記憶を売る本屋 2
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#522 [我輩は匿名である]
「はぁ…」

一足先に学校を出た直人は、ぼちぼち歩きながら家に向かう。

「…なぁ、どうすればいいと思う?」

誰もいないのを良いことに、直人は口に出して尋ねる。

「神崎の事?」

直人の問いに、要が聞き返してくる。

「あぁ。他にどうやって見返してやれば良いんだよ…」

弟の巧が学年トップを取った今、追い抜くことが出来なくなった。

同じトップを取ろうとも、上には薫たちがいる。

⏰:10/11/09 22:21 📱:N08A3 🆔:elepWMVo


#523 [我輩は匿名である]
要も考えているのか、返事が返ってこない。

「…………そんなに成績が大事なのかな?」

しばらくして、要が言った。

「今更そこかよ」

直人も呆れたように言い返す。

「あいつの家族が成績しか見てないんだから、大事なんだろうよ」

「まぁそれはそうだけど…。

でも、成績意外にも見返す方法はないのかなってさ」

まぁ確かに。直人も頷く。

⏰:10/11/09 22:22 📱:N08A3 🆔:elepWMVo


#524 [我輩は匿名である]
しかし、成績しか見ない彼らを、どうやって見返せるのだろうか。

「………ま、ぼちぼち考えていくかな」

「面倒見るのはほどほどにするんじゃなかったの?」

「……まぁそうだけどさぁ…、今のあいつ見てると…」

「下手すると、俺達みたいになっちゃうよ?」

その言葉に、直人は足を止める。

「でも…」

「ほっとけないんだろ?俺もそうだったよ。だからああなった」

声だけではわからないが、要はきっと、後悔しているのだろう。

⏰:10/11/09 22:22 📱:N08A3 🆔:elepWMVo


#525 [我輩は匿名である]
直人にはわかった。

「…………考えるだけなら構わねぇだろ」

ちょっと間黙り込んだあと、直人は口を開いた。

「そりゃあ、考えるのは自由だからね」

要は少し笑っているようだ。

考えるだけで終われるなら苦労しないんだけど、と。

⏰:10/11/09 22:23 📱:N08A3 🆔:elepWMVo


#526 [(o^〜^o)]
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
>>601-700
>>701-800
>>801-900
>>901-1000

⏰:10/11/11 11:18 📱:F01A 🆔:yy6g86Pg


#527 [我輩は匿名である]
結局、クリスマスに何かをプレゼントできる雰囲気じゃないまま、冬休みに入ってしまった。

「結局、何もプレゼントできなかったね」

寒いから布団にくるまっている直人に、要が言う。

「しゃーねぇだろ…。思い浮かばなかったし、そんな空気でもねぇし」

「まぁね…」

「直人ー!」

階段付近から、直人の母親の声がする。

「んあ〜?」

直人はめんどくさそうに、顔だけ出して返事する。

⏰:10/11/20 21:51 📱:N08A3 🆔:XcM6i1lA


#528 [我輩は匿名である]
「トイレットペーパー買ってくるの忘れたから、買ってきてー!」

「はぁー!?」

「寒がってないで、たまには外出なさーい、男でしょー!?」

「関係ねぇだろ…」

ブツブツ言いながらも、直人は布団から出てくる。

そして、ふとある事を思い出した。

「…俺前にもこんな事………あぁ!思い出した!

俺が初めてタイムスリップした時も、トイレットペーパーだった!」

「タイムスリップ?あぁ、本の中身?」

⏰:10/11/20 21:52 📱:N08A3 🆔:XcM6i1lA


#529 [我輩は匿名である]
「そうそう!」

出て行ける格好をして、直人は部屋を出る。

「あっ、行ってくれんのね。はい、お金」

母親はにこやかに、500円玉を直人に手渡した。

「おぅ、ちょっくら行って来るわ」

「薬局が今日安いらしいから、そっちで買ってきてね」

「はいはい」

直人は背中で返事をして、靴を履いて家を出た。

⏰:10/11/20 21:52 📱:N08A3 🆔:XcM6i1lA


#530 [我輩は匿名である]
ダウンを着てはいるが、顔に冬の寒さが突き刺さる。

「さみー!この寒さヤバくね?」

「俺寒さとか感じないから大丈夫♪」

要は明るい声で言った。

「え、そうなのか?」

「だって俺、幽霊みたいなものだから」

「……そっか…」

そう言われると改めて、自分の置かれている状況が異色すぎることに気付かされる。

直人はしばらく、黙ったまま歩を進める。

⏰:10/11/20 21:52 📱:N08A3 🆔:XcM6i1lA


#531 [我輩は匿名である]
「直人は俺がトイレットペーパー買いに行かされた時から知ってたんだな」

「まぁそういう事だな……ん?」

直人は返事をしながら、前方に女性が歩いているのに気付いた。

見慣れた茶髪に、見覚えのあるプーマのジャージ。

「神崎!」

直人は白い息を吐き出して、女性に声をかける。

すると、ジャージの女性は振り返った。

「水無月」

「何してんだ?お前」

飛鳥に駆け寄り、尋ねてみる。

⏰:10/11/20 21:53 📱:N08A3 🆔:XcM6i1lA


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