†horror†
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#651 []
↑お前が書くな
:11/11/11 16:26 :P08A3 :GlPGJ8us
#652 [輪廻]
蓮『俺が引っ越してった後にそんな事があったのか…』
響歌『それからその人に会う事はなかったけど…まさか5年経った今になって会うなんて…』
蓮はそれ以上何も言う事ができず、うつむく響歌を黙って見ていた。
そんな中、蓮の父親がソファから立ち上がり
『飯でも食べにいくか』
と座る2人を見下ろして言う。
:11/11/15 23:13 :Android :5LHHuenk
#653 [輪廻]
蓮『村井、腹減ってるよな? 近くに美味いラーメン屋あんだけど気晴らしに行くか?』
響歌『…そうだね、食べたい』
蓮『じゃあ決まりだな』
彼なりの気遣いと優しさが響歌の心に大きく響いた。
蓮『近いから歩いてくぞ』
蓮とその父親は行く準備を始め、響歌もソファから立ち上がる。
:11/11/15 23:16 :Android :5LHHuenk
#654 [輪廻]
ラーメン屋は家から5分ほど歩いた所にあり、店内も時間帯が時間帯なので大盛況していた。
とりあえず奥の空いてる席に3人座る。
座るなり蓮がはしゃぐように言う。
蓮『ここのとんこつラーメンは絶品なんだよ』
響歌『あ、私とんこつは無理かも』
蓮『…マジ? もったいねえな』
明るく振る舞う蓮に、さっきまで悲しみでいっぱいだった響歌の表情にも自然と笑みがこぼれてくる。
:11/11/15 23:18 :Android :5LHHuenk
#655 [輪廻]
唯一の気がかりは蓮と蓮の父親の距離感。
ラーメン屋へ向かう途中も2人は距離を置いて歩いていた。
目を合わせようともしない。
蓮の本当の父親ではないので色々と複雑なのだろうけど、響歌はそんな2人といるのが気まずくてしょうがなかった。
いつかわかり合え、本当の親子になれる日が来る事を祈るばかりだ。
:11/11/15 23:20 :Android :5LHHuenk
#656 [輪廻]
3人それぞれ別の味のラーメンを注文し、響歌はそれをじっくりと味わった。
『2人共、ちょっと聞いてほしい』
ラーメンを早々と食べ終え、コップに入った残りの水を飲み干してから蓮の父が真顔で言った。
蓮は反応せずにただラーメンをすすり、響歌は割り箸を持ったまま父親の方に目をやる。
:11/11/15 23:23 :Android :5LHHuenk
#657 [輪廻]
『明日、私は1日だけ仕事の休みを貰って警察に行ってこようと思う。剛史を殺したという人にも面会しておきたい。だから蓮、村井さん…君達は気晴らしにこれでも観に行きなさい』
そう言ってポケットから取り出したのは二枚の紙。
響歌が顔を近づけてそれを見てみると、紙には映画と思われるタイトル。
つまり映画のチケットだった。
:11/11/15 23:33 :Android :5LHHuenk
#658 [輪廻]
そして再び蓮の父親の方に目をやると、彼は優しい表情をしていた。
響歌『あ、ありがとうございます…』
そのチケットを一枚受け取り、そっとポケットにしまうと、溢れそうな涙をこらえながら残りの麺をすすった。
響歌には、一瞬だけまるで自分の本当のお父さんのように思えたのだ。
その夜は温かいラーメンと蓮達の暖かい優しさに響歌の心も暖まり、安らかに眠る事ができた―
:11/11/15 23:36 :Android :5LHHuenk
#659 [輪廻]
そのせいか、例の夢を見る事はなく翌日の朝を迎える。
麗奈がいない麗奈の部屋。
明るく話しかけてくれる彼女はもうこの世にはいない。
部屋を出て階段を下りリビングへ向かうと、キッチン側テーブルには椅子に座り脚を組みながら新聞を読む蓮の父親の姿。
リビングのソファには誰もいない。
蓮はまだ寝ているようだ。
:11/11/19 13:16 :Android :ImaFCg1E
#660 [輪廻]
響歌『おはようございます』
今できる精一杯の笑顔で蓮の父親に明るく言うと
『おはよう、村井さん』
と向こうもニッコリと返した。
時計の針は午前7時30分を指した所だ。
ソファに座って、しばらくの間電源のついていない暗いテレビ画面を見つめていると、階段を下りてくる音がした。
:11/11/19 13:20 :Android :ImaFCg1E
#661 [みほ]
あげます(^O^)
:11/11/21 01:54 :841SH :2bkoARcM
#662 [輪廻]
>>661さん
ありがとうございます♪
――――――――――
まだ寝ていると思っていた蓮が起き、洗面所にいるのだろう水の音が聞こえてくる。
そしてリビングに来て響歌の隣に座った。
蓮『…おはよ』
響歌『おはよう』
チラッとだけ彼の顔を見てみると、その表情が重苦しい。
:11/11/22 12:30 :Android :B6W28UJc
#663 [輪廻]
響歌『どうしたの? 何かあった?』
蓮『…別に。変な夢見ただけ』
響歌『どんなの?』
何気に聞いてみると、蓮から衝撃的な答えが返ってくる―
蓮『気がついたら麗奈が殺されたあの廃工場にいて…俺の目の前に倒れてたんだ…麗奈が。で、自分の手を見てみたら血まみれのナイフを握ってた』
響歌『…! そ、そんなのただの夢だよ。気にする事なんか…』
蓮『そうだけどさ。なんか嫌にハッキリした夢だったから、一瞬夢か現実かわからなかった』
そう言って机の上のリモコンを手に取り、テレビの電源をつける蓮。
:11/11/22 12:33 :Android :B6W28UJc
#664 [輪廻]
そして色々な局のチャンネルボタンを押していて、あるチャンネルで手を止めると
蓮『これ…麗奈の事件のニュースだ』
そうポツリとつぶやいた蓮の声が届いたのか、後ろのキッチンテーブルの椅子に座っていた蓮の父親がバタバタと急ぎ足でテレビの方にやってきた。
画面右上のテロップには
“杉本麗奈さん殺害事件に新展開”と表示されている”
しばらくして画面が現場の廃工場からスタジオに変わり、女性のニュースキャスターが真顔でその事件の新展開について読み上げた。
:11/11/22 12:41 :Android :QIpXppO2
#665 [輪廻]
それは、麗奈殺害事件にはとあるサイトが関係しているという事だった。
その話を聞いて響歌と蓮はピンときて顔を見合わせる。
蓮『おい村井! これって…!』
響歌『うん。間違いないよ…デスネット!』
いよいよ、影で蠢いてたそのサイトが世間に姿を現そうとしていたー
:11/11/22 12:43 :Android :QIpXppO2
#666 [輪廻]
そして物語は最終章へー
:11/11/22 12:45 :Android :QIpXppO2
#667 [輪廻]
某所ー
『それで…村井響歌の居場所は?』
『ええ…局員の一人が彼女が住んでいるアパートの管理人…高田幸治を殺し、盗んだ合鍵で部屋を開けましたが、村井響歌はいなかったそうで。しかし彼の報告によると、今は桐谷という知り合いの家にいるようです』
『桐谷くんの家…。なら村井さんには直接来てもらおうかな。別室に拘束している井本七瀬は彼女とは親友同士。その親友を助ける為なら村井さんは必ずここに来る。それも桐谷くんと一緒に…』
:11/11/22 12:55 :Android :QIpXppO2
#668 [輪廻]
響歌と蓮の2人はその日のお昼、昨夜蓮の父親から貰った映画のチケットを持って映画を観に行った。
あるメールに気がついたのは、映画を観終わりロビーで携帯電話の電源をつけてからだ。
響歌『蓮! これ見て…!』
隣にいた蓮にそのメールを見せると、彼も驚いた顔をした。
メールには件名に“井本七瀬”とあり、添付されていた画像には薄暗い部屋で手足を縛りつけられて拘束されている女性の姿があった。
七瀬とはしばらく会っていなく、もうこの世にはいないと思っていた響歌はすぐに
響歌『ナナ…!』
とロビーで叫ぶように言った。
:11/11/22 13:18 :Android :APO5AGiI
#669 [輪廻]
蓮『村井落ち着け! メールに何か書いてないか見てみろよ』
言われた通りに再びメールを見ると…
“村井響歌 親友の井本七瀬を助けたいなら本日午後7時にお前が通っていた中学校の一階体育倉庫へ来い”
と書かれていた。
響歌『中学校…?』
蓮『俺達が通ってた中学校? そこに井本がいるって事だよな? 村井、行こうぜ!』
響歌『待って。7時になってから私一人で行く』
響歌が真顔でそう言うと、蓮はさっきよりも驚いた顔をする。
:11/11/22 20:29 :Android :Wgrk0EI.
#670 [輪廻]
蓮『何言ってんだよ! 向こうはデスネットの関係者で…何人いるかわからないだろ! そんなトコに一人で行かせられるか!』
周りの人目を気にせず大声を張り上げる蓮だが、響歌は首を横に振って話を続ける。
響歌『ありがとう蓮。でも、これは私が決着をつけるべきなの』
蓮『どういう事だよ…?』
響歌『ナナが自分が通ってた中学校で捕まってるって事は…』
蓮の質問を無視して独り言のように言う響歌を見て蓮は
蓮『もういい! 俺は警察に電話してから中学に行く! だからお前はじっとしてろ!』
響歌『ちょっと蓮! ここから中学校までどれだけ時間が…!』
止める間もなく蓮は全速力で走り去っていったー
:11/11/22 20:31 :Android :Wgrk0EI.
#671 [輪廻]
その場に一人残された響歌は、携帯電話を握りしめながら考えた。
自分自身が見ていた夢は今の七瀬と同じ状況。
暗闇で手足を縛られ身動きがとれないあの感覚ー
そしてそこからゆっくり近づいてくる人物―
親友である七瀬の苦しみを自分も夢で感じていたとでもいうのだろうか。
響歌『私が…行かなきゃ…私が…』
気がついたら自分も走り出していた。
数分前に走り去っていった蓮を追うようにしてー
:11/11/23 11:52 :Android :pL7Ejq9k
#672 [輪廻]
そんな響歌は電車で、通っていた中学校から一番近い駅に向かった。
時間の針は指定された午後7時より5時間早い午後2時を指す。
『次は〇〇駅〜』
目的地の駅の名前が車内アナウンスで流れると共に、電車を降りる準備をした。
そこから中学校まで歩いて20分かかる所を全速力で走り、10分ほどでその中学校に到着。
日曜日というだけあって周りに生徒はいないが、グラウンドの方からは部活の練習をしているのか、人の走る音やボールを打つ音などがしている。
響歌『変わってない…』
校舎の外観を見上げてポツリと言う。
:11/11/23 11:56 :Android :pL7Ejq9k
#673 [輪廻]
いやいや、と首を振って正面玄関へ向かったが鍵がかかっていたので裏口へと回る。
幸い裏口には鍵がかかっていなく、すぐに入る事ができた。
入るなり靴を履いたまま体育館のある一階の奥へと歩いていく。
体育館の入り口の大きな扉を目の前に、一つ深呼吸してから扉に手をかけ中に入った―
:11/11/23 11:58 :Android :pL7Ejq9k
#674 [輪廻]
そこにはとても懐かしい空間が広がっていた―
体育館のなんともいえない独特な匂い、ピカピカのワックスがかかった床、バスケットゴール、奥にはステージと懐かしさが蘇るようだった。
来るように指定された体育倉庫は向かってステージの左側にある扉の向こう。
人のいるような気配はないが、きっとあそこに七瀬がいると直感で思い、ワックスがかった床をキュッキュッと音を鳴らしながら体育倉庫に向かって歩き…
そっと手を伸ばし、扉を開けようとした瞬間だった―
『…誰ですか?』
後ろから誰かが呼びとめた。
:11/11/23 12:02 :Android :pL7Ejq9k
#675 [輪廻]
振り返った先には、一人の体育教師と思われる赤いジャージを着た小柄な女性。
その顔を近づいてよく見てみると…
響歌『もしかして…青山先生?』
思い出したように言うと向こうは
『そうですけど、あなたは一体どなた?』
と知らないような口振りで聞き返してきた。
:11/11/23 12:54 :Android :LofcQDC2
#676 [輪廻]
響歌『あ、私はここの卒業生で村井響歌です。あの、体育の青山先生ですよね? 私の事覚えてませんか?』
『…覚えがあるような、ないような…』
青山はしばらく響歌のガン見しながら思い出そうとするも…
『ごめんなさい、やっぱり覚えてないみたい。それにしてもこの学校の卒業生がここに何か用なの?』
少しショックを隠し切れなかった響歌だが、今はそんなショックを受けている場合ではないと、あのメールの事を青山に話した。
:11/11/24 14:04 :Android :vAQlkjmo
#677 [輪廻]
『それが…この体育倉庫なのね?』
話し終えると青山は納得した表情を見せた。
響歌『それで、一緒に中を見てもらえませんか?』
『いいわよ。じゃあ鍵を持ってくるから少し待ってて』
そう言って青山は駆け足で出ていった。
響歌『(ナナ…今助けるから…無事でいて)』
心の中でそう何度も無事を祈る―
:11/11/24 14:07 :Android :vAQlkjmo
#678 [輪廻]
しばらくして鍵のチャリンという音を鳴らしながら青山が戻ってきた。
『さ、これで』
鍵を渡された響歌が早速、体育倉庫の扉を開けるー
響歌『ナナ!』
中に踏み込んで周りを見回すと…そこには七瀬どころか人、一人いない。
響歌『誰も…いない?』
それほど広くない体育倉庫を隅々まで見たが七瀬や、人がいたかもしれない痕跡など一切見つからなかった。
:11/11/24 14:09 :Android :vAQlkjmo
#679 [輪廻]
『誰もいないみたいね…』
青山が首をかしげながら不思議そうな顔で言う。
その場でしばらく呆然と立ち尽くしていると、外からバタバタと何人かが走ってくる足音がし…
そこに現れたのは…蓮と、その父親、警官の3人だった。
蓮『村井! 井本は!?』
響歌『誰もいなかった…』
蓮『なんてこった…。一体どこに行ったんだよ!』
念のためと警官に改めて倉庫内を調べてもらったが、七瀬に関する手がかりは何も見つからず…教師の青山を除いた4人は一度中学校を出た。
:11/11/24 14:12 :Android :vAQlkjmo
#680 [輪廻]
『とにかく何もなくて安心しましたよ。ただのイタズラでしょう…って、あなたはあの時の!』
響歌の顔を見た警官が言う。
響歌『…え?』
まさかあの男なのかと思ったが、顔も声も似ても似つかないので内心ホッとしてから改めて警官の顔を見つめた。
響歌『……あ』
蓮『え、何? また知り合いなの? お前どんだけ警官の知り合いがいんだよ』
響歌と警官を交互に見てから少し呆れたように言う蓮。
:11/11/25 11:35 :Android :67PQu/8w
#681 [輪廻]
響歌『あ、うん。前にね私の住んでるアパートでバイト先の先輩だった人の事でちょっとあって…』
蓮『この人は大丈夫なんだろうな?』
警官を凝視しながら言い、思わず身構えるような体勢をとったが
響歌『だ、大丈夫だよ。前は怒られちゃったけどね』
蓮『…ならいいけど』
視線を反らし頬をポリポリと掻きながら言う。
『では私はこれで』
警官は軽く敬礼をすると、門の前に停車していたパトカーに乗り込み、その場を去っていった。
:11/11/25 11:41 :Android :67PQu/8w
#682 [輪廻]
蓮『で…どうする?』
パトカーを見送った蓮が振り向きざまに問う。
響歌『…7時になったらまた来る。それまでは一人でいさせて…』
蓮『大丈夫か? デスネットの局員がいつお前の所に現れるかわからないぞ?』
響歌『うん、怖いけど…ちょっと頭の中整理したいから…』
蓮『…そっか。じゃあ7時なったらこの校門の前で待ち合わせな』
響歌は一人で、蓮は父親の方をチラリと見てから一人と、3人バラバラでその場を後にした。
:11/11/28 01:53 :Android :eTVAsnjM
#683 [輪廻]
響歌『まだあるかな…』
呟きながら響歌が向かった場所は、5年前に出会った高校生、黒川奈穂が住んでいた家だった。
あの晩の出来事以来一度も行く事がなかった場所。
あれから5年、どうなっているのかを確認したかったのである。
その次に向かう場所も決まっていた。
記憶だけを頼りに住宅街を進む。
ここらへんだ、と思った所で足を止め周りを見る。
:11/12/03 21:17 :Android :J1uuGu7.
#684 [輪廻]
しかしそこには真新しい家が立ち並ぶばかりで、5年前とは全く違う景色が広がっていた。
改装でもしたのかもしれないと、その辺の家の表札を一つ一つ見ながら歩く。
だが結局見つける事はなかった。
諦めて、現在どこかで拘束・監禁されている井本七瀬の家へ向かおうとした時、とある家の庭先で植木の手入れをしているおじさんが目に入る。
その顔をよく見ていると、なんだか見覚えがあるように思えてきて、気がつくと響歌の足はそのおじさんの元へと向かっていた。
:11/12/03 21:19 :Android :J1uuGu7.
#685 [輪廻]
近づいて声をかけようとしたが、その前におじさんの方が響歌にいち早く気がつき、話しかけてきた。
『ありゃアンタは…』
おじさんはそう言ってしばらく響歌の顔をじっと見つめ…
そして言った―
『……誰だい?』
響歌『…………』
2人の間に少しの沈黙が続く。
:11/12/03 21:23 :Android :VYuta37U
#686 [輪廻]
響歌『あ、あの…ちょっと聞きたい事があるんですけど…』
無理矢理話題を変えるように聞いた。
『はあ、なんでしょ?』
響歌『この辺に佐伯さんというおばあさんが住んでいる家はありませんか?』
響歌の質問に、呑気そうな顔のおじさんの表情が一瞬にして真顔へと変わった。
『ああ佐伯のばあさんね…。あまりこんな事言いたくはないが、いつからか精神に異常をきたしてしまって、いわゆる精神異常者になったと聞いてるよ』
響歌『そんな…』
『ちなみに家はもうないよ。何年も前に取り壊されちゃったから』
その事実を聞いた響歌は愕然とする他なかった。
:11/12/03 21:28 :Android :d9g0KFLk
#687 [輪廻]
響歌『それで栄さんは? もしかして…』
聞くのが怖かったが、口が勝手に動いていた。
『ああ心配はしなくて大丈夫だよ。死んだ訳じゃないから』
さっきまでの真顔が消えたおじさんは今度はあははと笑い出しながら答えた。
響歌『…………』
そんな不謹慎な言動に、5年前に会ったおじさんはやはりこの人だと確信する。
頬をひっぱたきたい気持ちを抑えつつ、響歌は更に質問を続けた。
:11/12/03 21:32 :Android :CO5cPd9o
#688 [輪廻]
響歌『家は取り壊されたって言ってましたよね? じゃあ栄さん達はどこに行ったんですか?』
『んーとね…孫の奈穂ちゃんという子のお母さんは知らない男の人とどこかへ引っ越してったみたいだよ。ばあさんの方は知らないねぇ…。で、アンタはなに、ばあさんの知り合いかなんかかい?』
響歌『あ、いえ…そういう訳では』
『あ、そう。まぁ家がなくなった訳だからアパートかどこかでひっそりと暮らしてると思うよ』
おじさんは再び笑いながら言うと、腰を抱えながら自分の家へと帰っていった。
:11/12/03 21:40 :Android :CO5cPd9o
#689 [輪廻]
5年前に、一緒に住んでいた孫の黒川奈穂が謎の男達に殺害され、いつしかその母親も家から出ていった。
今も一人きりで寂しく暮らしていると思うと胸が切なくなってくる響歌。
だが彼女の居場所がわからない以上、どうする事もできない。
響歌『精神…異常…か。え、精神異常?』
おじさんの家の庭を後にし、七瀬の家に向かっている最中、その言葉が心にひっかかった。
響歌にはなんとなく覚えがあるような気がしたからだ。
何日前…いや何ヵ月も前にそのような精神に異常をきたした者に関わった心当たりが―
:11/12/03 21:43 :Android :CO5cPd9o
#690 [輪廻]
しかしそのひっかかったものが喉元まで来ているというのに、そこからつかえて思うに思い出せなかった。
その事を思い出そうとしながら歩いていると、やがて七瀬の家が目に入る。
早く七瀬の事を家族に知らせなければとドアの方に駆け寄ってインターホン押す。
しばらくしてドアの向こうからバタバタと足音がして、ドアが開かれ七瀬の父親が姿を現した。
『誰ですか、今ちょっと取り込んでて…』
父親のとても焦った様子を見た響歌は、すでに七瀬の事を知っているんだと悟ったわ。
:11/12/03 21:47 :Android :1CJ.kMZk
#691 [輪廻]
響歌『あ、あの私、ナナ…七瀬の友達の村井響歌というんですが…』
『七瀬の…?』
名前と七瀬との関係を言うと、父親の肩の力が抜けると同時に焦りの表情が少しずつ消えた。
響歌『七瀬の事聞いてますか?』
『…という事は君も? なら話が早い。ちょっとあがってください』
そう言って七瀬の父親は響歌を家の中に招き入れた。
:11/12/06 01:26 :Android :qM0P5oK6
#692 [輪廻]
居間へと通され、響歌に缶コーラを差し出すと、早速話を始めた。
『実はお昼の12時頃、家に知らない女の人から電話がかかってきたんですよ。
用件を聞いて驚きました』
ここまで言うと一旦息をのんで、付け加えるように続けた。
『女の人は“お前の娘を拘束した。お前の娘は人殺しだ”と、いきなりこう言ってきた訳ですよ』
響歌『ナナが……人殺し?』
『ええ。もちろん何かのイタズラだとは思ったのですが…しばらくしたら電話口に怯えた声の七瀬が…』
響歌『な、ナナは何か言ってましたか!?』
大きな声を出し、身を乗り出す響歌。
:11/12/06 01:30 :Android :zBPY2wCg
#693 [輪廻]
『いやそれが…よく聞き取れなくて。
デスカメラがどうのこうのとは言っていたような気がするんですが、一体何の事やらサッパリで』
響歌『デスカメラ!?』
再び張り上げた響歌の声に、向こうは少し驚いたように体をピクリとさせつつも聞き返す。
『もしかしてデスカメラとやらをご存知で? 』
響歌『は、はい。まだ中学生の時に流行っていたカメラで…それで写された人は一週間以内に死ぬと言われていたものです』
『まさか!そんなカメラがこの世にあると?』
響歌『私も最初は信じてませんでした。
でも、ナナがそのカメラで担任の先生を写して……あ!』
響歌はここで何かを思い出したように口をポカーンとさせた。
:11/12/06 01:33 :Android :zBPY2wCg
#694 [輪廻]
『ど、どうかしたの?』
そんな響歌に、あたふたしながら尋ねる彼。
響歌『七瀬が人殺しというのは…多分、そのデスカメラで撮られた担任の先生が死んだからだと思います』
『ああ…それなら知ってますよ。
でもそれは確か交通事故が原因と聞いてるけど…』
響歌『そうですけど 、事故はデスカメラで撮られた後に起こったので、電話の人も、七瀬が人殺しだと思ったんじゃないでしょうか…?』
『う〜ん、僕には到底信じられないんだけども…』
七瀬の父は腕を組んで難しい顔をし、考え込みはじめた。
:11/12/06 01:37 :Android :zBPY2wCg
#695 [輪廻]
そんな響歌も、差し出された缶コーラに一度も手をつけずに考え込む。
刻々と時間が過ぎていく。
最初に沈黙を破ったのは七瀬の父。
『そうだ! 警察に連絡しましょう! これは立派な誘拐事件なのだから、さすがの警察も動いてくれるでしょう!』
よほど娘の事が心配なのか、少々鼻息を荒くしながら言う。
響歌『でも…そういうのって警察に言ったら逆に危ないと思います。
あの、ナナの事は私に任せてくれませんか?』
そう言って昼間響歌の携帯電話に届いたメールを彼に見せた。
:11/12/06 01:40 :Android :WPLx6m3c
#696 [輪廻]
『これは…七瀬!』
文章を見た後に、添付された、拘束されている七瀬の画像を見た父はかなり驚いた様子で、思わず片手に持っていた響歌の携帯電話を床に落とす。
響歌『だ、大丈夫ですか?』
『やっぱり警察…警察に電話しよう!』
そう言って動揺する彼は、背後の棚に置かれた電話の子機に手を伸ばしたが、それを響歌はとっさに電話のある棚の前に立ちはだかって阻止した。
響歌『おじさん落ち着いてください!』
『落ち着いてなどいられるか! 娘が誘拐されたんだ!』
響歌『その七瀬を今まで放っておいたのは誰ですか!?』
響歌のその一声で、彼は伸ばしていた手をゆっくりと引っ込めた。
:11/12/06 01:43 :Android :WPLx6m3c
#697 [輪廻]
数分して、なんとか落ち着きを取り戻した彼に、響歌はホッと胸を撫で下ろしてから再び話をはじめた。
響歌『ナナは高校を中退してから家を出て行ったんですよね? 一体何があったんですか?』
『七瀬は…高校2年生までは普通のよい娘だった。
だけどある時、通っている学校の先輩の恋人ができたと言って一度だけ家に連れてきた事があるんですよ。
でもその男は、七瀬とは全く釣り合いそうもないチャラチャラとした感じの男だった。
当然、僕と妻は反対した。
それからですよ、七瀬が変わっていったのは…。
高校も途中で辞めてしまってからは、深夜遅くになっても家に帰らない事が多くなって』
響歌『結局、最後まで2人の交際は認めなかったんですか?』
『ええ。相手があんな男じゃ七瀬は幸せになれない…そう思いました。
何度も何度も反対し続けた結果、ある日突然、出ていくと言って家を飛び出して行ったわけです』
七瀬の話を聞いた響歌の目からは涙がこぼれていた。
:11/12/06 01:57 :Android :Z9IqkvF6
#698 [輪廻]
響歌『どうして人を見た目で判断するんですか…?
ナナはナナで十分幸せだったはずなのに…』
『ああ…反省していますよ。
僕も妻もつまらない意地を張っていたんだと。
だから一刻も早く誘拐犯の元から助け出して謝りたい』
響歌『私もナナの友達として助けたいです。
だからお願いがあります。
警察には連絡しないでください』
そう言うと、頭を深く下げた。
『でも、君一人でどうやって…』
当然の疑問をぶつける彼に対して響歌は頭をゆっくりと上げ、真剣な顔で彼を見つめて言った。
響歌『その誘拐犯には心当たりがありますから。
…ナナは必ず助けます。
だから、おじさんはここでナナの帰りを待っていてください』
響歌の覚悟は決まったー
:11/12/06 02:01 :Android :Z9IqkvF6
#699 [輪廻]
午後6時50分ー
辺りはすでに薄暗く、道には仕事帰りらしき男女が忙しなく行き交っている。
そんな人通りを抜け、響歌は中学校へと急ぐ。
やがて校門が見えてくると、その前には既に蓮の姿があった。
響歌『蓮!』
蓮『おお、村井』
小走りで蓮の元に駆け寄る。
響歌『ごめん…待たせちゃって』
蓮『いや俺もさっき来たばっか。
それよりお前どこ行ってたの?』
響歌『うん、ナナの家。
ナナのお父さんと約束してきた。
絶対助けるって』
2人は同時に校舎を見る。
時間は指定の午後7時を少し過ぎた所だったー
:11/12/06 02:32 :Android :wzxJ86gw
#700 [輪廻]
蓮『裏から行こうぜ』
響歌『うん』
2人は静かな足音で裏口へと回った。
鍵は開いていたので、靴のまま中へと入る。
昼間来た時とは雰囲気がまるで違うように感じた。
蓮『村井、体震えてるけど大丈夫?』
暗く静かな廊下だが、蓮の小声は大きく響くように聞こえた。
響歌『だ、大丈夫…。
暗い所が苦手なだけだから…』
やがて体育館の扉が見えてきた。
蓮がそっと扉に手をかけると…
蓮『鍵…開いてる。よし行くぞ』
そのまま片手で扉を開けたー
:11/12/06 02:48 :Android :y67ie0Q.
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