消えないレムリア
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#51 [ぎぶそん]
それから私の提案で、エスカレーターを使って駅の3階にある本屋に向かった。
今日から料理を作らないといけないので、料理の本が1冊あった方がいいと思ったからだ。
本屋に入り、私は「きほんの料理」という名前の本を即決で買った。
本屋を出て、隣にあるCDショップに立ち入ってみた。
邦楽CDのコーナーで「み」の場所を探すと、その中に彼の好きなミドリムシのCDがいくつか入っていた。
一番右にある「ザ・ベスト・オブ・ミドリムシ」という名のCDを手に取る。どうやらベストアルバムのようで、後ろにたくさんの収録曲が書かれている。
アルバムの表面はクレヨンのようなタッチで、葉っぱを食べる毛虫の絵がかわいく描かれていた。
絵本のような、どこか温かみのある絵だった。
:12/06/06 22:13
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#52 [ぎぶそん]
「何でミドリムシが好きなの?」
「中学の時たまたま聴いたらよかったから」
「どの曲?」
私は彼にベストアルバムを見せた。
「その中には入ってない」
彼は棚から違うCDを取り出した。
「このアルバムに入ってる、『フクロウ』って曲」
「今度歌ってよ」
私は昨日で彼の歌う姿が好きになっていた。
「因みに、」
彼が私の言葉を遮る。
そして私が持っていたベストアルバムの表紙を指差した。
「この絵は、ボーカルの斎藤さんが描いてる。このアルバムだけじゃない、ほら、これとか、これも」
彼が棚からどんどんCDを取り出し、表面を私に見せる。
どれも絵柄が似ていて、同じ人がデザインをしているのが目に見えて分かる。
斎藤さんが描いてるのか。生粋の芸術家タイプだなあ。
:12/06/06 22:28
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#53 [ぎぶそん]
そこから聞いてもないのに、彼がミドリムシについてどんどん語りはじめた。
斎藤さんは他にバンドのグッズのデザインや、PVの構成も専門の人と一緒になって考えているという。
約3年前から音楽雑誌でコラムを掲載してて、その文章力はプロの作家も認めるほどだとか。
大手出版社から本を書いてみないか?というオファーがあったが、自分は作家ではなくミュージシャンなので、と丁重に断ったらしい。
メンバーはベースの中田さん以外は幼稚園からの付き合いがある。
中田さんはメンバー内で唯一の既婚。
メディア露出は少ない。
口数の少ない彼が、好きなものについては熱くなるのか饒舌になる。
私も黙ってそれを聞いていた。
:12/06/06 22:46
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#54 [ぎぶそん]
CDショップを出て、エスカレーターでひたすら下りて地下のスーパーに足を踏み入れた。
「今日の晩はハンバーグ作って。ハンバーグが食べたい」
彼の言葉に私はさっき買った本を開き、ハンバーグの作り方が載っているページを探す。
えーっと、材料はひき肉に玉ねぎに卵に……。
まあ初心者の私でも出来なくはなさそうだ。後は適当にサラダでも作ればいいか。
彼がカートを押し、私が今日の料理に必要そうな食材を入れる。
会計は彼がまとめて済ませた。
私はレシートを見て、すぐに合計の半分となるお金を彼に渡した。
「別に払わなくていいよ」と彼はいうが、こういう金銭的なことはきっちりしておかないと気が済まない。
:12/06/06 23:03
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#55 [ぎぶそん]
地上に出て、日も暮れぬうちに2人でまたバイクに乗ってアパートに戻った。
夕方、私ははりきって夕飯の支度に取り掛かろうとした。
流し台の下の棚を開けると、埃まみれの鍋やフライパンが顔を出した。
この部屋に住んでから、料理らしい料理はほとんどしたことがない。
衛生的なことを考え、私はまずフライパンやまな板をよく洗った。
玉ねぎをみじん切りにして、飴色になるまで炒めた。
合わせた材料をこねて、食べやすい大きさの形に整える。
全部整えた後買ってきたキャベツを洗い、千切りにした。
幅が太くて千切りとは言えないほど、ひどい切り方になった。
:12/06/06 23:20
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#56 [ぎぶそん]
温めたフライパンに油を引き、ハンバーグの素を入れた。
焼けるまでまだ時間がかかるだろう。私はリビングに行った。
リビングに行くと、彼が今日UFOキャッチャーで取ったフィギュアを箱から取り出していた。
「ちょっと!何で箱から出したの!?」
未開封じゃないと価値が下がるでしょうが!
「何でって、箱なんか取っといても邪魔なだけだろ」
箱はびりびりに破られ、ゴミ箱の中でただの紙くずと化していた。
私の転売計画は、もろくもたったの1日で崩れ去った。
私は愕然とし、その場で肩を落とした。
:12/06/06 23:33
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#57 [ぎぶそん]
「あっち戻んなくていいの?何か焦げ臭いんだけど」
「しまった!」
私は慌てて台所に駆け寄った。
急いで肉をひっくり返すと、さきほどまで赤かった表面が見るも無残に真っ黒く焦げていた。
その後無事に炊けたご飯を茶碗に盛り、千切りにしたキャベツとハンバーグを平たい皿に乗せ食卓に運ぶ。
「ごめん、少し焦げた……」
少しじゃなく、だいぶ焦げたハンバーグを彼に差し出した。
彼は箸でそれを割き、一口食べた。
「まあ、いいんじゃないの」
いつもの調子で文句を言われるかと思ったが、彼は黙々と私の作った料理を食べていた。
私も恐る恐るハンバーグを食べてみる。
見た目は悪いが、きちんとハンバーグの味にはなっていた。
:12/06/06 23:43
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#58 [ぎぶそん]
「ご馳走さん」
彼はご飯を綺麗に平らげ、自分の分の食器を流し台に持っていった。
私もテレビを観ながら食べた後片付け、流し台に立ち皿や調理器具を洗った。
料理って結構楽しい。
何で今まできちんとやらなかったんだろう。
明後日は何を作ろうかな。
食べてくれる相手がいるとやりがいを感じるなあ。
私ははずむ気持ちで皿を洗った。
夜の9時、彼と一緒にテレビを観ていると私のケータイに電話が掛かってきた。
「もしもし。かなめ?」
佐奈からだった。
:12/06/07 22:18
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#59 [ぎぶそん]
佐奈とは春休みになってから一度も会ってなく、連絡も取っていなかった。
佐奈は実家からみかんが大量に送られてきたので、今度そっちに持っていくと話した。
話題を変え、佐奈は私に「元気してる?」と尋ねてきた。
「それが……」
私は真織の目を気にしてトイレに籠り、最近自分に起きた出来事をすべて話した。
叔母さんの知り合いの息子と一緒に住むことになって、それが1つ年下の男の子であるということを。
「えー!それってかなりまずくない?」
佐奈は私の話に興奮しだしたが、すぐにいつもの調子でこう尋ねてきた。
「ねえ、その子かっこいい?」
佐奈が異性で気にすることはただ1点。“かっこいい”のか、“かっこよくない”のかだ。
:12/06/07 22:31
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:0IS7rqNc
#60 [ぎぶそん]
私はトイレの中で真織の顔を思い浮かべた。
佐奈のいうかっこいいが何なのかは分からないが、少なくとも真織はかっこ悪くはないと思った。
今日一緒に街を歩いてる時も、すれ違い様彼の顔を見ている女性が何人かいた。
羨ましいほどの小顔で、吹き出物1つない白く綺麗な肌。
切れ長の大きな目は、遠くから見ても力強さを感じる。
鼻筋が高く、唇は少しぷっくりとしている。
身長もそこそこあって、脚が長くてスタイルがいい。
真織は目立つ方だと思う。
佐奈に彼の見た目をどう説明しようか考えた時、私はうまい表現の仕方を思いついた。
:12/06/07 22:44
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