黒蝶・蜜乙女―第2幕―
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#101 [向日葵]
寂しい気持ちを押し込めて、もうすぐ2年が経とうとしている事実に呆然とした。

最近は不安で仕方ない。

ホントに帰ってくるかとか、何かあったんじゃないかとか。

他に……好きな人が出来たんじゃないのかとか……。
もしそうなら、私は忘れる事出来るかな。
もう一度、普通に戻れるのかな。

ううん違う。

⏰:07/08/19 00:40 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#102 [向日葵]
 




セツナと毎日を過ごしたせいで、いない今の方がいつの間にか非日常になっていたんだ。

⏰:07/08/19 00:41 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#103 [向日葵]
私は普通の女子高生。

やる気はそこそこの、容姿十人並のどこにでもいる奴だ。

初めてかもしれない。

何かに、誰かにこんなに

夢中になったのは……。

溢れる様に降ってくる雪を見ながら、そう思った。

そんな気持ちをくれたのなら、私はもう、充分だよ……。

ゴメンネセツナ。
私に待ってる事に、少し疲れたみたい。

私の為、行ってしまった貴方を私は、忘れる事にします…………。

⏰:07/08/19 00:47 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#104 [向日葵]
オウマ「蜜……?」

私は庭へ出ていた。
そして灰色の空を見上げていた。

蜜「ゴメン。ちょっと、一人にさせてくれる?」

いぶかしげに顔を歪めるオウマ君に、ラフィーユは家へと促した。

雪独特の静けさと雰囲気の中で、私は一人、目を閉じた。

閉じれば、思い出が、後から後から流れてくる。

初めて会った時はそれは驚いた。
何せ普通の生活にどっぷりハマっていたから。

⏰:07/08/19 00:51 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#105 [向日葵]
ファーストキスは奪われるし、いきなり人生初の愛の告白はされるし。

はっきり言ってセツナは嫌いだった。

でも、なんでこんなに好きになったんだろう。

私のせいで傷付いた顔。
優しい微笑み。
滅多に見せない照れた顔。
助けに来てくれた勇敢な姿。

そして初めての日、大切に扱ってくれた温かさ……。

大好きだよ。
ううん。
大好きだった……。

⏰:07/08/19 00:55 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#106 [向日葵]
もう二度も約束破ったから、いいよね?

泣いても……
その名を呼んでも……

蜜「……。……ナ…。――セツナァ……っ!!」

鳴咽を漏らして、搾り出す様な声で愛しい人の名を何度も呼ぶ。

蜜「セツナ……セツナァッ!!大好きでしたよっ……。」

ごめんなさい。
ごめんなさい。

貴方は何度も助けてくれたのに、私は努力もしないで、貴方をただ待っているだけのくせに……。

⏰:07/08/19 00:59 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#107 [向日葵]
私はその事すら放棄して、寂しさに負けて、貴方を忘れます。

蜜「……ら…!……さよならっ…。セツナ!」

さようなら。

貴方の事は忘れます。
でも決して、忘れません……。

初めて好きになった人……。
私の運命だった人……。

―――――
―――――――……

また、春がやってくる。

清「すっごいねぇ!もう明後日には卒業だってぇ!」

⏰:07/08/19 01:02 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#108 [向日葵]
――――――――

一旦キリます

⏰:07/08/19 01:03 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#109 [向日葵]
久しぶりに清とお出かけ中。今は喫茶店でお茶してます。

蜜「清ってどこ行くんだっけ?」

清「私は看護学校。専門学校だね。そういえば小川君、推薦で難関の大学行けたんだって!凄いよねぇっ!」

何故か嬉しそうに話す清を見て、なんとなく予想がついてしまった。

蜜「小川君が好きなんだ?」

清「え……。」

シュワァァァァ……

清から湯気が立ち上った。

⏰:07/08/19 01:26 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#110 [向日葵]
どうやら私は人の事を当てるのが得意らしい。
ラフィーユとオウマ君にしても清達にしても分かりやすすぎだ……。

清「み、蜜!アンタ何言っちゃって……っ。」

蜜「知ってるんだよ?この間のバレンタインにチョコあげてたこと。」

清の顔が更に赤くなる。
可愛らしいなぁ……と和みながら思った。

⏰:07/08/19 01:29 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#111 [向日葵]
二人がいい感じになってたのは秋くらいに感じた。

小川君と話す時の雰囲気が少し違ってた気がしたからだ。
清は清でやたらと小川君の話が増えていた。

何かが二人にあったらしい。明らかにおかしいって言ったら失礼だけどおかしかった。

清「まだ返事もらってないし……。なんてったって明後日だからねホワイトデー!」

蜜「きっと大丈夫だよ。小川君も清のこと好きみたいだし。」

そこで私はジュースを飲んだ。

⏰:07/08/19 01:33 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#112 [向日葵]
二口ほど飲んだ所で、清の視線に気づき、ストローから口を離した。

蜜「何……?」

清「なぁんかさ……違うんだよねぇ……。」

蜜「?」

清はテーブルに身を乗り出して更に私を観察する。

私はなんだか悪い事をした気分になって少し身を引いた。

蜜「き、清……?」

清「なんか、蜜らしくない。」

私らしく…?

⏰:07/08/19 01:38 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#113 [向日葵]
清「蜜って、嘘つけないタイプだからさ、すぐ顔に出るじゃん?でも今はなんだか……仮面被ってるって感じ。」

蜜「仮面?」

清「ホントはどう思ってるか、読くなっちゃった。」

……。
仮面……か……。
そんなつもりはなかった。清とのお喋りがつまんない訳でもないし。

もしかして私、仮面を被って生活することに慣れちゃってるのかな。

だから、人間らしくなくなっちゃった?

⏰:07/08/19 01:42 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#114 [向日葵]
蜜「大人に近付いたって感じじゃない?」

清「うーんそうかもねー。」

あっさり肯定しちゃったよ。
でも、掘り出して聞こうとしない所が、清の良いところだよね。

蜜「清。」

清「んー?」

蜜「ありがと…。」

清は照れた様に笑うと、私の頭をくしゃくしゃ撫でた。

清「ぃよし!プリクラ撮りに行こう!今日は沢山撮ろうね!」

蜜「りょーかいっ。」

⏰:07/08/19 01:46 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#115 [向日葵]
清が友達で良かった。
これからも友達だよね?

普段照れ臭くて言いづらいことを、落書きのメッセージスタンプで表した。

“いつもありがとう!アンタは心友や!”

そのプリクラは、私の携帯の裏に、密かに貼っておいた。

――――……

蜜「ただいまー。」

家に帰ると、既にいい香りがしていた。
この頃は毎日の様にラフィーユが料理を作ってくれる。

⏰:07/08/19 01:50 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#116 [向日葵]
ラフィーユの料理の腕は日に日に上がっていって、冷蔵庫の僅かに残った食材でさえレストランに出てくるメニューの様に作った。

ちなみにラフィーユとオウマ君の進路は私と一緒。

なんかもう三人一緒って感じ。

オウマ「よっす蜜!お帰り!」

蜜「ただいま。二人ともご飯は済んだの?」

ラフィーユ「今日、蜂蜜を料理、作った。」

蜂蜜で?!
もしや密かに匂ってる甘い匂いはそれ?

⏰:07/08/19 02:01 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#117 [向日葵]
蜜「ラフィーユすごいねぇ……。」

席に着きながらテーブルに広げられてる私の食事に思わず涎が口から出かけた。

ラフィーユ「意外、楽しい。」

オウマ「ラフィーがここまで楽しんでるの初めてだなぁ。」

へー。
それなら嬉しいな。

いただきますと礼をしてから私はほっぺが落ちそうな料理を堪能した。

・・・・・・・・・・・・・

蜜「んー!食べたぁ!」

⏰:07/08/19 02:07 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#118 [向日葵]
料理のお皿を全部空にして私は食事を終えた。

ラフィーユの料理は結構バランスとかを考えている料理で、私の嫌いなコンニャクとか椎茸とか使った料理め出たけど美味しく調理してくれたおかげで私に好き嫌いは無くなった。

ラフィーユすげぇ……。

オウマ「なぁなぁ蜜!」

オウマ君がキラキラ目を光らせてテーブルに身を乗り出しながら私に話かけてくる。

蜜「何?」

オウマ「明後日卒業式+ホワイトデーだっけ…?じゃん?」

⏰:07/08/19 02:12 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#119 [向日葵]
蜜「ウン。そうだけど?」

オウマ君はラフィーユと顔を見合わせてからニヒッと笑って私にまた目を向ける。

オウマ「その後ボーリングでも行かね?」

私は目をパチクリした。

一回だけ三年になってからクラスの皆でやったけど……まさかボーリングとは。

オウマ君は運動神経がいいのか、説明を一回受けるとバンバンストライクの嵐。

女子に良いところを見せようとしたクラスの男子は面目丸潰れだった。

⏰:07/08/19 02:16 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#120 [向日葵]
そしてその哀れな光景を目にしながら私は隣でガーターの嵐……。

蜜「私…、見とくだけでいいかなぁ……。」

オウマ「だぁいじょうぶ!俺がコツ教えるし!んで、その後は着替えてカラオケオールしようぜぇ!!」

すっかりこっちの生活に馴れ親しんだらしいオウマ君。
これじゃぁ普通の高校生。いやそれでいいんだけど……。

まぁカラオケなら私はまだ人並みにいけるので

蜜「ウン。盛り上がろうかっ!」

⏰:07/08/19 02:20 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#121 [向日葵]
オウマ「おっし決まりぃ!んじゃあ俺風呂用意してくるー♪」

ピューっとはしゃぎながらオウマ君は行ってしまった。

私も明日の用意をしてすぐ寝れる様に準備しよっと。
あ、そうだ。

蜜「ラフィーユ!オウマ君もだけど、写真一杯撮ろうねぇっ!」

ラフィーユ「今?」

蜜「うぅん。明後日!制服姿で一緒に撮りたいし♪」

ラフィーユはフッと笑ってコクリと頷いた。

⏰:07/08/19 02:25 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#122 [向日葵]
インスタントカメラ買っておかなきゃなぁ……。

そう思いながら私は部屋に行く為、階段をトントン上がっていた。

カチャ バタン

ベッドに座る前に、ハンガーにかかっている制服を見た。

蜜「あと二回…着たら終わりかぁ……。」

なんか、濃ゆい三年間だったなぁ。
色々あったなぁ……。
色々……。

ハッ!

私は頭を振った。いらないとこまで思い出す所だった。

⏰:07/08/19 02:28 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#123 [向日葵]
窓を開けて、夜空を見上げる。

空気が澄んでるのか星がよく見えた。
瞬いていてさっきのオウマ君の目みたいにキラキラ光っている。

あの顔を思い出して思わずクスッと笑ってしまった。

とうとう私も卒業か……。

『卒業するんですから!』

窓を閉める時、何時かの私の声が聞こえた気がした。でも聞かないフリをした……。

⏰:07/08/19 02:34 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#124 [向日葵]
暖冬で桜が咲いていた。

少し早い、来春の合図。

でもそれが、卒業式をよりドラマ的に変えるのだった。

清「みーぃつ!」

蜜「ん?」

パシャ!

簡単な予行が昨日終わり、今日はついに卒業の日だった。
式は既に終わって、皆先生が来るまで友達との別れを惜しむ様にカメラのボタンを押す。

⏰:07/08/19 02:38 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#125 [向日葵]
蜜「ちょっと!何今の不意打ち!」

清「キャハハ!いい思い出♪あ、蜜、アルバムに一言書いてよ!」

蜜「じゃあ清も書いてー。」

アルバムを交換して、周りをヒョイと見ると、ラフィーユやオウマ君はモテモテで、たらい回しの様に写真を撮られ(撮って)いた。

清「蜜。」

蜜「ん?」

清「……ずっと友達でいてね?」

私はニコッと笑って頷いた。

⏰:07/08/19 02:43 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#126 [向日葵]
蜜「もちろん。当たり前でしょ?」

そう言うと、清は涙を流し始めた。

清「絶対だよぉ?!メールだってしてよ?!一緒にまた遊んでよぉっ?!」

抱きついて泣き始める清に困りながら頭を撫でてなだめる。

蜜「わ、分かってるから。泣かないで?ね?ホラ、先生来たから、また後でね?」

グスグス鼻を鳴らしながら清は教室に戻って行った。それを苦笑しながら見届けて、私は席につく。

⏰:07/08/19 02:48 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#127 [向日葵]
席についてふと思う。

今まで机とか、椅子とか、そんなに気にせずクラスを去って行ったけど、いざもう永遠に近い別れとなるとこんなにも寂しいんだ……。

蜜「ありがとう……。」

そっと使っていた机と椅子にお礼を言った所で、卒業証書が配られた。

しばらくして、私の名前が呼ばれた。

「本山蜜。」

蜜「はい…。」

・・・・・・・・・・・・・・・

誰もいない教室で、私はまだ残っていた。

⏰:07/08/19 02:52 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#128 [向日葵]
ラフィーユとオウマ君には、校舎内を回りたいから校門で待つように言った。

いつまでもこうしている訳にもいかない。
席を立って、教室内を見渡した。

目を瞑れば、授業中の雰囲気が安々と蘇る。

もえこんなにも懐かしいものに変わってしまったんだ。

蜜「ありがとう……。そして」

さようなら。

廊下、移動教室の教室、グラウンド……。

⏰:07/08/19 02:55 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#129 [向日葵]
廊下から中庭を見れば、まだ沢山人がいた。
皆帰りたくないみたい。

思い出の校舎には、数人の人しかいない。
自分の歩く音が、やけに響いて聞こえる。

私は思い出の場所を回っていった。

1年の教室、2年の教室、保健室、職員室、体育館、食堂、……そして。

タン…タン…………。

久しぶりの、屋上のドア前。忘れたとしとも、ここは思い出の場所だから。

来ておきたかった……。

カチャ……ギギギィィィ……。

⏰:07/08/19 03:00 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#130 [向日葵]
未だに油切れのドアの向こうは、青空と温かい太陽の光。

屋上へ足を踏み入れて、そのまま真っ直ぐ進み、柵に手をかける。

上から下を見下げると、ちらほら咲き始めてる桜が綺麗だった。

人が、とても小さい。

蜜「晴れて良かった……。」

これで雨だったらやっぱり嫌だもん。

その時、見慣れた姿が。

蜜「あぁっ!風さん達!」

⏰:07/08/19 03:04 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#131 [向日葵]
なんと!久々風さん達。

にこにこ笑いながら私の周りをクルクル回る。

蜜「久しぶりですねぇ!元気でしたかぁ?!」

風さん達は小さな体を一杯使って体を揺らす。
元気だったと言いたいらしい。

そしてその手にはピンク色の欠片が。
私にくれるらしい。

蜜「フフ。ありがとうございます。」

手にこんもりと桜の花びらが積もると、風さん達が風をふわりとおこした。

⏰:07/08/19 03:07 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#132 [向日葵]
蜜「わぁっ!ハハ、きれー…。」

私の周りだけ、花吹雪。

沢山のピンク色の欠片が私の周りを舞う。

蜜「風さんったら、やり過ぎですよ!」

笑いながら、風でなびいた長くなった髪を手で抑えた。

さて……ラフィーユ達も待ってるし、ボーリングとかも待ってるし、そろそろ帰ろう!

……その前に……。
最後の最後、これがホントに最後。

⏰:07/08/19 03:11 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#133 [向日葵]
思い出が詰まったこの学校に、全てを置いて行こう。

私は深呼吸を何度も繰り返して、胸に手を当てる。

自分の鼓動に耳を傾けながら落ち着いて、また、息を大きく吸った。


蜜「……セ……セ……セツナ……。」

言い終えて、目を瞑った。これで良し。

さぁ、二人の元へ帰ろう。

蜜「ん?あれ?風さん?」

どこ行ったんだろう。

⏰:07/08/19 03:15 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#134 [向日葵]
 





「ただいま。」
 
 
 
 
 
 

⏰:07/08/19 03:16 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#135 [向日葵]
目を……見開いた。

記憶にある声は、もう遥か遠くにあって、思い出せるか不安だけど、確かにわかる。

私は、ゆっくりと振り返る。
振り返る時、いくつもの忘れたいと願っていた思い出が逆流してきた。
そして、声の主を、私は捕らえる。

蜜「嘘……。」

青空に似合わない、漆黒の羽、髪。
そして驚く程の美貌。

そこにいたのは……………………


セツナだった

⏰:07/08/19 03:21 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#136 [向日葵]
セツナ「ただいま。随分と変わったじゃないか。」

蜜「……ぇ……な……。」
そうだ私、白昼夢見てるんだ……。
これは夢なんだ……。

試しに、お決まりのほっぺを力一杯つねってみた。

蜜「……!いったー!!」

セツナ「お前は何をやってるんだ……。」

痛い…。夢……じゃない。私はまたゆっくりセツナを見た。

大きな羽はもうしまわれていて、黒の服に身を包んで、そこに確かにセツナはいた。

⏰:07/08/19 03:26 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#137 [向日葵]
セツナは大きく溜め息をつくと、不満げに私を見つめる。

セツナ「ただいまと言ってるのだからおかえりくらい言ったらどうだ。」

蜜「貴方そんな……近くのコンビニ行ってきたみたいに……。」

って……そうじゃない。
決めてたじゃない。

次会った時には、その美貌が腫れあがるまでぶん殴るって……。

でも手に力が入んなくて……。

蜜「遅い……ですよ。」

声が震える。

⏰:07/08/19 03:29 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#138 [向日葵]
怒りたいのに。
涙が出そうで。
言いたい事一杯あるのに、頭ん中ぐちゃぐちゃになって、何から言えばいいか分からない。

セツナ「思ったより時間がかかってなぁ。それはそれは疲れたぞ。」

蜜「私は……っ。例え私の為でも勝手に行って欲しくありませんでしたっ!」

泣くな。
泣いたらきっとその腕にすぐ飛び込みたくなる。

言いたい事、この二年、どれだけ寂しかったかを、伝えなきゃ……。

蜜「寂しくて、頭おかしくなりそうで、私は貴方を忘れる事に結論づけたのに……っ。」

⏰:07/08/19 03:34 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#139 [向日葵]
セツナ「なんだって?」

セツナの少し怒った声が耳に届いた。

蜜「絶対、私の事なんかどうでもよくなったんだって思って、帰ってくる気配すらないのに待つのはもう疲れてて……えっと。」

涙が出そう。
瞬きを何回もして抑える。

蜜「とにかくもう疲れたんです!セツナの帰りを待つことに……キャッ!」

体を、力強い腕が抱き締めた。

セツナ「相変わらず馬鹿だな蜜。」

⏰:07/08/19 03:38 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#140 [向日葵]
耳元で懐かしい声が怒ってる。
もう無理だ。
涙が溢れる。

セツナ「どうでもいいなんて思う訳がないだろ!」

一旦体を離して、間近くで私を見つめながら、私を叱りつける。
セツナが滲む。
ホントに待った。ホントにいるんだここに……。

蜜「会いたかった……っ!」

鳴咽と共に私は言葉を搾り出した。

会いたかった…。
セツナ。もう、待たなくていい?
側にいてくれる?

⏰:07/08/19 03:42 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#141 [向日葵]
セツナの大きな温かい両手が、私の顔を包む。

セツナ「俺だって……死ぬほど会いたかった……蜜……。」

瞼に唇が触れる。

セツナだ。
セツナなんだ……。

蜜「セツナ……。」

確かめる様に名前を呼んだ。
セツナが涙を親指で拭いてくれたお陰で、優しい微笑みが見える……。

セツナ「ん……?」

蜜「大好きです……。」

⏰:07/08/19 03:45 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#142 [向日葵]
セツナはより一層優しく微笑む。

セツナ「俺もだ蜜……。」

ゆっくり目を瞑ると共に、セツナの唇がこれ以上ないほど押し付けられた。

私達の周りで、桜が混じった風が吹いた。

私はこれからも、側にいるセツナと運命を共にしていきます……。

⏰:07/08/19 03:48 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#143 [向日葵]
 


――終わり――
 
 

⏰:07/08/19 03:49 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#144 [向日葵]
あとがき

という訳で、無事“黒蝶・蜜乙女”を終える事が出来ました

応援ありがとうございました
もしかしたら、また番外編としてここに書くかも……?しれないんで、その時はまた蜜やセツナを思い出してください(●´∀`●)

ホントにありがとうございました

⏰:07/08/19 03:52 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#145 [向日葵]
黒蝶・蜜乙女
*スペシャルチャプター*







春です!
桜です!
お花見です!

という訳でパンパカパーン!今日はお花見大かーい!(って言ってもお弁当は一人分……。)

こんにちは!
私は本山蜜。もうすぐ専門学生。

入学式前の春休み。私達はお花見に向かう事にしました。

⏰:07/08/23 00:58 📱:SO903i 🆔:KKHO/xOI


#146 [向日葵]
庭へ出るともう温かくなった陽射しが心地よくって、春眠暁を覚えずって言葉の意味がよく分かります。

私が背伸びをしていると、後ろに引力が。

蜜「わ!」

セツナ「準備出来たか?」

ご存知此方はセツナ。
私の……こ、恋人で、ついこの間、ようやく帰って参りました。

蜜「私はいいですけどラフィーユ達がお花摘みに行ってまだなんです。」

セツナの他に、この家には二名、一緒に住んでる人達がいます。

⏰:07/08/23 01:03 📱:SO903i 🆔:KKHO/xOI


#147 [向日葵]
その人達は、また来た時に説明を。

私がラフィーユ達の帰ってくる姿があるか空を向いていると、体が180゚回転してセツナの方へ向いた。

大体は、予想がつく……。今から何が起こるかは……。

セツナ「いつまで経っても慣れないんだな。」

ククッと可笑しそうに笑うセツナに対し、私は視線を色々な方向へさ迷わせた。

そんな私を、セツナは顎をクイッと上に上げると、ゆっくりと顔を傾け唇を重ねた……。

⏰:07/08/23 01:07 📱:SO903i 🆔:KKHO/xOI


#148 [向日葵]
まだこの段階はいいんだ……。問題は次。

蜜「――っ。ふぅ……っ!」

セツナの舌が、私の口内を荒らす。

朝から何やってんだとお思いのそこの貴方。
これは実は普通のくちづけではないんです。

セツナを含むその他二名は、人間じゃなく、黒蝶族と言う自然界でも頂点にいるなんだかファンタジーな世界の人間。

その人達には、“蜜乙女”と言う存在が稀にいて、私はその“蜜乙女”なのだ。

⏰:07/08/23 01:11 📱:SO903i 🆔:KKHO/xOI


#149 [向日葵]
それと今のくちづけと何が関係あるかって?

この人達はつまり蝶々な訳で、自分の“蜜乙女”の“蜜”を主食とします。

もし、“蜜乙女”がいない場合には、花の蜜等を吸って生活しています。
最近気付いたのは、蜜じゃなくて、私達が食べる物を食べれると言う事だ。

……ちょっと失礼。大分息が限界です。

蜜「ちょ……っ、長い!!」

私は無理矢理セツナを引き剥がす。
でも足に力が入らず、結局はセツナに抱えてもらう形になった。

⏰:07/08/23 01:15 📱:SO903i 🆔:KKHO/xOI


#150 [向日葵]
セツナに私から“蜜”を取るなと一回言った事があるけど、自分の運命の相手、つまり“蜜乙女”の“蜜”は、そこらの花よりも遥かに勝っていて、味は極上らしい。

蜜「蜜……吸い取る…の、に……どんだけ時間かか、って、んですか……。」

呼吸困難ながら必死に話す私を見ながらセツナは余裕で、愉快とでも言うようにニヤリと笑う。

セツナ「食事より愛のくちづけの方に時間を取ってしまったんだよ。相変わらず可愛らしいなお前は。」

この人はやったらサブい台詞を吐きなさる。
私も最初は呆気に取られっぱなしだった。

⏰:07/08/23 01:21 📱:SO903i 🆔:KKHO/xOI


#151 [向日葵]
随分一緒にいても、この美貌とサブい台詞にはやっぱり慣れない。

台詞には免疫がほんの少しついたものの、この神々しく美しい顔は無理だ。

更に優しくなるともう私は逆らえない。
色気のある顔をされれば逃げられない。
この人は自分の使い道をよく分かっている。
だからこそ……困る。

セツナ「何を黙っている。いつもの事だろ?……それとも……。」

そして何よりのSっ気満載!

セツナ「足りなかったとか……?もっとって言いたいのか?蜜も大分こちらに免疫ついてきたのだな……。」

⏰:07/08/23 01:27 📱:SO903i 🆔:KKHO/xOI


#152 [向日葵]
ズビシッ!
堪えきれず脳天チョップ。

蜜「もーいいですからっ!……あ!」

空から二つの影が舞い降りて来た。

オウマ「いよ!待たせたな!」

ラフィーユ「オウマ、選ぶ、遅い。」

さてさて、この二人をやっと紹介できます。

まずは元気なオレンジ頭の男の子オウマ君。

私の護衛の為にお城建設をきっかけにこちらへ半住み込み。
実は、もう一人の薄青い長い髪の毛のクールビューティ、ラフィーユの事が好きなのです。

⏰:07/08/23 03:19 📱:SO903i 🆔:KKHO/xOI


#153 [向日葵]
ラフィーユは、オウマ君と昔からの知り合いで、喋り方の事からオウマ君が(友達として)大切なのです。

ちなみに料理が半端なく上手いです。
食べないくせに。

蜜「じゃー…いこっかぁ!お弁当持ってきますね。」

お弁当を持った私は、セツナに抱きかかえられて上空へ。
上から見た街は桜であちらこちらがピンク色だった。

私達が向かう場所は皆がお花見して一杯の所じゃなく、とっておきの場所なのです。

⏰:07/08/23 03:23 📱:SO903i 🆔:KKHO/xOI


#154 [向日葵]
それはセツナとの秘密の場所だったあの山の中にあるのです。

だったと言った訳は、前にラフィーユとオウマ君をいれてしまったから、秘密では無くなってしまった。

それをセツナに言ったらそれはそれは拗ねて……。
Sっ気全開で迫られて大変だったんですよそれは……。

しばらく飛んでいくと、久しぶりの山が見えてきた。

蜜「わ、わぁ!何これぇ!」

⏰:07/08/23 03:31 📱:SO903i 🆔:KKHO/xOI


#155 [向日葵]
春が到来した山は緑の割合がほぼ無いくらいピンク色で埋め尽されていた。

正にピンク山。

蜜「そんなにこの山桜の木が多かったんですか?」

セツナ「緑が張り切ったみたいだな。なんてったってアイツらにとったら春は祭だから。」

ちなみに何祭だろう……。

蜜「…ん?ならラフィーユ達はお花摘みに行かなくても良かったんではぁ〜?」

後ろに飛んでいるラフィーユ達に少し声のボリュームを上げて聞いてみる。

⏰:07/08/23 03:36 📱:SO903i 🆔:KKHO/xOI


#156 [向日葵]
するとオウマ君が一回転しながら私(と言うかセツナ)の隣に来て、ニカッと笑った。

オウマ「俺達が探してたのはぁ!酒の花ぁ!」

蜜「お酒の……花?そんなのあるんだ。」

“酒の花”とオウマ君が言った時に、セツナがピクリとしたのを私は気付かなかった。

蜜「それ、私も飲みた」

セツナ「却下。」

言葉を遮られた上に何故か即答で却下されたので私は数回瞬きしながらセツナを見た。

⏰:07/08/23 03:43 📱:SO903i 🆔:KKHO/xOI


#157 [向日葵]
***************

セツナは思い出していた。

あちらの世界にいる時に間違って飲んでしまった酒の花。

酔った蜜は甘え上戸、そして脱ぎ癖があった。

なのでセツナはなんとしてでも蜜が酒の花を飲むのを阻止しなければならなかった。

*****************

蜜「セツナ?何でです。」

私はセツナのそんな思いを知らず、私は聞いた。

⏰:07/08/23 03:56 📱:SO903i 🆔:KKHO/xOI


#158 [向日葵]
――――――――

今日はここまでにします

⏰:07/08/23 03:57 📱:SO903i 🆔:KKHO/xOI


#159 [向日葵]
セツナ「……あまり気にするな。」

蜜「……。はぁ……。」

そして山の中へ降り立つ。色んな桜が満開だった。

蜜「じゃあお花見、開始しましょっかぁ!」

私はレジャーシートを桜の木の下に敷いてお弁当を出した。

それと共にオウマ君達は通称酒の花を出す。

それを何とか味見したくてセツナをじっと見てお許しを貰おうとする。

セツナ「駄目だったら駄目だ。」

⏰:07/08/26 00:35 📱:SO903i 🆔:85n.YW62


#160 [向日葵]
蜜「べぇー。セツナのケーチ。私だってもう大人なんだから!」

セツナ「未成年が威張って言うな。」

うっ……。
それを言われてはキツイ……。
でもお花見なんだから少しくらいいいじゃん……。

(※お酒は二十歳になってから。)

とりあえず乾杯をして、私はジュースを……。
あとの三人は酒の花を飲む。

そして私は自作のお弁当を食べながら桜を楽しむ。

⏰:07/08/26 00:38 📱:SO903i 🆔:85n.YW62


#161 [向日葵]
セツナ「蜜。桜の木の下には死体が埋まってるって本当か?」

蜜「あぁ。なんか言い伝え?みたいなのでありますよね。」

桜があんなにピンクなのは、死体の血を桜が吸い取ってるからだとは聞いた事あるけど……。

でもなんでそれをわざわざ今聞くかなぁ……。

蜜「せっかく美味しいご飯食べてるのに……。」

セツナ「蜜。俺の食事は?」

玉子焼きをパクッと食べて箸をくわえたままセツナを睨む。

⏰:07/08/26 00:43 📱:SO903i 🆔:85n.YW62


#162 [向日葵]
蜜「貴方、出てくる間際に沢山吸ったじゃありませんか。」

第一例え慣れたって言っても、オウマ君やラフィーユの前で濃厚なくちづけをするのは気が引ける。

でもこれん言ってしまえば、私が食事中だろうがなんだろうがどこかへ連れて行かれるに違いない。

なんてったってこの人は俺様節炸裂のミスター俺様なんだから……。

セツナ「ここまで飛んでくるのにエネルギーを消費した。だからいいだろ。しかもここまでお前を運んでやったんだぞ。」

⏰:07/08/26 00:48 📱:SO903i 🆔:85n.YW62


#163 [向日葵]
あー…出た出た。
これぞ生俺様節……。

呆れ果てながらセツナの言葉をチクワ耳で受け流していく。

蜜「私の意見は駄目で、自分の意見を通そうったってそうはいきませんからね!」

とだけ言って私はお弁当をまた食べ始めた。

オウマ「まぁまぁ!ケンカすんなって!」

その言葉にラフィーユが頷く。

別にケンカしてる訳じゃ……。

⏰:07/08/26 00:52 📱:SO903i 🆔:85n.YW62


#164 [向日葵]
すると隣のセツナからハァッと腹立たし気にため息が聞こえた。

珍しく諦めたらしい。

蜜「その花は、向こうから取ってきたの?」

ラフィーユ「意外、人間界、ある。」

あるんだ……。
ってか私は見たことない花ばっかりなんだけど……。

桜はそんな酒成分は入って無いのだろうか?

手を伸ばして桜の花を一千切りしてみる。

セツナが止めない所から、桜には成分無しと判断。

⏰:07/08/26 00:57 📱:SO903i 🆔:85n.YW62


#165 [向日葵]
吸ってみるとセツナ達の世界の花より蜜は不味かった。

蜜「ラフィーユ達は……こんなもの吸ってるの?」

オウマ「人間界のはちょって大人の味だからな。」

大人の味の度合いが分かんないけど……。
何気に私子供扱いされてるよね。

桜は却下して、また自分のお弁当を食べ始めた。

セツナ達は酒の花をすごいピッチで飲んでいく。
素朴な疑問で例えばこれで車を運転したとしたらやっぱり飲酒運転になるのかしら。

⏰:07/08/26 01:05 📱:SO903i 🆔:85n.YW62


#166 [向日葵]
――――
――――――……

オウマ「あれ?花無くなっちゃった。」

吸われた花の残骸がこんもりとなっている。
こんなに沢山酒を飲んだって言うのに、三人共ピンピンしている。

ラフィーユ「私、探し、行く。」

オウマ「それなら俺も行くわ!蜜達はここで待ってな。」

蜜「了解です。」

二人は立ち上がると、背中から光を放ち出して、瞬時に漆黒の羽を出した。

ピョンとジャンプしただけ遥か上空まで行ってしまって、しばらくすると見えなくなった。

⏰:07/08/26 01:11 📱:SO903i 🆔:85n.YW62


#167 [向日葵]
さてと、私は片付けでもしてそこら辺の桜でも堪能しようかな。

上を見れば桜のピンクと空の青が綺麗で満足。

蜜「はぁー…。綺麗だなぁー…。」

と上を見上げてたと思ったら、急にセツナのドアップ。

何が起きたか分からなくて数秒フリーズした後に瞬きを何回かする。

蜜「どうかしました?」

セツナ「いい加減限界……。」

限界?

「何が?」と聞く前に唇が重ねられた。

⏰:07/08/26 01:16 📱:SO903i 🆔:85n.YW62


#168 [向日葵]
私は直ぐ様セツナを引き剥がした。

蜜「ちょ!いきなり何やってんですか!!」

セツナ「くちづけ欠乏症だ。我慢してたんだから蜜も我慢しろ。」

はぁ?!

我慢って貴方!

あ……!もしかして。

蜜「セツナ……酔ってます?」

セツナ「んな訳ないだろ。」

そう言って、近くに座っていた桜の幹に体を押し付けられた。

⏰:07/08/26 01:19 📱:SO903i 🆔:85n.YW62


#169 [我輩は匿名である]
――――――――

一旦キリます

⏰:07/08/26 01:20 📱:SO903i 🆔:85n.YW62


#170 [我輩は匿名である]
唇がまた触れる瞬間……

蜜「――!!臭いっ!!」

またセツナを押し返してしまった。

セツナが口を開いた瞬間、お酒の匂いが漂ってきた。

蜜「お酒臭いですー。寄らないでください。」

眉間にシワを寄せて、セツナは何事かと言う目で私を見てくる。

すると……

ブニッ

蜜「んむっ!ちょ……っ、ん……っ!」

⏰:07/08/26 02:19 📱:SO903i 🆔:85n.YW62


#171 [我輩は匿名である]
――――――――

すいません、ちょっとですが眠いので今日はここまでにします

⏰:07/08/26 02:52 📱:SO903i 🆔:85n.YW62


#172 [向日葵]
↑途中から何故か名前が消えてますが、私です

⏰:07/08/26 13:40 📱:SO903i 🆔:85n.YW62


#173 [向日葵]
鼻をつままれて息を口で吸おうとした瞬間、セツナの口で塞がれた。
それと同時にセツナはつまんでいた鼻を離した。

息を十分に吸えなかった私はすぐ呼吸困難になった。

そして口の中にはセツナの吐息紛れにお酒の匂いが充満している。

限界だ!と胸辺りをドンドン叩いたつもりが力が入らなくて触れたくらいにしかならなかった。

それでも気付いたセツナは一旦口を離してくれる。

蜜「い……いいかげ……にして下さいよ……。」

⏰:07/09/02 20:01 📱:SO903i 🆔:T7pfKsTk


#174 [向日葵]
睨むけれどセツナはケロリとした顔で私を見下ろすだけ。

まるで何かしたか?
と問うような表情だ。


セツナ「焦らすお前が悪い。違うか?」

蜜「私は……悪く……な……。」

喋りたいのと息を吸いたいのとで言葉がおかしくなってしまう。

よく見れば自分はまだ幹に押しつけられたまま……。
まだ足りないと言う気だ。

⏰:07/09/02 20:04 📱:SO903i 🆔:T7pfKsTk


#175 [向日葵]
蜜「ど……退いて……下さい。」

セツナ「やだと言ったら?」

ニヤッと笑うセツナを横目に私は深呼吸した。
大分頭がはっきりしてきた。
よし。

押しつけられている手をゆっくりと剥がして立ち上がろうと試みたけど、足に力が全く入らなかった。

私が立ち上がる様をセツナは面白そうにただ見ている。

そこで私の意地でも立ってやると言う炎が燃え上がる。

⏰:07/09/02 20:08 📱:SO903i 🆔:T7pfKsTk


#176 [向日葵]
幹に手をついて気合いで立ち上がる。
足はまだフラフラしたままだけど……。

もう……ちょい……。
しかしなんでまだフラフラしてるのか分かんないなぁ。

なんとか立てた!
いよっしゃ!

得意気にセツナを見下ろそうとしたらセツナはもう既に立っててびっくりした。
そして逆に見下ろされる形になってしまった。

セツナ「立ってどうするつもりなんだ?」

蜜「桜を見て回るだけです。セツナはここにいてもいいんですよ?」

⏰:07/09/02 20:12 📱:SO903i 🆔:T7pfKsTk


#177 [向日葵]
セツナはまた意地悪そうにニヤッと笑うと私の手を繋ぎ自分の口元へ持ってきて手の甲に唇をつけた。

唇の感触に私は真っ赤になって余計に頭がクラクラしてしまう。

セツナ「行く所はどこでもお供するさ。花嫁殿よ。」
なんて返せばいいか分からず視線を泳がせていると、ククッと笑われた。

セツナ「ホントお前は可愛いな……。」

蜜「は、はぁ……。そりゃどうも……。」

口ごもって言った後、私達は手を繋いで仲良く桜が溢れる下を歩いて行った。

⏰:07/09/02 20:18 📱:SO903i 🆔:T7pfKsTk


#178 [向日葵]
―――――
―――――――……

暫くすると、オウマ君達が戻ってきた。

二人の両手には沢山の(多分)酒の花があった。

当然私は飲む事を許されていないので持ってきた水筒のお茶で我慢するしかない。

すると……

オウマ「なぁセツナ!あれ何だ?!」

あらぬ方を指さしたオウマ君につられて私とセツナはその方を見るも何も無い。
と、突然。

グイッ!

蜜「んんっ?」

⏰:07/09/02 20:22 📱:SO903i 🆔:T7pfKsTk


#179 [向日葵]
何かがトロリと口の中に入ってくる。
そしてお酒の香り。

オウマ君は私の口に酒の花を放りこんだのだ。

セツナ「オウマ、何も……。!!馬鹿!蜜!!」

そんなセツナの声を聞く前に、私は蜜をごくりと飲んでしまった。

あ……結構おいしー……。
・・・・・・・・・・・・・・

蜜を飲んで動かなくなった蜜を心配した一同はじっと蜜を見つめる。

セツナ「オウマ…。お前なんてことしてくれたんだ……。」

⏰:07/09/02 20:26 📱:SO903i 🆔:T7pfKsTk


#180 [向日葵]
オウマ「かったいこと言うなよ!宴会なんだぜ?!」

セツナ「お前は蜜が酒を飲んだらどうなるか知らないだろ!」

セツナが言い終わると同時に、ゆっくりと蜜が顔を上げる。

ラフィーユ「蜜?」

頬は紅潮し、口元には不適な笑み。
そして

蜜「セーヒュナァー!」

この甘え方。
蜜は酒に弱いのだ。
完全に酔っ払ってる。

蜜はセツナの首元に腕を巻き付けて子供の様にセツナに抱きつく。

⏰:07/09/02 20:30 📱:SO903i 🆔:T7pfKsTk


#181 [向日葵]
セツナは「分かったか?」とオウマにげんなりした視線を送ってからため息をついた。

ラフィーユは一度見た事があるのでオウマほど驚きはしないものの目が点になっていた。

そんな一同にお構いなく、寧ろ眼中になく出来上がった蜜は頭をセツナに甘えるように擦りつける。

オウマ「たった……あれだこで……?」

ハハッと半笑いで誰に聞いてるのでもなくオウマが呟いた。

⏰:07/09/02 20:40 📱:SO903i 🆔:T7pfKsTk


#182 [向日葵]
――――――――

キリます

⏰:07/09/02 20:40 📱:SO903i 🆔:T7pfKsTk


#183 [向日葵]
オウマが引いてるのもなんのその。
蜜は自分の服に手をかけ始めた。

それに気づいたセツナは急いで蜜の手を止める。

「なぁ〜にぃ〜セツュナァ〜。」

「馬鹿か。外だぞ。こんな所で脱ぐな!」

「暑いもぉん。いいでしょ〜?」

上目づかいで聞いてくる蜜に思わず負けそうになったセツナだが、ぐっと我慢して蜜を睨む。

「駄目ったら駄目だ!」

⏰:07/09/07 00:37 📱:SO903i 🆔:gYOPUeU2


#184 [向日葵]
少しキツめに叱ると、蜜の目に涙が溜った。

それを見たセツナは「あー……。」頭を抱える。

「ひどいよセツュナ……。あたち、暑いって言っただけなのにぃー!」

子供の様に「うわぁーん」と泣き出す蜜。
その変わりように思わず固まり、凝視するオウマとラフィーユ。
どうしたものかと悩むセツナ。

「セツナ……俺悪い事……したな……。」

バカっぽい声を出しながらオウマが呟いた。

「だから嫌だったんだ……。」

⏰:07/09/07 00:43 📱:SO903i 🆔:gYOPUeU2


#185 [向日葵]
ラフィーユに関してはもう無の境地なのか遠い目をしていた。

ひぐひぐとしゃっくりをしながら自分の涙を拭く蜜にセツナは聞いた。

「すまなかった。強く言い過ぎた。何でもしてやるから泣き止め。」

するとピタッと泣き止んで蜜は目を輝かせた。

「何でも?」

「あぁ。」

普通じゃあり得ないニヘェとした笑顔を見せた蜜は、更にあり得ない事を言った。

⏰:07/09/07 00:47 📱:SO903i 🆔:gYOPUeU2


#186 [向日葵]
「チュー!がいい!」

これには流石のセツナも頭の機能停止。

酔っ払っらっていると言う時限じゃない。
これは最早泥酔だ。

セツナはハァー……とため息を吐いて立ち上がる。

「少し、コイツの酔いを冷ましてくる……。」

二人はコクンと頷いて、桜並木の続く奥へと消えていく蜜とセツナを見送った。
・・・・・・・・・・・・・・・

蜜は未だアハアハと笑いながらセツナに引っ張られるまま歩いている。

⏰:07/09/07 00:52 📱:SO903i 🆔:gYOPUeU2


#187 [向日葵]
そしてまた言う。

「セツュナ?チューは?」

セツナは足を止める。

困ったものだ……。
酔っ払った蜜を相手にするのは苦手だ。
何せ理性が切れそうな言葉ばかり吐く。

止まって困っているセツナを蜜はトロンとした目で見上げる。
そしてまたニヘラァと笑う。

腕をキュッと掴んだと思うと、掴みながら「ねぇー!キスはぁぁ?」とせがんで来た。

⏰:07/09/07 00:55 📱:SO903i 🆔:gYOPUeU2


#188 [向日葵]
このキス魔が……っ!

何か諦めがついたセツナは少々乱暴に木に蜜を押し付けた。

蜜は自分から目を瞑ってセツナを待つ。
セツナはまたため息を吐くと軽く唇を触れた。

「満足か?」

「んー!やっ!!」

グイッと首に腕を回し、セツナの顔を近づけた蜜は足りないと言う様に深く唇を押し付けた。

くそっ……。人が優しくしてやれば……!

セツナは半分ヤケになりながら蜜に唇を押し付ける。

⏰:07/09/07 01:00 📱:SO903i 🆔:gYOPUeU2


#189 [向日葵]
行為はエスカレートして、蜜の口内をセツナの舌が荒らしていた。

何度も角度を変える度、蜜の切なそうな息遣いが聞こえた。

するといきなり蜜の体がカクンと崩れた。

やり過ぎたと思ったセツナは急いで唇を離して蜜を支える。
しかし心配は無用だった。

「スー…スー…。」

なんと…………寝た。

あぁこのパターンかとセツナはぐったりと疲労。

⏰:07/09/07 01:04 📱:SO903i 🆔:gYOPUeU2


#190 [向日葵]
「馬鹿もんが……。」

セツナは前の様に少し蜜の服のボタンを開けると、首に二ヶ所、鎖骨に三ヶ所赤い印を残した。

「俺を振り回した罰だ。軽いものだろ。」

蜜の寝顔に意地悪な笑顔を向けながらセツナは呟いた。

そんな事とは知らずに蜜は穏やかな顔をして気持ち良さそうに寝息をたてている。

また起きたら怒鳴られるんだろうなとククッと笑いながらセツナは蜜を抱き上げ、オウマ達の元へと向かった。

⏰:07/09/07 01:09 📱:SO903i 🆔:gYOPUeU2


#191 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・・・

「おーセツナァ……ってえぇ?寝ちゃった訳?」

セツナの腕で寝ている蜜を見ながらオウマは言った。セツナはそのまま座り、蜜を寝かせたままにする。

「まだこの方が都合がいい。脱がれたら厄介だ。」

「まぁな……見た所でセツナにボコボコにされそうだし……。」

そう言いながらオウマは酒の花を一口飲んだ。
そこでラフィーユはセツナに質問をした。

「セツナ。将来蜜、どうする?」

「あぁ……そうだな……。」

⏰:07/09/07 01:16 📱:SO903i 🆔:gYOPUeU2


#192 [向日葵]
あっちの世界で暮らすには蜜には不便だろうとセツナは考えていた。

ならば自分がこちらに来て、たまにあちらへ帰ったらどうだろうと考えてる。

出来れば蜜を一人にはしたくない。
随分と長い間あの家で、自分達がいるものの一人ぼっちを味わっている。

両親には未だに会った事は無い。
祖父母は一年にニ、三度帰ってくるらしい。

「まぁ、どうにかなるだろう。」

「じゃあ挙式は?」

⏰:07/09/07 01:20 📱:SO903i 🆔:gYOPUeU2


#193 [向日葵]
「まぁその内。」

「こっち?あっち?」

「多分こちらだろうな。」
するとオウマはすくっと立った。

「大体プロポーズとかした訳?」

何故か威張りながら見下ろすオウマにセツナは眉を寄せた。

「必要か?これだけ一緒にいるのに。」

ここにはラフィーユが突っ込んだ。

「蜜、気持ち伝えてくれるの、好き。ならば言う、当たり前。」

⏰:07/09/07 01:24 📱:SO903i 🆔:gYOPUeU2


#194 [向日葵]
――――――――

今日はここまでにします

⏰:07/09/07 01:24 📱:SO903i 🆔:gYOPUeU2


#195 [向日葵]
二人からの口攻撃に眉を更に寄せるセツナ。
二人はじーっとセツナを見てくる。

「ってか何でお前らに応援されてんだ俺は。」

「セツナって器用そうで不器用だし。」

オウマの言葉にラフィーユも頷く。

まだくっついてもないコイツらに言われるのはなんだか違う気がするとセツナは納得いかない気がした。

⏰:07/09/15 17:37 📱:SO903i 🆔:5.lsk.LE


#196 [向日葵]
「くしゅっ。」

その時、セツナの腕の中で眠っている蜜がくしゃみをした。

「春、言えど夕方、寒い。そろそろ、帰る。」

気づけば空が茜色になり始めていた。
蜜は暖を求めているのかセツナにすり寄る。

そんな蜜を見てそっとセツナは微笑んだ。

適当にオウマとラフィーユで周りを片づけて、桜が咲き誇る山を四人は後にした。

―――――……

「ん……んー?」

あれ?いつの間に寝てたの私。

⏰:07/09/15 17:42 📱:SO903i 🆔:5.lsk.LE


#197 [向日葵]
ってか山じゃない。
完璧コレは家の中だよね。

「何が……どうなって?」

「起きたか。」

近くで声がするので首を動かすと、椅子にセツナが座ってこちらを見ていた。

体を起こして時計を見る。

「七時……?」

お花見は……。
あの桜だらけの山々は……。

「なぁーんでぇぇ?!」

⏰:07/09/15 17:50 📱:SO903i 🆔:5.lsk.LE


#198 [向日葵]
頭を抱えて記憶を辿るもオウマ君に酒の花を飲まされた所までしか分からない。

どうやって帰って来たとか、何で眠ったとか全然分からない。

「ねぇセツナ。なん―――――っ。」

言葉を失う。

何故ならセツナの顔がすぐそこにあって、私を囲うみたいに手をベッドについてるからだ。

いつになく真剣なセツナの目に、思わずポーッと頭が働かなくなる。

「セツ……ナ……?」

⏰:07/09/15 17:56 📱:SO903i 🆔:5.lsk.LE


#199 [向日葵]
名前を呼ぶと、セツナの顔が更に近くになる。
もう鼻が当たりそう……。

「なぁ蜜よ……。」

「……何、ですか……?」

セツナの片手が、私の片手を掴んでセツナの頬に触れる。

「俺はお前が好きだ。ずっと……これからも……。」

ドキドキ胸が高鳴る。
いつも言われる事だけど、やっぱり言われると嬉しい。

私は黙ってセツナの言葉の続きを待つ。

⏰:07/09/15 18:03 📱:SO903i 🆔:5.lsk.LE


#200 [向日葵]
セツナは私の目を見て私を伺っている。
私が待っていると分かったのか、セツナが次の言葉を発した。

「結婚して欲しいんだ……。俺と……。」

周りの音が無くなった。

まるで私とセツナ二人だけみたい。

今なんて?結婚?

「ハ……ハハハッ。」

現実に戻ってこれたかと思ったら、なんだか笑えてしまった。

笑う私にセツナは怒った顔をする。

⏰:07/09/15 18:07 📱:SO903i 🆔:5.lsk.LE


#201 [向日葵]
「真剣に言ってるのに何故笑う。」

「フフフフ。だって、勝手になったら夫婦とかって言ってるのに……今更プロポーズですかっ。」

まだ笑う私に、セツナはムッと唸った。

それでも……。

私はセツナの顔を両手で包んだ。
セツナのムッとした顔が消える。

「もちろんお受けしますよ。……セツナ。」

と言って微笑んだと思ったら、セツナが力強く抱き締めた。

⏰:07/09/15 18:17 📱:SO903i 🆔:5.lsk.LE


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