亡き君に告ぐ
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#165 [不発花火]
どうせなら、美しく死にたい


―美しい死体―

⏰:11/01/21 22:11 📱:SH04B 🆔:esLpyWR6


#166 [我輩は匿名である]
恵まれた容姿。
恵まれた頭脳。
恵まれた家庭。

何一つ不自由はなかった。

けれど、それは孤独の魔法。

美しいと言われる容姿は同性から嫉まれ、異性からは近寄り難いと言われ、いつも一人だった。
恵まれた頭脳は同性からも異性からもお高く止まっていると言われ一人になった。
恵まれた家庭は近所から嫌みだと疎まれた。

⏰:11/01/21 22:11 📱:SH04B 🆔:esLpyWR6


#167 [我輩は匿名である]
両親だけが私の味方だった。
両親はいつも一人でいる私の気持ちを汲んで、昔から「辛かったら家にいればいい」と言ってくれた。
それが嬉しかった。
無理矢理外に出されるよりも、一人で家にいた方がずっと気が楽だったから。

でも、私の唯一の味方だった両親も先月交通事故で亡くなった。

私に残されたものは一生働かなくとも生きていける程の莫大な財産だけだった。

⏰:11/01/21 22:11 📱:SH04B 🆔:esLpyWR6


#168 [我輩は匿名である]
そんな大金だけがあっても、所詮は一人。
今更外に出て友人や恋人を作る気などさらさらなかった。

どうせまた一人になるのだ。
また一人になる虚しさを感じるくらいなら初めから一人だった方がいい。

一人で死んだ方がいい。

だから私は、恵まれたこの容姿を崩さないまま死ぬことを決めた。

⏰:11/01/21 22:12 📱:SH04B 🆔:esLpyWR6


#169 [我輩は匿名である]
生きていても一人。
ならいなくても同じ。

だから私は今、高層ビルの屋上にいる。

飛び降りの遺体は悲惨なものだと聞くが、臀部から着地すればそれは綺麗な死体になるらしい。

だから、臀部が下になるように飛び降りた。

⏰:11/01/21 22:12 📱:SH04B 🆔:esLpyWR6


#170 [我輩は匿名である]
これで私の遺体は綺麗なまま。
美しいまま。

なのに、どうして。

なぜ私は飛び降りたはずの場所に佇んでいるのか。

確かに飛び降りたはずなのに。

「お姉さんが望んでいる綺麗な死体とは程遠いものだったからだよ」

「!?」

⏰:11/01/21 22:12 📱:SH04B 🆔:esLpyWR6


#171 [我輩は匿名である]
クン、と服を捕まれ、そこを見ると小さな少年がいた。

黒い髪に、大きな瞳。
可愛らしい顔立ちの少年がいつの間にか私の隣にいた。

「なんで…」

「臀部から着地しようとしたみたいだけど、そんなの偶然じゃなきゃうまくいかない。お姉さんの死体は脳みそグチャグチャで体は変な方向に曲がり放題。骨も突き出てたしね」

⏰:11/01/21 22:13 📱:SH04B 🆔:esLpyWR6


#172 [我輩は匿名である]
グロテスクな言葉をスラスラと不釣り合いな程軽々しく少年は口にした。

「そんなの嫌っ…!そんなの私が望んでいる死体じゃない!」

知りたくなかった。
自分は綺麗な死体になりたいのだ。

「だから僕はここにいる。お姉さんが満足するまで僕は何度でも自殺に付き合うよ」

この少年は何を言っているのだ。

⏰:11/01/21 22:13 📱:SH04B 🆔:esLpyWR6


#173 [我輩は匿名である]
そんなことが可能なのか。
でも、現に私は確かに飛び降りたはずなのにここにいる。

飛び降りた高層ビルの下にいるのが何よりの証拠だった。

「でも、途中で死ぬのをやめることは出来ない。だってお姉さんは一度死んでいるもんね?お姉さんは自分が満足する死体になるまで何度でも死ななきゃいけない」

くすくすと少年が笑う。

⏰:11/01/21 22:13 📱:SH04B 🆔:esLpyWR6


#174 [我輩は匿名である]
それでもよかった。
どうせ生きていても一人。
美しい死体になるまで何度だって死んでやる。
一度死ねたんだ。

また一人であの孤独感を味わうのなら、死んだ方がマシだ。

「…わかった」

さぁ、次はどうやって死のうか。

NEXT

⏰:11/01/21 22:14 📱:SH04B 🆔:esLpyWR6


#175 [不発花火]
感想
>>12

1 亡き君に告ぐ
>>2-11
2 指名手配犯
>>13-16
3 亡者の館
>>17-30
4 演奏人形
>>32-36
5 性春ハイスクール
>>39-43
6 シャム双生児
>>46
7 深海に、沈む
>>47-61
8 夢を見る少女
>>62-75
9 リストラ、その先は
>>77-131
10 殺人犯の憂鬱
>>133-158
11 亡き君へ
>>160-164
12 美しい死体
>>165-174

⏰:11/01/21 22:16 📱:SH04B 🆔:esLpyWR6


#176 [我輩は匿名である]
気になります

⏰:11/01/24 23:09 📱:N08A3 🆔:kF.WyjM.


#177 [我輩は匿名である]
確かに地面に叩き付けられる直前に例えようのない恐怖を感じたというのに。


―美しい死体(2)―

⏰:11/01/27 10:31 📱:SH04B 🆔:0FYnLcmw


#178 [我輩は匿名である]
私の最も理想的な死体は、かの有名な世界一美しいと言われるミイラ「ロザリア・ロンバルド」だった。

まるで人形のような、未来永劫老いることのない美しい死体。

⏰:11/01/27 10:32 📱:SH04B 🆔:0FYnLcmw


#179 [不発花火]
溺死は二目と見られない程醜い死体になると聞くし、青酸カリは泡を吹き遺体はアーモンド臭がするらしいから却下。

首吊りや列車衝突も却下。

美しく死にたかった。

孤独で寂しい人生を送っていた分、一目を惹くような、美しい死体になりたかった。

⏰:11/01/27 10:33 📱:SH04B 🆔:0FYnLcmw


#180 [不発花火]
「凍死するしかないよ」

隣で少年が笑いながら言う。

あれから少年は、私の傍にくっついて回った。

私自身は確かに一度死んだはずなのに、なぜだか他の人間に見えてはいるが(普通にコンビニで買い物が出来たのが証拠)、少年は誰にも見えていなかった。

⏰:11/01/27 10:33 📱:SH04B 🆔:0FYnLcmw


#181 [我輩は匿名である]
「凍死なんて出来る訳ないでしょ。冷凍庫にでも押し込むつもり?」

少年の皮肉に、私も皮肉で返すが少年は気にしていないようでまだ笑っている。

「僕なんて首が180度曲がって口から血の泡を吹いて死んだんだよ。それに比べたら冷凍庫に入って凍死のがいいでしょ」

⏰:11/01/27 10:33 📱:SH04B 🆔:0FYnLcmw


#182 [我輩は匿名である]
どこがいいんだ。
業務用冷凍室のような広いところならともかく、家庭用の冷凍庫に押し込められて死ぬなんてドリフのコントでもそんなのはない。

それはともかく、少年の言葉が気にかかった。

傍にいる、名前も知らない少年の死に方。

事故だろうか。

⏰:11/01/27 10:34 📱:SH04B 🆔:0FYnLcmw


#183 [我輩は匿名である]
「…君は殺されたの?」

少し遠慮がちに聞くと、少年は一瞬笑顔を消すが、またニコニコと笑い始める。

「…違うよ。事故だったんだ」

「…事故…」

少年は見た目からして小学2、3年生くらいだろうか。

⏰:11/01/27 10:39 📱:SH04B 🆔:0FYnLcmw


#184 [我輩は匿名である]
その年齢なら事故死でも納得がいくが、まだ幼い少年の急な死を憐れに思った。

「僕はブランコから投げ出されたんだよ…」

少年の笑顔の中にどこか悲しげなものが混じっていたのは、きっと気のせいじゃない。

⏰:11/01/27 10:40 📱:SH04B 🆔:0FYnLcmw


#185 [我輩は匿名である]
「この話は終わり!さあ、お姉さんはどうやって美しく死ぬつもりなの?」

「…私は」

美しく死ぬことは難しい。
餓死は醜いし、きっと誰かしら異臭に気付き腐敗してる遺体を見付けるだろう。

それだけは嫌だった。

やはり凍死が一番理想的だが、用意が出来ない。

⏰:11/01/27 10:41 📱:SH04B 🆔:0FYnLcmw


#186 [我輩は匿名である]
エベレストにでも行く?

なんて、冗談。
それならば。

「…樹海に行く。綺麗なドレスを着た白骨死体なんて素敵じゃない?昔お母さんが話してくれた令嬢も、綺麗なドレスを着た白骨死体で見つかったの」

彼女のような、死して尚愛されるような美しい死体に。

⏰:11/01/27 10:41 📱:SH04B 🆔:0FYnLcmw


#187 [我輩は匿名である]
「…磁場が狂う程奥に行かなければ死体なんてすぐに見付けられちゃうよ」

「樹海でコンパスが効かないなんて話、信じてるの?それに失敗すればまたやり直せるんでしょう?」

満足のいくまで、私は何度だって死んでみせる。

その時の私は、自分が一度感じた死への恐怖にまだ気付けないでいた。

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⏰:11/01/27 10:41 📱:SH04B 🆔:0FYnLcmw


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