からっぽの心
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#401 [
みぃ
]
お姉ちゃんは3歳の時、
うちの施設に預けられた。
うちの施設に預けられている子は、
みんな何らかの事情があって預けられているのだけど、
お姉ちゃんの場合は、
【虐待】
だった。
:08/01/10 21:55
:SH903i
:g9BX27JI
#402 [
みぃ
]
母子家庭で育ったお姉ちゃんは、
実の母親から毎日虐待を受けていた。
仕事や家事でのストレスのはけ口。
それは日に日にエスカレートしていく。
ある日、
お姉ちゃんは頭を4針縫うケガを負い、
入院した。
:08/01/10 21:59
:SH903i
:g9BX27JI
#403 [
みぃ
]
母親は初めて自分のした事の重大さを知り、
お姉ちゃんを
【ショートスティ】
ということで二週間施設に預けた。
そして、
そのまま姿を消した。
:08/01/10 22:02
:SH903i
:g9BX27JI
#404 [
みぃ
]
二週間後に迎えに来るはずの母の姿はなく、
連絡もとれなくなった。
そして、
それからうちの施設で13年間生活した。
お姉ちゃんが物心ついた頃に施設の先生に教えてもらったのは、
これだけだった。
まだ他にも理由あっただろうけど、
おそらくお姉ちゃんのことを想って言わなかったのだろう。
:08/01/10 22:07
:SH903i
:g9BX27JI
#405 [
みぃ
]
施設にいる子がみんな、
他の子の事情を知っている訳じゃない。
あたしがお姉ちゃんにこの話を聞かされたのは中学生になった頃だった。
その話をあたしにする時のお姉ちゃんは笑ってはいたけど、
どこか悲しそうな顔をして
「弱い人なんだよ。」
と言っていた。
:08/01/10 22:10
:SH903i
:g9BX27JI
#406 [
みぃ
]
お姉ちゃんが死んで半年。
14年ぶりに母親から電話が来た。
母親はお姉ちゃんが死んだことなど全く知らない様子で、
申し訳なさそうにお姉ちゃんの様子を聞いてきたのだという。
先生からお姉ちゃんの死を聞かされてすぐ、
施設に来て泣いて謝っていた。
:08/01/10 22:13
:SH903i
:g9BX27JI
#407 [
みぃ
]
その時の姿がすごく印象的で、
今も瞳の奥に強く焼き付いている。
「―――自信がなかった・・・か・・・。」
突然の大志くんの呟きに、
この無言の時間に2人とも同じことを考えていたことを知った。
【自信がなかった】
:08/01/10 22:19
:SH903i
:g9BX27JI
#408 [
みぃ
]
施設に来たお姉ちゃんの母親が言った言葉。
施設に預けて二週間後に引き取りに来るはずが、
そのまま来られなかった理由。
また暴力をふるってしまうのが怖かった、 という。
『あたしはよくわかんないな。』
「ん?」
『お母さんの気持ち。』
:08/01/10 22:26
:SH903i
:g9BX27JI
#409 [
みぃ
]
姿を消したけど、
存在を忘れたことはなかった。
自分の気持ちが落ち着いたら、
迎えに来るつもりだった。
お姉ちゃんの母親はそう言った。
でも、
自分の気持ちが落ち着くのに14年?
:08/01/12 16:02
:SH903i
:r3EjIchk
#410 [
みぃ
]
「―――そだね。
でも、俺はわかんなくもないかな。」
大志くんはそう言って笑うけど、
あたしには理解できそうもない感情。
あたしがまだ子どもなのかな。
「俺はそういう経験ないから分かんないけど、
傷つけるのが怖くて離れるっていう理屈は分かんなくもないかな。」
:08/01/12 16:06
:SH903i
:r3EjIchk
#411 [
みぃ
]
墓石に止まった蝶々を見つめながら大志くんは言う。
確かに筋は通っているかもしれない。
―――――でも・・・。
『――でも、
置いてかれた方は・・・
そんな風に考えらんないよ。』
:08/01/12 16:10
:SH903i
:r3EjIchk
#412 [
みぃ
]
大志くんが蝶々からあたしへと視線を動かす。
『あたしのことが嫌いだから・・・
あたしが悪い子だから・・・
どうしても、そう考えちゃうよ。』
あたしの母親は現れない。
生きているのかさえも分からない。
:08/01/12 16:13
:SH903i
:r3EjIchk
#413 [
みぃ
]
あたしからしてみれば、
10何年かも一緒に居ない人がいきなり現れても、
【母親】だ、なんて思えやしない。
『―――って、思うんじゃないかな?
普通の人はッ!!』
あたしが慌てて付け足した言葉を聞いて、
大志くんの手があたしの頭に触れる。
「大丈夫だよ。
夢芽ちゃんには、ちゃんとした【家族】がいるじゃん。」
:08/01/12 16:17
:SH903i
:r3EjIchk
#414 [
みぃ
]
大志くんの手は温かい。
「ちゃんと愛されて育ってるよ。
だから、そんな顔すんなって!
夢芽ちゃんにせわな顔させたら、俺が美優に怒られるよ。」
な?と言って、
あたしの頭を軽く叩く。
『別に・・・
あたしの話じゃないってば・・・』
あたし、どんな顔してたんだろう。
:08/01/19 02:13
:SH903i
:1tnVlLZQ
#415 [
みぃ
]
大志くんの優しさに涙が溢れそうになる。
下唇を噛みしめて堪えることに必死だった。
『ね、大志くんの大学って遠いの?』
「んー・・・。
片道二時間くらいかなぁ・・・。
今んとこは。」
『今のとこ?』
:08/01/19 02:17
:SH903i
:1tnVlLZQ
#416 [
みぃ
]
大志くんが“やばい。”という顔をしたのを、
見逃さなかった。
大志くんの意味深な発言と表情につい、
話の腰を折ってしまう。
「んー・・・。」
『どうゆう意味?』
「ん?」
大志くんが必死にはぐらかそうと考えているのが尖った口から読み取れた。
大志くんの癖。
:08/01/19 02:21
:SH903i
:1tnVlLZQ
#417 [
みぃ
]
『なに?!
なんか隠し事あんでしょっ?!』
「んー・・・。
だって夢芽ちゃんすぐ怒るからなぁ・・・。」
そう呟き、あたしの方をチラリと見る。
『―――怒んないよ!!』
「怒ってんじゃん!
ははっ!」
:08/01/19 02:24
:SH903i
:1tnVlLZQ
#418 [
みぃ
]
余裕な表情で笑う大志くんを見て、
自分がこんなに必死なのが馬鹿みたいに思えてくる。
でも、
なんか胸騒ぎがするんだもん。
悪いことが起こりそうな予感がして、
嫌なんだもん。
「一人暮らししようと思って。」
:08/01/19 02:26
:SH903i
:1tnVlLZQ
#419 [
みぃ
]
>>414せわな顔
じゃなくて
そんな顔です
いつの間に打ち間違えたんや


更新します

:08/01/24 16:35
:SH903i
:KoC3LOaI
#420 [
みぃ
]
一人・・・暮らし・・・?
『―――どこに?!』
「大学の近く。
――つってもまだ探し中なんだけどね。」
―――知らなかった。
:08/01/24 16:39
:SH903i
:KoC3LOaI
#421 [
みぃ
]
大学が決まったところまでは知っていたけど、
三年は自由登校だったし、
卒業式でも少ししか話せなかったから。
確かにこの辺は終電は早いし、
駅までのバスなんて一時間に二本だし、
通学に不便なのはよく分かる。
――――でも・・・。
:08/01/24 16:42
:SH903i
:KoC3LOaI
#422 [
みぃ
]
『会えなくなっちゃうの?!』
自分で予想していた以上に大きな声が出たらしく、
大志くんは目を丸くして驚いていた。
「何言ってんの。
会えるよ。」
馬鹿だね、と言って笑う大志くんとは反対に、
あたしの表情は曇ったままだった。
:08/01/24 16:48
:SH903i
:KoC3LOaI
#423 [
みぃ
]
「ほら、笑顔!」
大志くんの手に引っ張られる頬からは不思議と痛みを感じなくて、
指から温もりだけが伝わる。
「あーあ、
そんな泣きそうな顔してさ。
2年前とは大違いだねー?
まぁ、嬉しいけどさ。」
『泣かないよ・・・。
でも、笑えない・・・。』
:08/01/24 16:54
:SH903i
:KoC3LOaI
#424 [
みぃ
]
なにがこんなに悲しいのか
どうしてこんなに辛いのか
なんでこんなに大志くんと離れることが嫌なのかが
自分でもわからない。
わからないから、
解決策も見当たらない。
:08/01/24 16:56
:SH903i
:KoC3LOaI
#425 [
みぃ
]
本当は、笑って
「おめでとう」
そう言うべきなんだろうけど
最後まで‘いい子’になれないあたし。
でも、変わらなきゃいけない。
大志くんの重荷にならないように。
:08/01/29 19:32
:SH903i
:760GA90o
#426 [
みぃ
]
「夢芽ちゃ・・・」
『――わかった、
ごめんね、頑張って!』
精一杯気持ちを噛み殺して見上げた大志くんの顔は、
笑顔だった。
本当はずっとこの笑顔でいて欲しい。
困らせてばっかじゃダメだよ。
:08/01/29 21:39
:SH903i
:760GA90o
#427 [
みぃ
]
『大志くん・・・。
これ・・・。』
そう言いながらポケットから取り出した物を見て、
大志くんの表情が変わる。
「―――なんで・・・。」
大志くんの独り言に近い呟きに応えず、
大志くんの掌にそれを転がせる。
:08/01/29 21:43
:SH903i
:760GA90o
#428 [
みぃ
]
シルバーのペアリング。
お葬式の日に、
美輝が警察から受け取ったもの。
『本当はね・・・
もっと早くに渡さなきゃいけないと思ったんだけど・・・。』
大志くんがこびりついた血を見て、
悲しそうな顔をする。
:08/01/29 21:47
:SH903i
:760GA90o
#429 [
みぃ
]
「オレが・・・
苦しむと思った・・・?」
目を伏せながら小さく頷く。
『受験に集中して欲しかったのもあるの。
でも、これ握りしめて毎日お祈りしてた。』
そう言って大志くんの掌ごと指輪を包み込んだ。
「お祈り・・・?」
:08/01/29 21:51
:SH903i
:760GA90o
#430 [
みぃ
]
『うん。
大志くんが合格しますようにって。』
ひんやりとしていた指輪が、2人の体温で温まっていく。
『でも、失敗したな。』
「え?」
『合格した後でお守りとして渡しとけば良かったなって後悔した。』
:08/01/31 20:12
:SH903i
:MYCX6XLk
#431 [
みぃ
]
ははっと小さく笑うと、
大志くんが大きな両手であたしの身体を抱きしめてくれた。
「泣きたくなったらすぐ呼んで。
こんな兄ちゃんで良ければすぐ行くからさ。」
目の奥が熱くなっていくのが分かる。
でも、
かっこいい事言う割に鼻声なのが笑えた。
:08/01/31 20:25
:SH903i
:MYCX6XLk
#432 [
みぃ
]
「あ、何、笑ってんの!」
『ぷくく・・・
やだよ、こんな泣き虫なお兄ちゃん。』
「えー?ひどっ!!」
そう言って2人で笑った。
何故かツボに入って、
2人で大声で笑い転げた。
:08/01/31 20:30
:SH903i
:MYCX6XLk
#433 [
みぃ
]
こんな風に笑える日なんて来ないと思ってた。
腐るのを待つだけのあたしが人と向き合えるなんて
もう無いと思ってた。
昔、お姉ちゃんが言ってた。
「どん底まで落ちたら、
あとは昇るだけだよ。」
:08/01/31 20:34
:SH903i
:MYCX6XLk
#434 [
みぃ
]
あの頃のあたしは確かにどん底で、
這い上がる気力さえなかった。
でも、少しずつ暗い穴を抜け出そうともがいてる。
自分一人の力じゃなくて
周りのパワーを分けてもらって。
みなぎる力を武器にして
心に覆い被さる闇をやっつけてやる。
あたしは 生きてるから
:08/01/31 20:39
:SH903i
:MYCX6XLk
#435 [
みぃ
]
――――――――――――
霊園で大志くんに別れを告げ、
バス停までの坂道を下っていく。
一歩一歩、今を踏み締めながら。
バス停のベンチに人影を見つけた。
ゆっくり近付き、覗き込む。
:08/01/31 20:44
:SH903i
:MYCX6XLk
#436 [
みぃ
]
『豊?』
その人物はゆっくりと顔を上げてあたしを見る。
「美優、元気だった?」
豊の微笑みはあたしの固い心を溶かしてくれる。
『うん、大志くんに会えたからね。』
:08/01/31 20:50
:SH903i
:MYCX6XLk
#437 [
みぃ
]
そう言って横に腰掛けた時、豊が嬉しそうに
「そっか。」
と笑った。
『豊は?
会わなくていいの?
今、来たんでしょ?』
あたしの問いに、
豊は渋い顔をした。
「追試受かるまで顔合わせらんねぇ。」
:08/01/31 20:56
:SH903i
:MYCX6XLk
#438 [
みぃ
]
『あはッ!馬鹿だ。』
豊は2年最後の期末考査で数学と英語を落として、
次で再々々追試。
『一緒に3年なれないかもね〜。』
皮肉を込めた口調で言ったけど、
豊にはさほど効果がないみたいだった。
:08/01/31 21:00
:SH903i
:MYCX6XLk
#439 [
みぃ
]
「んな訳ねーだろ。
オレは天才だから。」
『天才は追試なんかなんねぇよ、ばーか。』
そう言って2人で笑っている時の豊の手はあたしの上。
今は世間で言う恋人同士。
自分でもまさかの展開。
:08/01/31 21:06
:SH903i
:MYCX6XLk
#440 [
みぃ
]
施設の中では自重してるけど、
みんなあたしたちのことを喜んでくれた。
あたしにとって
初めての体験と感情で、
なんかくすぐったい気がしたけど、
嫌な気分じゃなかった。
恥ずかしさの方が大きいのかも。
:08/01/31 21:11
:SH903i
:MYCX6XLk
#441 [
みぃ
]
お姉ちゃんが死んだ時、
この命を捨てていいとさえ思えた。
生きてることに何の意味も見出だせなくなっていた。
心が泉みたいで水が張ってあるのなら、
あの時のあたしはまさに、
からっぽだった。
:08/01/31 21:14
:SH903i
:MYCX6XLk
#442 [
みぃ
]
でも、最初に美輝に言われた通りだった。
辛いのはあたしだけじゃない。
みんな何かしらの傷を負って生きてるんだ。
傷の深さは
目に見えないもので
簡単に計れるものじゃない。
:08/01/31 21:25
:SH903i
:MYCX6XLk
#443 [
みぃ
]
だけど、その人にとってはそれが死活問題なくらい悩んでる。
傷は一生癒えない。
色褪せるはずもない。
だけど、
その傷を引き連れて生きていかなくちゃならない。
くじけてる暇があったら前へ進め。
:08/01/31 21:28
:SH903i
:MYCX6XLk
#444 [
みぃ
]
「ゴールデンウイークどこ行くか決めた?」
豊が繋いだ手を握り締めながら尋ねる。
『まだ。
どこでもいいよ。』
「んだ、それ!
真面目に考えれ!」
少しふてくされた表情をする豊。
そんな豊を見て思う。
幸せって、こういう事なのかも。
:08/01/31 21:33
:SH903i
:MYCX6XLk
#445 [
みぃ
]
様々な人に触れて、
初めて人間の温かさを知った。
人間に優しさを与えてくれるのは人間でしかないことも。
からっぽだった心は少しずつ満ちていく。
変えるのはいつだって自分。
:08/01/31 21:41
:SH903i
:MYCX6XLk
#446 [
みぃ
]
:08/01/31 21:42
:SH903i
:MYCX6XLk
#447 [
みぃ
]
栗山 美優様
元気ですか?
そっちではうまく笑えてますか?
あなたがこの世を去って2年が経つけれど、
まだ傷は痛みます。
でも、
泣いてないよ。
笑ってる。
いつか会える日まで頑張るから。
その時は成長したあたしを見てね。
たくさんの温もりをありがとう。
安幡 夢芽
:08/01/31 21:46
:SH903i
:MYCX6XLk
#448 [
みぃ
]
:08/01/31 21:48
:SH903i
:MYCX6XLk
#449 [
みぃ
]
これで一応おしまいです。
更新がすごく不定期で
文章も雑ですみません。
最後の方は見てる人いないかもしれませんでしたが、
最後まで書き終えるのが責任だと思ったので、
図々しいながらも書かせて頂きました。
こんな駄作に感想をくれた皆様、ありがとうございました。

みぃ

:08/01/31 21:52
:SH903i
:MYCX6XLk
#450 [でら]
更新楽しみに見ていました。
完結お疲れ様ですヽ(*´∀`)ノ
:08/02/09 05:20
:SH903i
:3cfG807M
#451 [
みぃ
]
でらさん

読んでいて下さったんですね

コメントありがとうございます。
本当に不定期な更新ですみませんでした


:08/02/13 12:13
:SH903i
:s5PYCfQc
#452 [我輩は匿名である]
:08/04/13 10:30
:F705i
:☆☆☆
#453 [我輩は匿名である]
あげる
:09/04/20 02:22
:P906i
:6d28uPqM
#454 [我輩は匿名である]
面白い!
:09/04/27 17:47
:SH001
:2Fvzahik
#455 [わをん◇◇]
↑(*゚∀゚*)
:22/11/23 16:28
:Android
:yR7K92nk
#456 [わをん◇◇]
:22/11/23 16:57
:Android
:yR7K92nk
#457 [わをん◇◇]
:22/11/23 17:03
:Android
:yR7K92nk
#458 [わをん◇◇]
↑(*゚∀゚*)↑
:22/11/23 17:06
:Android
:yR7K92nk
#459 [わをん◇◇]
↑(*゚∀゚*
:22/11/23 19:33
:Android
:yR7K92nk
#460 [わをん◇◇]
大大大大大大大大大大大大大大大大大大大〜好き♡(๑♡ᴗ♡๑)
:22/12/08 19:29
:Android
:3lgQxJz2
#461 [わをん◇◇]
:22/12/08 19:30
:Android
:3lgQxJz2
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