記憶を売る本屋さん
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#151 [我輩は匿名である]
「要くん…」
「俺、来週も待ってるよ!今日と同じ時間、ここで待ってるから!
今日は緊張して上手く喋れなかったけど、今度はもっといっぱい話そう!」
要は勢いが出てきたのか、言いたい事を言い切った。
晶も安心したように笑顔を見せる。
「うん!じゃあまた来週会おうね!」
そう言って、晶は大きく手を振る。
要も同じように振り返す。
そして、晶が帰っていくまで、ずっとそこでたたずんでいた。
:10/03/24 11:07
:N08A3
:vv1d3OC.
#152 [我輩は匿名である]
直人はじっと本を見つめながら、さっきの事を考えていた。
「…あいつが困って、そん時に俺が叫んだら、あいつも同じように叫ぶのか?」
晶を呼び止める時。晶に気持ちを伝える時。
直人が叫ぶと同時に、要も同じように叫ぶ。
若干の口調の違いもあるが、ほぼ変わらない。
直人は複雑な気持ちで本を閉じ、部屋を出る。
一気にいろんな事がなだれ込んできた1日だった。
:10/03/24 11:08
:N08A3
:vv1d3OC.
#153 [我輩は匿名である]
その気持ちは、月曜になっても晴れなかった。
直人は浮かない顔で学校への道を歩く。
うっとうしい事に、今日は雨。
「水無月くん」
誰かが話し掛けてきた。
どっかで聞いた声だな。
そう思って振り向くと、見た事がある女子がすぐ後ろに走ってきていた。
「おはよう」
「…えー…」
名前が出て来ない。
:10/03/24 11:09
:N08A3
:vv1d3OC.
#154 [我輩は匿名である]
「…ごめん、誰だっけ」
「大橋よ!
お!お!は!し!れ!な!」
「朝からうるせぇよ…」
耳元で大声で名乗られて、直人は煩わしそうに顔を背ける。
「水無月くん、嘘ついたでしょ」
「何の話?」
「あれ」
怜奈は前方を指さす。
彼らの20メートル程先を、薫と響子が一緒に歩いている。
:10/03/24 11:10
:N08A3
:vv1d3OC.
#155 [我輩は匿名である]
「(あらー…)」
「あの人、彼女でしょ」
ずけずけ聞いてくる怜奈を、直人は迷惑そうに見下ろす。
「何でそこまで聞くんだよ?お前、探偵?」
「探偵だったらもっと上手くやるわよ。
友達が好きみたいって、この間言ったでしょ?」
「友達思いなんだねぇ」
適当に返事をしながら、直人もちょっと気になって、前の2人の様子を伺う。
:10/03/24 11:53
:N08A3
:vv1d3OC.
#156 [我輩は匿名である]
「今日は眼鏡なんだね」
見られているとも知らずに、響子は薫に言う。
「雨の日は視力落ちるからな」
薫は珍しく、茶色いフレームの眼鏡をかけていた。
「目悪いの?」
「そこまで悪くないよ。0.8ぐらい。だからあんまり度も入ってない」
薫はそう言って、響子に眼鏡を貸す。
:10/03/24 19:01
:N08A3
:vv1d3OC.
#157 [我輩は匿名である]
響子は試しにそれをかけてみるが、合わないのか、すぐに薫に返した。
「きつい!」
「ははっ。香月は目良いんだな」
「1.2あるからね」
「へぇ、やるじゃん」
薫は眼鏡をかけ直しながら感心する。
:10/03/24 19:02
:N08A3
:vv1d3OC.
#158 [我輩は匿名である]
「…何かわかんねーけど、いちゃついてるみたいだな」
朝っぱらから見せ付けてくれる。
直人は呆れたようにあくびをする。
「…ふぅん…」
怜奈は何か考えるように、冷めた目で2人を見ている。
直人はそれに気付かなかった。
:10/03/24 19:02
:N08A3
:vv1d3OC.
#159 [我輩は匿名である]
「いつも一緒に来てんのか?」
直人の思いがけない問いに、焼きそばパンにかじりついたまま、薫は目を丸くする。
「はぎ?ほふげん(何?突然)」
「未来の彼女。今日一緒に来てただろ?」
「…はんげひっけんは?(何で知ってんだ?)」
「…何言ってるかは大体わかるけど、とりあえず飲み込んでから喋れ」
直人に言われて、薫は口に入っている分のパンを、適当に噛み砕いて飲み込む。
詰まりそうになったのか、その上から更にペットボトルのお茶を流し込む。
:10/03/24 19:05
:N08A3
:vv1d3OC.
#160 [我輩は匿名である]
「今日はたまたま、見つけたから一緒に来ただけ。大体何で知ってんだよ?」
「今日、俺達ちょっと後ろ歩いてたから」
「ちょっと待て、俺“達”って誰だ」
「大橋怜奈。何か横にいたから」
あいつか。薫も朝の直人同様、めんどくさそうな顔をする。
「…うっとうしいな…。お前は相手にしてねぇよ…」
「お前を好きなの、あいつの友達だぞ?」
直人は間違いを正すように言い直す。
「…どうだかな…」
薫は何か考えながら、ペットボトルを片手に、じっと怜奈を見ていた。
:10/03/24 19:06
:N08A3
:vv1d3OC.
#161 [我輩は匿名である]
「今日は何もなしか」
本を閉じて、直人はため息をつき、
いつものようにベッドに寝転び、窓から満月を見上げる。
また次の日曜日までお預けかな。
「(気になるのになぁ…)」
晶は今ごろ、どうしているのだろう。
また美代に手を焼いていないだろうか。
ボーッと考えた後、直人はハッとした。
「俺、何深く考えてんだ…?」
まるで要じゃないか。
直人は机に肘をつき、頭を抱えた。
:10/03/24 23:45
:N08A3
:vv1d3OC.
#162 [我輩は匿名である]
おもしろいです
続き待ってます
:10/03/26 16:31
:W61SA
:my01452g
#163 [我輩は匿名である]
:10/03/28 00:17
:W53H
:TqXP9qoY
#164 [我輩は匿名である]
>>161さん
読んでいただいてありがとうございます

でかけていて更新出来ませんでした


ちょっとずつ進めますね

>>162さん
見やすくしていただいて、ありがとうございます

:10/03/28 14:54
:N08A3
:iQI8B8Nc
#165 [我輩は匿名である]
すみません、レスがずれました

上は>>162さんへ、163さんへ、です


:10/03/28 14:57
:N08A3
:iQI8B8Nc
#166 [我輩は匿名である]
夢中でいっきに読みました!面白いです

応援しています

:10/03/28 17:04
:L01A
:HX1T/pzw
#167 [我輩は匿名である]
なんかレスするごとに大変な事に…(´Д`)
>>166さん
長いのに一気に読んでいただいてありがとうございます


頑張るので、ぼちぼち読んで下さい

:10/03/28 20:15
:N08A3
:iQI8B8Nc
#168 [我輩は匿名である]
一方、薫はベッドの上で、何かを深く考えているような顔で寝転がっていた。
不意に、枕元に置いていた携帯電話のバイブが鳴る。
手にとって見てみると、響子から電話がかかってきている。
「もしもし」
「あ、月城くん?ごめんね、いきなり電話しちゃって。今…時間大丈夫?」
「あぁ、大丈夫。…どうかした?」
「うん…」
響子は少し悩んでいるようだった。
その声を聞いて、薫も不安を抱く。
:10/03/28 20:17
:N08A3
:iQI8B8Nc
#169 [我輩は匿名である]
「この間、私に『霜月優也って聞いたことないか』って聞いたでしょ?」
「…あぁ、聞いた」
薫の表情が変わる。
「…何か知ってるのか?」
「…気のせいだと思ってたんだけどね」
響子が話しだす。
「この間から私、たまに頭痛くなるでしょ?その頭痛くなった日に、寝ると必ず夢を見るようになって…」
「どんな夢?」
響子が少し言葉を区切ったのを感じ、薫が尋ねる。
:10/03/28 20:18
:N08A3
:iQI8B8Nc
#170 [我輩は匿名である]
「…1番最初は、私がどこかで洗濯物を干してたら、誰かが手伝ってくれた。…たったそれだけ。
そして次は、病院のような所でもう1回会って、名前を教えてもらうの。
その時教えてもらった名前が、“霜月優也”だった。名刺に書いてあったから、間違いないと思う。
そして、今日昼寝してたらまた見たの。今日は、私とその人が食事に行ってた。
その人が誘ってくれたんだと思う。…今まで見たのは、そこまで」
薫はまた「そうか」とだけ返事をした。
“そこまで”という事は、その続きがある事をわかっているのかもしれない。
そう思った。
:10/03/29 11:40
:N08A3
:P5Rp3vxg
#171 [我輩は匿名である]
「でもね、1つだけ、変なのよ」
響子が補足する。
「何が?」
「その人の顔だけ、どうしても思い出せないんだ」
その言葉に、薫は眉をひそめる。
「…全くか?」
「…うん、全然。それに、私の名前も、香月響子じゃなかった。…何だったかな…」
「…長谷部 今日子」
薫は静かに呟く。
響子もそれを聞き逃さなかった。
:10/03/29 11:41
:N08A3
:P5Rp3vxg
#172 [我輩は匿名である]
「…そう、そんな名前だった」
「…やっぱりそうか」
薫はそれだけ言ってしばらく黙り込んだ。
「(…やっぱり…今日子だったんだな…)」
両方の目尻から、大粒の涙がこぼれ落ちる。
「…月城くん?」
響子の声を聞いて、薫は肘でゴシゴシと涙を吹く。
「ん?」
「月城くん…何か知ってるよね?…私の夢の事とか」
響子に聞かれて、薫はしばらく考えてから「あぁ、知ってる」と答えた。
:10/03/29 11:50
:N08A3
:P5Rp3vxg
#173 [我輩は匿名である]
「…教えて。あの夢は一体何?“私”はどうなるの?」
響子は薫に尋ねる。
彼女も気になっているのだろう。
薫はしばらく考え込む。
そして答えた。
「…教える事は出来ない」と。
「俺の口から教えれる事は、俺が知ってる事だけだ。
長谷部今日子が見た事、耳にした事、感じた事…それは夢を辿っていくしか知る事が出来ない。
…だから、本当に全てを知りたいなら、俺から話すべきではないと思う」
:10/03/29 14:26
:N08A3
:P5Rp3vxg
#174 [我輩は匿名である]
言い終わってから、薫は呆れたように笑う。
薫は本当は、全て話したくてしかたがなかった。
自分が霜月優也だという事、霜月優也と長谷部今日子は夫婦だった事…他にもたくさんある。
全て話せば、どれだけ気が楽になるだろう。
それだけじゃない。
自分の口から話せば、自分の事を良く言う事も出来るのに。
自分のばか正直さにため息が出る。
「…そっか」
響子は少しがっかりしたように言った。
:10/03/29 14:27
:N08A3
:P5Rp3vxg
#175 [我輩は匿名である]
「…悪い。でも、その方がきっと、香月のためになる。…俺や霜月優也、長谷部今日子のためにも」
「…そう。…なら、私が自分で進めなきゃダメだね」
「ごめん。…ただ、最後にはかなり辛い事が待ってると思う。俺はそうだった。
だから、最後までたどり着く自信がなければ、それ以上は止めた方が良い」
薫の話に、響子は小さく笑う。
「…進まないと、みんなの為にならないでしょ?」
「自分の為にならない事もある」
「大丈夫。どうにかなるよ」
響子は明るく言った。
:10/03/29 14:27
:N08A3
:P5Rp3vxg
#176 [我輩は匿名である]
薫も少し笑う。昔とちっとも変わらないな、と。
「ごめんね、いろいろ聞いちゃって」
「いや。…ほとんど役には立たなかったと思うけど」
「そんな事ないよ、…ありがとう。じゃあ、また明日ね」
「あぁ、おやすみ」
薫は静かに携帯電話を閉じる。
スッキリしたような、モヤモヤしたような複雑な気分で、薫はその夜、なかなか眠れなかった。
:10/03/29 14:43
:N08A3
:P5Rp3vxg
#177 [我輩は匿名である]
「はぁー…」
掃除当番である薫を待つ間、直人は階段に座って大きく伸びをしていた。
もう金曜日だが、どうやら日曜日にならないと本の話は進まないらしい。
「(つまんねぇなぁ…平日はどうでもいい学校の話だけだもんなぁ…。
学校より、晶との話が進むのかどうかが重要なんだよ。
要の学校話なんか…)」
そんな事を考えていたら、目の前をあの金髪女が通りかかった。
「あっ、おい!金髪女!」
呼び止められて、金髪女の飛鳥が足を止め、こちらをにらみつける。
:10/03/29 15:51
:N08A3
:P5Rp3vxg
#178 [我輩は匿名である]
「…何か用?」
「今日はさっさと帰るのか?いつも最後まで残ってるのに」
直人に言われて、飛鳥は顔を背ける。
「何でいつもすぐ家に帰んないの?
「…何でって……」
飛鳥は口ごもる。
直人は「まぁ、こっち来いよ」と手招きする。
少し悩んで、飛鳥は直人の横に腰を下ろした。
といっても、2人の間に人一人分くらいのスペースは空いているが。
:10/03/29 15:51
:N08A3
:P5Rp3vxg
#179 [我輩は匿名である]
「…私、家嫌いだから」
「何で」
きょとんとした直人の問いに、飛鳥はうつむく。
「……親は私何か見てない。大切なのは頭の良い弟だけ。
晩ご飯の時も、私は見向きもしない。話もしない。だから、家にいてもつまんないでしょ」
「…よーするに、ネグレクトとか言うやつか?」
「…ご飯はくれるんだし、虐待ではないんじゃないの」
飛鳥は「そういう話じゃないから」とでも言いたげにため息をつく。
:10/03/29 15:52
:N08A3
:P5Rp3vxg
#180 [我輩は匿名である]
「…ま、それじゃあ家に帰りたくはないわな。
…いいんじゃねぇの?そんな家にはいてやんなくても」
「でしょ?だから帰んないのよ。ご飯の時間になるまでは」
飛鳥はそう言って少し笑った。
「で、今日は帰んのかよ」
「いろいろ寄ってから帰る」
「なるほどな。…で、本は読んでんのか?」
「読んでるわよ、ちゃんと。最近つまんないけど」
「へぇ、俺と一緒じゃん。つまんねー時ってホントつまんねーよな」
直人はまたため息をつく。
:10/03/29 15:53
:N08A3
:P5Rp3vxg
#181 [我輩は匿名である]
いつもの直人ならば、「お前の本ってどんな話?」と
調子に乗って尋ねるところだが、何故かそんな気にはならない。
聞いてはいけないような気がしたのだ。
「…で?お前が人間嫌いな理由はわかったわけ?」
「よくわかんない。本の中の奴も人間嫌いみたいだけど」
「遺伝じゃねぇーの?」
「私の祖先じゃないから」
飛鳥はイラっとしたように顔を引きつらせる。
飛鳥の様子を見て、直人はふと、ある事に気付いた。
:10/03/29 15:53
:N08A3
:P5Rp3vxg
#182 [我輩は匿名である]
「…お前さぁ、人間嫌いな割に、俺とはよく喋るよな」
「はぁ?」
飛鳥はますます顔をしかめる。
「あんたが話し掛けて、いろいろ喋りかけてくるからでしょ?」
「まぁそうだけど、お前他の奴に話し掛けられてもシカトするじゃん。でも、俺にはシカトしない」
「…まぁ…」
「言われてみれば」と、飛鳥も不思議そうに首をひねる。
「…もしかしてお前、俺の事、す」
「黙れ」
飛鳥は不機嫌そうに、持っていた鞄で直人の顔をたたいた。
:10/03/29 15:54
:N08A3
:P5Rp3vxg
#183 [我輩は匿名である]
階段にバシン!という音が響く。
「いってぇー…」
直人は両手で顔を覆う。
その間に、飛鳥はさっさと鞄を持って階段を降りていった。
「(何なんだあいつは…)」
眉間にしわを寄せて階段を降りていると、下駄箱から声が聞こえてきた。
「えーっ、怜奈、月城くん好きなの!?」
月城って誰だ。飛鳥はまた首をかしげる。
:10/03/29 15:55
:N08A3
:P5Rp3vxg
#184 [我輩は匿名である]
「だってさぁ、かっこ良くない?クールだし」
「まぁかっこ良いとは思うけど、冷たそうじゃない?」
「そういえば、この間他の女子と歩いてたよ!私見たもん!」
よく見ると、同じクラスの女子達だ。
めんどうなので、飛鳥は足を止める。
「私も見たよ、それ。目の前でいちゃついてくれちゃって」
「彼女なんじゃないの?」
「違うらしい。だから余計邪魔なのよねぇ」
「怜奈、欲しい物は手に入れないと気が済まないもんね」
:10/03/29 15:56
:N08A3
:P5Rp3vxg
#185 [我輩は匿名である]
「もちろん。じゃなきゃ人生楽しくないじゃん」
怜奈は当然のような言い方をする。
急に、飛鳥の背筋がぞくっとして、全身に寒気が走る。
それが何故か、飛鳥にもわからない。
3人は笑いながら、校舎を出ていったが、飛鳥はしばらく、足がすくんで動けなかった。
:10/03/29 15:57
:N08A3
:P5Rp3vxg
#186 [我輩は匿名である]
休日はあっという間に過ぎた。
「(あんだけ楽しみにしてたのに、普通に喋って終わりとかありかよ…)」
いつものように、直人は学校の机にうつ伏せになっていた。
月曜の朝はいつもそうだが、今週は特にだらけてしまう。
要と晶は、40年前の昨日、前と同じ喫茶店で、3〜40分ほど楽しげに話して別れた。
話したと言っても、学校の事や要の家の話など、大して重要な話でもなかった。
最近はこんな事が当たり前になってきてしまった。
これでは読む気力が失せてしまう。
2人はまた日曜日に合う約束をしたが、果たして進展はあるのか…。
:10/03/29 17:19
:N08A3
:P5Rp3vxg
#187 [我輩は匿名である]
「ねぇ」
まためんどくさい事が。直人は横目で、声がした方を見る。
怜奈がじっとこっちを見ている。
「何だよ、薫ならどっか行っていないぞ」
「そんなの見たらわかるわよ。どこ行ったのか知らない?」
「…知るかよ」
薫はもちろん屋上にいるのだろうが、直人はしらばっくれる。
薫は香月に気があるから、邪魔は入れたくない。そう思ったのだ。
:10/03/29 17:20
:N08A3
:P5Rp3vxg
#188 [我輩は匿名である]
「あいつに何か用?」
「先生から伝言」
「伝言?何の?」
「さぁね」
怜奈はぷいっとそっぽを向く。
「(うぜぇ…)」
こういう女は大嫌いだ。直人は腹立たしそうに彼女を睨む。
「勘違い野郎」
直人の後ろで声がした。
:10/03/29 17:20
:N08A3
:P5Rp3vxg
#189 [我輩は匿名である]
振り向くと、浮かない表情で飛鳥が立っている。
「俺の事かよ」
「あんた以外に誰がいるわけ」
飛鳥はいつものように憎まれ口をたたくが、どこか元気がなさそうだ。
「…どうかしたのか?」
「…ちょっと」
飛鳥に手招きされて、直人は席を立って、彼女について教室を出る。
「何だよ?」
廊下に出て、飛鳥は周囲を見渡した後、小声で言った。
:10/03/29 17:21
:N08A3
:P5Rp3vxg
#190 [我輩は匿名である]
「さっきの女、気を付けた方が良い」
「…大橋の事か?」
「名前は知らないけど」
飛鳥は真剣そうだ。
飛鳥がこんな事を言うとは思わなかった為、直人は少し呆然とする。
「まぁ…確かに薫を好きすぎて若干ウザいけど…」
「あいつ、欲しい物は手に入れないと気が済まないって言ってた。この間聞いたんだ。
だから、諦めるように言った方が良いと思って」
「…あいつそんな事言ってたのか」
:10/03/29 17:22
:N08A3
:P5Rp3vxg
#191 [我輩は匿名である]
直人はそう言った後、「ん?」と首を傾げる。
「あいつ、『友達が薫を好き』って言ってたけど」
「そんなの嘘に決まってんじゃん。それ信じ込んでたの?」
飛鳥は呆れている。
言われてみればそうだ。いくら友達思いだといっても、熱心に身辺調査しすぎだ。
「(自分が好きだったのかよ、あいつ…)」
「…とりあえず、あいつには気をつけなよ」
飛鳥はそう言って、教室に向かう。
「あ、ありがとな」
直人は飛鳥に礼を言う。
飛鳥は少し黙って、「別に」とだけ言って教室に入っていった。
:10/03/29 17:22
:N08A3
:P5Rp3vxg
#192 [我輩は匿名である]
「やっぱりな」
「知ってたのかよ!?」
「話聞いてたら大体わかるだろ。俺の事が好きっていうの、友達じゃなくて本人だって事ぐらい」
薫は知っていたらしい。
直人はショックで箸を持つ手を止める。
「俺…どんだけバカなんだ…?」
「さぁ?まぁ勉強になったんだからいいじゃん」
薫は笑っているが、少ししてから真顔に戻った。
:10/03/29 17:23
:N08A3
:P5Rp3vxg
#193 [我輩は匿名である]
「そういえば、あいつ伝言があるって言ってたけど…」
「聞いたよ、今日委員会があるって。めんどくせぇ…。先帰っといて」
「あぁ、同じ委員会だっけ?頑張れ♪
「からかうな!」
満面の笑みでからかう直人に、薫は怖い顔で言い返した。
:10/03/29 17:23
:N08A3
:P5Rp3vxg
#194 [我輩は匿名である]
放課後。
薫は時間どおりに、風紀委員会に出席していた。
隣には怜奈が座っている。
「…俺の事、いろいろ直人に聞きまくってるらしいな」
周りに聞こえないような声で、薫は怜奈に言う。
「そこまで聞きまくってないよ?朝いつもいないから、どこに行ってるんだろうなぁって」
「悪いけど、俺の事諦めてくれる?大橋と付き合う気はないし、俺には」
「好きな子がいる、でしょ?」
怜奈は少し笑って薫を見る。
:10/03/29 20:30
:N08A3
:P5Rp3vxg
#195 [我輩は匿名である]
薫は黙って見返す。
「でも、あの子じゃなくて私に目が行く事があるかも」
「残念だけどそれはない」
「そんなにあの子の事好きなの?」
そう聞かれて、薫は黙る。
そんな一言で済まされる気持ちではない。
「あの子普通の子じゃない。背も大きくないし、胸も私より小さい。スタイルだって」
「俺はそういう事には興味ない」
薫はきっぱりと言い張る。
:10/03/29 20:30
:N08A3
:P5Rp3vxg
#196 [我輩は匿名である]
まぁ、そう言っても薫も男なので、全く興味がないわけでもないが。
「俺には、あいつを守る義務がある」
「義務?何それ」
怜奈は笑う。少しバカにしたように。
「お前みたいな軽そうな奴にはわからないよ」
薫はイラついたように言い捨てる。
「…ふぅん、つまんないの」
怜奈も同じようにして、それ以上何も話さなかった。
:10/03/29 20:31
:N08A3
:P5Rp3vxg
#197 [我輩は匿名である]
「あ」
下駄箱で、直人はたまたま響子を見つけた。
響子は1人で帰るようだ。
「なぁ」
何となく、直人は響子に声をかける。
「……あ、もしかして月城くんの友達?」
「そうそう、俺、水無月直人。よろしく」
「私は香月響子。こちらこそよろしく」
響子はにこっと笑いかける。
:10/03/29 20:32
:N08A3
:P5Rp3vxg
#198 [我輩は匿名である]
「薫、委員会でさ。良かったら一緒に帰ってもいい?」
「うん、一緒に帰ろ」
響子は快く頷いてくれた。
直人と響子は並んで学校を出る。
「水無月くんって、いつから月城くんと仲良いの?」
「俺達は、幼稚園入る前から仲良いよ」
「そんなに前から?」
「親同士が仲良いからなぁ。よくどっちかの家に行って遊んだりしてたから」
「へぇー。じゃあ、幼なじみなんだね」
:10/03/29 20:33
:N08A3
:P5Rp3vxg
#199 [我輩は匿名である]
「まぁな」
直人は「へへっ」と笑う。
「香月の家ってどこ?」
「結構近いみたい。月城くんのマンションの前の道をまっすぐ行って、
突き当たりを右に曲がってまたまっすぐ行けば着くよ」
「…薫のマンションの前の道って、突き当たりまで結構距離ないか?」
前に薫と、マンションからそのつきあたりの壁まで競争した事があった。
確か、直人の方が早くて、18秒だった。
50m走で7秒台だから、100m以上あると考えられる。
:10/03/29 20:33
:N08A3
:P5Rp3vxg
#200 [我輩は匿名である]
「(そこからまたまっすぐ行くって事は…近いって言えるのか…?)」
「水無月くん?」
考え込んでいると、響子が気にして話し掛けてきた。
「へ?」
「どうしたの?」
「いや、何もない」
どうでもいい事を考えていたため、直人は慌てて断る。
だからあの雨の日、一緒に来ていたのか。
直人はやっと納得した。
:10/03/29 20:34
:N08A3
:P5Rp3vxg
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