記憶を売る本屋 2
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#550 [我輩は匿名である]
そう言って、薫は小さく笑った。
「それにお前を殺しても、あの日に戻れるわけでもないし、
俺が霜月優也に戻るわけでも、響子が長谷部今日子に戻るわけでも、
直人が長月要に戻るわけでもない。だったら何のメリットもないだろ。
…まぁ、だからといってお前が自殺したのが正しかったとは思わないけどな」
「あぁ…それは…そうだと思う…」
薫にそう付け足されて、飛鳥は少し肩をすぼめる。
:10/11/25 20:36
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#551 [我輩は匿名である]
「そんなに気になってたのか?ほんと小心者だな、お前」
「ほ…ほっといてよ」
飛鳥はむすっとして目を逸らす。
「……今の話…」
良介と奏子は、それぞれ複雑な気持ちで、しばらくそこに留まっていた。
:10/11/25 20:37
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#552 [あんちむ]
:10/11/29 12:09
:SH05A3
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#553 [あんちむ]
:10/11/29 12:10
:SH05A3
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#554 [我輩は匿名である]
3学期。
「あーあ、テスト全然わかんね」
「どうせ冬休みの課題、答え丸写しして終わらせたんだろ」
この日は、冬休みの課題を踏まえた実力テストだった。
「あんな量1個1個やってられるかよ」
「まぁ、俺も半分ぐらい写したけどな」
空になった弁当箱を片付けながら、薫は笑う。
「お前もかよ。…で?今回はちゃんと1位取れそうなのか?」
直人は良介の事を思い出し、薫に聞いてみる。
すると、薫の動きが止まった。
:10/12/15 17:40
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#555 [我輩は匿名である]
「……嫌な事思い出させるなよ…」
「何だ、忘れてたのか」
「…でも今回何も言ってこなかったな。あいつも忘れてるんじゃないか?
っていうか、いい加減忘れてほしい」
「無理だろ」
「月城ー!」
クラスメイトが、教室に入ってくるなり駆け寄ってきた。
「何」
「今廊下で聞いたんだけどさ、スキー実習のグループ、4組と一緒らしいぞ!」
「へぇ、良かったじゃん。嫁と一緒で」
:10/12/15 17:40
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#556 [我輩は匿名である]
「嫁のストーカーも一緒だぞ」
わざわざ急いで言いに来た意味をわかっていない直人に、クラスメイトが補足する。
「うわ、めんどくせぇ」
「…終わった…俺のスキー実習…」
薫は早くもげっそりしてうなだれている。
直人とクラスメイトは、哀れみを込めた目で薫を見る。
「水無月くん!」
いつ来たのか、響子がバン!と机をたたく。
「うわ、びっくりした。いつからいたの」
「今!それよりね!」
:10/12/15 17:41
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#557 [我輩は匿名である]
「聞いたよ…スキー実習が地獄になる事だろ…」
薫は壁にもたれながら響子に言う。
「違う!飛鳥ちゃんと奏子ちゃんが、とうとう1対1で話し合うって」
「え、マジで?」
「うん。さっき奏子ちゃんが来て、2人で行っちゃったのよ」
「やっとかよ。つーか、あの2人何で喧嘩してたの?」
直人は響子に聞き返す。
ここまで来て理由をわかっていない直人に、響子と薫は呆れてため息を吐いた。
:10/12/15 17:41
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#558 [我輩は匿名である]
飛鳥と奏子は、階段の踊り場にいた。
「ごめん、呼び出したりして」
「…ううん、あたしも話したい事あったから」
緊張しつつ、飛鳥ははっきりと受け答えする。
「……1つ、謝らなきゃいけないんだ」
奏子は視線を落として白状する。
「この間、神社のベンチで月城と喋ってるの、……聞いちゃったんだ」
「……“私”が、自殺したって話?」
飛鳥に聞かれ、奏子は申し訳なさそうに頷く。
あれだけ知られたくないと思っていたが、なぜか怒る気にならない。
:10/12/15 22:00
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#559 [我輩は匿名である]
「……いいよ、いつか話さないといけないのかなって思ってたし…」
「…そっか。…………じゃあ、1つ聞いていい?」
「…うん。何?」
「…水無月の前世の事」
覚悟はしていたが、ドキッとした。
飛鳥はしばらく黙り込む。
「…知り合いだったんだよね?」
「………うん」
飛鳥は自分を落ち着かせようと、息を吐く。
「……前世の私が、唯一好きになった人だった」
:10/12/15 22:00
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