漆黒の夜に君と。V[BL]
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#125 [ちか]
もともと妻は、旦那に頼るようなタイプではなく、自立心の高い性格だったから、

「そんなんじゃないわ。」

この質問が的外れだと言うことは分かっていた。

“なんで”
その言葉が出てこなかった代わりに、そんな質問を投げてしまったのだ。

妻は、呆れたように笑った。
色目無しにそんな妻は美しいと思う。

「…そんなんじゃないのよ。もう、私達潮時だと思ったの。」

潮時…―――

たしかにそうかも知れない
なんて納得してしまったのは、やっぱり俺が妻を愛していなかったからだろうか。

⏰:11/10/15 15:26 📱:Android 🆔:GBumr9Qk


#126 [ちか]
「それにね、私好きな人が出来たの。……あなたと違って、私のことをちゃんと見てくれる人よ。」

そこまで聞いてやっと、妻の言いたいことが分かった。

一瞬目を見開いて驚いたが、徐々にその事実が体に溶け込んでくる。

ああ、そうか。
お前は気づいてたんだな。


もう遅いかも知れないが、俺は、お前のそういうハッキリしたところ、好きだったよ。

内心でそう呟きながら、潰れた吸殻に目を向ける。

⏰:11/10/15 23:01 📱:Android 🆔:GBumr9Qk


#127 [ちか]
「でもね、」

顔は見えないが、その声は涙を堪えているように震えていた。

見上げることが出来ない。
いや、今思えば、どんな顔で妻を見たら良いのか分からなかった、と言った方が正しかったかも知れない。

「あたし、あなたのこと好きだったのよ。父が院長、そしてあなたの上司で、こうやって結婚したけど、そんなことが無くてもあたしは…、」

ごめん。

「本当に愛してた。」

ごめん。

「あなたは、あたしのこと一度でも愛してくれたことあった…?」

そんなことをわざわざお前の口から言わせて、
本当に……ごめん。

⏰:11/10/15 23:12 📱:Android 🆔:GBumr9Qk


#128 [ちか]
結局それ以上俺は何も言えなかった。

すまない、と言えばそれはさらに妻を傷つけると思ったから。
それ以上、何も言えなかったんだ。


自業自得だ。

俺が、

向き合わなかったから、
これはきっと当然の報いだったんだ。

だけど俺は、

⏰:11/10/15 23:24 📱:Android 🆔:GBumr9Qk


#129 [ちか]
カナダ(こっち)に来た今も、
俺は離婚届(コレ)に自分の名前を書けずにいる。

あの約束が

どうしてもひっかかって。


目を閉じれば、
今でも色褪せることなく頭の中で甦る。

『先生はちゃんと素敵な人と幸せになって。』

その言葉と精一杯の笑顔が。

⏰:11/10/15 23:29 📱:Android 🆔:GBumr9Qk


#130 [ちか]
そういう経緯で、
今俺は妻と別居状態にある。

もともと妻の父がうちの病院の院長で、俺はそのお気に入り。

紹介したのが院長本人なだけあって、院長は、形式上男を作って出ていった娘が後ろめたいのか、執拗に俺を優遇してくれた。


おかげさまで、
カナダでの研究費用もタダ。

ありがたいっちゃ、ありがたいが、
それはそれで荷が重い。

⏰:11/10/15 23:37 📱:Android 🆔:GBumr9Qk


#131 [ちか]
そんな矢先、
研究で世話になっている病院の患者にいきなり告白された。



それも、
14歳も年下の。




しかも、
「男」に。

⏰:11/10/15 23:55 📱:PC/0 🆔:O7q2J.UE


#132 [ちか]
好きだと宣言されてから一週間、そいつはうちの研究室に毎日来てはヒトメボレだの恋だのほざきにきやがる。

まったく、うんざりだ。


もちろん、告白が2日3日と続いた頃、上の人間に助けを求めた。

男に告白されて研究が進まない、どうにかしてくれと。

⏰:11/10/16 00:58 📱:Android 🆔:5cqVBQH2


#133 [ちか]
しかし、返ってきた返事は俺の期待をあっさりと裏切った。
―――――…………
―――…………
――……

「いやー、どうにかしてやりたいのは山々なんだが、彼はうちの病院でも大事な患者で…」

「大事な患者?!なんですか、それ!!」

「だから…、その、つまりだな、うちに毎年寄付を…してくださる企業のご子息様なんだよ…。」


俺はその言いにくそうにする外科部長を見ながら悟った。
金貰ってる分、手荒な扱いが出来ないってわけか。

俺は諦めきれない気持ちを溜め息にして吐き出した。

⏰:11/10/16 01:30 📱:Android 🆔:5cqVBQH2


#134 [ちか]
そんな俺を見て、外科部長も苦笑い。

「まぁ、一時の気の迷いというやつだろ。彼はもうすぐ大きな手術があるからな。それが終わるまで、刺激しないように適度に相手してやってくれよ。」

「は、はい……。」
―――――……………
――――…………
――…………

そんな風に頼まれると俺も一室を借りて研究させてもらってる身である以上、さらにまくし立てて苦情を言うことは出来なかった。

「まったく神様っつーのは、意地悪なんだな…。」

心の声もここまで来ると、吐かずにはいられない。

⏰:11/10/16 01:40 📱:Android 🆔:5cqVBQH2


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