浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#301 []
 
「あんた位だよぉ?
此処へ来て手を出さないの」

「ほぉう‥そりゃあいい」


「金払ってるんだから
何したっていいんだのに‥」


"好き者だねぇ"と酒を差し出す

⏰:10/02/01 22:34 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#302 []
 
「他の輩と‥
一緒にされちゃあ、困りやすから」


他に理由があると言えば
ないとは言い切れません、ね



好きな女にゃ、
金払って手を出す気はないんでね

⏰:10/02/01 22:35 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#303 []
 
「全く‥馬鹿な人」

赤い紅を緩ませて
本当はあどけなさが残る
白いお粉で顔を隠して
金で買われる惨めな女


「あたしが抱いてと言っても
抱かないのかい?」

少し不安そうに顔を覗き込む

そんな顔して
‥何を求めてるんで?

⏰:10/02/01 22:36 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#304 []
 
「"外"に出たら‥いくらでも」

「それなら、あんたのは
一生お目にかかれないねぇ」


嫌味ったらしく
目を細めて呟いた



ほう‥貴女も好き者です、か

⏰:10/02/01 22:36 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#305 []
 
「まだ返し終わりません、か」

心配そうに見つめれば
"一生だよ"と言う


この遊女には莫大の借金がある
自殺した父親の残したものだ

それを返すために
此処で体を売っていると言う

⏰:10/02/01 22:37 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#306 []
 
「一生売ってもね、
終わらないんだよ、好き者さん」


煙管を吹かして
煙を宙に漂わせる

それをぼうっと眺めて
消えるのを見送っていた

⏰:10/02/01 22:37 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#307 []
 
「‥体に悪いですぜ?」

「知ってるさ、
これで死ねるなら‥死にたいよ」

馬鹿なことを言う人です、よ

「‥金なら、私が代わりに‥」


すると大口を開けて笑った
他の女なら下品な姿だ

⏰:10/02/01 22:38 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#308 []
 
「お節介は、よしとくれよ
あんたにゃ関係ないだろう?」

曇った目の奥が
叫んでいるじゃあ、ないですか

"助けてくれ"と
言ってるっというのに


全く遊女は、演技が上手い

⏰:10/02/01 22:39 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#309 []
 
「‥好き者さん?」

最期だと甘えます、か

「壱助と、申しまして」



少し躊躇いやしたか
所詮私は貴女の"顧客"

⏰:10/02/01 22:39 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#310 []
 
「壱助さん‥抱いとくれよ」

真っ白な華奢な肩
何人がそこに触れましたか
‥私は、何人目で?


「此処では‥控えます、よ」

此を嫉妬と言うならば
‥受け入れ、ましょうか。

⏰:10/02/01 22:40 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#311 []
 
「‥汚いからかい?」

「いえ、」

「‥最期に、
あんたに抱かれたいんだよ」

「今日は、これで‥」

あぁ‥貴女と言う人は
私の気持ちを知ってるくせに‥

涙に弱いと知ってお出でで?

⏰:10/02/01 22:41 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#312 []
 
「嫌なんだよ‥
一度でいい‥壱助さん」

やっと子供らしくなって
大きな雫をこぼして

"最期"などと言いますか


「‥もう大人でしょうに、
みっともない、ですよ」

⏰:10/02/01 22:41 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#313 []
 
力なく抱き締めると
しがみつくように
着物に爪を立ててただをこねる


「馬鹿です、ね‥全く」


軽く口元に口づけた

⏰:10/02/01 22:42 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#314 []
 
色がましい声に埋もれて
聞こえる泣き口説く声

背中に訴える枯れた声



貴女を愛した男は
酷く我が儘で

貴女が愛したであろう男は
‥酷く情けなかった

⏰:10/02/01 22:43 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#315 []
 
―‥"籠の鳥"
振り返った時には
何も掴めなかった無力の掌と

煙管と白い着物に染み付いた
美しすぎて恐ろしい赤い花



こんなにも‥
お慕い申し上げていたのに、と

嘆いたって宙に浮いて消えるだけ

⏰:10/02/01 22:43 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#316 []



「立てば芍薬、座れば牡丹
‥歩く姿は何とやら」

月光に浮かぶ
目の前の小娘を‥

「うぅ‥壱、助さん」

また愛そうなんて、

「‥程遠い、か」


嗚呼‥わからない男です、よ

⏰:10/02/01 22:44 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#317 [笹]
番外編 【後ろ髪、引かれて】

*。*。*。*。*。*
何となく切ない物が書きたくて
思いついたお話

壱助さんの昔の悲話。
壱助さんの誠実さと
優しさやらなんやらが
伝わったらいいなぁ ◎
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/01 22:48 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#318 []
 
消毒だと言っているのに‥


"顔に紅葉を散らす"訳を




教えていただけや、しやせんか

⏰:10/02/02 22:52 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#319 []




「ただいまぁー」

たった五日で
お茶の葉一缶終わっちゃうって
‥飲みすぎでしょうよ

だから今日は
三つも買ってきちゃったっ
安くしてもらえたし
んー‥得した気分

⏰:10/02/02 22:53 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#320 []
 
これで半月はもつよね
って言っても‥半月だけ

「壱助さーん!!
買ってきましたよーお茶の葉」

「‥」


‥無視ですか。
せっかく買ってきてあげたのにぃ

⏰:10/02/02 22:53 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#321 []
 
「‥返事くらいしてくださいよぉ」


ぷぅっと頬を膨らませて
横になってる背中に訴えた


‥チュンチュン

何も音がしない
静かな日だなぁー

⏰:10/02/02 22:54 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#322 []
 
窓の外をじっと眺めて
葉から落ちる雫を目で追った

‥チュンチュン

‥チュンチュン



「‥もっしっかっしってぇ」

⏰:10/02/02 22:55 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#323 []
 
不思議と緩む頬

着物をきっちり整えたまま
左腕を枕にして
横になってる壱助さんに
そろりと近づいた


「‥寝てる?」

‥って言うか、生きてる?

死んでる?って
不安になる程微動だにしなくて
また肌が白いから余計‥。

⏰:10/02/02 22:55 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#324 []
 
「おーい」

目の前で手を振ってみたり
いろんな角度から覗いてみたり

‥どの角度から見ても
綺麗だよねぇ、と感心。


「‥ふふ」

怪しい笑みを浮かべる
壱助さんの寝顔なんて
‥初めてみた。

⏰:10/02/02 22:56 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#325 []
 
‥いつも寝てるのかなぁ
あたしが出かけてる時
こうして、寝溜めしてるのかな


伸びきった首筋
伏せられた長い睫
筋の通った鼻
腰の辺りなんてあたしより‥

「‥きれいですねぇ、本当に」

全く抜け目がないから
憎たらしくなる

⏰:10/02/02 22:56 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#326 []
 
壱助さんの横に寝転がって
ふうっと息を吐く

天井を眺めて
独特の自然の模様を
ぼうっと目に映してみた


よく耳をそばだてると
微かに壱助さんの寝息が
耳をくすぐった

乱れない規則正しい呼吸

⏰:10/02/02 22:57 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#327 []
 
「‥消毒」

ふと横に顔を向けると
色っぽい唇に目が行く

消毒‥消毒かぁ
本当に触れただけだったけど
柔らかかったなぁ‥
しかも、あったかかった

「‥むふっ」

⏰:10/02/02 22:58 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#328 []
 
思わずにやけてしまうほど
あの一瞬は
あたしの脳内を満たして
甘ったるい時間をくれた


「"消毒です、よ"なぁんて‥
そんな消毒がありますかぁ?」

人形のように固まった頬に
語りかける

もちろん返事はない

⏰:10/02/02 22:58 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#329 []
 
なんとなく
あの簡素な返事が恋しくなる
無関心そうな声も
あるとないとじゃ大違いだ


「‥壱助さん?
拾ってくれて、ありがとお」

面と向かって
言えた試しがないから‥
こんな時に言ってみるのは
ずるいかな、

⏰:10/02/02 22:59 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#330 []
 

こんなに誰かの隣が
居心地いいなんて‥
知らなかったなぁ



‥生きてて良かった。

⏰:10/02/02 22:59 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#331 []



「風邪‥引きます、よ」

目を開けると
目の前で小さく丸まる猫一匹

羽織物をかけてやると
微かに声を立てた


『‥拾ってくれて、ありがとお』

‥珍しく素直になるもんで、
起きているとも気付かずに
‥本当に鈍いです、ね

⏰:10/02/02 23:00 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#332 []
 
寝ている時だけは大人しい
子供同然じゃあ、ないですか


目を細めて前髪をそっと撫でた

するすると指の隙間を抜ける
細くて艶のある具合が
何とも垢抜けていて
子供だと言えないほどに美しい

⏰:10/02/02 23:01 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#333 []
 
「ちょいと‥
無防備すぎやしやせん、か」

裾の辺りが少しはだけて
女らしい脚が見える


小さく開いた手に指を添えれば
赤ん坊のように
ぎゅっと握りしめられた

⏰:10/02/02 23:02 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#334 []
 


「本当に‥放っておけやしない」



呆れるように溜め息をつき
緩く笑った

⏰:10/02/02 23:02 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#335 []




あぁ‥寝ちゃった。


壱助さんが起きたら
"寝顔見ちゃったぁーっ"って
からかってやりたかったのに

まぁそんなの
‥からかいの内に
入らないんだろうけど

⏰:10/02/02 23:03 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#336 []
 
「‥んん」

乱暴に目をこすると
辺りがぼやけて見えた

その時の顔と言ったら
相当酷かったに違いない

「あ‥壱助さん、起きてる」

あたしが買ってきた
新しいお茶の缶が開けられていた

⏰:10/02/02 23:03 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#337 []
 
いつものように
正座してお茶を啜る姿を見て
夢でないと確信する


「あぁ、やっと」

顔をちらりとも向けず
そう言った

自分にかけてあった
壱助さん香りがする羽織物
‥何だかいい目覚め

⏰:10/02/02 23:04 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#338 []
 
「夢でも見ました、か」

「夢‥?」

夢なんて見たかな‥
覚えてないや


すると壱助さんは
顔だけこちらに向けて
視線を落とした

⏰:10/02/02 23:04 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#339 []
 
「"壱助さん、
お慕い申し上げておりました"と
寝言で、言っていたもので‥」



一度瞬きをして
一気に顔に熱が走ったのは
言うまでもない。


"鈍い人です、ね"と
壱助はまた茶を啜った

⏰:10/02/02 23:05 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#340 [笹]
第十一章 【魅せられて】

*。*。*。*。*
寝たふりをしてる壱助さんに
全く気付かずに
あれこれ思い耽って
あれこれ言ってみた香夜ちゃん

寝言なんて言ってないのに
まんまと壱助さんの悪戯に
はまって顔を赤くした香夜ちゃん

素晴らしいまでに鈍いです(笑)
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/02 23:08 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#341 [我輩は匿名である]
>>290-340

⏰:10/02/03 19:07 📱:W53H 🆔:IjHWvVJs


#342 []
 
鈍い上に‥
喜怒哀楽が激しい、ときた

この上なく‥厄介です、ね


‥まだまだ
子供じゃあ、ないですか


"かわいさ余って憎さ百倍"
そんな言葉がありますが

‥この憎たらしさは、どうだか

⏰:10/02/03 21:25 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#343 []
 
「どうして‥
あんな事したんですか!?」

「大したこと‥
ないじゃあないです、か」

「大した事ない?
鼻血でちゃったんですよ?!
血ですよ?血!血!血ーっ!」

「鼻血くらい
貴女も、出るでしょう」

「それとこれとは別です!!」

「ほう‥、全く鈍い人だ」

⏰:10/02/03 21:25 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#344 []




「伊代さん!!
どう思いますかぁ?!」

せっせと他の客に
団子やらお茶やら運ぶ
女将に訴えた


「んー‥そうだねぇ、
‥はい、団子お待ちーっ」

⏰:10/02/03 21:26 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#345 []
 
眉間に深くシワを寄せて
ぷうっと頬を膨らます

香夜は物凄い形相で団子を喰らい
一席空けた横に座る
壱助を睨みつけた


「またお茶ですかぁ?
体緑色になっちゃいますよ」

低い声を横に向けて放つ
しかし変わらぬ壱助の表情

⏰:10/02/03 21:26 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#346 []
 
「‥五月蝿い猫です、ね」

茶を啜って
"やれ、やれ"と軽くあしらった


「んもーっ!!いらいらするぅ」

キーっと頭をかきむしり
落ち着かない香夜の前に
仕事が落ち着いた伊代が座る


「全く、何したってんだぁい?」

⏰:10/02/03 21:27 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#347 []
 
はぁとため息を付いて
壱助に視線を落とす伊代

「ちょいと、
わからせてやっただけ、ですよ」

「‥何をだい?」



「壱助さん、人殴ったんです!!」

⏰:10/02/03 21:28 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#348 []



珍しく壱助さんが
買い出しに付いて来てくれた今朝


だけどちょっと
ご機嫌斜めなようで
野良猫にキッと睨みをきかせ
下駄を乱暴に鳴らしてた

⏰:10/02/03 21:28 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#349 []
 
「あ‥壱助さん
鯛焼き食べましょうよーっ」

「‥甘味は好みやせん」

「美味しいのにー‥」

「食べたら良いじゃあ、ないですか」

そう言われたから
買いに行ったんです。

買いに行っただけ!ですよ?

それなのに‥

⏰:10/02/03 21:29 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#350 []
 
「鯛焼き一つくださぁーい」

「毎度ありーっ!!
おや、お嬢ちゃん‥
別嬪さんだねぇ」


鯛焼きを売ってたのは
お兄さんって感じの若い人
威勢がよくて粋な感じ

⏰:10/02/03 21:29 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#351 []
 
「へ?
や、やだなぁーお兄さんっ
そんなお世辞言っても
一つしか買いませんよー?」

とか言いながら
やっぱり内心嬉しくて
顔を赤く染めてしまったんです

「手厳しいなぁー
‥今夜、どうだい?」

まさか鯛焼き屋さんから
そんな言葉でるとは
思いもしないじゃない?

⏰:10/02/03 21:30 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#352 []
 
だから驚いて
ついついどもってしまって‥

「おや、
照れた顔もかわいいねぇ」

なんて言われて
"あいよ"って鯛焼きを
わざわざこちら側にきて
渡してくれたわけです

「あ、ありがとうございます」

⏰:10/02/03 21:31 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#353 []
 
突然背筋が凍りついた
後ろから殺気


カラン‥コロン


壱助さんの下駄の音が
だんだんと大きくなる

⏰:10/02/03 21:31 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#354 []
 
「あぁ、では‥こっこれで」

「ちょいと、お話くらい‥」

鯛焼き屋さんに
腕を掴まれ引き寄せられた


カラン‥コロン


来る‥来るよぉーっ
鯛焼き屋さん離れてくださ‥

⏰:10/02/03 21:31 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#355 []
 
「‥鯛焼き屋さん、とやら」

低い声がこちらに向かって
刃を剥いた


「んあ?何だぁ?あんた」



たたたたっ鯛焼き屋さん!!
壱助さんに何て口のきき方っ

⏰:10/02/03 21:32 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#356 []
 
壱助さんの切れ長の目が
鯛焼き屋さんを捕らえた

「私の妻に‥
触れないで、いただきたい」


あたしを捕らえた手がぱっと離れ
鯛焼き屋さんの目が開ききり
口がだらしなく開いていた

「つつ‥妻?!
そりゃあ‥失敬し‥」

⏰:10/02/03 21:33 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#357 []
 
―‥ドカッ


壱助さんの拳が
勢いよく鯛焼き屋さんの
顔面に吹っ飛んできた


あたしの足元に倒れ込んだ
彼の鼻から垂れる赤い血


有 り 得 な い !!

⏰:10/02/03 21:34 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#358 []
 
「壱助さん何てこと‥
‥大丈夫ですか?」

"悪いのは俺の方だ"と
軽く笑って謝る鯛焼き屋さん

「壱助さん!!謝って下さい」

正反対にしれっとした顔で
そんな様子も見せない壱助さん

と言うか
まだいらいらしてる模様
眉間にしわが寄っていた

‥人に当たるなんて酷い

⏰:10/02/03 21:34 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#359 []




結局壱助さんは謝らず
あたしが代わりに謝って
鯛焼きをたくさん買って今

「ねぇ?伊代さん
あたし間違ってないですよね?!」

事情を話せばぶり返す熱
自然と声量も大きくなる

「まぁ、いきなり殴るのは
良くないねぇ‥」

呆れ顔で伊代が壱助を見つめる

⏰:10/02/03 21:35 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#360 []
 
「‥わからない人です、ね」

「ただ手を握っただけでしょう?
それだけで殴るなんて‥酷い!!」


明らかな温度差に
伊代はくすりと笑った

「手をあげるのは良くないけど‥
全く、わかりやすいねぇあんた」

⏰:10/02/03 21:36 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#361 []
 
「‥」

「香夜ちゃんも、
わかってやんなよぅ?」


わかってやれって‥
人を殴る気持ちなんて
あたしにはわかんないよ

何だか突然泣きたくなった

⏰:10/02/03 21:36 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#362 []
 
「妻に手出されちゃ‥
誰だって‥ねぇ?」

伊代が目で壱助に訴えると
"全くです、よ"と茶を啜る



そんなのはもう
耳に入らないくらい香夜はご立腹

⏰:10/02/03 21:37 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#363 []
 
「こりゃあ‥手強いです、ね」

涙目で伊代に訴える香夜を
横目で見つめて呟いた



「"妻"と言う言葉も
ご存知ないんですか、ね」

‥ぽつり呟き微笑んだ

⏰:10/02/03 21:38 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#364 [笹]
第十二章 【訴えて】

*。*。*。*。*
しょうもない痴話喧嘩
と言うか喧嘩にもならないくらい
温度差が激しいw

2人の性格の差が
はっきり表れた気がします

伊代さん大人っす

ネタ切れそうですw
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/03 21:41 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#365 [我輩は匿名である]
>>340-370

⏰:10/02/04 08:23 📱:W53H 🆔:1leDQ1V.


#366 []
 
私の飼い猫は、
幼い頃に親の愛情を
あまり受けてないようで‥

そうとなれば、親代わり



"蝶よ花よ"と育てましょう、か

⏰:10/02/04 19:11 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#367 []




またお茶の葉がなくなり
また買い出し
半月もたなかった‥有り得ない


壱助さんを連れてくると
喧嘩の原因になりかねないので
今日はひとりです。

⏰:10/02/04 19:12 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#368 []
 
「‥。」

一枚のチラシが
お茶屋さんの壁に貼ってあった
ぴらぴらと風になびいて
音をたててるもんだから
ついつい目が行った

「‥わぁ」

胸を時めかせた

⏰:10/02/04 19:12 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#369 []




「壱助さぁぁああん!!!」

子供みたいに駆け寄って
息を切らせて叫ぶ

「何、か」

珍しくお茶飲んでない‥
って、もう無いんだった

ぼうっと窓の外を眺めて
枝に止まる雀を
愛おしそうに見つめてる

⏰:10/02/04 19:13 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#370 []
 
‥お茶なくても
機嫌良いときあるんだぁ

新しい発見である。


「壱助さん!!今日の夜お祭り!!」

そう
あのチラシは夏祭りの物で
心惹かれたの

⏰:10/02/04 19:13 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#371 []
 
だって小さな時に
数回しか行ったことないんだもん
‥水飴とか食べたいし


「それが何、か」

早く茶を渡せと言わんばかりに
湯飲みをカタカタ鳴らす

‥依存症ですかあなた

⏰:10/02/04 19:14 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#372 []
 
「一緒に行きましょうよーっ!!」

人が勇気出して誘ってるのに
"何、故"と言う

乙女心わかれーっ!!もうっ

「‥水飴食べたいんですぅ」

やっぱり今日は
ご機嫌がよろしいらしい壱助さん

「ほぉう‥よし、よし」

睫を伏せて口角を上げ
一度だけ頷いた

⏰:10/02/04 19:15 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#373 []



「壱助さん早くぅっ!!」

浴衣の袖をひらひらさせて
下駄が忙しなく踊る


「まぁ、まぁ」

と言って出てきた壱助さんは
目眩がするほど美しすぎた

緩く着こなした浴衣
懐から見える白い肌の面積が
いつもより確実に多い

⏰:10/02/04 19:16 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#374 []
 
こりゃあ‥
落ち着いてあるけない‥
いかんいかん!!
しっかりしろ香夜!!


「水飴は逃げやしやせん、よ」


‥それでもって
今日はかなり穏やかだから
少し調子が狂います

⏰:10/02/04 19:16 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#375 []
 
壱助さんの一歩後ろを歩く
‥いい匂いがする。

提灯のぼんやりした明かりが
壱助さんの首筋を照らして
この世の物とは思えないくらい

本当に綺麗で‥

やっぱり女なんじゃないかとか
疑ってしまう

⏰:10/02/04 19:18 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#376 []
 
お昼の街の賑わいとは
また違う雰囲気で
家族連れや恋仲の人達が
たくさんいた

周りの人たちに
あたしと壱助さんは
‥どう映ってるんだろう


一歩の距離がもどかしくなる

⏰:10/02/04 19:18 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#377 []



「お父さん!!金魚すくい!!」

小さな女の子が
父親の浴衣の袖を引っ張った

「おぉ!懐かしいなぁ
やってみるかい?」

目線を合わせて小さく屈んで
答えた笑顔が羨ましい


思わず足が止まった
お父さん‥か

⏰:10/02/04 19:19 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#378 []
 
‥ギュウ

突然手に冷たい感覚
目をやれば真っ白で綺麗な手

「金魚すくい‥やりたい、かい」

視線を前に向けたまま
壱助さんがそう言った

「‥え?」

今日の壱助さんは
やっぱりどこか可笑しい

⏰:10/02/04 19:19 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#379 []
 
きっとこの握った手も
ぎこちない喋り方も
壱助さんなりの気配りだ
‥何となくそんな気がした


何も言わずに
あたしの答えを待つ

器用そうに見えて
案外不器用なのかもな‥


今日二つめの新しい発見

⏰:10/02/04 19:20 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#380 []



結局金魚すくいやって
やっぱり壱助さん器用で
ひょいひょいすくうもんだから
叔父さんも困り顔


言うまでもなくあたしは
一匹もすくえず‥。

と言うか正直な所
壱助さんの横顔に見とれてた
睫‥また伸びてた気がしました。

⏰:10/02/04 19:21 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#381 []
 
"猫のくせに、
魚一匹も捕まえられぬとは‥
‥やれ、やれ"


クスっと鼻であしらわれ
いつもの調子の壱助さんに
少し緊張がほぐれた

⏰:10/02/04 19:21 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#382 []




「あ!水飴だよ壱助さん!」

まるで子供なのだ
壱助さんの手を引いて
人混みを掻き分けて先走る

だけどそれでも構わない
だって水飴なんて久しぶりよ!!

「はい、はい」

水飴を手にしたあたしに
呆れるように返事をした

⏰:10/02/04 19:22 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#383 []
 
水飴をびろんと伸ばして
目を輝かせて巻き取る

キラキラ光るそれを
目を細めて眺める壱助さんと
自然と目があった

「‥食べますか?」

「甘味は‥好みません、で」

あぁそうだったと
気落ちするあたしの手を
また引いて歩く

⏰:10/02/04 19:22 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#384 []
 

親子みたいかな?

それとも恋仲同士?



‥何でもいいのだ
ただ今の時間が心地いいの

⏰:10/02/04 19:23 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#385 []



人が疎らになり
明かりもあまり届かない土手へ

蒸し暑かった人混みで
じわりと汗をかいた背中に
ひんやりした心地いい風が吹く


水飴を銜えて
浴衣を気にしながら腰掛けた

⏰:10/02/04 19:23 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#386 []
 
「壱助さんって‥」

あたしの口は
急に語り出すから冷や汗物


"愛する人いますか?"なんて
聞こうとするのだから
‥本当に恐ろしい

⏰:10/02/04 19:24 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#387 []
 
「人混みは疲れます、ね」

「え?あぁ‥
そ‥そうですねぇーあはは」


壱助さんの声が
久しぶりにはっきり聞こえたから
何だか、どきっとした

⏰:10/02/04 19:25 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#388 []
 
「‥満足ですかい?」


水飴を頬張るあたしを見つめて
壱助さんが呟いた


いやもう
壱助さんの浴衣姿だけで満足‥
なんて言えませんよ。ええ

⏰:10/02/04 19:26 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#389 []
 
「はいっ!!
ありがとうございまし‥」


あれ‥?


突然目の前がひっくり返る
微かに首筋に感じる温もり

⏰:10/02/04 19:26 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#390 []
 
「いぃいっ壱助さん?!」

暗くてよかった‥
絶対今あたし顔赤いよ‥


「たまには、
いいじゃあ‥ないです、か」

甘い声が耳をくすぐる

⏰:10/02/04 19:27 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#391 []
 
手を引き寄せられて
壱助さんの膝を
枕にしてしまったあたし


それだけで心臓が壊れそうなのに
華奢で大きな手が
ふわっとあたしの髪を撫でて


もう‥香夜は死にそうですよ

⏰:10/02/04 19:28 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#392 []
 
「‥香夜さん」



優しく頬を撫でて


ねぇ‥壱助さん

⏰:10/02/04 19:28 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#393 []
「―――――‥、」




"あたしもです"と囁いた。

⏰:10/02/04 19:29 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#394 [笹]
番外編 【微笑んで】

*。*。*。*。*
甘甘リクに応えようと
頑張ってみました番外編

しかし会話少なすぎるw
しかも甘くないよーっ ←

すみません
出直してきます(´;ω;`)w

最後の言葉は
ご想像にお任せします //
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/04 19:33 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#395 [我輩は匿名である]
>>360-390

⏰:10/02/05 12:42 📱:W53H 🆔:QBCwpTC2


#396 []
 
最近、猫は‥危なっかしい



"親"としての責任が
問われます故‥


そこら寄り付く輩を
‥退治せねばぁ、なりませんで


"親の意見と茄子の花は
千に一つも仇はない"

⏰:10/02/05 22:14 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#397 []
―‥鬼も風邪を引くらしい。

また新しい発見である。


と言うわけで
漢方薬でも買ってこようと
また街に出たのです

やっと此処にも馴れてきて
顔も覚えてもらえるようになった

⏰:10/02/05 22:17 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#398 []
 
「‥さて、そろそろ戻らなきゃ
壱助さんに‥。」

いつだって死と隣り合わせ
壱助さんは殺しはしないって
言ってはいるけど‥

「爪の間に針を‥」


考えるだけで心臓が痛みますよ

⏰:10/02/05 22:18 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#399 []
 
ふうっと深く息を付いて
足早に宿に戻ろうとした


‥足が動かない、あれ?



足がずしりと重い
もしかして死神?迎えに?

⏰:10/02/05 22:18 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#400 []
 
思わず引きつる顔を
恐る恐る下に向けると


「‥え?」


そこにはあたしの着物に
ぎゅっとしがみつく子供
着物に顔を埋めたまま離さない

あたし‥子供産んだかしら
なーんて訳の分からんことを
真剣に考えてしまう

⏰:10/02/05 22:19 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#401 []
 
「ごるぁぁぁああ!!!」

突然‥
物凄い形相をした男の人が
こちら目掛けて突進してきたのだ


‥いつだって死と隣り合わせ。

「ちょ‥何何なんなのー?!」

あたふたするものの
子供が地蔵のように重く
ぴくりともしない足

⏰:10/02/05 22:20 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


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