記憶を売る本屋 2
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#225 [我輩は匿名である]
薫は呆れたように、髪をかきあげながらため息を吐く。
「…神崎は、安斎に知られたくないんだよ。…自分の前世の事を」
「はぁ?」
直人は少し落ち着いて、薫の顔を見る。
「何でだよ?あいつら友達だろ?」
「友達でも、話したくない事ぐらいある」
「そうだけど…」
薫は困ったように、肩を落としてポケットに手を入れる。
「…お前、安斎と神崎見ていて、何も思わないのか?」
:10/05/24 07:54
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#226 [我輩は匿名である]
「何もって…別に何も」
直人は検討もつかず、首をひねる。
鈍感すぎる直人の面倒に疲れて、薫は手を出し、その場にしゃがみこむ。
「もうお前見てると疲れて仕方ねぇよ…」
薫にここまで言われてしまい、直人は何だか恥ずかしくなってきた。
「だから、何だよ!?ハッキリ言えよ!!」
直人はしびれを切らして声を荒げる。
それを聞いて、薫は勢いよく立ち上がった。
「じゃあ言ってやるよ!この鈍感野郎!!」
:10/05/24 07:56
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#227 [我輩は匿名である]
いきなり大声を出されて、直人はぎょっとする。
「な、何がだよ!?俺は別に…」
「お前が鈍感じゃないなら、どういう奴が鈍感なんだ!?
お前がちゃんと分かってたら、神崎もあんな変な帰り方せずに済んだのに!」
「あ、あいつが帰ったのは頭痛ぇからだろ!?」
「そこが鈍感だって言ってんだよ!
あんなあからさまに逃げるような帰り方で、頭痛なわけないだろ!!
わからないならもう喋るな!!」
「何だとこの野郎!!」
直人はカッとなって、薫に掴み掛かる。
:10/05/24 07:56
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#228 [我輩は匿名である]
「本当の事だろう!?もうちょっと人の顔色とか気にしたらどうなんだ!」
同様に、薫も直人を睨み付けながら、彼の手を振り払う。
「してんだろうが!!」
「お前の『してる』は、やってるうちに入らねぇんだよ!」
「じゃあお前は出来てんのかよ!?
いつも何でも知ってるような、涼しい顔しやがって!!」
「お前よりは出来てるだろうなぁ!お前みたいなバカと一緒にするな!」
薫の一言に、直人はもう我慢できなくなった。
固く握り締めていた拳を、薫めがけて振り下ろした。
:10/05/24 07:56
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#229 [ま]
:10/05/27 07:51
:P04A
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#230 [我輩は匿名である]
一方、飛鳥は1度も足を緩めないまま、家に飛び込んだ。
大きな音を立てて玄関のドアを閉め、そこにもたれかかる。
かなり息が上がっている。
「(……聞き流せたら良かったのに…)」
うつむきながら、そんな事を考える。
自分にもっと余裕があれば、こんな怪しまれる帰り方をしなくて良かったのに。
「(…響子なら…もっと上手く誤魔化せるんだろうな…)」
自分の不器用さが悔しくなる。
「もうちょっと静かに帰ってきてくれる?」
目の前で声がした。
:10/05/27 22:06
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#231 [我輩は匿名である]
顔を上げて見てみると、1歳年下の弟・巧(たくみ)が、
見下すような笑みを浮かべて立っている。
「巧…」
「何?その顔。いじめられた?」
気取ったように笑う弟に、飛鳥はムッとして睨み返す。
「まっ、出来損ないなんだから、いじめられても仕方ないよね。
家でも全く相手にされてないんだから、当然じゃない?
でも、だからってドアに八つ当たりしないでくれる?迷惑だから」
:10/05/27 22:06
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:5.N2WMSE
#232 [我輩は匿名である]
「何…」
「悪いけど、出来損ないの相手してやる暇ないから」
飛鳥が言い返す前に、巧は意地悪い笑みを浮かべて、自分の部屋に入っていった。
飛鳥は黙ったまま、巧が去っていった方向をじっと見つめる。
あんな生意気な弟に言い返す事すら出来ない。
確かに家の中では、空気のような存在でいる自分。
飛鳥は靴を脱ぎ捨て、自分の部屋に足を動かす。
:10/05/27 22:06
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#233 [我輩は匿名である]
部屋に入ってドアを閉め、その場に座り込む。
誰かと話したくても、携帯電話も持っていない。
自分はどこまでダメな人間なんだろう。
そう思うと涙が出てきて、飛鳥は1人、そこで静かに泣いた。
:10/05/27 22:07
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#234 [我輩は匿名である]
次の日、直人は頬に湿布や絆創膏を貼って登校した。
多分、薫も同じような顔で来るのだろう。
あの後薫と殴り合いになってしまい、仲直りもせずに帰ってきたのだった。
「(…確かにあいつ程頭良くねぇし、ちょーっと空気読めないかもしれねぇけど)」
まだ納得がいかず、直人はムスッとする。
「おはよっ♪」
たまたま後ろにいた奏子が、直人の背中をたたいた。
「…おう」
「えっ、何その顔!?」
直人の顔を見て、奏子が驚いて声を上げる。
:10/05/28 21:53
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