、
魚一匹も捕まえられぬとは‥
‥やれ、やれ"
クスっと鼻であしらわれ
いつもの調子の壱助さんに
少し緊張がほぐれた
:10/02/04 19:21 :D905i :5gVCO4/Q
#382 [笹]
:
:
:
「あ!水飴だよ壱助さん!」
まるで子供なのだ
壱助さんの手を引いて
人混みを掻き分けて先走る
だけどそれでも構わない
だって水飴なんて久しぶりよ!!
「はい、はい」
水飴を手にしたあたしに
呆れるように返事をした
:10/02/04 19:22 :D905i :5gVCO4/Q
#383 [笹]
水飴をびろんと伸ばして
目を輝かせて巻き取る
キラキラ光るそれを
目を細めて眺める壱助さんと
自然と目があった
「‥食べますか?」
「甘味は‥好みません、で」
あぁそうだったと
気落ちするあたしの手を
また引いて歩く
:10/02/04 19:22 :D905i :5gVCO4/Q
#384 [笹]
親子みたいかな?
それとも恋仲同士?
‥何でもいいのだ
ただ今の時間が心地いいの
:10/02/04 19:23 :D905i :5gVCO4/Q
#385 [笹]
:
:
人が疎らになり
明かりもあまり届かない土手へ
蒸し暑かった人混みで
じわりと汗をかいた背中に
ひんやりした心地いい風が吹く
水飴を銜えて
浴衣を気にしながら腰掛けた
:10/02/04 19:23 :D905i :5gVCO4/Q
#386 [笹]
「壱助さんって‥」
あたしの口は
急に語り出すから冷や汗物
"愛する人いますか?"なんて
聞こうとするのだから
‥本当に恐ろしい
:10/02/04 19:24 :D905i :5gVCO4/Q
#387 [笹]
「人混みは疲れます、ね」
「え?あぁ‥
そ‥そうですねぇーあはは」
壱助さんの声が
久しぶりにはっきり聞こえたから
何だか、どきっとした
:10/02/04 19:25 :D905i :5gVCO4/Q
#388 [笹]
「‥満足ですかい?」
水飴を頬張るあたしを見つめて
壱助さんが呟いた
いやもう
壱助さんの浴衣姿だけで満足‥
なんて言えませんよ。ええ
:10/02/04 19:26 :D905i :5gVCO4/Q
#389 [笹]
「はいっ!!
ありがとうございまし‥」
あれ‥?
突然目の前がひっくり返る
微かに首筋に感じる温もり
:10/02/04 19:26 :D905i :5gVCO4/Q
#390 [笹]
「いぃいっ壱助さん?!」
暗くてよかった‥
絶対今あたし顔赤いよ‥
「たまには、
いいじゃあ‥ないです、か」
甘い声が耳をくすぐる
:10/02/04 19:27 :D905i :5gVCO4/Q
#391 [笹]
手を引き寄せられて
壱助さんの膝を
枕にしてしまったあたし
それだけで心臓が壊れそうなのに
華奢で大きな手が
ふわっとあたしの髪を撫でて
もう‥香夜は死にそうですよ
:10/02/04 19:28 :D905i :5gVCO4/Q
#392 [笹]
「‥香夜さん」
優しく頬を撫でて
ねぇ‥壱助さん
:10/02/04 19:28 :D905i :5gVCO4/Q
#393 [笹]
「―――――‥、」
"あたしもです"と囁いた。
:10/02/04 19:29 :D905i :5gVCO4/Q
#394 [笹]
:10/02/04 19:33 :D905i :5gVCO4/Q
#395 [我輩は匿名である]
:10/02/05 12:42 :W53H :QBCwpTC2
#396 [笹]
最近、猫は‥危なっかしい
"親"としての責任が
問われます故‥
そこら寄り付く輩を
‥退治せねばぁ、なりませんで
"親の意見と茄子の花は
千に一つも仇はない"
:10/02/05 22:14 :D905i :mdMMDFsU
#397 [笹]
―‥鬼も風邪を引くらしい。
また新しい発見である。
と言うわけで
漢方薬でも買ってこようと
また街に出たのです
やっと此処にも馴れてきて
顔も覚えてもらえるようになった
:10/02/05 22:17 :D905i :mdMMDFsU
#398 [笹]
「‥さて、そろそろ戻らなきゃ
壱助さんに‥。」
いつだって死と隣り合わせ
壱助さんは殺しはしないって
言ってはいるけど‥
「爪の間に針を‥」
考えるだけで心臓が痛みますよ
:10/02/05 22:18 :D905i :mdMMDFsU
#399 [笹]
ふうっと深く息を付いて
足早に宿に戻ろうとした
‥足が動かない、あれ?
足がずしりと重い
もしかして死神?迎えに?
:10/02/05 22:18 :D905i :mdMMDFsU
#400 [笹]
思わず引きつる顔を
恐る恐る下に向けると
「‥え?」
そこにはあたしの着物に
ぎゅっとしがみつく子供
着物に顔を埋めたまま離さない
あたし‥子供産んだかしら
なーんて訳の分からんことを
真剣に考えてしまう
:10/02/05 22:19 :D905i :mdMMDFsU
#401 [笹]
「ごるぁぁぁああ!!!」
突然‥
物凄い形相をした男の人が
こちら目掛けて突進してきたのだ
‥いつだって死と隣り合わせ。
「ちょ‥何何なんなのー?!」
あたふたするものの
子供が地蔵のように重く
ぴくりともしない足
:10/02/05 22:20 :D905i :mdMMDFsU
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