浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#1 [笹]
:10/03/28 23:39
:D905i
:YbCY9nv6
#2 [笹]
:
:
盆に滴り落ちた茶に
拭うように触れた
温いその液体は
じわり体に染み込んで
「幼、なじみ」
自らに言い聞かせるように
呟いた
:10/03/28 23:40
:D905i
:YbCY9nv6
#3 [笹]
貴女を独占したい
結局は‥それが為
離したくはなかった
貴女が何処かへ
‥行ってしまいそうで、ね
倫次とやらに会った時の
あの嬉しそうな表情
めったに見れたもんじゃあない
:10/03/28 23:40
:D905i
:YbCY9nv6
#4 [笹]
「‥やれ、やれ」
月を隠す歪な薄い雲
現れては流れて消えて
夜桜の白い花びらが
儚く散った
:10/03/28 23:41
:D905i
:YbCY9nv6
#5 [笹]
放っておけない‥と言いますか
貴女が私を
捕らえて離さない、と
言うことですか‥ねぇ
:10/03/28 23:41
:D905i
:YbCY9nv6
#6 [笹]
:
:
少し冷えた空気に
体が小さく震えた
うっすら息が白く染まる
「‥香夜」
羽織を着た倫次が
振り返り微笑した
あぁ‥羽織、忘れた
:10/03/28 23:42
:D905i
:YbCY9nv6
#7 [笹]
「ごめん、遅れて」
「いや‥俺もさっき終わったから」
倫次に促され少し先を行く
砂利の上を歩けば
響く独特の音
なんだか懐かしくもあった
:10/03/28 23:42
:D905i
:YbCY9nv6
#8 [笹]
「倫次‥ずっと働いてるの?」
「働いてる、って言うか
手伝ってるだけだけどね」
照れくさそうに笑った
目尻の皺が変わらない
たくさん笑ってる証拠かな
「‥香夜は?」
躊躇うように問ったその声が
あたしの奥をくすぐる
:10/03/28 23:43
:D905i
:YbCY9nv6
#9 [笹]
あたしは‥いろいろあった
「あたし?あたしはー‥
うーん、元気だったよ?」
もどかしくてたまらないよ
いろんな事がありすぎて
どこから話たらいいか‥
必死の作り笑い
顔の筋肉がつりそうだ
:10/03/28 23:43
:D905i
:YbCY9nv6
#10 [笹]
変わってしまっただろうか
倫次から見てあたしは
‥変わっちゃった?
「変わらないな」
「‥え?」
「相変わらず‥作り笑いが下手」
見破られた真実
倫次だけが気づいてしまうから
そのたび恥ずかしくなる
:10/03/28 23:43
:D905i
:YbCY9nv6
#11 [笹]
この人には嘘がつけない
「元気だったなら、
まぁ‥いいんだけどね」
同い年なのに
どうしてそうも大人で
包み込むように優しいのか
あたしの頭を緩く撫でた手は
だいぶ大きくなっていた
:10/03/28 23:44
:D905i
:YbCY9nv6
#12 [笹]
どうしよもなく
‥懐かしくて懐かしくて
泣きたくなっちゃうね
何だか救われた
「あの人と一緒に旅してるの?」
「あぁ‥うん
壱助さんは、命の恩人なんだ」
だって壱助さんがあの日
拾ってくれなかったら
今頃‥どうなってたか
:10/03/28 23:44
:D905i
:YbCY9nv6
#13 [笹]
「そっかぁー‥
いい人そうだよね」
「うん‥見た目は、怖いけど」
「香夜、幸せだな」
「‥幸せ?」
ぽんと出てきた
その聞き慣れない言葉に
すごく違和感をかんじた
幸せ‥幸せかぁ
:10/03/28 23:45
:D905i
:YbCY9nv6
#14 [笹]
「ちょっと‥悔しいけどな」
「‥どうして?」
夜桜をぼうっと見つめたその目は
凛々しくて眩しくて
「ん?それは‥秘密」
そう言ってはにかんだ顔は
とても大人だった
少しばかり見とれた
ぐるぐる胃の辺りが気持ち悪い
:10/03/28 23:45
:D905i
:YbCY9nv6
#15 [笹]
気づけばあたしの右手は
躊躇いもなく吸い込まれるように
倫次の着物の裾を掴んで
「秘密とか‥無しだよ」
秘密なんてずるいじゃない
いつの間にそんなに
距離置くようになったのよ
「んー‥」
:10/03/28 23:45
:D905i
:YbCY9nv6
#16 [笹]
響いた低音
ふわり風が髪を揺らして
「香夜には
‥俺しかいないってさ
馬鹿みたいだけど
そう思ってたから、なんかね」
困ったように笑って
切なそうに抜けてく吐息
:10/03/28 23:46
:D905i
:YbCY9nv6
#17 [笹]
「あぁ、悔しい悔しい
大失恋‥だわ」
「失恋‥って
まだあたし何も言ってな‥」
「馬鹿」
ぴしゃりと叩かれた額
優しく叱るように
一気に事が進みすぎて
よくわかんない
:10/03/28 23:46
:D905i
:YbCY9nv6
#18 [笹]
だけど倫次はあたしのこと‥
「香夜は、自分に疎いなぁ」
藍色の羽織を空中に踊らせ
包み込むように
あたしの肩にかけて
「自分と向き合えよ、ちゃんと」
そう言って背を向けた
:10/03/28 23:46
:D905i
:YbCY9nv6
#19 [笹]
自分と向き合う
あたしが今向き合うべきなのは‥
もう、逃げるのはやめよう
:10/03/28 23:47
:D905i
:YbCY9nv6
#20 [笹]
:10/03/28 23:50
:D905i
:YbCY9nv6
#21 [笹]
:
:
あたしが
向き合わなきゃいけないのは‥
「壱助さん‥」
「随分と‥
長話で、いらっしゃる」
鋭い視線
何度目をそらしてきただろう
:10/03/29 00:20
:D905i
:mvSjpDFg
#22 [笹]
敷かれた布団の色が霞む
そこに布団にも入らずに
胡座をかいて
飲みかけのお酒
‥飲みきらないなんて珍しい
「今夜は冷えます、よ
早く床に
‥ついたらどうですかい?」
:10/03/29 00:21
:D905i
:mvSjpDFg
#23 [笹]
「‥壱助さん
あたしの‥布団は?」
まさか同じ布団だなんて‥
「此処、ですよ」
ひらり捲って隣をぽんと叩く
壱助さんが
あたしを襲うなんてのは
考えられないけれど
:10/03/29 00:21
:D905i
:mvSjpDFg
#24 [笹]
喰われそう‥
「嫌なら‥其処で」
美しい指が示した固そうな畳
あぁ‥意地悪
渋々隣に潜り込む
ひんやり冷たい感覚が
体を包み込む
どことなく苦しくて
:10/03/29 00:22
:D905i
:mvSjpDFg
#25 [笹]
隣に寝そべる美しき個体
気を使ってるのか
あたしが嫌なのか
色っぽい背を向けて
冷たい手をさすって
温もりを求めれば
擦れあう音が響き渡る
青白い月の光が胸を締め付けた
:10/03/29 00:22
:D905i
:mvSjpDFg
#26 [笹]
「壱助さん‥あたし、」
見えない背中に問いかけて
返事のない空間に目を瞑る
向き合わなきゃいけない人
もう逃げちゃいけない
逃げるのはやめだ
:10/03/29 00:23
:D905i
:mvSjpDFg
#27 [笹]
辛くてもいい
苦しくてもいいんだ
自分に素直になれば
怖くなんかないよね、倫次
呼吸を整える
何度も何度も息を吸って
握りしめた手に力を込める
:10/03/29 00:23
:D905i
:mvSjpDFg
#28 [笹]
「壱助さん‥
もう、寝ちゃいましたか?」
返事がなければ明日にしよう
「香夜さん‥」
いつもの調子の低い声が
此方に向いて
背後から染み渡る温もり
:10/03/29 00:24
:D905i
:mvSjpDFg
#29 [笹]
ぎゅうっと背中を抱きしめられて
結局壱助さんには適わない
また、踊らされて終わってしまう
「‥どうしたんですか?」
「いえ‥冷えるもんで、ね」
:10/03/29 00:24
:D905i
:mvSjpDFg
#30 [笹]
期待なんかしちゃいないのに
心のどこかで残念がって
どこまでもあたしは情けない
だけど幸せ
‥素直になったら軽くなった
「香夜さん‥」
今になって気づく
気持ちの大きさ
:10/03/29 00:24
:D905i
:mvSjpDFg
#31 [笹]
‥急に溢れ出した涙
伝えたら崩れてしまう?
それなら仕舞っておきたい
こうして触れられる事も
なくなっちゃうのかな
どこまでもどこまでも逃げて
甘い嘘を受け入れたい
:10/03/29 00:25
:D905i
:mvSjpDFg
#32 [笹]
「寝ましょう、か」
そっと覆ったしなやかな手が
目の前を遮って
くだらない恐怖を取り除く
貴方の手に触れた滴
染みていく
零れた涙の後を
辿るように指が頬を這った
:10/03/29 00:26
:D905i
:mvSjpDFg
#33 [笹]
言葉にしてほしい
貴方が何を考えているのか
貴方がどう思っているのか
それだけが気になって
あたしの心を奪うから‥
:10/03/29 00:26
:D905i
:mvSjpDFg
#34 [笹]
:10/03/29 00:29
:D905i
:mvSjpDFg
#35 [笹]
:10/03/29 00:38
:D905i
:mvSjpDFg
#36 [笹]
:
:
放り出された藍色の羽織り
手に取ればずしり重く感じた
泣き出すとは‥ねぇ
何を言われたの、か
それを丁寧に畳めば
途中で手が止まる
彼女に世話を焼きたくなるのは
私だけではないのかと
‥思うのですが
:10/04/02 22:15
:D905i
:fWI6nvOI
#37 [笹]
小さく四角くなったそれを
彼女の枕元にそっと置いた
「妬いてしまうんですが、ね
どう、したら‥」
まだ閉じたままの瞳
あどけない額を撫でれば
長い睫が少しばかり揺れる
:10/04/02 22:16
:D905i
:fWI6nvOI
#38 [笹]
愛嬌も良ければ
懐きやすい、ときた
ちょいと目を離したら
貴女は‥何処へ
"一生傍にいる"なんざぁ
私の言い分に過ぎないのか‥
どうも近頃
満足いかないんですが、ね
:10/04/02 22:17
:D905i
:fWI6nvOI
#39 [笹]
月明かりに照らされた桜
はらはら散って終わりを告げる
「花は盛りに‥か」
:10/04/02 22:17
:D905i
:fWI6nvOI
#40 [笹]
:
:
「おえぇええっっ!!!」
いきなり催す吐き気
腹部に走った激痛が
胃の中を駆け巡って
口の中から漏れそうだった
「いち‥ゴホッ
何でお腹‥おえぇ」
「大袈裟、ですね」
:10/04/02 22:18
:D905i
:fWI6nvOI
#41 [笹]
大袈裟じゃない!!
ほんとに痛いって言うか
は‥吐く
まだ顔面叩かれた方がましかも‥
「ちょいと‥
鍛えたらどうですか?」
「は?」
:10/04/02 22:18
:D905i
:fWI6nvOI
#42 [笹]
壱助さんの背後から射す
朝日の眩しさに目を細め
上から降り注ぐ視線の先を
目で丁寧に追えば‥
「随分と‥柔い」
クスッと鼻であしらわれた
あたしのお腹
蹴り飛ばしといて笑うとは‥
何か‥恥ずかしい
:10/04/02 22:19
:D905i
:fWI6nvOI
#43 [笹]
「女の子は‥
これ位が丁度いいんですぅ!」
「女の子‥ねぇ」
そう吐き捨て腰を下ろし
茶を啜った
昨日はお茶飲まなかったのに‥自分で煎れたのかな?
:10/04/02 22:19
:D905i
:fWI6nvOI
#44 [笹]
って言うかあたし
やっぱり女の子に見られてない?
普通蹴飛ばさないよね‥
「んん‥」
ぼうっと腹部をさすり
壱助さんの背中を見つめる
痛かったはずなのに
今は忘れてしまうくらい
心が痛いです
:10/04/02 22:20
:D905i
:fWI6nvOI
#45 [笹]
ふと枕元目をやれば
綺麗に畳まれた倫次の羽織り
そして予想される相手へ目配せ
‥世話好きだなぁ、やっぱり
あたしは子供なのかな?
やっぱり気づかなきゃよかった
気分が上がらないや‥
:10/04/02 22:20
:D905i
:fWI6nvOI
#46 [笹]
「香夜さん‥」
「‥はい?」
「午前中には出ます、よ」
呆気なく終わる一泊二日の二人旅
まぁいつもと変わりないよね
布団が一枚だったのと
壱助さんが‥
:10/04/02 22:21
:D905i
:fWI6nvOI
#47 [笹]
―‥やきもち?
まさかね、
こんな冷酷な大人すぎる人間が
あたしみたいな餓鬼に
妬くわけがない
ただの世話好き、そうだ
:10/04/02 22:22
:D905i
:fWI6nvOI
#48 [笹]
:
:
何だか来たときより
荷物が重く感じた
気持ちの問題かな
‥すっきりしたはずなのに
「壱助さんっ!!」
ゆるり振り返り着物が揺れた
相変わらずの仏頂面
もう‥慣れたけど
:10/04/02 22:22
:D905i
:fWI6nvOI
#49 [笹]
「倫次に羽織り‥返してきます」
荷物を石畳の上に置き
羽織りだけを抱えた
壱助さんを待たせるなんて
‥挑戦者だあたし
反応を見るのを恐れて
急ぎ足で向きを変えて向かえば
後ろから声がかかる
:10/04/02 22:23
:D905i
:fWI6nvOI
#50 [笹]
「‥香夜」
思わず振り返った
それはもう小動物のように機敏に
だって今‥呼び捨て
ばちりと合ったその目は
鋭くも柔らかくて驚いた
:10/04/02 22:23
:D905i
:fWI6nvOI
#51 [笹]
春風に揺られ
花びらが壱助さんの周りを舞う
なんだかその瞬間
周りの音が消えた気がした
艶容な唇が緩くつり上がり
ゆっくり少しだけ動いた
そして何かを告げた
:10/04/02 22:24
:D905i
:fWI6nvOI
#52 [笹]
「え?今なんて?」
何故か胸が張り裂けそう
「いえ‥早くしないと
置いて行きます、よ」
「え‥あぁはい!!」
:10/04/02 22:24
:D905i
:fWI6nvOI
#53 [笹]
今までにない顔で
あぁもう‥だめだ
忙しなく鳴る鼓動がやまない
熱くなる頬
思い切り息を吸い込んで
熱を無理やり追い出した
:10/04/02 22:24
:D905i
:fWI6nvOI
#54 [笹]
:
:
「倫次‥ありがと」
懐かしき幼なじみに手渡した
あっさりとした別れ
「いえいえ」
にっこり笑ったその顔は
少しばかり寂しそうに見えた
:10/04/02 22:25
:D905i
:fWI6nvOI
#55 [笹]
「それと‥ありがと」
「‥何が?」
「気持ち、嬉しかった」
大切な人に
そう思われてるなんてね
すごくあたしは幸せ者だと思う
:10/04/02 22:26
:D905i
:fWI6nvOI
#56 [笹]
だけどね‥気付いた
「だけど‥
心に決めた人がいるから」
倫次のおかげで気付けたよ
やっと向き合えた
辛くても、うまく行かなくても
投げ出すのだけは
やめようと思うよ
:10/04/02 22:26
:D905i
:fWI6nvOI
#57 [笹]
「そっか、
いつもの香夜らしくいれば
‥大丈夫さ」
くしゃっと頭を撫でられて
鼻の奥がつんとした
「香夜‥あの人、いい人だよ」
「‥?」
:10/04/02 22:27
:D905i
:fWI6nvOI
#58 [笹]
「あの人には‥負ける」
「え‥?何が?」
「ほら、あんまり待たされると
‥置いて行かれる」
背中を押した手
暖かくて力強くて
あたしもいつかそんな風に
誰かの背中を押せるような
強い人になりたいな
:10/04/02 22:27
:D905i
:fWI6nvOI
#59 [笹]
「ありがと倫次!!
また‥また来るから!!」
振り返り叫べば
大きく手を振って見送られた
あぁ‥何だか切ないよ
わかんないけど
あたし‥幸せだ、本当に
:10/04/02 22:28
:D905i
:fWI6nvOI
#60 [笹]
:
:
追いかければもう門には居らず
「‥置いて行かれた」
肩を落として
うなだれて門を出れば
「ぎゃあっ!!」
門の隅に寄りかかった貴方
:10/04/02 22:28
:D905i
:fWI6nvOI
#61 [笹]
「‥遅い」
なんだ‥待っててくれたんだ
じわじわと地面から
柔らかい感情が湧き出して
「ご‥ごめんなさい」
鋭い視線に突かれたって
痛くも痒くもない
:10/04/02 22:29
:D905i
:fWI6nvOI
#62 [笹]
ふと思い出す先程の貴方
緩む口元に力を込めて
先を行く背中を追った
「あ‥壱助さん!!
倫次とお話したんですか?」
「何、故」
「さっき倫次が
そんなような言い方してたから」
:10/04/02 22:30
:D905i
:fWI6nvOI
#63 [笹]
「‥」
「何で黙るんですか?」
「さぁ、ね」
そして、遠くを見つめて‥
横顔が舞う桜に溶けて行く
:10/04/02 22:30
:D905i
:fWI6nvOI
#64 [笹]
:10/04/02 22:37
:D905i
:fWI6nvOI
#65 [笹]
:10/04/02 22:38
:D905i
:fWI6nvOI
#66 [笹]
:
:
桜色から覗く鮮やかな若葉色
春もとうとう過ぎ去って
やってくるは爽やかな季節
白くひらひらした蝶が
菜の花に停まる
愛らしい姿に目を細める
寄り添った二匹が
追いかけっこをしてるみたいに
宙に舞って消えた
:10/04/15 21:24
:D905i
:pJU1XkOc
#67 [笹]
「壱助さん‥あたし」
「ちょいと、気分転換にでも‥」
あれから良い機会などなくて
なかなか言い出せず
言い出そうとすればこんな感じ
話を上手く逸らされて
どうしようもない
:10/04/15 21:24
:D905i
:pJU1XkOc
#68 [笹]
気付いてるんだろうか
何かまずいことでもあるのかな
「ねぇ壱助さんってば!!」
悔しくてたまらない
悲しいよりも先に
そんな感情が先に出る
もどかしくて、
訳もなく恥ずかしい
:10/04/15 21:25
:D905i
:pJU1XkOc
#69 [笹]
張り出した声
潤んだ瞳に歪む背中
できるならこんな感情
棄ててしまいたいのに
「‥」
何も言わずに立ち止まった
真っ白な首筋が冷たく見えた
:10/04/15 21:25
:D905i
:pJU1XkOc
#70 [笹]
「ちゃんと‥聞いてください」
「私が何故、香夜さんの傍に居るか
‥ご存知で?」
より一層低い声が
足の裏からじわり侵入して
ぎゅうっと胸が苦しくなる
:10/04/15 21:26
:D905i
:pJU1XkOc
#71 [笹]
そんなこと知らない
期待できるような理由じゃない
何故だかそんな気がして
知りたいのに、知りたくない
ゆっくり振り向き
横目で此方を見下げ
鋭い視線に殺されそうだった
:10/04/15 21:26
:D905i
:pJU1XkOc
#72 [笹]
黙って首を振れば
また前を向いてため息
「なら‥その内」
「その内?その内って何ですか?」
思わず立ち上がり
ぶつかりそうな所で体が止まる
壱助さんはずるい
いつもそうやって秘密を作る
:10/04/15 21:26
:D905i
:pJU1XkOc
#73 [笹]
「まぁ‥いいじゃあ、ないですか」
きっとまた
その艶容な口が笑ってる
対等になろうなんて思わないけど
悔しくてたまらないよ
「ちょっと‥!!
逃げないでくださいよ
そうやって‥
いつもはぐらかして!!」
逃げ出す背中を追う
足が重たい
:10/04/15 21:27
:D905i
:pJU1XkOc
#74 [笹]
自分の気持ちに気づいてから
体が重い気がする
「逃げる、か」
「そうです!!
ちゃんとあたしと向き‥」
あれ‥ちょっと待って
:10/04/15 21:27
:D905i
:pJU1XkOc
#75 [笹]
此方を向いた壱助さん
腕を組んで
眉間にしわを寄せて‥
「いた‥っ」
頭に走る激痛
刃物で一突きされたような
鋭い痛みが吐き気を催す
:10/04/15 21:28
:D905i
:pJU1XkOc
#76 [笹]
『助けて‥!!』
乱れる呼吸
崩れた体が悲鳴をあげる
『‥お父さん!!』
だめ‥違う、違うの
そうじゃない
『香夜‥!!』
:10/04/15 21:28
:D905i
:pJU1XkOc
#77 [笹]
視界が揺れた
走馬灯のようにあの日の記憶だけ
丁寧に繰り返される
壱助さんが見下ろす
歯を食いしばって険しい顔で
:10/04/15 21:29
:D905i
:pJU1XkOc
#78 [笹]
『お父さあぁあん!!』
潰れかかった自分の悲鳴が
脳裏にへばりついて
雨のように降ってきた
血液の匂いが蘇って
鼻の奥をくすぐった
嘘‥どうして?
壱助さん‥
:10/04/15 21:29
:D905i
:pJU1XkOc
#79 [笹]
「や‥いやぁ‥」
冷ややかな地面の砂が
はだけた着物の隙間から
蝕むように侵入してくる
「どう‥して
何で、何で壱助さん‥」
隠しきれない動揺が渦を巻いて
気づかぬ内に頬を濡らした
:10/04/15 21:30
:D905i
:pJU1XkOc
#80 [笹]
「そろそろ‥ですか、ね」
目を細めてそう呟いた声
その姿をあの日、あの時‥
壱助さん
あたしを拾ったのには
訳があるのでしょう?
:10/04/15 21:30
:D905i
:pJU1XkOc
#81 [笹]
例えば、
あたしたちの出会いが
もっとずっと前の事で‥
_
:10/04/15 21:32
:D905i
:pJU1XkOc
#82 [笹]
:10/04/15 21:36
:D905i
:pJU1XkOc
#83 [笹]
:10/04/15 21:37
:D905i
:pJU1XkOc
#84 [笹]
*゚・。*
「壱助さーん」
「‥」
「んぅ‥壱助さんってばぁ」
「かわゆい」
「‥は?」
「いえ‥
此方の話です、よ」
:10/04/15 21:59
:D905i
:pJU1XkOc
#85 [笹]
「かわゆいって‥
何が?どこが?誰が?」
「まぁ、まぁ」
「またはぐらかしてー‥むぅ」
「香夜さん‥」
「んぅ」
:10/04/15 21:59
:D905i
:pJU1XkOc
#86 [笹]
「―――――‥」
「え‥な‥、ななな」
「‥です、よ」
「何な、何言ってるんですかぁ?
も‥やだなぁ、あはっあは」
「かわ、ゆい」
「‥ばか」
「はい、はい」
:10/04/15 22:00
:D905i
:pJU1XkOc
#87 [笹]
:10/04/15 22:03
:D905i
:pJU1XkOc
#88 [笹]
:
:
あたしの記憶の隅に
すでに貴方は居て‥
何も語らずとも
あたしの過去を知っていたのは
そういうことだったんだ
あの日
‥貴方はあの場にいた
:10/04/19 20:34
:D905i
:2Nqm1ljI
#89 [笹]
「壱助さん‥どうして今まで」
「此処じゃあ、何です
中へ入りましょう‥か」
間違いない
確かに貴方なんだ
:10/04/19 20:34
:D905i
:2Nqm1ljI
#90 [笹]
:
:
真っ白な肌
綺麗な首筋に艶容な唇
通った鼻筋に長い睫
忘れるはずがない
だけどあたしは今まで
気付きもしなかった
どうして?
:10/04/19 20:35
:D905i
:2Nqm1ljI
#91 [笹]
「さぁ‥
何から、話しやしょうか」
全てを見透かすような瞳は
その通りだった
あたしの全てを知っている
妙な緊張感
独特の静けさに息を飲む
至って冷静で
それでいて自然と把握した
:10/04/19 20:35
:D905i
:2Nqm1ljI
#92 [笹]
「お父さんが殺されるのを
‥見ていましたか?」
まだ脳内で再生される
残酷な映像に目をつむり
静かにそう問った
「えぇ‥確かに」
淡白な答え
真っ赤などろどろした液体が
体中を駆け巡る
:10/04/19 20:36
:D905i
:2Nqm1ljI
#93 [笹]
「まだ‥貴女は幼かったですが
相当な眼力‥
忘れもしませんぜ
あの憎悪や絶望漂う目を、ね」
微かにつり上がった唇
この余裕げな表情に
憎たらしさを覚えたのは
久しぶりだった
:10/04/19 20:36
:D905i
:2Nqm1ljI
#94 [笹]
唇をキツく噛み締めれば
じわり鉄分の生臭い味
「何故‥助けなかったのか、と」
_
:10/04/19 20:37
:D905i
:2Nqm1ljI
#95 [笹]
:
:
あの日
壱助さんはそこに居た
あたしが連れ去られかけ
父に助けを求め
父が代わりに殺されたのを
彼は黙って見ていた
最初から最後まで‥全て
:10/04/19 20:37
:D905i
:2Nqm1ljI
#96 [笹]
赤く染まった傷口を
何を訴えるでもない
そんな目で見つめてた
そして目を細めて
此方にその視線を向けた
かなりの温度差
ぴたりと視線が合った時思った
"どうして助けてくれなかったの"
:10/04/19 20:38
:D905i
:2Nqm1ljI
#97 [笹]
熱い物がこみ上げて
あたしの視線を支配した
威嚇するように睨み付けた
後ろから母の悲鳴が聞こえた
よくわからなかった
物事が急に進んで
頭がついて行かなくて
:10/04/19 20:38
:D905i
:2Nqm1ljI
#98 [笹]
とても絶望的で
地の底に突き落とされたようで
まだ幼かったあたしは
ただただ視線の先にいた
"大人"を睨むしかなかった
それから始まった母からの虐待
:10/04/19 20:39
:D905i
:2Nqm1ljI
#99 [笹]
大した物でもない脳で
必死に状況を理解しようとした
何故父は殺されたのか
何故母はあたしを傷つけるのか
_
:10/04/19 20:39
:D905i
:2Nqm1ljI
#100 [笹]
「実は‥貴女の父上と
面識がありまして、ね」
‥何故大人は身勝手なのか
_
:10/04/19 20:40
:D905i
:2Nqm1ljI
#101 [笹]
:10/04/19 20:43
:D905i
:2Nqm1ljI
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