†horror†
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#51 [輪廻◆j6ceQ96kak]
中野『じゃあ管理人の部屋に案内して』

響歌は止める事もなく、一緒に部屋を出て管理人の住む下の階の部屋へ。


部屋の前に来ると、中野はためらいもなくチャイムを押す。


しばらくして気の弱い男性の管理人が姿を現した。

⏰:11/04/29 10:50 📱:T004 🆔:WQld2gLY


#52 [輪廻◆j6ceQ96kak]
管理人『はあ、何か?』


中野『あの、上の部屋に住んでる変わったばあさんの事なんですけど』


管理人『はあ、奥村さんの事ですか?』

中野は響歌の耳元で『奥村でいいんだよな?』と聞いてきて、私が首を縦に振ると再び管理人の方に目をやった。

⏰:11/04/29 10:54 📱:T004 🆔:WQld2gLY


#53 [輪廻◆j6ceQ96kak]
敬太『俺、奥村のおばちゃんの親戚なんです。久しぶりに会いに来たんで中に入れてもらえませんか…?』

中野は少し暗めの表情と口調で言った。

すると管理人は顔をしかめて


管理人『あれ…奥村さんに親戚はいなかったと思いますけどね』


敬太『マジで…?』

小さく舌打ちしてから、何か考え込んでいた。

⏰:11/04/30 11:05 📱:T004 🆔:ohciiaqk


#54 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『ねえ、もうやめようよ…』


敬太『いや、どんな奴か見るまでは引き下がれないし』


響歌『私、部屋に戻るよ?』


敬太『いいよ。後は俺に任せといて!』

中野の自信満々の顔を見た響歌は『やれやれ』と言わんばかりのため息をこぼして部屋に戻った。

⏰:11/04/30 11:08 📱:T004 🆔:ohciiaqk


#55 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌が自分の部屋に戻ると


『ゴッ! ゴッ! ゴッ! ゴッ!』

隣の奥村さんが起きたのか、壁をぶつける音が。


音はうるさいが、霊的なものではないとわかっていた響歌は気にする事もなく仕事へ行く準備をした。

⏰:11/04/30 11:12 📱:T004 🆔:ohciiaqk


#56 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『これでよし、と』

時計の針は午前8時半を指した所だった。

準備が完了した響歌が部屋を出ると、奥村の部屋の前に管理人と中野の姿があった。


敬太『おっ響歌ちゃん。もう行くの?』


響歌『今日は9時からだもん。早く行かなきゃ』

⏰:11/04/30 11:20 📱:T004 🆔:ohciiaqk


#57 [輪廻◆j6ceQ96kak]
敬太『そっか。俺はちょっと用事で遅れるって言っといてくれよ』


響歌『うん、わかった。でもホントに会うの?』


敬太『当たり前! さっき管理人に、俺は孫だって言ったら会わしてくれるってさ』

と、管理人に聞こえないように響歌の耳元で囁いた。

⏰:11/05/01 09:55 📱:T004 🆔:cVsjVqv2


#58 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『後からバレても知らないよ。じゃあまた後でね』


敬太『おう!』

響歌は中野を置いて、早々とアパートを後にした。

⏰:11/05/01 09:58 📱:T004 🆔:cVsjVqv2


#59 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その後、管理人から響歌の携帯電話に連絡があった。


中野敬太が奥村の部屋で死んでいる…と。


それを聞いた響歌、吉田、雪乃は言葉を失った。


管理人は中野を奥村の部屋に1人で入れ、数分してから部屋に行った所、額の部分を鋭利な刃物で刺されており血まみれの状態で発見されたと。

⏰:11/05/03 10:28 📱:T004 🆔:OE1aqJIY


#60 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌は仕事と大学をしばらく休む事を店長と学校にそれぞれ伝えた。


中野敬太の死に絶大なるショックを受け、立ち直るのに時間がかかりそうだからだ。


その日の夜、中野の知り合いという事で響歌らは警察から事情聴取を受けた。


肝心の中野の一件は殺人事件と断定。

⏰:11/05/03 10:36 📱:T004 🆔:OE1aqJIY


#61 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しかしおかしな事に、奥村の部屋から凶器と思われるものが見つからなかった。


そして管理人が部屋に入った際、奥村自身も部屋で額から血を流して死んでいたという。


響歌らは中野を誰もが奥村が殺したんだと警察に主張したが、彼女自身も死んでいるという事で主張を受け入れてもらえなかった。

⏰:11/05/03 10:47 📱:T004 🆔:OE1aqJIY


#62 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それから犯人は見つからず捜査は打ち切られた。


響歌らは悔しい気持ちでいっぱいだった。


それからして吉田が響歌に話した。


中野は響歌に密かに恋心を抱いていた、と…。


吉田は前もって中野から度々相談を受けていたらしい。

⏰:11/05/03 10:59 📱:T004 🆔:OE1aqJIY


#63 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌の家への泊まりが決まった時、吉田は中野に告白のチャンスだという事で連絡をしていた。


それで響歌はわかった。


あの夜…吉田と雪乃が寝た後、中野は響歌に告白するタイミングを伺う為に実は起きていた事。


だから部屋の電気が消えていた事も当然知っていたんだと。

⏰:11/05/03 11:03 📱:T004 🆔:OE1aqJIY


#64 [輪廻◆j6ceQ96kak]
数日後…

中野の事はショックだが、何日も仕事を休む訳にはいかないと思い、響歌は今日から仕事に復帰した。


もうあの音はしない。


しかし響歌は時々ふと何かの気配と殺気を感じる時がある。


それは霊的なものなのか…


それとも―



第1話 狂気なる隣人【完】

⏰:11/05/03 11:08 📱:T004 🆔:OE1aqJIY


#65 [輪廻◆j6ceQ96kak]
第2話 【怪奇なる旅路】


響歌の仕事仲間だった中野敬太がこの世を去ってから早5ヶ月。


響歌の会社と学校は明日からしばらくの大型連休に入る。


そんな中…


優斗『なあ明日から3日間くらい旅館にでも泊まりに行かね?』


それはある日の仕事の休憩中、響歌の先輩の吉田優斗のこの発言から始まった―

⏰:11/05/03 22:09 📱:T004 🆔:OE1aqJIY


#66 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『旅館…ですか?』


休憩室のソファ。

吉田の左隣に座る響歌が訪ねる。


優斗『そっ! 最近残業も多かったし、気分転換にでもどうかって思ってよ』


雪乃『いいねえ!』


今度は吉田の右隣に座る雪乃が嬉しそうに言った。

⏰:11/05/03 22:11 📱:T004 🆔:OE1aqJIY


#67 [輪廻◆j6ceQ96kak]
雪乃の反応を確認した吉田は、響歌の方に目をやり、何かを訴える眼差しを示した。


響歌は空気を読むように


響歌『楽しそうですね! 行きたいです!』


と笑顔で答えたものの、その笑いはほぼ苦笑いに近かった。

⏰:11/05/03 22:27 📱:T004 🆔:OE1aqJIY


#68 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その表情を見逃さなかったであろう雪乃の視線が響歌を捉える。


雪乃『響歌、行きたくないなら無理しなくていいんだよ?』


響歌『えっ? そんな事…ないよ』


自分で苦笑いをしているのも気づかない響歌に吉田は眉をしかめた。

⏰:11/05/03 22:29 📱:T004 🆔:OE1aqJIY


#69 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『行きたくねーの?』


その真顔の吉田から放たれるプレッシャーは尋常ではない。


普段はおちゃらけている吉田だが、真顔になる吉田と普段の吉田とのギャップに響歌はいつも驚かされている。


響歌『いえ、ぜひ行きたいです!』


響歌は嫌な事は嫌だとハッキリ言えない自分を呪いたい気分だった。

⏰:11/05/03 22:32 📱:T004 🆔:OE1aqJIY


#70 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『よし、じゃあ決まりだな!』

吉田は安心した顔をすると、バッグから1枚の紙を取り出した。


雪乃『なにそれ。もしかしてパンフレット?』


優斗『あたり! コンビニにあったから貰ってきた』


雪乃『準備いいじゃん。で…どんなとこなの?』

話は響歌を置いて段々と進んでいく。

⏰:11/05/04 10:45 📱:T004 🆔:3WqBaJiw


#71 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『この旅館ネットで調べたんだけど、実は…出るらしいんだよ』


響歌『出る…?』


雪乃『出る…?』

響歌と雪乃はほぼ同時に聞いた。


吉田のニヤけ顔を察した雪乃が更に訪ねる。


雪乃『もしかして…霊的なやつ?』


優斗『…あたり』

静かにつぶやくように答えた。

⏰:11/05/04 10:50 📱:T004 🆔:3WqBaJiw


#72 [輪廻◆j6ceQ96kak]
雪乃『なにそれ〜ウケるね』

しかし雪乃は驚くそぶりを見せず、むしろ楽しげに言う。


響歌『雪乃…怖くないの?』


雪乃『ちょっと耳貸して』

雪乃が響歌の耳元で小声で言った。


雪乃『冗談だと思うよ。ここは一応ホラ、騙されたと思っとこうよ』

その言葉に響歌は内心ホッとした。

⏰:11/05/04 10:56 📱:T004 🆔:3WqBaJiw


#73 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『おい、何話してんだよ〜』


雪乃『なんでもないよ。明日楽しみだねって話ししてたの』


優斗『2人共、霊が出てもチビるなよ!』


こうして明日からの3日間…響歌、吉田、雪乃の旅路が始まる。


この時の3人は、この3日間が地獄の旅路になるとは誰も予想などしていなかった―

⏰:11/05/04 11:03 📱:T004 🆔:3WqBaJiw


#74 [輪廻◆j6ceQ96kak]
翌日―


朝5時。

起床した響歌は早速準備に取りかかる。


昨夜吉田から連絡があり、明日の7時に吉田の車で迎えに来るという事を伝えられた。


泊まる旅館は車で片道5時間はかかる山中にあるという。


それだけでも充分霊が出そうな雰囲気だと感じた響歌。

⏰:11/05/04 11:13 📱:T004 🆔:3WqBaJiw


#75 [輪廻◆j6ceQ96kak]
昨日の雪乃の『冗談』という言葉を信じてその日は通話を終えた。


響歌『あ〜ん…服が決まらない』

女性はそういった身支度に時間がかかる。


お洒落街道まっしぐらの響歌もその1人だ。


響歌『なにやってんだろ私。人のいなさそうな山の中に行くのに服なんかにこだわっちゃって…』

現実に引き戻された響歌は、適当に動きやすそうな服をチョイスした。

⏰:11/05/04 11:19 📱:T004 🆔:3WqBaJiw


#76 [輪廻◆j6ceQ96kak]
結果…

上は黄色いTシャツにピンク色のパーカー。

下は丈の短いジーンズというシンプルなものになった。


洗顔などを含め、ここまでに時間は1時間以上も経過していた。


時計の針は早くも午前6時20分を指した。


響歌は最終的な準備に取りかかる。

⏰:11/05/04 11:27 📱:T004 🆔:3WqBaJiw


#77 [輪廻◆j6ceQ96kak]
大きめのバッグから3日分の荷物の整理。


着替えや生理用品などを細かく確認しながらバッグに入れていく。


響歌『こんなもんでいっか』


チェックが終わり、バッグを玄関に置く。


あとは吉田と雪乃が迎えに来るだけだ。

⏰:11/05/05 15:52 📱:T004 🆔:YT9SDRIA


#78 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『まだ時間あるしゴミでも捨ててくるかな』


脱衣場に向かい、2日分ほどたまったゴミ袋を手にして部屋を出た。


ゴミ捨て場には見慣れた顔の人が。


響歌の部屋の隣人である武田だ。


彼女はほうきを手にして掃除中のようだった。

⏰:11/05/05 15:57 📱:T004 🆔:YT9SDRIA


#79 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌はゆっくり近づいて声をかけた。


響歌『武田さん、おはようございます!』


武田『あら村井さん。おはよう、早いんだね』


響歌『はい。実は今日から3日間泊まりに行くんです』


武田『そうなの? いいわね、羨ましいわ』

ほがらかに笑いながら言った。

⏰:11/05/05 16:02 📱:T004 🆔:YT9SDRIA


#80 [輪廻◆j6ceQ96kak]
武田『どこに泊まるの?』


響歌『ええと…確か池崎旅館っていう所だったと思います』


武田『…池崎…旅館か。楽しんできてね』


響歌『ありがとうございます!』

軽く一礼し、ゴミをゆっくり置いてから部屋に戻った。


いつもは乱暴に投げているが、この時は武田が見ているためにゆっくり置いた。

⏰:11/05/05 16:07 📱:T004 🆔:YT9SDRIA


#81 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しばらくして響歌の携帯電話が鳴った。


響歌『吉田さんだ』

慌てて通話ボタンを押して電話に出る。


吉田『村井? もう着くから家の前で待ってて』


響歌『わかりました』

通話を切り、玄関に置いたバッグを手にして早々と部屋を出た。

⏰:11/05/05 16:12 📱:T004 🆔:YT9SDRIA


#82 [輪廻◆j6ceQ96kak]
外に出て1分もしない内にアパートの前に白い車がやってきた。


雪乃『響歌、おはよー。乗って乗って!』

助手席から雪乃が顔を覗かせて言った。


響歌『うん』

乗ろうとした際、掃除中の武田が近づいてきた。

⏰:11/05/05 16:17 📱:T004 🆔:YT9SDRIA


#83 [輪廻◆j6ceQ96kak]
武田『村井さん、どうか気をつけてね』


響歌『……はい?』

何を気をつけろというのかと聞き返したくなったが、背後で吉田が早く乗れと言ってくるので、何も言わずに早々と車に乗り込んだ。


武田『後悔しなさんな』

武田はそうポツリとつぶやいて、走り行く車を見えなくなるまでただ見ていた。

⏰:11/05/05 16:22 📱:T004 🆔:YT9SDRIA


#84 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『今のババア誰?』


響歌『あ、隣の部屋に住んでる武田さんです』


雪乃『さっきなんて言ってたの?』


響歌『確か…気をつけてって言ってたような…』


雪乃『あ〜優斗の運転荒いからね』

クスっと笑いながら雪乃が言う。

⏰:11/05/05 16:29 📱:T004 🆔:YT9SDRIA


#85 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『うっせーよ。大体あのババア俺の運転の仕方知らねーじゃん?』

それもそうだ。

ならば何に気をつけろと言っていたのだろうと響歌は疑問を感じていた。


雪乃『あ、山の中だからさ〜熊とかに気をつけろって事じゃないかな?』


優斗『なるほどな。それなら納得だぜ』


響歌『そうだよね?』

少し安心した響歌はホッと胸をなで下ろす。

⏰:11/05/05 16:34 📱:T004 🆔:YT9SDRIA


#86 [輪廻◆j6ceQ96kak]
雪乃『そういえばさ、池崎旅館だっけ? あんま人来ない所だってネットで見たんだけどホント?』


優斗『らしいな。でも人少ない方が気楽でいっしょ』


雪乃『私達だけだったりして〜?』

雪乃と吉田2人してケラケラ笑う。

響歌だけは苦笑いだった。

⏰:11/05/06 11:26 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#87 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『なあなあ、もし俺達だけだったら夜肝試しとかやらねえ?』


雪乃『肝試し? 面白そうじゃん。ね、響歌?』

突然振られた響歌は戸惑った。


響歌『でも危なくないですか?』

運転席のミラー越に映る吉田の顔を見て言う。

⏰:11/05/06 11:32 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#88 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『3人で行動すれば大丈夫だって! なんかあったら守ってやるからよ』


雪乃『そりゃ頼もしいね。でもこういうのって意外と女の方が強かったりするんだよね』


優斗『お前を見りゃ霊も驚いて消えるか!』


雪乃『それどういう意味さぁ!』

カップルの会話が始まってしまった。

肩身の狭くなった響歌は窓から外の景色を見ながら2人の会話を聞き流した。

⏰:11/05/06 11:37 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#89 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それから数時間後、車は山の中へと入った。


雪乃『なんか暗くない? まだ10時なのに』


優斗『おもしれ〜じゃん。なんか出そうだな』

山の中は自然で静かな空気だが、木々が何かを訴えるようにざわついていて、なんとも不気味だ。

⏰:11/05/06 11:45 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#90 [輪廻◆j6ceQ96kak]
何分か置きに別の車とすれ違いながらも、車は奥へ奥へと進んで行く。


雪乃『眠たくなってきちゃった…ちょっと寝るね』


優斗『…ああ。村井は? 眠たいなら寝ていいよ』


響歌『私は大丈夫です』

せっかくの遠出。

車の窓から見る景色が好きな響歌はじっと窓辺に顔を近づけて外を見る。

⏰:11/05/06 11:52 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#91 [輪廻◆j6ceQ96kak]
雪乃『じゃあ着いたら起こして。おやすみ〜!』


雪乃が眠りについてから、車内は驚くほどの沈黙に支配された。


優斗『音楽でもかけっか!』

沈黙は苦なのか、吉田は前を見ながら片手でカセットテープを手探りで探し、それを見つけるとセットし再生ボタンを押した。

⏰:11/05/06 11:57 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#92 [輪廻◆j6ceQ96kak]
吉田の好きそうなロックの歌が車内に流れる。


山の中には不釣り合いな曲だな、と響歌は少々ガッカリしていた。


その曲がサビに入ろとした瞬間だった。


『ザザザザザザザザザ…』

カセットテープが壊れたのか、男性の声は一瞬にしてノイズのような音に変わった。

⏰:11/05/06 12:00 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#93 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『あ? なんだこりゃ』


しばらく聞き流していると…


『ザザッ…ココデ……ワタシハ…ザザザザザ』


優斗『なんだ? この曲にそんな歌詞ないぜ?』

吉田は独り言のように自分に問いかける。

⏰:11/05/06 12:04 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#94 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ここで響歌が何かに気づき、問いかける。


響歌『あの…この曲って男性だけで歌ってるんですか?』


優斗『ああ。それがどうかした?』


響歌『今の声…女の人でしたよ?』


優斗『…マジ?』

吉田はミラー越に響歌の顔を見て、響歌も吉田と目を見合わせた。

⏰:11/05/06 12:08 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#95 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『気味悪ィな』

手探りで停止ボタンを押す。

しかし反応がない。


優斗『ちょっと車止めるぞ』

山の中は険しくなってきていて他の車が来なくなった為に車を一旦停止した。


改めてテープの停止ボタンを連打するものの、全くノイズは止まらない。

⏰:11/05/06 12:12 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#96 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そこで、止まっている車に気がついたのか雪乃が目を覚ました。


雪乃『あれ、もう着いたの?』


優斗『これ聞こえるか? さっきから鳴りっぱなしなんだよ。停止押しても反応ねえし』

少しイライラモードの吉田。


それを悟った雪乃は冷静に言った。


雪乃『一回エンジン切ればいいんじゃない?』

⏰:11/05/06 12:17 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#97 [輪廻◆j6ceQ96kak]
優斗『あ、そっか』


雪乃『しっかりしてよ〜。もう着いたのかと思ったし。せっかくいい夢見てたのにな』


優斗『起こして悪ィな』

そう言ってエンジンを切ると同時に音はピタリと止んだ。


優斗『よし、じゃあ気を取り直して行くか!』

再びエンジンを入れ、車を急発進させた。

⏰:11/05/06 12:20 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#98 [輪廻◆j6ceQ96kak]
30分後、山の中を進むにつれて霧が発生してきていた。


響歌はいつの間にか眠りについている。


雪乃『霧出てきたね…』


優斗『こんくらい大丈夫だって。それよりもうそろそろ着くから村井起こして』


雪乃『響歌! 着くぞ〜!』

雪乃のバカでかい声で響歌はパッと驚いたように起きた。

⏰:11/05/06 12:28 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#99 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『あ…寝てた…?』


優斗『もう着くぜい!』

やがて近くに茶色い建物が見えてきた。

外観はお世辞にもよいとは言えない木造の造りだ。


雪乃『もしかしてあれ? なんか古臭いね〜』


優斗『安いからいいじゃん。なんか出そうだし』

吉田は何かとそればかりを繰り返す。

⏰:11/05/06 12:33 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


#100 [輪廻◆j6ceQ96kak]
建物が完全に見えて来た所で車を停止した。


見れば見るほど古臭い外観に、響歌は不気味とさえ思っていた。


優斗『行くぞ』

吉田に続いて雪乃が歩き出し、響歌もそれに続いた。


戸は痛んでいるらしく、開けるとミシミシと音が響く。

⏰:11/05/06 12:41 📱:T004 🆔:c7ITtZXU


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