†horror†
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#201 [輪廻◆j6ceQ96kak]
男『ちょっと! 大丈夫?』

心配した男が声をかけるが、響歌は下を向いたまま放心状態だった。


響歌『雪乃…どうして…』


男『お嬢さん、一人でこんな山奥に何しにきたの?』


響歌『………』


男『ちょっと歩いた先に小屋があるから、とりあえずそこで休みなさい…』

男は響歌の肩に手を回し、ゆっくり立ち上がらせる。

⏰:11/06/20 22:12 📱:T004 🆔:VV7usoSw


#202 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌の脚に力が入らない事がわかった男は、その体格を活かして響歌を背中におぶった。


そして小屋へ向かって歩き出す。


響歌の目から一筋の涙がこぼれ落ちた―

⏰:11/06/20 22:19 📱:T004 🆔:VV7usoSw


#203 [輪廻◆j6ceQ96kak]
…………。


…………。


響歌『ん、んん…』


男『目が覚めたかい?』

目を開けると、男が優しい目で響歌を見つめていた。


響歌『ここは…』


男『登山家達が休む用に作られた小屋だよ』

小屋内を見回す。


内装は、最近できたように綺麗だ。


木材でできた机や椅子、更には自動販売機まで設置されている。

⏰:11/06/20 22:29 📱:T004 🆔:VV7usoSw


#204 [輪廻◆j6ceQ96kak]
男『さっきも聞いたけど答えられない状態だったからもう一度聞くよ。一体何でこんな山奥に来てたんだい? それも一人で…』


響歌『……一人じゃありません…雪乃が…』


男『その雪乃って…もしかして松下雪乃って子?』


響歌『ど、どうして知ってるんですか…?』

思わず身構える響歌。

⏰:11/06/20 22:40 📱:T004 🆔:VV7usoSw


#205 [輪廻◆j6ceQ96kak]
男『いやね、私は昨日からここに登山に来てて…。昨夜ここに向かってる途中で携帯電話を見つけたんだよ』


響歌『携帯…?』

嫌な予感がした。


聞くのを一瞬ためらったが、更に問いかける。


響歌『…どんな携帯…ですか?』


男『山を下りたら警察に届けようと思って拾っておいたよ』

そう言ってリュックからピンク色の携帯電話を取り出した。

⏰:11/06/20 22:47 📱:T004 🆔:VV7usoSw


#206 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それを見た響歌は顔色を変えた。


響歌『これ…雪乃の…』


男『その子とはぐれちゃったのかな…?』


響歌『そんな! だってさっきまで私の隣にいて…』

あたふたとする響歌に、男は優しく問いかける。


男『とりあえず山を下りたら警察に届けを出しなさいよ。それが一番いいと思う』

⏰:11/07/01 00:45 📱:T004 🆔:NqNNTXYQ


#207 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『……そう、ですよね』


男『ここから30分も歩けば旧道へ出れる。一緒に行くかい?』


響歌『お願いします!』


希望の光が見えた気がした。


いつの間にかいなくなっていた雪乃も、警察が見つけてくれるだろう。


そう思って、この男と行動を共にする事にした。

⏰:11/07/01 00:52 📱:T004 🆔:NqNNTXYQ


#208 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それから30分くらいの時間を小屋で過ごし、外へ出る事にした。


男『大丈夫かい?』


響歌『は、はい…』

歩く度に女将につけられた傷がヒリヒリと痛む。


男が響歌の怪我した脚をチラっと見る。


男『そこ…何か怪我でもしたの?』


響歌『い、いえ…なんでもないんです』

小さく笑い飛ばしてごまかした。

⏰:11/07/01 01:00 📱:T004 🆔:NqNNTXYQ


#209 [輪廻◆j6ceQ96kak]
言っても信じてもらえないと思ったからだ。


雪乃の携帯電話を片手に握りしめ、男の後ろに続いて歩き出す。


男『そういえば、そろそろ聞かせてくれるかな? どうしてこんな山の中に雪乃って子といたんだい?』


響歌『言ったら信じてくれますか…?』


男『もちろんだよ。何かあったんだろう?』


響歌は笑って聞き流される覚悟も踏まえ、今までの出来事を男に全て話した。

⏰:11/07/01 01:07 📱:T004 🆔:NqNNTXYQ


#210 [なみ]
続きが気になります(^〇^)頑張ってくださいっ

⏰:11/07/01 21:21 📱:N906imyu 🆔:ouJvu54w


#211 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>210さん

ありがとうございます。

2話も異様に長くなってしまいましたが、ここからラストまで一気に下り坂でいきます(^^)

⏰:11/07/03 22:55 📱:T004 🆔:kUqtO3H2


#212 [輪廻◆j6ceQ96kak]
話し終わった後、男は突然首をしかめた。


男『池崎旅館…? 確かそこは半年前に経営不振で女将が焼身自殺して、後に廃館になったはずだけど…』


響歌『…え? そんなはずは…。だって私達、現に昨日そこに来て…』


男『夢か何か見てたんだろうね…』

この男は何を言っているのだろうと思ったが、今の言葉の中の一つがひっかかった。

⏰:11/07/03 23:01 📱:T004 🆔:kUqtO3H2


#213 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『女将が焼身…自殺?』


男『ああ。新聞にも取り上げられてたはずだけどね。旅館の裏に焼却炉があるんだけど、そこに自ら入って自殺…だったかな』

ここへ来て、響歌の中で何かが繋がり始めていた。


焼身自殺した女将…


焼却炉…


旅館の狼の間にあった何かの焼けた物体…


昨夜、山の中で見た同じ物体と臭い…

⏰:11/07/03 23:05 📱:T004 🆔:kUqtO3H2


#214 [輪廻◆j6ceQ96kak]
途端に背筋が凍った。


男『だ、大丈夫かい? 顔が青白いけど…』


響歌『わからない…』

男の言葉を無視して独り言のように小さくつぶやいた。


強烈な目まいと吐き気が響歌を襲う。


男『しっかりしなさい!』

意識が飛びそうになる瞬間、男の大声でハッと我に帰った。

⏰:11/07/03 23:10 📱:T004 🆔:kUqtO3H2


#215 [輪廻◆j6ceQ96kak]
男『もう少しで旧道だ。そこからなら携帯電話も繋がると思う』


響歌『は、はい…』

目まいと吐き気も一瞬の出来事だったかのように、スッと収まった。


男に言われるがまま、再び歩き出す。


唯一、吉田と雪乃の事が気がかりで警察に頼めばなんとかしてくれると信じて…。

⏰:11/07/03 23:17 📱:T004 🆔:kUqtO3H2


#216 [輪廻◆j6ceQ96kak]
10分ほど歩いた所で、車道が姿を現した。


樹海のような山から脱出できたこの感覚に、響歌は神様に感謝したくなるほどであった。


男『携帯電話は、と…。私のは大丈夫みたいだ』

響歌も迷わず自分の携帯電話のディスプレイに目をやる。


アンテナは2つと不安定ではあるが、繋がらないよりはマシだという事で早速警察に電話をした。

⏰:11/07/03 23:26 📱:T004 🆔:kUqtO3H2


#217 [輪廻◆j6ceQ96kak]
110のボタンを押して、最後に通話ボタンを押そうとした時だった。


隣にいた男の手が響歌の腕を掴んだ。


響歌『な、なにするんですか…?』


男『せっかくここまで案内してやったんだ。礼くらいはしてもらわないとな』

男の目はさっきまでとは断然違っていた。

⏰:11/07/03 23:30 📱:T004 🆔:kUqtO3H2


#218 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『ちょっと放してください!』

手を振り払おうとするが男の力は強く、放れない。


男『アンタも雪乃って子と同じようにして欲しいのかい?』

男はニヤリと笑って言った。


響歌はその目つきと発言に何かとてつもない恐怖を感じ、体が震える。

⏰:11/07/03 23:34 📱:T004 🆔:kUqtO3H2


#219 [輪廻◆j6ceQ96kak]
男は更に詰め寄る。


男『雪乃って子がどうなったか知りたい?』


響歌『…雪乃をどこにやったんですか…?』

聞くのが怖い。


しかし今はそんな事を言っている場合ではなかった。


男『あの子なら昨日の深夜、森の中を歩いてるのを見かけてね…』


響歌『…それで雪乃はどこに!』

男は裂けそうになるくらいに口を大きく開けてニカッと笑うと、響歌に止めをさすような一言を言い放った。

⏰:11/07/04 00:01 📱:T004 🆔:wweJ6902


#220 [輪廻◆j6ceQ96kak]
男『殺したよ…』


響歌『……え……?』


男『聞こえなかったかい? 殺したって言ったんだよ』

それを聞いた瞬間、もう全てが終わったと思った…。


冗談を言っている様子はない。


男の視線は響歌をずっと捕らえている。


この場から一刻も早く逃げないと殺される…


そう直で感じた響歌は、男の手を最大限の力を使って振り払った。

⏰:11/07/04 00:11 📱:T004 🆔:wweJ6902


#221 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しかしその衝撃で、片手に持っていた携帯電話を地面に落としてしまった。


響歌は拾おうとしたが、男がとっさにそれを拾い上げる。


男『残念だったね。これがないと警察に電話ができないねえ〜』

挑発的な態度で言う。


響歌『そうだ…雪乃の携帯…』

ポケットに入れていた雪乃の携帯電話を取り出して電源ボタンを押す。

⏰:11/07/04 00:18 📱:T004 🆔:wweJ6902


#222 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しかし反応がない。


必死で電源ボタンを長押しする響歌を見た男が突然高らかに笑い出した。


男『あははっ! その携帯電話ならつかないよ。電池を抜いてあるんだもの』


響歌『え…』

後ろの蓋を取ると、電池パックが抜けているではないか。


男『昨日あの子を見つけた時、声かけたら怖がっちゃって…あの怯える顔なんとも言えなかったな〜』

⏰:11/07/04 00:23 📱:T004 🆔:wweJ6902


#223 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『…最低…!』


男『その顔…いいねぇ。若い子の強気だけど実は怯えている感じ…もっと見せてよ!』

この男、明らかにおかしい。


このまま捕まったら何をされるからわからないと思った響歌はその場から全速力で走り出した。


森の中に入るとまた同じ繰り返しになると考え車道を前へ前へと、とにかく無我夢中で走った。

⏰:11/07/04 00:29 📱:T004 🆔:wweJ6902


#224 [輪廻◆j6ceQ96kak]
どれくらい走っただろう。


止まって後ろを振り返ってみる。


追ってくる様子はなかった。


安心して、ゆっくりと歩き出す。


響歌『お願い…車…来て…』

車道の脇を歩きながら唯一の頼みである車が走ってくるのを待った。


その中で携帯電話があの男の手に渡ってしまったのが悔やまれて仕方がなかった。

⏰:11/07/04 00:35 📱:T004 🆔:wweJ6902


#225 [輪廻◆j6ceQ96kak]
個人情報が詰まっている携帯電話。


悪用される可能性は十分にあった。


響歌の住所はもちろん、友達や家族の連絡先の情報も全て詰まっている。


嫌な胸騒ぎを感じつつも、歩いていた時だった。


向こうから白いワゴン車がやってくるのが見えた。


響歌は車道の真ん中に立って、停車してくれるように手を上げて合図する。

⏰:11/07/04 00:41 📱:T004 🆔:wweJ6902


#226 [輪廻◆j6ceQ96kak]
車は迷わず停車した。


しばらくして中から二人の男女が車から降りてきた。


男性『おい、何だいきなり!』


響歌『助けてください!』


女性『どうかしたの?』

男性の態度とは裏腹に女性が心配そうな表情で言う。


響歌は例の男の事などを話すと、事情を把握した二人は響歌を車に乗せた。

⏰:11/07/04 09:16 📱:T004 🆔:wweJ6902


#227 [輪廻◆j6ceQ96kak]
女性『危なかったね。それにしたって、なんでこんな所にいたの?』


響歌『昨日アルバイト先の先輩と友達とで旅館に来たんですけど…先輩が…』

旅館で起きた事も話した。


しかし二人はあの男と同様に首をかしげる。


そしてハンドルを握りながら男性が言った。


男性『池崎旅館って、確かもうやってないんじゃなかった?』

⏰:11/07/04 09:23 📱:T004 🆔:wweJ6902


#228 [輪廻◆j6ceQ96kak]
女性『うん…そのはずだけど』


男性『響歌ちゃん…だっけ? 行った旅館を間違えたんじゃないの?』


響歌『間違えてなんかいません! パンフレットにもちゃんと池崎旅館って…』


鞄の中をまさぐってパンフレットを探すも、見当たらない。


あの旅館に置き忘れていたのだ。

⏰:11/07/04 09:29 📱:T004 🆔:wweJ6902


#229 [輪廻◆j6ceQ96kak]
女性『あの旅館って確か今、心霊スポットになってるよね』


男性『そうそう。異臭とか女の霊とか目撃談もあるしな』

心霊関係に興味があるのか、二人はなぜか微笑んでいる。


そんな中、男性が唐突に言った…



男性『今から行ってみる?』

⏰:11/07/04 09:33 📱:T004 🆔:wweJ6902


#230 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『…なっ!』

言葉を失った。

この時、言わなければよかった…と後悔する事になる。


女性『行っちゃうの?』


男性『行っちゃいますか?』


響歌『私は嫌です!』

断固拒否する。


男性『じゃあ響歌ちゃんは車の中に入ってなよ。俺達が君の先輩の事を調べてくるからさ』

⏰:11/07/04 09:37 📱:T004 🆔:wweJ6902


#231 [輪廻◆j6ceQ96kak]
車は旅館へ向けて急発進した。


走って数分もしない内に、車道の少し先に見覚えのある男の姿があった。


響歌『あっ、あの人!』


男性『なに? あのオッサンがどうかしたの?』


響歌『あの人が私の携帯を持ってるんです! お願いします…取り返してもらえませんか?』

⏰:11/07/04 09:42 📱:T004 🆔:wweJ6902


#232 [輪廻◆j6ceQ96kak]
体格のいいこの男性なら、あの男に太刀打ちできるだろうと思った響歌。


男性『よっしゃ。なんなら轢いてやるか?』


響歌『い、いや…そこまでは…』

さすがに冗談だと思っていた。


しかし車は猛スピードを出して男に突進していく。


車に気づいた男は、脇道にそれようとしたが、運転する男性はそれをさせなかった。

⏰:11/07/04 09:46 📱:T004 🆔:wweJ6902


#233 [輪廻◆j6ceQ96kak]
男を轢こうとしたその一瞬、ブレーキをかけたのは助手席に乗っている女性だった。


男性『おい何すんだよ!』


女性『さすがにこれは笑えないよ』

響歌の思いが女性に通じたのだろうか。


一方のあの男は、目を白黒させながら地面に尻餅をついていた。

⏰:11/07/04 09:52 📱:T004 🆔:wweJ6902


#234 [輪廻◆j6ceQ96kak]
今だ、と思った響歌はすぐに車を降りた。


男性と女性も後に続いて車を降りる。


男の元へ向かうと強気に


響歌『携帯返してください!』

と言い放った。


男『へ、へへ…そう来るんだ…』

ヘラヘラ笑う男に腹が立った響歌は、男の左頬に向かってビンタした。

⏰:11/07/04 09:56 📱:T004 🆔:wweJ6902


#235 [輪廻◆j6ceQ96kak]
男性『なあ、こいつ警察に突き出そうぜ』


響歌『そのつもりです!』

すっかりいつもの調子に戻った響歌。


女性『この子に携帯電話返しなよ!』

そう女性に言われた男は、ニヤニヤ笑いを続ける。


男性『何笑ってんだよオッサン!』

男はゆっくりと立ち上がると、大きなリュックから何かを取り出した。

⏰:11/07/04 10:01 📱:T004 🆔:wweJ6902


#236 [輪廻◆j6ceQ96kak]
男の出した物に、ここにいる三人誰もが言葉を失った。


男『これが何だかわかるよね?』

それは、山の凶暴な動物などを狩る為に使われる捕獲銃だった。


男性『な…なんのつもりだよオッサン…』

男性は顔は強気だが、明らかに声が震えている。


男『君らはさっき、この私を轢き殺そうとしたよね? だから今度は私の番という事だよ』

⏰:11/07/04 10:12 📱:T004 🆔:wweJ6902


#237 [輪廻◆j6ceQ96kak]
男はそう言って銃口を男性の方に向けて構えた。


男性『お、落ち着けよ! 別に殺すつもりなんか…』


男『そこの女の子二人は、後で私がゆっくりと料理してあげるからね』

そして男は迷わず引き金をひいた。


『バンッ!』

大きな一発の銃声が鳴り響いた―

⏰:11/07/04 23:42 📱:T004 🆔:wweJ6902


#238 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌はつぶっていた目をゆっくりと開いた。


辺りを見て男性の安否を確認する。


男『チッ…外したか…』

ポツリとつぶやく男の声をしっかり聞いたであろう女性は男性の元へ駆け寄った。


女性『剛史、大丈夫!?』


男性『ああ…。なんとか避けた』

男がリュックの中身を探っているのを見た男性は、一目散に男に向かって行った。

⏰:11/07/04 23:50 📱:T004 🆔:wweJ6902


#239 [輪廻◆j6ceQ96kak]
銃を取り上げようとしたのだろう。


二人がもみ合っている最中、女性が車に戻る。


響歌があたふたしていると女性はすぐに携帯電話を持って戻ってきた。


女性『警察…すぐ来てくれるかな…』

彼女の素早い行動で、今度こそ助かると思った。


一方の男二人は、男性が男の銃を取り上げて地面に叩きつけている所だった。

⏰:11/07/04 23:56 📱:T004 🆔:wweJ6902


#240 [輪廻◆j6ceQ96kak]
女性『安心して! 少し遅くなるけど、これから警察が来るよ!』


響歌『…よかった…』

安心したせいか、身体の力が抜けて地面に崩れ落ちる。



男性『いい加減にしろよ!』

形勢逆転といった所だろうか、調子が戻った男性が男を殴る。


男は気絶したのか、その場に倒れピクリともしなくなった。

⏰:11/07/05 00:02 📱:T004 🆔:Ps175YeA


#241 [輪廻◆j6ceQ96kak]
男性がとっさにリュックを手に取って中身を確認する。


男性『響歌ちゃん! 携帯ってこれ?』


響歌『…そ、それです!』

男性が倒れた男に背を向けてリュックの中身の確認を続けている時―


男性の後ろで、動かなくなっていると思っていた男が静かにポケットからナイフを取り出した瞬間を響歌は目撃した。

⏰:11/07/05 00:12 📱:T004 🆔:Ps175YeA


#242 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『うっ、後ろ!!』

響歌がそう叫んだのとほぼ同時だった―


男性『……ぐふっ!』

男は背後から男性の下腹部を一瞬にして刺した。


そして一瞬にして男性はその場に倒れた。


地面に大量の血が広がっていく。


響歌『いやああああああああああ!!』


女性『……え?』

響歌の隣にいた女性も、男性の変わり果てた姿を見てその場に崩れ落ちた。

⏰:11/07/05 00:18 📱:T004 🆔:Ps175YeA


#243 [輪廻◆j6ceQ96kak]
血まみれのナイフを持ったまま男が立ち上がり二人に向かってゆっくりと歩み寄ってくる。


男『次は君達の番…』


響歌『…お、お姉さん…く、車…車で早く逃げないと…』


女性『む、無理だよ…。ウチ、免許取ったばっかだし…』


響歌『い、今はそんな事言ってる場合じゃないです!』

二人はなんとか立ち上がって、車へとフラフラ向かう。

⏰:11/07/05 00:24 📱:T004 🆔:Ps175YeA


#244 [輪廻◆j6ceQ96kak]
なんとかたどり着いたが、運転席を見た女性が困り顔をした。


女性『あれ…? 車のキーがない……あっ!』


響歌『ど、どうしたんですか? 早くしないと…』


女性『車のキー、確か剛史が車を降りる時にポケットに…』


響歌『…じゃ、じゃあ鍵はあの人のポケットにあるって事ですか…?』

⏰:11/07/05 00:31 📱:T004 🆔:Ps175YeA


#245 [輪廻◆j6ceQ96kak]
女性『ど、どうしよう…』

男性はあの男の後ろに倒れていて、男性と響歌達がいる車を挟んで男がこちらに迫ってきている状態だ。


鍵を取りに行くとしても、正面にいる男を突破しなければ彼の元へはたどり着けない。


警察はいつ到着するかわからない。


選択肢は二つしかなかった。

⏰:11/07/05 00:38 📱:T004 🆔:Ps175YeA


#246 [輪廻◆j6ceQ96kak]
警察の到着までの間ひたすら逆方向に逃げるか、男の脇を全速力で走って突破して鍵を取りに行くかだった。


しかしこの状況で逃げた場合、後々警察との行き違いや誤解などが発生するという問題もある。


響歌は覚悟を決めた。


響歌『あ、あの…私が鍵を取りに行くのでお姉さんは車の中で待っててください!』

⏰:11/07/05 00:47 📱:T004 🆔:Ps175YeA


#247 [輪廻◆j6ceQ96kak]
女性『で、でも…』


響歌『お姉さん達がいなかったら私…どうなっていたかわかりません…。だからお礼させてください』


女性『…わかった。気をつけて…!』

響歌は軽く礼をし、回れ右をして男の方へ振り返った。


ニヤニヤ顔でゆっくりと、そして確実に近づいてくる男。

⏰:11/07/06 10:20 📱:T004 🆔:poCJnCg.


#248 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌は唾を飲み込んで、車道の左脇へと移動する。


ふと、下を見ると小さな石が散らばっていた。


響歌はそれを数個手に取って男の方に投げると、男が石に気を取られている間に向こう側へと一目散に駆け抜けた。


血まみれで倒れる男性の元へとたどり着き、ポケットを探り鍵を探す。

⏰:11/07/06 10:25 📱:T004 🆔:poCJnCg.


#249 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『あった…』


見つけた車の鍵を空に掲げて車に戻ろうとするも、男は方向を変えて響歌の元へと向かってきた。


周りを見て石を探す。


石はなく、変わりに男が先ほど撃った捕獲銃が置かれていた。


それを見た響歌は反射的にその銃を手に取ると、男に銃口を向けた。

⏰:11/07/06 10:34 📱:T004 🆔:poCJnCg.


#250 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『アンタのせいで雪乃は…! このお兄さんは!』

銃の扱いはわからない。

しかし、この引き金をひけば弾が出る事はわかっていた。


男『素人の君に、弾を私に当てる事なんてできないよ…。それはレーザーポインタがついてない限り、狙いを定めて撃つのは難しいんだから』


響歌『黙れ!』

気づくと、頭で考えて発するより先に言葉が出ていた。

⏰:11/07/06 10:40 📱:T004 🆔:poCJnCg.


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