記憶を売る本屋さん
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#151 [我輩は匿名である]
「要くん…」

「俺、来週も待ってるよ!今日と同じ時間、ここで待ってるから!

今日は緊張して上手く喋れなかったけど、今度はもっといっぱい話そう!」

要は勢いが出てきたのか、言いたい事を言い切った。

晶も安心したように笑顔を見せる。

「うん!じゃあまた来週会おうね!」

そう言って、晶は大きく手を振る。

要も同じように振り返す。

そして、晶が帰っていくまで、ずっとそこでたたずんでいた。

⏰:10/03/24 11:07 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#152 [我輩は匿名である]
直人はじっと本を見つめながら、さっきの事を考えていた。

「…あいつが困って、そん時に俺が叫んだら、あいつも同じように叫ぶのか?」

晶を呼び止める時。晶に気持ちを伝える時。

直人が叫ぶと同時に、要も同じように叫ぶ。

若干の口調の違いもあるが、ほぼ変わらない。

直人は複雑な気持ちで本を閉じ、部屋を出る。

一気にいろんな事がなだれ込んできた1日だった。

⏰:10/03/24 11:08 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#153 [我輩は匿名である]
その気持ちは、月曜になっても晴れなかった。

直人は浮かない顔で学校への道を歩く。

うっとうしい事に、今日は雨。

「水無月くん」

誰かが話し掛けてきた。

どっかで聞いた声だな。

そう思って振り向くと、見た事がある女子がすぐ後ろに走ってきていた。

「おはよう」

「…えー…」

名前が出て来ない。

⏰:10/03/24 11:09 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#154 [我輩は匿名である]
「…ごめん、誰だっけ」

「大橋よ!

お!お!は!し!れ!な!」

「朝からうるせぇよ…」

耳元で大声で名乗られて、直人は煩わしそうに顔を背ける。

「水無月くん、嘘ついたでしょ」

「何の話?」

「あれ」

怜奈は前方を指さす。

彼らの20メートル程先を、薫と響子が一緒に歩いている。

⏰:10/03/24 11:10 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#155 [我輩は匿名である]
「(あらー…)」

「あの人、彼女でしょ」

ずけずけ聞いてくる怜奈を、直人は迷惑そうに見下ろす。

「何でそこまで聞くんだよ?お前、探偵?」

「探偵だったらもっと上手くやるわよ。

友達が好きみたいって、この間言ったでしょ?」

「友達思いなんだねぇ」

適当に返事をしながら、直人もちょっと気になって、前の2人の様子を伺う。

⏰:10/03/24 11:53 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#156 [我輩は匿名である]
「今日は眼鏡なんだね」

見られているとも知らずに、響子は薫に言う。

「雨の日は視力落ちるからな」

薫は珍しく、茶色いフレームの眼鏡をかけていた。

「目悪いの?」

「そこまで悪くないよ。0.8ぐらい。だからあんまり度も入ってない」

薫はそう言って、響子に眼鏡を貸す。

⏰:10/03/24 19:01 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#157 [我輩は匿名である]
響子は試しにそれをかけてみるが、合わないのか、すぐに薫に返した。

「きつい!」

「ははっ。香月は目良いんだな」

「1.2あるからね」

「へぇ、やるじゃん」

薫は眼鏡をかけ直しながら感心する。

⏰:10/03/24 19:02 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#158 [我輩は匿名である]
「…何かわかんねーけど、いちゃついてるみたいだな」

朝っぱらから見せ付けてくれる。

直人は呆れたようにあくびをする。

「…ふぅん…」

怜奈は何か考えるように、冷めた目で2人を見ている。

直人はそれに気付かなかった。

⏰:10/03/24 19:02 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#159 [我輩は匿名である]
「いつも一緒に来てんのか?」

直人の思いがけない問いに、焼きそばパンにかじりついたまま、薫は目を丸くする。

「はぎ?ほふげん(何?突然)」

「未来の彼女。今日一緒に来てただろ?」

「…はんげひっけんは?(何で知ってんだ?)」

「…何言ってるかは大体わかるけど、とりあえず飲み込んでから喋れ」

直人に言われて、薫は口に入っている分のパンを、適当に噛み砕いて飲み込む。

詰まりそうになったのか、その上から更にペットボトルのお茶を流し込む。

⏰:10/03/24 19:05 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#160 [我輩は匿名である]
「今日はたまたま、見つけたから一緒に来ただけ。大体何で知ってんだよ?」

「今日、俺達ちょっと後ろ歩いてたから」

「ちょっと待て、俺“達”って誰だ」

「大橋怜奈。何か横にいたから」

あいつか。薫も朝の直人同様、めんどくさそうな顔をする。

「…うっとうしいな…。お前は相手にしてねぇよ…」

「お前を好きなの、あいつの友達だぞ?」

直人は間違いを正すように言い直す。

「…どうだかな…」

薫は何か考えながら、ペットボトルを片手に、じっと怜奈を見ていた。

⏰:10/03/24 19:06 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#161 [我輩は匿名である]
「今日は何もなしか」

本を閉じて、直人はため息をつき、

いつものようにベッドに寝転び、窓から満月を見上げる。

また次の日曜日までお預けかな。

「(気になるのになぁ…)」

晶は今ごろ、どうしているのだろう。

また美代に手を焼いていないだろうか。

ボーッと考えた後、直人はハッとした。

「俺、何深く考えてんだ…?」

まるで要じゃないか。

直人は机に肘をつき、頭を抱えた。

⏰:10/03/24 23:45 📱:N08A3 🆔:vv1d3OC.


#162 [我輩は匿名である]
おもしろいです
続き待ってます

⏰:10/03/26 16:31 📱:W61SA 🆔:my01452g


#163 [我輩は匿名である]
>>1-50
>>51-100
>>101-160

⏰:10/03/28 00:17 📱:W53H 🆔:TqXP9qoY


#164 [我輩は匿名である]
>>161さん

読んでいただいてありがとうございます
でかけていて更新出来ませんでした
ちょっとずつ進めますね

>>162さん
見やすくしていただいて、ありがとうございます

⏰:10/03/28 14:54 📱:N08A3 🆔:iQI8B8Nc


#165 [我輩は匿名である]
すみません、レスがずれました

上は>>162さんへ、163さんへ、です

⏰:10/03/28 14:57 📱:N08A3 🆔:iQI8B8Nc


#166 [我輩は匿名である]
夢中でいっきに読みました!面白いです応援しています

⏰:10/03/28 17:04 📱:L01A 🆔:HX1T/pzw


#167 [我輩は匿名である]
なんかレスするごとに大変な事に…(´Д`)

>>166さん
長いのに一気に読んでいただいてありがとうございます
頑張るので、ぼちぼち読んで下さい

⏰:10/03/28 20:15 📱:N08A3 🆔:iQI8B8Nc


#168 [我輩は匿名である]
一方、薫はベッドの上で、何かを深く考えているような顔で寝転がっていた。

不意に、枕元に置いていた携帯電話のバイブが鳴る。

手にとって見てみると、響子から電話がかかってきている。

「もしもし」

「あ、月城くん?ごめんね、いきなり電話しちゃって。今…時間大丈夫?」

「あぁ、大丈夫。…どうかした?」

「うん…」

響子は少し悩んでいるようだった。

その声を聞いて、薫も不安を抱く。

⏰:10/03/28 20:17 📱:N08A3 🆔:iQI8B8Nc


#169 [我輩は匿名である]
「この間、私に『霜月優也って聞いたことないか』って聞いたでしょ?」

「…あぁ、聞いた」

薫の表情が変わる。

「…何か知ってるのか?」

「…気のせいだと思ってたんだけどね」

響子が話しだす。

「この間から私、たまに頭痛くなるでしょ?その頭痛くなった日に、寝ると必ず夢を見るようになって…」

「どんな夢?」

響子が少し言葉を区切ったのを感じ、薫が尋ねる。

⏰:10/03/28 20:18 📱:N08A3 🆔:iQI8B8Nc


#170 [我輩は匿名である]
「…1番最初は、私がどこかで洗濯物を干してたら、誰かが手伝ってくれた。…たったそれだけ。

そして次は、病院のような所でもう1回会って、名前を教えてもらうの。

その時教えてもらった名前が、“霜月優也”だった。名刺に書いてあったから、間違いないと思う。

そして、今日昼寝してたらまた見たの。今日は、私とその人が食事に行ってた。

その人が誘ってくれたんだと思う。…今まで見たのは、そこまで」

薫はまた「そうか」とだけ返事をした。

“そこまで”という事は、その続きがある事をわかっているのかもしれない。

そう思った。

⏰:10/03/29 11:40 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#171 [我輩は匿名である]
「でもね、1つだけ、変なのよ」

響子が補足する。

「何が?」

「その人の顔だけ、どうしても思い出せないんだ」

その言葉に、薫は眉をひそめる。

「…全くか?」

「…うん、全然。それに、私の名前も、香月響子じゃなかった。…何だったかな…」

「…長谷部 今日子」

薫は静かに呟く。

響子もそれを聞き逃さなかった。

⏰:10/03/29 11:41 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#172 [我輩は匿名である]
「…そう、そんな名前だった」

「…やっぱりそうか」

薫はそれだけ言ってしばらく黙り込んだ。

「(…やっぱり…今日子だったんだな…)」

両方の目尻から、大粒の涙がこぼれ落ちる。

「…月城くん?」

響子の声を聞いて、薫は肘でゴシゴシと涙を吹く。

「ん?」

「月城くん…何か知ってるよね?…私の夢の事とか」

響子に聞かれて、薫はしばらく考えてから「あぁ、知ってる」と答えた。

⏰:10/03/29 11:50 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#173 [我輩は匿名である]
「…教えて。あの夢は一体何?“私”はどうなるの?」

響子は薫に尋ねる。

彼女も気になっているのだろう。

薫はしばらく考え込む。

そして答えた。

「…教える事は出来ない」と。

「俺の口から教えれる事は、俺が知ってる事だけだ。

長谷部今日子が見た事、耳にした事、感じた事…それは夢を辿っていくしか知る事が出来ない。

…だから、本当に全てを知りたいなら、俺から話すべきではないと思う」

⏰:10/03/29 14:26 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#174 [我輩は匿名である]
言い終わってから、薫は呆れたように笑う。

薫は本当は、全て話したくてしかたがなかった。

自分が霜月優也だという事、霜月優也と長谷部今日子は夫婦だった事…他にもたくさんある。

全て話せば、どれだけ気が楽になるだろう。

それだけじゃない。
自分の口から話せば、自分の事を良く言う事も出来るのに。

自分のばか正直さにため息が出る。

「…そっか」

響子は少しがっかりしたように言った。

⏰:10/03/29 14:27 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#175 [我輩は匿名である]
「…悪い。でも、その方がきっと、香月のためになる。…俺や霜月優也、長谷部今日子のためにも」

「…そう。…なら、私が自分で進めなきゃダメだね」

「ごめん。…ただ、最後にはかなり辛い事が待ってると思う。俺はそうだった。

だから、最後までたどり着く自信がなければ、それ以上は止めた方が良い」

薫の話に、響子は小さく笑う。

「…進まないと、みんなの為にならないでしょ?」

「自分の為にならない事もある」

「大丈夫。どうにかなるよ」

響子は明るく言った。

⏰:10/03/29 14:27 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#176 [我輩は匿名である]
薫も少し笑う。昔とちっとも変わらないな、と。

「ごめんね、いろいろ聞いちゃって」

「いや。…ほとんど役には立たなかったと思うけど」

「そんな事ないよ、…ありがとう。じゃあ、また明日ね」

「あぁ、おやすみ」

薫は静かに携帯電話を閉じる。

スッキリしたような、モヤモヤしたような複雑な気分で、薫はその夜、なかなか眠れなかった。

⏰:10/03/29 14:43 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#177 [我輩は匿名である]
「はぁー…」

掃除当番である薫を待つ間、直人は階段に座って大きく伸びをしていた。

もう金曜日だが、どうやら日曜日にならないと本の話は進まないらしい。

「(つまんねぇなぁ…平日はどうでもいい学校の話だけだもんなぁ…。

学校より、晶との話が進むのかどうかが重要なんだよ。

要の学校話なんか…)」

そんな事を考えていたら、目の前をあの金髪女が通りかかった。

「あっ、おい!金髪女!」

呼び止められて、金髪女の飛鳥が足を止め、こちらをにらみつける。

⏰:10/03/29 15:51 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#178 [我輩は匿名である]
「…何か用?」

「今日はさっさと帰るのか?いつも最後まで残ってるのに」

直人に言われて、飛鳥は顔を背ける。

「何でいつもすぐ家に帰んないの?

「…何でって……」

飛鳥は口ごもる。

直人は「まぁ、こっち来いよ」と手招きする。

少し悩んで、飛鳥は直人の横に腰を下ろした。

といっても、2人の間に人一人分くらいのスペースは空いているが。

⏰:10/03/29 15:51 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#179 [我輩は匿名である]
「…私、家嫌いだから」

「何で」

きょとんとした直人の問いに、飛鳥はうつむく。

「……親は私何か見てない。大切なのは頭の良い弟だけ。

晩ご飯の時も、私は見向きもしない。話もしない。だから、家にいてもつまんないでしょ」

「…よーするに、ネグレクトとか言うやつか?」

「…ご飯はくれるんだし、虐待ではないんじゃないの」

飛鳥は「そういう話じゃないから」とでも言いたげにため息をつく。

⏰:10/03/29 15:52 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#180 [我輩は匿名である]
「…ま、それじゃあ家に帰りたくはないわな。

…いいんじゃねぇの?そんな家にはいてやんなくても」

「でしょ?だから帰んないのよ。ご飯の時間になるまでは」

飛鳥はそう言って少し笑った。

「で、今日は帰んのかよ」

「いろいろ寄ってから帰る」

「なるほどな。…で、本は読んでんのか?」

「読んでるわよ、ちゃんと。最近つまんないけど」

「へぇ、俺と一緒じゃん。つまんねー時ってホントつまんねーよな」

直人はまたため息をつく。

⏰:10/03/29 15:53 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#181 [我輩は匿名である]
いつもの直人ならば、「お前の本ってどんな話?」と

調子に乗って尋ねるところだが、何故かそんな気にはならない。

聞いてはいけないような気がしたのだ。

「…で?お前が人間嫌いな理由はわかったわけ?」

「よくわかんない。本の中の奴も人間嫌いみたいだけど」

「遺伝じゃねぇーの?」

「私の祖先じゃないから」

飛鳥はイラっとしたように顔を引きつらせる。

飛鳥の様子を見て、直人はふと、ある事に気付いた。

⏰:10/03/29 15:53 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#182 [我輩は匿名である]
「…お前さぁ、人間嫌いな割に、俺とはよく喋るよな」

「はぁ?」

飛鳥はますます顔をしかめる。

「あんたが話し掛けて、いろいろ喋りかけてくるからでしょ?」

「まぁそうだけど、お前他の奴に話し掛けられてもシカトするじゃん。でも、俺にはシカトしない」

「…まぁ…」

「言われてみれば」と、飛鳥も不思議そうに首をひねる。

「…もしかしてお前、俺の事、す」

「黙れ」

飛鳥は不機嫌そうに、持っていた鞄で直人の顔をたたいた。

⏰:10/03/29 15:54 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#183 [我輩は匿名である]
階段にバシン!という音が響く。

「いってぇー…」

直人は両手で顔を覆う。

その間に、飛鳥はさっさと鞄を持って階段を降りていった。

「(何なんだあいつは…)」

眉間にしわを寄せて階段を降りていると、下駄箱から声が聞こえてきた。

「えーっ、怜奈、月城くん好きなの!?」

月城って誰だ。飛鳥はまた首をかしげる。

⏰:10/03/29 15:55 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#184 [我輩は匿名である]
「だってさぁ、かっこ良くない?クールだし」

「まぁかっこ良いとは思うけど、冷たそうじゃない?」

「そういえば、この間他の女子と歩いてたよ!私見たもん!」

よく見ると、同じクラスの女子達だ。

めんどうなので、飛鳥は足を止める。

「私も見たよ、それ。目の前でいちゃついてくれちゃって」

「彼女なんじゃないの?」

「違うらしい。だから余計邪魔なのよねぇ」

「怜奈、欲しい物は手に入れないと気が済まないもんね」

⏰:10/03/29 15:56 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#185 [我輩は匿名である]
「もちろん。じゃなきゃ人生楽しくないじゃん」

怜奈は当然のような言い方をする。

急に、飛鳥の背筋がぞくっとして、全身に寒気が走る。

それが何故か、飛鳥にもわからない。

3人は笑いながら、校舎を出ていったが、飛鳥はしばらく、足がすくんで動けなかった。

⏰:10/03/29 15:57 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#186 [我輩は匿名である]
休日はあっという間に過ぎた。

「(あんだけ楽しみにしてたのに、普通に喋って終わりとかありかよ…)」

いつものように、直人は学校の机にうつ伏せになっていた。

月曜の朝はいつもそうだが、今週は特にだらけてしまう。

要と晶は、40年前の昨日、前と同じ喫茶店で、3〜40分ほど楽しげに話して別れた。

話したと言っても、学校の事や要の家の話など、大して重要な話でもなかった。

最近はこんな事が当たり前になってきてしまった。

これでは読む気力が失せてしまう。

2人はまた日曜日に合う約束をしたが、果たして進展はあるのか…。

⏰:10/03/29 17:19 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#187 [我輩は匿名である]
「ねぇ」

まためんどくさい事が。直人は横目で、声がした方を見る。

怜奈がじっとこっちを見ている。

「何だよ、薫ならどっか行っていないぞ」

「そんなの見たらわかるわよ。どこ行ったのか知らない?」

「…知るかよ」

薫はもちろん屋上にいるのだろうが、直人はしらばっくれる。

薫は香月に気があるから、邪魔は入れたくない。そう思ったのだ。

⏰:10/03/29 17:20 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#188 [我輩は匿名である]
「あいつに何か用?」

「先生から伝言」

「伝言?何の?」

「さぁね」

怜奈はぷいっとそっぽを向く。

「(うぜぇ…)」

こういう女は大嫌いだ。直人は腹立たしそうに彼女を睨む。

「勘違い野郎」

直人の後ろで声がした。

⏰:10/03/29 17:20 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#189 [我輩は匿名である]
振り向くと、浮かない表情で飛鳥が立っている。

「俺の事かよ」

「あんた以外に誰がいるわけ」

飛鳥はいつものように憎まれ口をたたくが、どこか元気がなさそうだ。

「…どうかしたのか?」

「…ちょっと」

飛鳥に手招きされて、直人は席を立って、彼女について教室を出る。

「何だよ?」

廊下に出て、飛鳥は周囲を見渡した後、小声で言った。

⏰:10/03/29 17:21 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#190 [我輩は匿名である]
「さっきの女、気を付けた方が良い」

「…大橋の事か?」

「名前は知らないけど」

飛鳥は真剣そうだ。

飛鳥がこんな事を言うとは思わなかった為、直人は少し呆然とする。

「まぁ…確かに薫を好きすぎて若干ウザいけど…」

「あいつ、欲しい物は手に入れないと気が済まないって言ってた。この間聞いたんだ。

だから、諦めるように言った方が良いと思って」

「…あいつそんな事言ってたのか」

⏰:10/03/29 17:22 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#191 [我輩は匿名である]
直人はそう言った後、「ん?」と首を傾げる。

「あいつ、『友達が薫を好き』って言ってたけど」

「そんなの嘘に決まってんじゃん。それ信じ込んでたの?」

飛鳥は呆れている。

言われてみればそうだ。いくら友達思いだといっても、熱心に身辺調査しすぎだ。

「(自分が好きだったのかよ、あいつ…)」

「…とりあえず、あいつには気をつけなよ」

飛鳥はそう言って、教室に向かう。

「あ、ありがとな」

直人は飛鳥に礼を言う。

飛鳥は少し黙って、「別に」とだけ言って教室に入っていった。

⏰:10/03/29 17:22 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#192 [我輩は匿名である]
「やっぱりな」

「知ってたのかよ!?」

「話聞いてたら大体わかるだろ。俺の事が好きっていうの、友達じゃなくて本人だって事ぐらい」

薫は知っていたらしい。

直人はショックで箸を持つ手を止める。

「俺…どんだけバカなんだ…?」

「さぁ?まぁ勉強になったんだからいいじゃん」

薫は笑っているが、少ししてから真顔に戻った。

⏰:10/03/29 17:23 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#193 [我輩は匿名である]
「そういえば、あいつ伝言があるって言ってたけど…」

「聞いたよ、今日委員会があるって。めんどくせぇ…。先帰っといて」

「あぁ、同じ委員会だっけ?頑張れ♪

「からかうな!」

満面の笑みでからかう直人に、薫は怖い顔で言い返した。

⏰:10/03/29 17:23 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#194 [我輩は匿名である]
放課後。

薫は時間どおりに、風紀委員会に出席していた。

隣には怜奈が座っている。

「…俺の事、いろいろ直人に聞きまくってるらしいな」

周りに聞こえないような声で、薫は怜奈に言う。

「そこまで聞きまくってないよ?朝いつもいないから、どこに行ってるんだろうなぁって」

「悪いけど、俺の事諦めてくれる?大橋と付き合う気はないし、俺には」

「好きな子がいる、でしょ?」

怜奈は少し笑って薫を見る。

⏰:10/03/29 20:30 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#195 [我輩は匿名である]
薫は黙って見返す。

「でも、あの子じゃなくて私に目が行く事があるかも」

「残念だけどそれはない」

「そんなにあの子の事好きなの?」

そう聞かれて、薫は黙る。

そんな一言で済まされる気持ちではない。

「あの子普通の子じゃない。背も大きくないし、胸も私より小さい。スタイルだって」

「俺はそういう事には興味ない」

薫はきっぱりと言い張る。

⏰:10/03/29 20:30 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#196 [我輩は匿名である]
まぁ、そう言っても薫も男なので、全く興味がないわけでもないが。

「俺には、あいつを守る義務がある」

「義務?何それ」

怜奈は笑う。少しバカにしたように。

「お前みたいな軽そうな奴にはわからないよ」

薫はイラついたように言い捨てる。

「…ふぅん、つまんないの」

怜奈も同じようにして、それ以上何も話さなかった。

⏰:10/03/29 20:31 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#197 [我輩は匿名である]
「あ」

下駄箱で、直人はたまたま響子を見つけた。

響子は1人で帰るようだ。

「なぁ」

何となく、直人は響子に声をかける。

「……あ、もしかして月城くんの友達?」

「そうそう、俺、水無月直人。よろしく」

「私は香月響子。こちらこそよろしく」

響子はにこっと笑いかける。

⏰:10/03/29 20:32 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#198 [我輩は匿名である]
「薫、委員会でさ。良かったら一緒に帰ってもいい?」

「うん、一緒に帰ろ」

響子は快く頷いてくれた。

直人と響子は並んで学校を出る。

「水無月くんって、いつから月城くんと仲良いの?」

「俺達は、幼稚園入る前から仲良いよ」

「そんなに前から?」

「親同士が仲良いからなぁ。よくどっちかの家に行って遊んだりしてたから」

「へぇー。じゃあ、幼なじみなんだね」

⏰:10/03/29 20:33 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#199 [我輩は匿名である]
「まぁな」

直人は「へへっ」と笑う。

「香月の家ってどこ?」

「結構近いみたい。月城くんのマンションの前の道をまっすぐ行って、

突き当たりを右に曲がってまたまっすぐ行けば着くよ」

「…薫のマンションの前の道って、突き当たりまで結構距離ないか?」

前に薫と、マンションからそのつきあたりの壁まで競争した事があった。

確か、直人の方が早くて、18秒だった。

50m走で7秒台だから、100m以上あると考えられる。

⏰:10/03/29 20:33 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#200 [我輩は匿名である]
「(そこからまたまっすぐ行くって事は…近いって言えるのか…?)」

「水無月くん?」

考え込んでいると、響子が気にして話し掛けてきた。

「へ?」

「どうしたの?」

「いや、何もない」

どうでもいい事を考えていたため、直人は慌てて断る。

だからあの雨の日、一緒に来ていたのか。

直人はやっと納得した。

⏰:10/03/29 20:34 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


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