†horror†
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#201 [輪廻◆j6ceQ96kak]
男『ちょっと! 大丈夫?』

心配した男が声をかけるが、響歌は下を向いたまま放心状態だった。


響歌『雪乃…どうして…』


男『お嬢さん、一人でこんな山奥に何しにきたの?』


響歌『………』


男『ちょっと歩いた先に小屋があるから、とりあえずそこで休みなさい…』

男は響歌の肩に手を回し、ゆっくり立ち上がらせる。

⏰:11/06/20 22:12 📱:T004 🆔:VV7usoSw


#202 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌の脚に力が入らない事がわかった男は、その体格を活かして響歌を背中におぶった。


そして小屋へ向かって歩き出す。


響歌の目から一筋の涙がこぼれ落ちた―

⏰:11/06/20 22:19 📱:T004 🆔:VV7usoSw


#203 [輪廻◆j6ceQ96kak]
…………。


…………。


響歌『ん、んん…』


男『目が覚めたかい?』

目を開けると、男が優しい目で響歌を見つめていた。


響歌『ここは…』


男『登山家達が休む用に作られた小屋だよ』

小屋内を見回す。


内装は、最近できたように綺麗だ。


木材でできた机や椅子、更には自動販売機まで設置されている。

⏰:11/06/20 22:29 📱:T004 🆔:VV7usoSw


#204 [輪廻◆j6ceQ96kak]
男『さっきも聞いたけど答えられない状態だったからもう一度聞くよ。一体何でこんな山奥に来てたんだい? それも一人で…』


響歌『……一人じゃありません…雪乃が…』


男『その雪乃って…もしかして松下雪乃って子?』


響歌『ど、どうして知ってるんですか…?』

思わず身構える響歌。

⏰:11/06/20 22:40 📱:T004 🆔:VV7usoSw


#205 [輪廻◆j6ceQ96kak]
男『いやね、私は昨日からここに登山に来てて…。昨夜ここに向かってる途中で携帯電話を見つけたんだよ』


響歌『携帯…?』

嫌な予感がした。


聞くのを一瞬ためらったが、更に問いかける。


響歌『…どんな携帯…ですか?』


男『山を下りたら警察に届けようと思って拾っておいたよ』

そう言ってリュックからピンク色の携帯電話を取り出した。

⏰:11/06/20 22:47 📱:T004 🆔:VV7usoSw


#206 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それを見た響歌は顔色を変えた。


響歌『これ…雪乃の…』


男『その子とはぐれちゃったのかな…?』


響歌『そんな! だってさっきまで私の隣にいて…』

あたふたとする響歌に、男は優しく問いかける。


男『とりあえず山を下りたら警察に届けを出しなさいよ。それが一番いいと思う』

⏰:11/07/01 00:45 📱:T004 🆔:NqNNTXYQ


#207 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『……そう、ですよね』


男『ここから30分も歩けば旧道へ出れる。一緒に行くかい?』


響歌『お願いします!』


希望の光が見えた気がした。


いつの間にかいなくなっていた雪乃も、警察が見つけてくれるだろう。


そう思って、この男と行動を共にする事にした。

⏰:11/07/01 00:52 📱:T004 🆔:NqNNTXYQ


#208 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それから30分くらいの時間を小屋で過ごし、外へ出る事にした。


男『大丈夫かい?』


響歌『は、はい…』

歩く度に女将につけられた傷がヒリヒリと痛む。


男が響歌の怪我した脚をチラっと見る。


男『そこ…何か怪我でもしたの?』


響歌『い、いえ…なんでもないんです』

小さく笑い飛ばしてごまかした。

⏰:11/07/01 01:00 📱:T004 🆔:NqNNTXYQ


#209 [輪廻◆j6ceQ96kak]
言っても信じてもらえないと思ったからだ。


雪乃の携帯電話を片手に握りしめ、男の後ろに続いて歩き出す。


男『そういえば、そろそろ聞かせてくれるかな? どうしてこんな山の中に雪乃って子といたんだい?』


響歌『言ったら信じてくれますか…?』


男『もちろんだよ。何かあったんだろう?』


響歌は笑って聞き流される覚悟も踏まえ、今までの出来事を男に全て話した。

⏰:11/07/01 01:07 📱:T004 🆔:NqNNTXYQ


#210 [なみ]
続きが気になります(^〇^)頑張ってくださいっ

⏰:11/07/01 21:21 📱:N906imyu 🆔:ouJvu54w


#211 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>210さん

ありがとうございます。

2話も異様に長くなってしまいましたが、ここからラストまで一気に下り坂でいきます(^^)

⏰:11/07/03 22:55 📱:T004 🆔:kUqtO3H2


#212 [輪廻◆j6ceQ96kak]
話し終わった後、男は突然首をしかめた。


男『池崎旅館…? 確かそこは半年前に経営不振で女将が焼身自殺して、後に廃館になったはずだけど…』


響歌『…え? そんなはずは…。だって私達、現に昨日そこに来て…』


男『夢か何か見てたんだろうね…』

この男は何を言っているのだろうと思ったが、今の言葉の中の一つがひっかかった。

⏰:11/07/03 23:01 📱:T004 🆔:kUqtO3H2


#213 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『女将が焼身…自殺?』


男『ああ。新聞にも取り上げられてたはずだけどね。旅館の裏に焼却炉があるんだけど、そこに自ら入って自殺…だったかな』

ここへ来て、響歌の中で何かが繋がり始めていた。


焼身自殺した女将…


焼却炉…


旅館の狼の間にあった何かの焼けた物体…


昨夜、山の中で見た同じ物体と臭い…

⏰:11/07/03 23:05 📱:T004 🆔:kUqtO3H2


#214 [輪廻◆j6ceQ96kak]
途端に背筋が凍った。


男『だ、大丈夫かい? 顔が青白いけど…』


響歌『わからない…』

男の言葉を無視して独り言のように小さくつぶやいた。


強烈な目まいと吐き気が響歌を襲う。


男『しっかりしなさい!』

意識が飛びそうになる瞬間、男の大声でハッと我に帰った。

⏰:11/07/03 23:10 📱:T004 🆔:kUqtO3H2


#215 [輪廻◆j6ceQ96kak]
男『もう少しで旧道だ。そこからなら携帯電話も繋がると思う』


響歌『は、はい…』

目まいと吐き気も一瞬の出来事だったかのように、スッと収まった。


男に言われるがまま、再び歩き出す。


唯一、吉田と雪乃の事が気がかりで警察に頼めばなんとかしてくれると信じて…。

⏰:11/07/03 23:17 📱:T004 🆔:kUqtO3H2


#216 [輪廻◆j6ceQ96kak]
10分ほど歩いた所で、車道が姿を現した。


樹海のような山から脱出できたこの感覚に、響歌は神様に感謝したくなるほどであった。


男『携帯電話は、と…。私のは大丈夫みたいだ』

響歌も迷わず自分の携帯電話のディスプレイに目をやる。


アンテナは2つと不安定ではあるが、繋がらないよりはマシだという事で早速警察に電話をした。

⏰:11/07/03 23:26 📱:T004 🆔:kUqtO3H2


#217 [輪廻◆j6ceQ96kak]
110のボタンを押して、最後に通話ボタンを押そうとした時だった。


隣にいた男の手が響歌の腕を掴んだ。


響歌『な、なにするんですか…?』


男『せっかくここまで案内してやったんだ。礼くらいはしてもらわないとな』

男の目はさっきまでとは断然違っていた。

⏰:11/07/03 23:30 📱:T004 🆔:kUqtO3H2


#218 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『ちょっと放してください!』

手を振り払おうとするが男の力は強く、放れない。


男『アンタも雪乃って子と同じようにして欲しいのかい?』

男はニヤリと笑って言った。


響歌はその目つきと発言に何かとてつもない恐怖を感じ、体が震える。

⏰:11/07/03 23:34 📱:T004 🆔:kUqtO3H2


#219 [輪廻◆j6ceQ96kak]
男は更に詰め寄る。


男『雪乃って子がどうなったか知りたい?』


響歌『…雪乃をどこにやったんですか…?』

聞くのが怖い。


しかし今はそんな事を言っている場合ではなかった。


男『あの子なら昨日の深夜、森の中を歩いてるのを見かけてね…』


響歌『…それで雪乃はどこに!』

男は裂けそうになるくらいに口を大きく開けてニカッと笑うと、響歌に止めをさすような一言を言い放った。

⏰:11/07/04 00:01 📱:T004 🆔:wweJ6902


#220 [輪廻◆j6ceQ96kak]
男『殺したよ…』


響歌『……え……?』


男『聞こえなかったかい? 殺したって言ったんだよ』

それを聞いた瞬間、もう全てが終わったと思った…。


冗談を言っている様子はない。


男の視線は響歌をずっと捕らえている。


この場から一刻も早く逃げないと殺される…


そう直で感じた響歌は、男の手を最大限の力を使って振り払った。

⏰:11/07/04 00:11 📱:T004 🆔:wweJ6902


#221 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しかしその衝撃で、片手に持っていた携帯電話を地面に落としてしまった。


響歌は拾おうとしたが、男がとっさにそれを拾い上げる。


男『残念だったね。これがないと警察に電話ができないねえ〜』

挑発的な態度で言う。


響歌『そうだ…雪乃の携帯…』

ポケットに入れていた雪乃の携帯電話を取り出して電源ボタンを押す。

⏰:11/07/04 00:18 📱:T004 🆔:wweJ6902


#222 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しかし反応がない。


必死で電源ボタンを長押しする響歌を見た男が突然高らかに笑い出した。


男『あははっ! その携帯電話ならつかないよ。電池を抜いてあるんだもの』


響歌『え…』

後ろの蓋を取ると、電池パックが抜けているではないか。


男『昨日あの子を見つけた時、声かけたら怖がっちゃって…あの怯える顔なんとも言えなかったな〜』

⏰:11/07/04 00:23 📱:T004 🆔:wweJ6902


#223 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『…最低…!』


男『その顔…いいねぇ。若い子の強気だけど実は怯えている感じ…もっと見せてよ!』

この男、明らかにおかしい。


このまま捕まったら何をされるからわからないと思った響歌はその場から全速力で走り出した。


森の中に入るとまた同じ繰り返しになると考え車道を前へ前へと、とにかく無我夢中で走った。

⏰:11/07/04 00:29 📱:T004 🆔:wweJ6902


#224 [輪廻◆j6ceQ96kak]
どれくらい走っただろう。


止まって後ろを振り返ってみる。


追ってくる様子はなかった。


安心して、ゆっくりと歩き出す。


響歌『お願い…車…来て…』

車道の脇を歩きながら唯一の頼みである車が走ってくるのを待った。


その中で携帯電話があの男の手に渡ってしまったのが悔やまれて仕方がなかった。

⏰:11/07/04 00:35 📱:T004 🆔:wweJ6902


#225 [輪廻◆j6ceQ96kak]
個人情報が詰まっている携帯電話。


悪用される可能性は十分にあった。


響歌の住所はもちろん、友達や家族の連絡先の情報も全て詰まっている。


嫌な胸騒ぎを感じつつも、歩いていた時だった。


向こうから白いワゴン車がやってくるのが見えた。


響歌は車道の真ん中に立って、停車してくれるように手を上げて合図する。

⏰:11/07/04 00:41 📱:T004 🆔:wweJ6902


#226 [輪廻◆j6ceQ96kak]
車は迷わず停車した。


しばらくして中から二人の男女が車から降りてきた。


男性『おい、何だいきなり!』


響歌『助けてください!』


女性『どうかしたの?』

男性の態度とは裏腹に女性が心配そうな表情で言う。


響歌は例の男の事などを話すと、事情を把握した二人は響歌を車に乗せた。

⏰:11/07/04 09:16 📱:T004 🆔:wweJ6902


#227 [輪廻◆j6ceQ96kak]
女性『危なかったね。それにしたって、なんでこんな所にいたの?』


響歌『昨日アルバイト先の先輩と友達とで旅館に来たんですけど…先輩が…』

旅館で起きた事も話した。


しかし二人はあの男と同様に首をかしげる。


そしてハンドルを握りながら男性が言った。


男性『池崎旅館って、確かもうやってないんじゃなかった?』

⏰:11/07/04 09:23 📱:T004 🆔:wweJ6902


#228 [輪廻◆j6ceQ96kak]
女性『うん…そのはずだけど』


男性『響歌ちゃん…だっけ? 行った旅館を間違えたんじゃないの?』


響歌『間違えてなんかいません! パンフレットにもちゃんと池崎旅館って…』


鞄の中をまさぐってパンフレットを探すも、見当たらない。


あの旅館に置き忘れていたのだ。

⏰:11/07/04 09:29 📱:T004 🆔:wweJ6902


#229 [輪廻◆j6ceQ96kak]
女性『あの旅館って確か今、心霊スポットになってるよね』


男性『そうそう。異臭とか女の霊とか目撃談もあるしな』

心霊関係に興味があるのか、二人はなぜか微笑んでいる。


そんな中、男性が唐突に言った…



男性『今から行ってみる?』

⏰:11/07/04 09:33 📱:T004 🆔:wweJ6902


#230 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『…なっ!』

言葉を失った。

この時、言わなければよかった…と後悔する事になる。


女性『行っちゃうの?』


男性『行っちゃいますか?』


響歌『私は嫌です!』

断固拒否する。


男性『じゃあ響歌ちゃんは車の中に入ってなよ。俺達が君の先輩の事を調べてくるからさ』

⏰:11/07/04 09:37 📱:T004 🆔:wweJ6902


#231 [輪廻◆j6ceQ96kak]
車は旅館へ向けて急発進した。


走って数分もしない内に、車道の少し先に見覚えのある男の姿があった。


響歌『あっ、あの人!』


男性『なに? あのオッサンがどうかしたの?』


響歌『あの人が私の携帯を持ってるんです! お願いします…取り返してもらえませんか?』

⏰:11/07/04 09:42 📱:T004 🆔:wweJ6902


#232 [輪廻◆j6ceQ96kak]
体格のいいこの男性なら、あの男に太刀打ちできるだろうと思った響歌。


男性『よっしゃ。なんなら轢いてやるか?』


響歌『い、いや…そこまでは…』

さすがに冗談だと思っていた。


しかし車は猛スピードを出して男に突進していく。


車に気づいた男は、脇道にそれようとしたが、運転する男性はそれをさせなかった。

⏰:11/07/04 09:46 📱:T004 🆔:wweJ6902


#233 [輪廻◆j6ceQ96kak]
男を轢こうとしたその一瞬、ブレーキをかけたのは助手席に乗っている女性だった。


男性『おい何すんだよ!』


女性『さすがにこれは笑えないよ』

響歌の思いが女性に通じたのだろうか。


一方のあの男は、目を白黒させながら地面に尻餅をついていた。

⏰:11/07/04 09:52 📱:T004 🆔:wweJ6902


#234 [輪廻◆j6ceQ96kak]
今だ、と思った響歌はすぐに車を降りた。


男性と女性も後に続いて車を降りる。


男の元へ向かうと強気に


響歌『携帯返してください!』

と言い放った。


男『へ、へへ…そう来るんだ…』

ヘラヘラ笑う男に腹が立った響歌は、男の左頬に向かってビンタした。

⏰:11/07/04 09:56 📱:T004 🆔:wweJ6902


#235 [輪廻◆j6ceQ96kak]
男性『なあ、こいつ警察に突き出そうぜ』


響歌『そのつもりです!』

すっかりいつもの調子に戻った響歌。


女性『この子に携帯電話返しなよ!』

そう女性に言われた男は、ニヤニヤ笑いを続ける。


男性『何笑ってんだよオッサン!』

男はゆっくりと立ち上がると、大きなリュックから何かを取り出した。

⏰:11/07/04 10:01 📱:T004 🆔:wweJ6902


#236 [輪廻◆j6ceQ96kak]
男の出した物に、ここにいる三人誰もが言葉を失った。


男『これが何だかわかるよね?』

それは、山の凶暴な動物などを狩る為に使われる捕獲銃だった。


男性『な…なんのつもりだよオッサン…』

男性は顔は強気だが、明らかに声が震えている。


男『君らはさっき、この私を轢き殺そうとしたよね? だから今度は私の番という事だよ』

⏰:11/07/04 10:12 📱:T004 🆔:wweJ6902


#237 [輪廻◆j6ceQ96kak]
男はそう言って銃口を男性の方に向けて構えた。


男性『お、落ち着けよ! 別に殺すつもりなんか…』


男『そこの女の子二人は、後で私がゆっくりと料理してあげるからね』

そして男は迷わず引き金をひいた。


『バンッ!』

大きな一発の銃声が鳴り響いた―

⏰:11/07/04 23:42 📱:T004 🆔:wweJ6902


#238 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌はつぶっていた目をゆっくりと開いた。


辺りを見て男性の安否を確認する。


男『チッ…外したか…』

ポツリとつぶやく男の声をしっかり聞いたであろう女性は男性の元へ駆け寄った。


女性『剛史、大丈夫!?』


男性『ああ…。なんとか避けた』

男がリュックの中身を探っているのを見た男性は、一目散に男に向かって行った。

⏰:11/07/04 23:50 📱:T004 🆔:wweJ6902


#239 [輪廻◆j6ceQ96kak]
銃を取り上げようとしたのだろう。


二人がもみ合っている最中、女性が車に戻る。


響歌があたふたしていると女性はすぐに携帯電話を持って戻ってきた。


女性『警察…すぐ来てくれるかな…』

彼女の素早い行動で、今度こそ助かると思った。


一方の男二人は、男性が男の銃を取り上げて地面に叩きつけている所だった。

⏰:11/07/04 23:56 📱:T004 🆔:wweJ6902


#240 [輪廻◆j6ceQ96kak]
女性『安心して! 少し遅くなるけど、これから警察が来るよ!』


響歌『…よかった…』

安心したせいか、身体の力が抜けて地面に崩れ落ちる。



男性『いい加減にしろよ!』

形勢逆転といった所だろうか、調子が戻った男性が男を殴る。


男は気絶したのか、その場に倒れピクリともしなくなった。

⏰:11/07/05 00:02 📱:T004 🆔:Ps175YeA


#241 [輪廻◆j6ceQ96kak]
男性がとっさにリュックを手に取って中身を確認する。


男性『響歌ちゃん! 携帯ってこれ?』


響歌『…そ、それです!』

男性が倒れた男に背を向けてリュックの中身の確認を続けている時―


男性の後ろで、動かなくなっていると思っていた男が静かにポケットからナイフを取り出した瞬間を響歌は目撃した。

⏰:11/07/05 00:12 📱:T004 🆔:Ps175YeA


#242 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『うっ、後ろ!!』

響歌がそう叫んだのとほぼ同時だった―


男性『……ぐふっ!』

男は背後から男性の下腹部を一瞬にして刺した。


そして一瞬にして男性はその場に倒れた。


地面に大量の血が広がっていく。


響歌『いやああああああああああ!!』


女性『……え?』

響歌の隣にいた女性も、男性の変わり果てた姿を見てその場に崩れ落ちた。

⏰:11/07/05 00:18 📱:T004 🆔:Ps175YeA


#243 [輪廻◆j6ceQ96kak]
血まみれのナイフを持ったまま男が立ち上がり二人に向かってゆっくりと歩み寄ってくる。


男『次は君達の番…』


響歌『…お、お姉さん…く、車…車で早く逃げないと…』


女性『む、無理だよ…。ウチ、免許取ったばっかだし…』


響歌『い、今はそんな事言ってる場合じゃないです!』

二人はなんとか立ち上がって、車へとフラフラ向かう。

⏰:11/07/05 00:24 📱:T004 🆔:Ps175YeA


#244 [輪廻◆j6ceQ96kak]
なんとかたどり着いたが、運転席を見た女性が困り顔をした。


女性『あれ…? 車のキーがない……あっ!』


響歌『ど、どうしたんですか? 早くしないと…』


女性『車のキー、確か剛史が車を降りる時にポケットに…』


響歌『…じゃ、じゃあ鍵はあの人のポケットにあるって事ですか…?』

⏰:11/07/05 00:31 📱:T004 🆔:Ps175YeA


#245 [輪廻◆j6ceQ96kak]
女性『ど、どうしよう…』

男性はあの男の後ろに倒れていて、男性と響歌達がいる車を挟んで男がこちらに迫ってきている状態だ。


鍵を取りに行くとしても、正面にいる男を突破しなければ彼の元へはたどり着けない。


警察はいつ到着するかわからない。


選択肢は二つしかなかった。

⏰:11/07/05 00:38 📱:T004 🆔:Ps175YeA


#246 [輪廻◆j6ceQ96kak]
警察の到着までの間ひたすら逆方向に逃げるか、男の脇を全速力で走って突破して鍵を取りに行くかだった。


しかしこの状況で逃げた場合、後々警察との行き違いや誤解などが発生するという問題もある。


響歌は覚悟を決めた。


響歌『あ、あの…私が鍵を取りに行くのでお姉さんは車の中で待っててください!』

⏰:11/07/05 00:47 📱:T004 🆔:Ps175YeA


#247 [輪廻◆j6ceQ96kak]
女性『で、でも…』


響歌『お姉さん達がいなかったら私…どうなっていたかわかりません…。だからお礼させてください』


女性『…わかった。気をつけて…!』

響歌は軽く礼をし、回れ右をして男の方へ振り返った。


ニヤニヤ顔でゆっくりと、そして確実に近づいてくる男。

⏰:11/07/06 10:20 📱:T004 🆔:poCJnCg.


#248 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌は唾を飲み込んで、車道の左脇へと移動する。


ふと、下を見ると小さな石が散らばっていた。


響歌はそれを数個手に取って男の方に投げると、男が石に気を取られている間に向こう側へと一目散に駆け抜けた。


血まみれで倒れる男性の元へとたどり着き、ポケットを探り鍵を探す。

⏰:11/07/06 10:25 📱:T004 🆔:poCJnCg.


#249 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『あった…』


見つけた車の鍵を空に掲げて車に戻ろうとするも、男は方向を変えて響歌の元へと向かってきた。


周りを見て石を探す。


石はなく、変わりに男が先ほど撃った捕獲銃が置かれていた。


それを見た響歌は反射的にその銃を手に取ると、男に銃口を向けた。

⏰:11/07/06 10:34 📱:T004 🆔:poCJnCg.


#250 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『アンタのせいで雪乃は…! このお兄さんは!』

銃の扱いはわからない。

しかし、この引き金をひけば弾が出る事はわかっていた。


男『素人の君に、弾を私に当てる事なんてできないよ…。それはレーザーポインタがついてない限り、狙いを定めて撃つのは難しいんだから』


響歌『黙れ!』

気づくと、頭で考えて発するより先に言葉が出ていた。

⏰:11/07/06 10:40 📱:T004 🆔:poCJnCg.


#251 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そのまま震えた手で引き金に指をかけた。


その時―


女性『響歌ちゃん! 撃っちゃダメ! その人を撃ったら…どうなるかわかってるよね!』


響歌『……!!』

女性の言葉で、ふっと我に帰り、自身の手にしていた銃を見てそれをとっさに落とす。


この時、響歌の意思とは関係なく銃を手にしていた事に気がついた。

⏰:11/07/06 10:48 📱:T004 🆔:poCJnCg.


#252 [輪廻◆j6ceQ96kak]
男『そろそろ楽にさせてあげるよ!』

先ほどまで歩いていた男が、響歌が銃を落としたタイミングを見計らってか、走り出してきた。


女性『響歌ちゃん逃げて!』

またしても頭で考えるより先に足が動いた。


まるで誰かに操られているかのような感覚だった。


響歌はその足で森の中へと駆け抜ける。

⏰:11/07/06 10:53 📱:T004 🆔:poCJnCg.


#253 [輪廻◆j6ceQ96kak]
夢中だった。


体が響歌の思うように動かない。


足が勝手に動いていた。


だが男が追ってくる気配は背後からちゃんと感じられた。


男『なんで逃げるのさぁ!』

響歌は半泣き状態になりつつも、全速力で男を振り切ようと走り続ける。

⏰:11/07/06 10:56 📱:T004 🆔:poCJnCg.


#254 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しばらくして、追ってくる気配が消えた。


走り続けた結果、ふと見るとあの車が見える。


しっかりとさっきの場所へと戻っていたのだ。


どこをどう走っていたのかわからない響歌だった。


まるで見えない誰かに導かれていたようだった。

⏰:11/07/06 11:01 📱:T004 🆔:poCJnCg.


#255 [輪廻◆j6ceQ96kak]
すぐに車へと向かう。


響歌『お姉さん!!』


女性『…響歌ちゃん! 無事だったんだね!』

片手にずっと握りしめていた血がついた車の鍵を女性に渡し、響歌も助手席に乗った時。


警察のパトカーのサイレンが聞こえてきた。


女性『来たみたい…よかったね』


響歌『もうダメかと思いました…』

車から降りて向こうから来るパトカーに向かって手を振る。

⏰:11/07/06 11:05 📱:T004 🆔:poCJnCg.


#256 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それから響歌と女性で事情を話した。


女性といた男性を刺した男はすぐに捜索隊によって発見。


殺人や銃刀法違反などの容疑で逮捕となった。


パトカーに乗せられる時、男は響歌達を見てニヤっと小さく笑った。


その後、響歌の証言であの旅館にも捜査が入る。

⏰:11/07/06 11:11 📱:T004 🆔:poCJnCg.


#257 [輪廻◆j6ceQ96kak]
あの男が言っていた通り、あの旅館は半年前に経営不振により女将の池崎が、他の従業員を焼却炉で焼き殺してから、最後に自身をも入れて焼身自殺を図ったという。


それから取り調べ室で響歌は、女将の事を話すも、信じてもらえなかった。


響歌の先輩、吉田優斗は現在も行方不明。


あの男が殺したという、松下雪乃の死体も未だ見つかっていない。

⏰:11/07/06 11:20 📱:T004 🆔:poCJnCg.


#258 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌にはただ一つ思う所がある。


あの時、道を導いてくれたのは雪乃だったのかもしれない、と。


雪乃が助けてくれたのだろうと、信じる事にした。

⏰:11/07/06 11:22 📱:T004 🆔:poCJnCg.


#259 [輪廻◆j6ceQ96kak]
数日後―


女性『今日、剛史のお葬式なんだ』


響歌『そうなんですか…』


女性『ねえ…あの男の人、どうなると思う?』


響歌『あの男は…私の友達も殺したと言ってました。私は一生許す気にはなれないです』


女性『そうだよね…ウチも同じ。ねえ響歌ちゃん…復讐したいと思わない?』

女性の言葉に、響歌は一瞬戸惑った。

⏰:11/07/06 11:26 📱:T004 🆔:poCJnCg.


#260 [輪廻◆j6ceQ96kak]
女性『だって、元々悪いのはあの男でしょ? あの時のバカにしたような笑い顔…今でも忘れない』


響歌『私もですけど…やっぱり罪に関しては警察に任せようと思ってます』


女性『そう…響歌ちゃんはそれでいいんだね?』


響歌『……はい』

二人は握手をしてから、別れた。

⏰:11/07/06 11:30 📱:T004 🆔:poCJnCg.


#261 [輪廻◆j6ceQ96kak]
もう彼女に会う事はない。


そう思っていた。


少なくとも今の段階では―



第2話 怪奇なる旅路【完】

⏰:11/07/06 11:31 📱:T004 🆔:poCJnCg.


#262 [輪廻◆j6ceQ96kak]
第3話【消失なる射影】



このカメラで撮影された者は1週間以内に必ず死ぬ。



その名も


『デスカメラ』


これは数年前、村井響歌が中学生の時の話である―

⏰:11/07/06 11:42 📱:T004 🆔:poCJnCg.


#263 [輪廻◆j6ceQ96kak]
中学2年生の夏、響歌の中学校ではよからぬ噂が広まっていた。


生徒A『ねえ、デスカメラって知ってる?』


生徒B『もち! そのカメラで写された人は1週間以内に死ぬんだよね』


生徒C『そのカメラ、普通じゃ手に入れられないんだって。闇市場っていう携帯サイトで頼めるらしいよ』


響歌『くだらない』

そんな噂で持ちきりの中、響歌は興味なさそうな顔で教室の椅子に座っていた。

⏰:11/07/06 11:48 📱:T004 🆔:poCJnCg.


#264 [輪廻◆j6ceQ96kak]
くだらない話ほど、みんな真面目に聞きたがる。


授業ではいつもふざけて先生の話を聞かないくせに、といつも心の声を発していた。


響歌の親友、井本七瀬もその話の虜であった。


七瀬『ねえ響歌! 響歌!』

気づくと机の前に七瀬の顔。


響歌『なに?』

どうせ例のカメラの話だろうと、そっけない表情で返事をした。

⏰:11/07/06 11:58 📱:T004 🆔:poCJnCg.


#265 [輪廻◆j6ceQ96kak]
七瀬『デスカメラ…』

七瀬がここまで言うと


響歌『はいはい、私そういうの興味ないから』


七瀬『なにさー! まだ何も言ってないじゃん!』

言ってなくても、周りが話しているのを散々聞いている響歌には、今から七瀬が言う事を全て把握していた。


響歌『そういうの馬鹿らしくない?』

容赦ない響歌の言葉に、七瀬の顔は不機嫌な表情に一瞬にして変わった。

⏰:11/07/06 12:07 📱:T004 🆔:poCJnCg.


#266 [輪廻◆j6ceQ96kak]
七瀬『とかいって…響歌、ホントは怖いんじゃないの?』


響歌『…は? なんでそうなるの?』

ここで二人の険悪ムードに割って入ってきたのは…


蓮『お前ら怖い顔してるけど、どうかしたの?』

クラス一の明るい男、桐谷蓮だった。


七瀬『あ、キリ。聞いて聞いて! 響歌ね、デスカメラが怖いんだって』

⏰:11/07/07 20:45 📱:T004 🆔:sszp4/nU


#267 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『デスカメラ…ああ! 今流行ってる都市伝説だろ?』


七瀬『都市伝説じゃないよ! 実際そのカメラ売ってるらしいし』


蓮『へー。どこに売ってんの?』


七瀬『闇市場っていうサイト。あたし携帯もパソコンもないから、そのサイト見た事ないんだよねー』

すっかり二人の世界になってしまった。


響歌は勢いよく席を立って、教室を出た。

⏰:11/07/07 20:49 📱:T004 🆔:sszp4/nU


#268 [輪廻◆j6ceQ96kak]
向かったのは屋上。


休み時間などに一人になりたい時は必ずここへ来る。


響歌にとっては最高の息抜き場所だった。


響歌『デスカメラかぁ…』

雲を見上げてポツリとつぶやく。


写された者は死ぬ―

この言葉が頭を駆け巡る。


響歌『やっぱ馬鹿らし…』

再び雲に向かって言った。

⏰:11/07/07 20:54 📱:T004 🆔:sszp4/nU


#269 [輪廻◆j6ceQ96kak]
学校が終わり、いつも一緒に帰っている七瀬に声をかけた。


響歌『ああ終わったー! 今日も眠かったよね』


七瀬『……』


響歌『ナナ? 聞いてる?』


七瀬『もう話しかけないでくれない?』


響歌『…え?』

衝撃的な発言に、一瞬聞き間違えたのかと思った。

⏰:11/07/07 21:02 📱:T004 🆔:sszp4/nU


#270 [輪廻◆j6ceQ96kak]
七瀬『そういう事だから。悪いけど今日から一人で帰って』

七瀬の裏を返したような態度に、響歌はそれ以上何も言えなかった。


帰り道、響歌はずっと七瀬の事を考えていた。


出会ったのは小学校5年の時。


それから3年間、かけがえのない親友としてやってきた七瀬の突然の絶交宣言。

⏰:11/07/07 21:09 📱:T004 🆔:sszp4/nU


#271 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『ナナ…私が悪いの? 私が、あの噂を否定したから?』

自分のあの時の発言に後悔した。


それからしばらくの間、学校はデスカメラに関する噂で持ちきりだった。


もちろん七瀬とはそれから全く口を聞いていない。


ちょくちょく話しかけたりもしたが、向こうは完全無視を続けた。

⏰:11/07/07 21:14 📱:T004 🆔:sszp4/nU


#272 [輪廻◆j6ceQ96kak]
休日は部屋に閉じこもるようになった響歌。


七瀬が携帯電話を持つようになったが、連絡先は教えてくれず、謝罪のメールを送ろうにも送れない状態が続く。


ある日、学校の休み時間にて七瀬達の話を偶然耳にした。


七瀬『ねえ! 闇市場ってサイト発見しちゃったさー!』


生徒A『マジで? 見して見して!』

⏰:11/07/07 21:25 📱:T004 🆔:sszp4/nU


#273 [輪廻◆j6ceQ96kak]
七瀬『もう見つけるのに苦労したよ! おかげで寝不足〜』


生徒B『でさ…デスカメラはあったの?』


七瀬『あったんだけどさ…なんか注文が殺到してるみたいで品切れだったの…まじショック!』


生徒B『あらら…残念。でもさ、注文殺到してるって事はウチの学校でも頼んでる人多いのかな?』

⏰:11/07/07 21:29 📱:T004 🆔:sszp4/nU


#274 [輪廻◆j6ceQ96kak]
七瀬『だとしたら危ないよね! 盗撮とかされたら洒落にならないよ〜』


生徒B『写されないように気をつけないとね!』

…と、冗談混じりの笑い声で話す七瀬達を見た響歌は、一瞬だけ悪魔のような発想をした。


響歌『写された人が死ぬ…』

響歌の視線の先には七瀬。


響歌『…って何考えてんだろ私…』

⏰:11/07/07 21:35 📱:T004 🆔:sszp4/nU


#275 [輪廻◆j6ceQ96kak]
絶交しているとはいえ、少し前までは親友だった七瀬。


さすがに死までくると洒落にならないと思った響歌は、デスカメラの事を忘れる事にした。


しかし、学校では毎日のようにデスカメラの話題があがる為、忘れようにも忘れられないでいた。


休み時間、桐谷蓮が響歌に話しかけてきた。

⏰:11/07/07 21:39 📱:T004 🆔:sszp4/nU


#276 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『お前、最近井本とつるまないのな。喧嘩でもしたの?』


響歌『…別に』


蓮『女同士って色々あって怖ェよな』


響歌『何か用?』


蓮『昨日オレの兄ちゃんがさ、デスカメラだっけ…それを注文したんだってよ』


響歌『…えっ!!』

思わず大きい声を出して席を立った瞬間、周りの視線が一斉に響歌に集中する。

⏰:11/07/07 21:45 📱:T004 🆔:sszp4/nU


#277 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『おい、どした?』


響歌『…ちょっと来て!』

そう言って顔を赤くしながら教室を出た。


蓮『おいどこまで行くんだよ?』

屋上へと蓮を呼んだ。


響歌『さっきの話…ホントなの?』


蓮『さっきの話って?』


響歌『だから…デスカメラ』


蓮『ああ。兄ちゃんの学校でも有名になってんだってさ』

⏰:11/07/07 21:48 📱:T004 🆔:sszp4/nU


#278 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『それ、もう届いたの? ていうかそもそもお金ってかかるの?』


蓮『なんでお前がそんな事気にすんだよ? お前、ただの噂だって興味なさそうに言ってたじゃん』


響歌『そ、そうだけど…』

先ほどの七瀬達の話を聞いた限り、噂では片付けられないだろうと内心感じつつあった。

⏰:11/07/07 21:53 📱:T004 🆔:sszp4/nU


#279 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『えーと…確か金はかからなかったって言ってたな』


響歌『もしかして、そんな殺人カメラがタダで売ってるって事…?』


蓮『悪いな。そこらへんの事オレもよくわからねえんだ。自分で調べてくれ。な?』


蓮は小さく手を振って屋上を後にした。


その時、好奇心が響歌の心をくすぐった。

⏰:11/07/07 21:59 📱:T004 🆔:sszp4/nU


#280 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その夜、家で携帯電話を片手に机に向かった響歌は普段はあまり見ないネットを繋いだ。


『闇市場』

で検索。


何件もの検索結果が見つかった。


しかし次々にクリックするも、どれも閉鎖しているらしくページが見つからない状態が続いた。


1時間…


諦めかけた時、一つのページが突如現れた。

⏰:11/07/07 22:06 📱:T004 🆔:sszp4/nU


#281 [輪廻◆j6ceQ96kak]
闇市場


あなたにとってお得な物、売ります―


入会費用、商品購入における金利などは一切頂きません―


ただし、注文いただきましたお客様の個人情報は当サイトの方でお預かりさせていただきます―


また、当サイトの事は内密にお願いします―


お約束が守れない場合は購入履歴から個人情報を特定し第三者に提供させていただきます―


購入はあくまで自己責任でお願いします―

⏰:11/07/09 02:53 📱:T004 🆔:C7bXKdJM


#282 [輪廻◆j6ceQ96kak]
注意


商品のキャンセル、商品に対するクレームなどは一切承りません。


購入された商品で万が一、何かトラブルが起こった場合も当サイトは一切の責任を負いません。



…と書かれていた。


響歌はその場で引き返そうとしたが好奇心が抑えられず、気がつくと商品リストのページを開いていた。

⏰:11/07/09 02:57 📱:T004 🆔:C7bXKdJM


#283 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その中で今、学校中で話題になっているデスカメラの名前を発見する。


しかし


『品切れ中。入荷日未定』

との表示。


他の商品もほとんどが品切れ状態。


響歌『ふう…』

小さなため息をつき、電源ボタンを押して携帯電話を閉じた。

⏰:11/07/09 03:06 📱:T004 🆔:C7bXKdJM


#284 [輪廻◆j6ceQ96kak]
数日後の休日―


『ピンポーン』


家に鳴ったインターホンが全ての始まりとなる―

⏰:11/07/09 03:09 📱:T004 🆔:C7bXKdJM


#285 [輪廻◆j6ceQ96kak]
母『…響歌、アンタに何か届いてるよ』

響歌の母親が小さな箱を抱えて部屋に入ってきた。


響歌『…なにそれ』


母『知らないよ。アンタが頼んだんでしょ?』

母親はそう言うが、響歌には全く見に覚えがなかった。


首をかしげながらも手渡されたダンボールを開ける。


響歌『…え? これって…』

それは黒い奇抜なデザインのインスタントカメラだった。

⏰:11/07/09 03:18 📱:T004 🆔:C7bXKdJM


#286 [輪廻◆j6ceQ96kak]
箱の中の隅には、予備と思われるフィルムも1つ同梱されていた。


響歌『なんで…? 私、こんなの頼んでなんか…』

ふと箱の底に、二つ折りにされた紙が目に入った。


ゆっくり開くと…

⏰:11/07/09 03:25 📱:T004 🆔:C7bXKdJM


#287 [輪廻◆j6ceQ96kak]
村井響歌 様


今回は当サイトをご利用、商品をご注文いただきまして誠にありがとうございます。


ご注文いただいた内容は以下の通りです。

商品名:デスカメラ

注文日:8月22日(月)

商品No:42219


尚、商品のキャンセルは承っておりませんのでご了承ください。

詳しくは当サイトの注意事項をご覧ください。


闇市場.com

⏰:11/07/09 03:36 📱:T004 🆔:C7bXKdJM


#288 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『は…? 嘘…』

注文したはずがないのに注文した事になっている。


そして実際に商品が届いた。


響歌『なんで、なんで、なんで…!?』

頭の中でパニックを起こしかけていた。


電話で問い合わせしようにも、電話番号が書かれていない。


サイトへ繋ごうにも、ページをブックマークしていなかった為、再び探すのには時間がかかる。


そもそもまた見つかるという保証もない。

⏰:11/07/09 03:45 📱:T004 🆔:C7bXKdJM


#289 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『そ、そうだよ…捨てちゃえばいいんだよね…』


このカメラで写された者は死ぬ―


この言葉が頭から離れない。


好奇心と罪悪感が響歌の心を揺るがす。


響歌『し、死ぬなんて嘘に決まってるよね…』

自分に言い聞かせる。


結局捨てられないまま机の引き出しの中にカメラをしまい、翌日を迎えた。

⏰:11/07/09 03:50 📱:T004 🆔:C7bXKdJM


#290 [輪廻◆j6ceQ96kak]
学校では、相変わらずデスカメラに関する話題。


休み時間を知らせるチャイムが鳴ってからすぐに桐谷蓮が響歌の席に近づいてきた。


蓮『よっ。そういえばデスカメラ、昨日家に届いたぜ』


響歌『ほ、ホントに!?』

思わず身を乗り出す。


蓮『でさ、兄ちゃんの奴、自分を撮っちゃって…』

⏰:11/07/09 03:54 📱:T004 🆔:C7bXKdJM


#291 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その時、蓮の言葉を聞いた七瀬とその友達数人がバタバタとこっちに向かってきた。


七瀬『キリ! 今の話、ホント!?』


蓮『…うわびっくりした! ああホントだけど』

七瀬は目の色をとことん輝かせている。


七瀬『やばいんじゃないの〜? キリのお兄さん』


蓮『大丈夫だと思うよ。カメラで写されたくらいで死ぬなら、とっくに事件になってサイトも閉鎖されてるって言ってたし』

⏰:11/07/10 15:58 📱:T004 🆔:AwgsUca.


#292 [輪廻◆j6ceQ96kak]
七瀬『あ、それなんだけど…サイトっていくつもあったらしいよ。ほとんどが摘発されて運営者も逮捕されたって』


蓮『でもそのカメラで人が死んだってニュース聞いた事ないだろ?』


七瀬『そ、それはそうだけどさ…』

反論できない七瀬を見て響歌は少しだけ、いい気味だなと思った。

⏰:11/07/10 16:12 📱:T004 🆔:AwgsUca.


#293 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『そんなもんだよ、都市伝説ってさ』

同時にあっけらかんとした蓮の表情を見て安心もした。


七瀬『とにかく! お兄さんに何かあったら教えてね』

そう言って友達を引き連れて教室を出ていった。

⏰:11/07/10 16:16 📱:T004 🆔:AwgsUca.


#294 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『あいつの目、やばかったな』


響歌『自分を見失わなきゃいいけど』


蓮『明日カメラ持ってこようかな。借りれたらだけどな』


響歌『やめときなよ。また七瀬がうるさいよ』


蓮『…だな!』

顔を見合わせて笑いながら言った。

⏰:11/07/10 16:21 📱:T004 🆔:AwgsUca.


#295 [輪廻◆j6ceQ96kak]
この流れで響歌の家に届いたカメラの事を言おうとしたが、タイミングが掴めずに結局言えなかった。



下校時間―


帰ろうとした矢先、元親友の七瀬が久しぶりに響歌に話しかけた。


七瀬『響歌、ちょっといい?』


響歌『……もう私とは話さないんじゃなかったの?』

⏰:11/07/10 16:26 📱:T004 🆔:AwgsUca.


#296 [輪廻◆j6ceQ96kak]
帰り道、しばらくの沈黙が続いた後、七瀬が口を開いた。


七瀬『…カメラ届いた?』


響歌『……は? どういう事?』


七瀬『ごめん! 悪いとは思ったんだけどさ…。あのデスカメラ一つだけあって、配送先に思わず響歌の名前と家の住所使っちゃったんだよね』


響歌『…………え?』

突然の告白に、理解するのにしばらく時間がかかった。

⏰:11/07/10 16:34 📱:T004 🆔:AwgsUca.


#297 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『な、なんで! 馬鹿じゃないの!?』

やっと理解した響歌は道の真ん中で七瀬に怒鳴る。


しかし七瀬の表情からは反省している様子は感じられない。


七瀬『別にいいじゃん。どっちに届いても同じ事だよ』


響歌『ちょっと! 何、開き直ってんの!?』


七瀬『うるさいなぁ…そんな大きい声出したら、なんか恥ずかしいじゃん』

響歌は七瀬の態度と言葉に、怒りが頂点に達した。

⏰:11/07/10 16:42 📱:T004 🆔:AwgsUca.


#298 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『あり得ない! アンタに縁切ってもらえてせいせいしたわ!』


七瀬『響歌、落ち着きなよ〜。ごめんね?』


響歌『もう話しかけないで! 最低!』

走り去ろうとする響歌の腕を七瀬の手が素早く掴んだ。


七瀬『ちょっと待ってよ。響歌の家にデスカメラ取りに行くからさ』

⏰:11/07/10 16:46 📱:T004 🆔:AwgsUca.


#299 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『勝手にすれば!』

気まずい雰囲気の中、響歌は七瀬の一歩前を歩いて家に向かった。


七瀬『お邪魔しま〜す』


響歌『取りに行ってくるからそこにいて』

七瀬を玄関で待たせ、響歌は部屋にカメラを取りに行った。


入っていたダンボールに全部戻し、箱の口にガムテープを貼って元通りにし、それを七瀬に渡した。

⏰:11/07/10 16:53 📱:T004 🆔:AwgsUca.


#300 [輪廻◆j6ceQ96kak]
七瀬『…ありがと。もう話しかけないから安心して。でも本当に悪いと思ってるから』


響歌『……早く帰ってよ』

再び部屋に戻るなり、制服も脱がずにベッドにうつ伏せになって寝転んだ。


響歌『悪いと思ってるなら最初からすんなよ。ばーか』

やがて眠気がやってきて、そのまま眠りについていた―

⏰:11/07/10 16:58 📱:T004 🆔:AwgsUca.


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