… 極楽(18禁)愛戯 …

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「目標金額…？」

ずっとあたしが黙ってたこと｡

「うん……」

龍の腕に絡めた手の強さをぎゅうっと､さっきより強く絡める｡

離したくないの…でも…

「あたし海外行きたいの…」

「……」

秘密なんじゃない｡

でも言えなかったの｡

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「…海外と俺なら､海外だよな」

さっきまであった笑顔は､龍の顔から当然なくなった｡

「…悩んでる｡」

「夢と俺で悩んでるの？」

うん､とあたしは言った｡

正直､龍の過去を聞いてから余計に彼に対する情がわいたというか､絶対一緒に居ようと思えたし､前より愛そうと思えたから､

夜の仕事を続けてる意味もよくわからなくなってきたのも事実｡

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「…俺が言ってどうこうできるものじゃないから､好きにしたらいいと思うよ｡凛が決めたことに俺は何も言えない｡」

かっこつけてるよな俺…

本当は一緒に居て欲しいくせに意地張ってさ｡

「凛は夢追いたいから夜したんだろうし…」

勧めてどうすんだよ俺…

ちゃんと止めたいならとめろよ､ださい男だな｡

「な？」

頭を撫でながら優しく言う俺｡

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凛はその日､うん…としか返事をせず､あまり話もお互いしようとしなかった｡

だからと言うわけじゃないけど今俺はあのクソ女と会ってる｡

古びた喫茶店で向かい合わせ｡

「……龍､相変わらずかわいい顔のまんまで安心したわ｡」

あんたはどんどん老けてってるね｡

「ずっと避けられたけど…謝ろうと思ってね｡」

話の内容は俺をお世話しはじめた頃までさかのぼる｡

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龍が５歳のとき｡

妻子がないと言われてた龍の父親からの家族の告白｡

ホステスとお客さんで恋に発展して､本気で彼を愛した｡でも騙されてた｡ …ほんとにまさかだ｡

喧嘩したある日､

「俺には家庭もあるんだ! …今更だけどお前と家族じゃ比べものにはならないよ…」

ショックだった｡

本気で愛したひとには自分よりも大事なひとがいることが｡

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怒りよりも悲しみよりも､なんだかただ無性に寂しかった｡

そんな頃にあたしを頼りにしてくれる龍を愛したいと思った…

無理矢理あたしに押しつけてきたけれど､憎みたかったけど､大人の勝手な都合で捨てられたも同然な龍は､あたしと同じ境遇なんだと勝手に思えた｡

今になって思うけど､龍と父親には他にも女がいた｡あたしには都合よく龍を押しつけてきたけど｡

別居して離婚したけど､あたしのもとには結局来なかった｡

…あたしも捨てられた｡

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「別れるから｡」

と耳元で囁く彼｡

「そばにいて｡」

と泣きそうな声で涙を目にためる龍｡

「俺にはお前だけだよ…」

と嘘でも上辺で言う彼｡

「僕には冴子姉ちゃんしか…いないから｡」

と嘘偽りのない表情で言葉を発する龍｡

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１５歳になった龍は､周りの男の子達よりも十分なくらい大人っぽくて､色っぽかった｡

…何より彼に似てきた｡

正直それで愛しくて､甘えてくれる彼に自分が甘えてしまったんだと…今は後悔してる｡

彼にも捨てられ､龍にも捨てられて､…あたしには一体なにが残るの？て思ってしまう｡

「ごめんなさい……」

いろいろあったけれど冴子は俺を世話してくれた人だ､何があったとしても自分の親は俺を捨てても冴子はちゃんと面倒をみてくれた｡

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「…いいよ､頭あげて？」

なんとなく俺も優しくなれた｡たぶんこれも凛を愛して愛されたからだろう…人に対して優しい気持ちになれるようになった｡

「ありがとうな､冴子…」

「龍ちゃんも大人になったよね…ほんと､あたしが老けたというか…」

くすくす笑う冴子は本当に老けた｡もう３０歳後半になるのかな？

「龍ちゃん…」

しあわせになってね､とだけ言うとお会計を取り上げて店をでていった｡

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「……俺なにやってんだろ」

好きな人を止めることもできず､世話になった人間のために何かできるだけでもなく､…ずっと夜の仕事をやってく気なのか？

思いたったらすぐに実行するたちなので､早速代表の楓さんに相談､というか報告することにした｡

「もしもし？お疲れさん」

「楓さん……俺､やめようと思ってるんです｡」

沈黙が少し続く｡

「突然だな｡」

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…ですよね､と俺も失笑する｡

そんな突然やめれる仕事じゃないと思ったからこそ､今すぐに伝えておかないと､と思った｡

「理由は？」

「女っす｡」

まじか､と楓さんは笑った｡

たぶん一番予想してなかった理由だからだろう｡

「今の彼女まじで本気なんだ」

びっくりだな､とあっけに取られた様子の楓さん｡

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「お前来月バースデーだし､そこで打ち切ったら？俺のなかでは､まだまだ頑張ってもらいたいけど…まあ十分だよ｡」

すいません､と一応謝りの言葉を入れておいた｡

「お前､昼の仕事するなら俺の店みる気ない？」

楓さんはご飯屋､バーに不動産､アパレル関係といろんな仕事を展開してる｡

ホストがベースだが､いまや店になんてでずに昼の仕事がメインで動いている人間だ｡

「…えっ､いいんすか？」

「お前になら任せれる｡」

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「おねがいします｡」

電話なのに頭をさげる俺｡

恋愛も仕事もさくさくうまくいくなんて怖いくらいだ｡あとは凛を止めなきゃ｡

――

「ねえねえ……」

あたしのあまり好きじゃない先輩からロッカールームで声がかかる｡

「凛ちゃんてホストとか通うんだね～」

くすくす笑いながらその人があたしに近寄ってくる｡

「はい？」

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「あたし見たんだもーんっ♪お客さんでよく来るホストんとこ…毎日くらいでいってたでしょ｡」

彼氏だから毎日店で会う必要もないんだけれど｡

「すいませんけど…あたし､あの人のお店は1度しか呼ばれてませんよ？」

「またまた～♪風俗嬢みたいな格好してシャンパンおろしてたじゃない♪」

ほんとは風俗と掛け持ちなの？とニヤニヤしながら言う彼女｡

なにがいいたいの？

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「残念ながら人間違えだと思いますよ｡つぶしたいなら勝手にやってください｡あたしどの道夜やめるんで｡」

あたしはそそくさとロッカールームを出てタクシーに乗り込む｡

龍の店に通ってたあたしそっくりな子は確実に蓮だろう｡

シャンパンを卸して…風俗嬢みたいな格好…て｡

家につくとにぎやかに龍と友達がお鍋をやってる様子｡

「こんばんわ｡」

あたしは軽く会釈をする｡

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「凛､着替えたらこっちおいで」

少し酔って気分がいい龍に､わかったよ､というと寝室においてあるスウェットに着替えてリビングに戻る｡

「はじめまして｡」

「…凛たぶん俺が話に出してるからみんな知ってると思うけど､こいつがちゃらいナベ､ホスト初期から連れの優雅､あと高校からの友達の翼｡」

ナベさんは彼女が５人くらいいるチャラくて有名なひとね｡そのナベさんとも仲良しの翼さん｡優雅さんはいまだに仕事でも仲良しだけどホストさんはあがったて聞いた｡

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５人で飲んだり､お鍋つっついたりしてると優雅さんは予定があれで帰っちゃって翼さんと龍は買い出し､といってコンビニに向かった｡

ナベさんとは仲良くなってぺちゃくちゃしゃべってる感じ｡

「……あのさ」

２人が買い出しに行った瞬間､ナベさんは少し真剣な顔して言った｡

「はい？」

「凛ちゃんて姉妹いる…よね」

「双子の妹はいますよ｡」

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はあ､やっぱりね…とため息をつく彼｡

ナベさんも蓮とつながってるの？

「ずっとこのままだから蓮のために言うよ｡俺さ…風俗店の店長してるんだよね…もうわかるよね？」

あたしは手で口元をおさえて絶句してしまった｡

「龍も俺が蓮と繋がってることは知らないと思うけど…彼女とお客さんが姉妹…てこないだいってて､俺も凛ちゃんに今日はじめてあって､つじつまが合った｡」

しかも５人目の彼女なんだよね最低なことに､と苦笑いするナベさん｡

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龍が龍だから､渡辺竜さんがナベさんになったんだね｡

それにしても…蓮､あたしに隠し事してなにやってるの？

「正直いっとき､…たぶん龍にはまりきってるとき､蓮のことみれないくらいやつれちゃってて…心配になって､そばにいてやれば体も心も癒されるかな､と思ってさ｡俺は龍みたく純粋になれないから｡」

はは､と笑うナベさん｡

「まあ…でもなにを理由に風俗してるか知らないけど…俺から辞めろと言おうが辞めないしさ…そんな友達いるイメージもないから､辞めさせてあげな？」

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「…教えてくださってありがとうございます｡」

でもあれだね､とナベさんは言う｡

「なんで同じ顔でもここまで違うかなあ？人間てほんとおもしろいよね～」

そんなにあたしと蓮は違うのかなあ？ある意味実感がわかないし､比較されても何がどうなのかはさっぱり｡

でもショックだった｡

自分の実の妹が風俗の世界に入ってたなんて｡仕事の種類はいろいろだから､否定する気はないけど､本人が完全に偏見を持ってる仕事だったから､なおさら疑問に思えた｡

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『風俗とかする女ってほんと人生終わってるよね』だとか､『恥ずかしいと思わないの？』だとか卑下にしてたし批判もしてたからこそ､なんで？とさえ思えた｡

確かに一般世論からするといい印象を受ける仕事ではない､けれど…主観は人それぞれ｡普通の接客よりも気を使うだろうし､ストレスや精神的にも大変なお仕事なはずだ｡

…反対する気はないけれど､親にもあたしにも言えないから陰でやってるんだろう｡

「ただいま～」

何も知らない龍と翼さんが帰ってきた｡

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>>002

アンカーです

>>003-050
>>051-100
>>101-150
>>151-200
>>201-250
>>251-300

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先ほどの話はなかったことのようにあたしたちは缶チューハイとかを飲みながら盛り上がってた｡

最終的に４人で夜の街にでようってなって歩いていると､……ほんとタイミングが悪いというか､奇遇というか｡

前から蓮がひとりであるいてきた｡

「竜……っ」

と､自分の彼氏をみてあたしと龍の存在に気づく蓮｡もちろん意味のわからない状況であろう｡

自分がはまってたホストと自分の彼氏とが繋がってるなんて｡

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その場が逃げだそうとする蓮をナベさんは追いかけて少し離れたところで話してる｡

「……龍は知ってたの？蓮が風俗やってるの…」

あたしは龍を見つめながら言う｡

「知ってるというと嘘だけど金の使い方が風俗嬢くらい使ってるからさ…かもな？どうかな？とは思ってたけど…本人から聞けることじゃないから……」

確かにそうだけど｡

「始めた理由がホストに通うためとかじゃないよね？」

それはわかんない､と応える龍｡

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風俗におちてしまう子の半数がホストクラブで遊ぶためだからとも言われてる｡

勿論､自分の美容や磨きのための子もいれば家族や自分の借金や生活費､当然からだをつかう仕事が好き…てひとだっている｡

蓮はなんでしてるの…？

――

「なんで竜があたしの姉と…あいつの知り合いなわけ？」

「龍とは学生のときからだよ｡今日凛ちゃんに会ってはじめて蓮と姉妹なんだって確信したけど……凛ちゃんには言ったから｡」

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嘘……

「うそでしょ？」

レオンでも黙っておいてくれたことだったのに｡

「お前のため､だよ」

「余計なお世話だよ!!!!」

一番見下されたくない人間に自分のマイナスポイントを知られるのはスゴく屈辱的だ｡

もちろんわかってる…凛はいい子だから親に言ったりはしないし､自身もあたしに強く言ってきたりはしない｡

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でも秘密がまたひとつ漏れる｡

あたしのボロがどんどんこぼれ落ちている｡

もう…ここまでくると開き直るか､凛に何を言われてもしらばっくれるかしかない｡

「…竜､もういい｡」

あたしは捕まれた腕をふりほどいて違う方向に歩いてった｡

どうせ追いかけてくれるはずもないから｡

「蓮､待って」

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腕を掴んできたのは凛だった｡

「……あたしは､蓮が何をしてるか関係ないし､好きなようにすればって思ってる｡だから…これからは何でも話してほしい｡」

少し切なそうな顔をする凛｡

分かってる…あなたはいい子だからあたしを想って言ってくれてるんだろうね｡

でもその【白】すぎるあんたは､真っ【黒】なあたしにとっては逆効果すぎるんだよ｡

眩しすぎて､近寄れない｡

「わかったよ､ありがと」

とだけ伝えるとその場を去った｡

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蓮には最近いいことはない｡

レオンに貢ぎ倒すし､凛には風俗バレるし､竜との関係は終了するし…

…あの日以来竜の店には出勤せず､風俗をやめて凛と同じキャバ嬢になったが､前みたいに稼ぎがいいわけではないので生活難だし､何よりノルマ等が大変｡

凛が､あんなにくたくたになってかえってきてた理由が納得できる｡

まあでも充実してる｡

あたしも【黒】よりも【グレー】くらいにはなれたかな？

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――…

ピンポーン｡

裸のまんまで絡み合ったまま寝てるふたりを邪魔する鐘の音｡早朝なんだけど…俺は重い体を起こしてインターフォンをみる｡

夫婦？まさか…

「凛っ､あれお前の父親と母親かっ？」

俺は急いでジーパンにＴシャツを着る｡

「ん～？」

と同時に凛の携帯が鳴る｡

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『もしもし？あなた自宅にいないの？』と電話口で母親らしき声が聞こえる｡

「今起きたの～…」

凛はパジャマにそそくさと着替えるとオートロックをあける｡

普段から部屋を綺麗にしておいてよかった｡何も片づけるところがない｡

でもまさか､凛の両親にこんな早く挨拶しなくなるなんて｡

ガチャ―…

「おじゃまします」

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「…初めまして､凛さんとおつき合いさせて頂いてる黒崎龍と言います｡」

玄関あがるなり､龍は深々と頭をさげていうから､あまりの真面目さに両親はびっくりしていた｡

「…いい人じゃない～」

「龍くんは何のお仕事をしてるのかな？」

前々から､凛とお互い言ってたんだ｡凛の親には仕事のことは､申し訳ないけど伏せて話そうって｡凛は会社員､俺は夜の店の経営者ってことにしてる｡

「稼いでるからこんないいお部屋に住めるのね｡凛はちゃんと感謝しないと｡」

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凛の両親はかなり俺のことを気に入ってくれたみたいだし､かなり仲良くなれた気がする｡

仕事については嘘をついてるけど数週間後のイベントでラストだし､楓さんの意向で夜のバー運営とアパレルのモデルとかを推薦されてるから､できるかぎりのことはやる予定｡

凛の両親がかえってから打ち明けた｡

「俺２週間後のイベントでホストあがるから｡」

だから……

「凛もがっても､俺のそばにいてもらいたい｡」

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「……実は海外行くって言ったとき､止められなくてショックだった｡あたしの中では海外に行く夢よりも龍と一緒にいれることが幸せだと思えたから……」

だから…

「嬉しい……」

結局止めてもらいたかっただけか､凛も｡

「俺をひびらすなよっ」

「……だって～」

俺たちは違う道を歩みはじめる｡

>>272

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ラストイベント―…

正直バースデーも辞めるって決めた時点からやる気はなかった｡けど､店のためにできることといえば最後の最後まで売り上げをあげること｡

ほんと…ホストを長い期間続けてきていろいろあった｡大変すぎて体調を崩したことも､嫌になって途中で投げ出したくなったときも…

もちろん未収を飛ばれて痛いめを見たこともたくさんあった｡

「～最後かあ…」

５年と半年｡俺ももうすぐ２４歳になる｡

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白スーツに赤い薔薇を胸元にさしてラメスプレーを頭にちらばせる｡

楓さんに貰ったこのスーツは本当に着るだけで身がひきしまる｡ラストにはふさわしいけど､もったいないくらい高貴な感じがする｡

大好きなブルガリブラックを首もとにふると最後の営業日がスタートする｡

…席についた途端泣き出す子もいた｡

もちろん今日は楽しもうといってシャンパンを大量に卸すいいお客さんもいた｡

「ありがとう…」

いつも以上に感謝の気持ちでいっぱいで深々と頭をさげてお礼をつげる｡

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下の子に言われて､入り口のとこまで出ると

「龍…」

仕事終わりなのかドレスを着た凛が店に足を運んでくれた｡いままで自ら店にきたことがない凛だけど､ラストに花は添えたいといってたからな…

赤い薔薇の花束とお疲れさまのメッセージカード｡俺は席には通さなかった｡

そのままがんばってね､というと凛は先に自宅にかえっていった｡

やはり彼女にホストをしてる俺ていうのはあんまり見せたくない｡

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営業時間がまもなく終わるってときにはもう満卓が数時間続いてる状態だった｡

俺はステージにおかれた椅子に座らされて楓さんがマイクを持つ｡

「…いまだに覚えてます｡１８になったばっかのコイツが店に入店してきたときは､ほんとクソ生意気なやつでした｡」

あー…もう終わるんだ｡

「…ずっと楓さんを抜くって言い続けて…もう今じゃあ､３年くらい抜かれっぱなしです｡」

ここで過ごした５年間｡

「ほんと弟みたいに可愛く想ってました｡」

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「そんなコイツが夜の世界を飛び出して､また新たな一歩へとすすみだす日がきてしまって…応援してやりたい反面､この世界でももっとレオンを見てやりたかったと思う気持ちで…結構俺は複雑です｡」

楓さんは俺のことを一生面倒みてくれそうだもんな…

「ありがとうレオン｡俺の下で一番がんばってくれて……統括ていう座もちゃんと務めてくれて｡下の子達から慕われる理由も､お客さんから愛される理由も俺にははっきりわかります｡」

お疲れさまでした､と楓さんが言ったのと同時に従業員みんながお疲れさまでした､と声をかけてくれる｡

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やべー…

と思ってたら少し涙目にも見える楓さんが俺にマイクを投げてきた｡

「あ～……すいません｡まじで何言うかを考えてなかったレオンです…」

はは､と笑う｡

「…正直５年も続くとおもわなかったし､こんな楽しい仕事を今更やめるとは思わなかったです｡でも自分のなかで目標が決まって……てなったら､この仕事とさよならしなくてはならなくなりました｡残念といえば簡単ですが､…違う形でみなさんには応援してもらいたいです」

大半の客とは確実に切ることになるけど…

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「本当にこの５年間､お世話になりました｡」

起立して､深々と頭を下げた｡

拍手が起こると同時にシャンパンコールの音楽が流れてまさかのショータイム｡

こうやってダンス練習して指導うけたり下の子のを観察して一緒に励んだりしたよなあ｡

もうこういうのもないのか｡

やべー…もう寂しい｡

「ありがとうございました｡」

無事にイベント終了…

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ひとりずつ送り出しをするんだけど､やはり泣き出しちゃう子だとか､辞めてほしくないと説得してくる子だとか､…正直面倒なお客さんが大半だった｡

付き合いが長い子には､次の仕事の話もして､また連絡すると帰した｡

最後のひとりは､５年間ずっと俺を支え続けてくれたひと｡

「レオも彼女大事にして､仕事がんばるんだよ？」

「桜も未来の旦那にそろそろ貢いであげなよ？」

ふたりで顔を見合わせてくすくす笑う｡ああ､こういうのもなくなるんだ｡

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「……またな」

「うん…､また､ね｡」

桜は最後少し眉をさげてほんのり笑った｡桜はずっと俺に気持ちを秘めてたひとのひとりだ｡

何度か酔っぱらって従業員に俺のことを相談したらしいけど｡

もし店で出逢ってなければ､桜とも違う関係を築けてたかもしれないよな｡

桜が乗ったタクシーがみえなくなるまで俺は手を大きく振った｡

おわった…俺のホスト人生幕おりちゃった｡

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店内に戻ると従業員全員とみんなが席について俺の帰りを待ってた｡

「よし､今日はみんなで飯いこ､な？」

確かにライバル意識しあってたユキヤや､お世話になってた楓さんのほかにも俺がめちゃくちゃ世話してやってた後輩３人組やヘルプの子達…

みんな仲間だもんな｡

みんなでふらふらしながら､俺は赤い薔薇の花束をもってみんなで朝っぱらから焼き肉を食った｡

めちゃくちゃ楽しかった｡

>>272

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【楓さんとの思い出】

入店同時のこともだし､一回目のバースデーで俺がこけたときに説教されたのもそうだけど､俺はプライベートでも楓さんと仲がいい｡

―…

「俺のとびっきりの店教えてやるよ!」

小さなお店の扉をあけて店内に入る｡

「こいつの俺の後輩で超がんばってるやつ｡この料理人さんは元さん｡ここは俺の超御用達のお店なわけ～」

楓さんはここに週何度も来るらしい｡

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「俺さ～…また彼女と喧嘩したんだよねえ…」

楓さんには５年つきあってる彼女がいる｡結婚したいけど仕事もあるし…相手がむしろ嫌なんじゃないかと思って思い切れないらしい｡

「…でも来月もう代表じゃないですか｡落ち着くんじゃないすか？仕事面でもプライベートでも……」

「そうだよな～」

そう言ってた楓さんもその数ヶ月後に彼女がいいタイミングで妊娠して結婚式を挙げた｡ありがたいことに､俺も呼ばれたんだけど､ふたりともスゴく幸せそうだった｡

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【ライバル･ユキヤとの思い出】

ほんと俺のこと皮肉に言うほど嫌いなやつとも仲悪いってわけじゃない｡

―…

「お前ナンバーたまには譲れよバーカ」

と酔っぱらったヤツがまた俺に絡んでくる｡

「…どうやったら抜けんだ？」

首を傾げてハテナの顔をする｡

「今日は俺につき合えよなっ」

と酔っぱらいに絡まれる俺…

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「俺ぶっちゃけお前嫌いじゃないんだけどさ～…嫌い!」

「お前なんの告白だよ…」

いらねえ､そんなのと言って俺が笑うと顔を真っ赤にしたユキヤはうどんをすすりながらフゴフゴ笑う｡

「うける｡」

俺はおしぼりを渡してやる｡

「お前今度一緒にキャバいってどっちが口説けるか勝負しよ!」

「勝ってから文句いってね♪」

ライバルはいつでもどこでもライバルのまま｡

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―…こないだから作ってたメールを送信する｡

時計は11月11日０時丁度｡

あたしの大好きなイチゴお姉ちゃんの誕生日｡血は繋がってなくても､大事な大事なあたしのお姉ちゃん｡

たくさんのおめでとうと､ハートを送ってみました｡もう…何年も会ってないけれど｡あたしは不安で仕方ないけれど｡

着信…

イチゴ姉｡

「もしもしっ？」

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久しぶりに話すとイチゴ姉は前よりもスゴく落ち着いた調子で話してた｡

「あ､そうそう」

うふふと笑い出すイチゴ姉､あたしは頭にたくさんのハテナ｡

「あたし結婚したのよ!」

たぶん左の薬指をみて笑ったのかな？自分の花嫁姿を思い出して笑ったのかな？

「…ごめんね凛…呼んであげれなくて｡旦那もあたしも５人ずつしか呼べなくてさ｡」

「いいのっ! イチゴ姉がしあわせなら…」

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どんな顔してイチゴ姉は笑ってるのかな？

あたしは考えるだけでうきうきした｡

「子供もうすぐ出てくるのよ…うふふ｡今度おうちに遊びにおいでよ｡」

「わっ､行きたいです～♪」

じゃあおみやげは甘いお菓子と子供ちゃんに何か買ってあげないと｡

「わーイチゴ姉がママさんになったんだあ♪ おばさん喜んだでしょ？」

「ん～…反対されたよ! いまの旦那はやめとけって何回も言われたけど…まだ怒ってるみたい｡ほんとに」

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近所のお姉さんの中でアイドルみたいにキラキラ輝いてたのか一ノ宮五香(いちのみやいつか)…通称イチゴ姉だった｡

喧嘩も強いし特効服もよく似合うのに､学校にいくときは短いスカートで飛び跳ねながら行った｡あたしは彼女のあとをケンケンて追って遊んでた｡

あたしと同い年くらいに都会にでて､もう今年で２５歳になる｡

そのイチゴ姉がママ!

しかも名字が変わるからイチゴじゃなくなる!

「名字かわったらイチゴ姉ってよべないね…」

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「それが旦那の名前がさ……市ノ瀬なの! だからあたしまだイチゴなんだあ♪」

うふふ､と笑うイチゴ姉｡

すごい奇遇…というより奇跡にしか思えないよ､ほんとに｡

電話30分くらい会話すると来週末会う約束をしてみた｡なんと住んでるとこも５駅くらいしか変わらないし､あっという間だ｡

まだ先なのにどきどきわくわくするよ!

その日から子供服を買いあさったり､いろんなカタログを見まくり､悩んで…としてると

「………凛？」

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目をまんまるくした龍が周りに散らばったカタログや写真､パソコンの画面をみてびっくりしてる｡

《ま…まさか…凛､お前俺との子供ができた…？》

どきどきと勝手に動揺する龍｡

「……あーん､女かな男かな？」

龍の存在には気づいてないらしい｡凛はうーんうーんと唸りながら､ずっと頭を抱えて悩んでいる｡

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