きらきら
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#910 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>880-910

⏰:22/10/19 06:44 📱:Android 🆔:A4ZzuHng


#911 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>890-920

⏰:22/10/19 06:45 📱:Android 🆔:A4ZzuHng


#912 [○○&◆.x/9qDRof2]
「2メートルでいい」

当たり前だが、店員は変な顔をした。

「2メートル…ですか?」

「ああ。2メートルで」

当然だろう。

2メートルは命を救うには短すぎるが、命を捨てたい奴にとっては悪くない長さだ。

⏰:22/10/20 06:42 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#913 [○○&◆.x/9qDRof2]
それに命綱で首を吊るなんてまさにブラックジョーク、気が利いているというもの。

ロープに加えて折り畳み椅子を持ち、そのままレジへ向かう。
さっきの店員が今度は不安そうな顔をしていたが、太郎は気にせず店を出た。

⏰:22/10/20 06:43 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#914 [○○&◆.x/9qDRof2]
向かった先は駅。
路線図の一番端に書いてある駅へ向かう切符を買って、改札を通る。

太郎はホームの黄色い線の内側に立ち、周りの人間を眺めながら考えた。

(例えば俺が今ここで「俺は今から死にに行くんだ!」って叫んだら、どうなるんだろうな…)

⏰:22/10/20 06:43 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#915 [○○&◆.x/9qDRof2]
まぁ目を合わせないようにするだけで、止めてくれるような親切な奴はいないだろう。

現代社会なんてそんなもんだ。
皆、自分が生きていくのに必死で、赤の他人に興味なんて持っていない。

まぁ、別に止めてほしくもない。むしろ迷惑だ

太郎自身、実に淡々とした気分だった。
まるで工場の中で次から次へと流れてくるパーツを組み立てる機械のように。

⏰:22/10/20 06:43 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#916 [○○&◆.x/9qDRof2]
(安いもんだな、人の命なんて)

恐らくこのホームにいる誰もが2メートルの命綱を買えるだけの金を持ってるだろうし、それを引っかける場所もいくつか思い付くだろう。

そんな金すら持ってない子供なんかも、マンションの階段を屋上まで上がる体力さえあれば死ねるのだ。

⏰:22/10/20 06:43 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#917 [○○&◆.x/9qDRof2]
普段の生活では『死』は何か遠いところにあるもののように感じるが、実際は常に手が届く距離にある。

人は、買い物に行くように、遊びに行くように、死ににいけるのだ。

電車に乗り込んだ太郎は座席に腰を下ろし、静かに瞼を閉じていた。

瞼の裏に浮かぶのは大木の姿。
大きくてがっしりした木だ。枝も手頃な高さにあり、太さも申し分ない。

⏰:22/10/20 06:43 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#918 [○○&◆.x/9qDRof2]
最近は、いついかなる時でもこの大木の光景が視界に割り込んでくる。

「あっ、そういや遺書を書いてなかったな」

作家らしく時世の句でも、と考えたが、すぐに面倒くさくなった。

別にどうでもいいことだ。

恋人も、友人すらもいないのに、誰に何を言い残すというのか。
遺書なんて書く意味もなかった。

⏰:22/10/20 06:44 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#919 [○○&◆.x/9qDRof2]
だがそれはつまり、自分が今日で消えてなくなっても、この世には何の影響もないことの証明でもあった。

 

失敗だな、本当に。

何もかも、本当に失敗だ。



移り行く電車の窓から人生最後の風景を味わったあと、太郎は電車を降りた。

⏰:22/10/20 06:44 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#920 [○○&◆.x/9qDRof2]
都心から遠く離れた、人気のない林の中にポツンとある無人駅だ。

しばらく林の中の道なき道を歩いていると、大木の前に出た。

「ここだな」

以前、取材していた時に偶然見つけた場所だ。

⏰:22/10/20 06:44 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#921 [○○&◆.x/9qDRof2]
人気はまったくないし、恐らく自分が腐って土に返るまで見つかる事はない。

誰かに見つかるなんてうんざりだ。

ましてや自分の葬式で老いた両親が泣く姿など、想像するだけで嫌になる。
自分のことで誰かが騒ぐところを見たくなかった。

⏰:22/10/20 06:44 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#922 [○○&◆.x/9qDRof2]
自分など最初から生まれてこなかったことにしたかった。

「ここらへんでいいか。この枝なら…」

折り畳み椅子を広げて上に乗り、枝にロープをくくりつける。
ほどけないようにしっかりと結び付け、もう一端に頭が通るサイズの輪を作った。

⏰:22/10/20 06:45 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#923 [○○&◆.x/9qDRof2]
ここまで終えると、さすがに緊張してくる。

「…もう何一つ惜しいものなんかないだろう。何を躊躇してるんだ、俺は?」

⏰:22/10/20 06:45 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#924 [○○&◆.x/9qDRof2]
生きていたい理由なんて1つもない。

思いきって輪に頭を突っ込んだ瞬間、視界の端をかすめる人影に初めて気が付いた。大木の反対側に、同じ格好でこちらを向く女がいた。頑丈なロープ、それを結び付けた枝、折り畳み式の椅子。驚嘆したような呆然としたような顔。そこに立っているのが自分ではないこと以外は、鏡を合わせたようにまったく同じだった。

⏰:22/10/20 06:45 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#925 [○○&◆.x/9qDRof2]
2人はしばらくの間、身を乗り出して互いを見つめていた。

「………」
「………」

しばらくして、同じように顔を引っ込める。

見なかったことにしよう。
見なかったことにして、自分がやろうとしていたことに意識を戻そう。
そんな感じに。

「………」

⏰:22/10/20 06:45 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#926 [○○&◆.x/9qDRof2]
「………」

だがしかし、この状況ではお互い相手が気にならないはずがなかった。

⏰:22/10/20 06:45 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#927 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>870-900

⏰:22/10/20 06:46 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#928 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>840-870

⏰:22/10/20 06:46 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#929 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>810-840

⏰:22/10/20 06:46 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#930 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>780-810

⏰:22/10/20 06:47 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#931 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>780-800

⏰:22/10/20 06:47 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#932 [○○&◆.x/9qDRof2]
 僕たちは、いつまでココにいるのかな。

 大丈夫、僕がついてる。

 きっと、大丈夫。

⏰:22/10/20 07:05 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#933 [○○&◆.x/9qDRof2]
2222年11月

 そこに、少年はうずくまっていた。冬も間近に迫る、この寒さの中、少年は、ただ、うずくまっていた。ボロボロの衣類から覗く腕は細く、青白く、時折ガチガチと震えた。

⏰:22/10/20 07:05 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#934 [○○&◆.x/9qDRof2]
寒くない?

平気だから、構わないで。

 檻越しに話しかけてくる彼に、すこし怒りが込み上げて、突き放してしまう。ほんとうは、嬉しくて仕方がないのに。

⏰:22/10/20 07:06 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#935 [○○&◆.x/9qDRof2]
だめだよ、見つかったらどうするの。

だって、君が嘘をつくから。

そういって君は後ろから僕を抱きしめる。

嘘なんかつくもんか。

嘘、嘘、こんなに冷たくなってる。

⏰:22/10/20 07:06 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#936 [○○&◆.x/9qDRof2]
 より一層強く抱きしめて、冷たい躰に熱を送る。伝わってくる熱なのか、自身から湧く熱なのか、体中が熱い。いつもなら今すぐ突き飛ばしてしまうけど、もうしばらくこのままでいたい。

⏰:22/10/20 07:06 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#937 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>900-930

⏰:22/10/20 07:06 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#938 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>910-940

⏰:22/10/20 07:07 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#939 [○○&◆.x/9qDRof2]
今日はとてもいい天気だよ。

ゆっくり抱きしめる腕を緩めながら彼は言う。

そんなの嘘っぱちだ。もしほんとうなら僕は凍えないはずだから。

 小さな窓一つさえないこの部屋は、僕に絶望しか与えない。希望も暖かさも小さな光も僕の手は届かない。伸ばした手はなにも掴むことは叶わず空を切るばかり。


僕が 君の光になるよ

君の光になりたいんだ

君のために

僕のできること

いつか

君をここから出してあげるから

太陽の光を浴びよう

共に生きていこう

⏰:22/10/20 07:09 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#940 [○○&◆.x/9qDRof2]
しんでからきづく、大切なひと


 僅かな音すらない静けさの中、ゆっくりと意識が戻ってくる。ふわふわと宙に浮いているような奇妙な感覚に包まれて、私は目を覚ました。

⏰:22/10/20 09:00 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


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