黒蝶・蜜乙女―第2幕―
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#130 [向日葵]
未だに油切れのドアの向こうは、青空と温かい太陽の光。

屋上へ足を踏み入れて、そのまま真っ直ぐ進み、柵に手をかける。

上から下を見下げると、ちらほら咲き始めてる桜が綺麗だった。

人が、とても小さい。

蜜「晴れて良かった……。」

これで雨だったらやっぱり嫌だもん。

その時、見慣れた姿が。

蜜「あぁっ!風さん達!」

⏰:07/08/19 03:04 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#131 [向日葵]
なんと!久々風さん達。

にこにこ笑いながら私の周りをクルクル回る。

蜜「久しぶりですねぇ!元気でしたかぁ?!」

風さん達は小さな体を一杯使って体を揺らす。
元気だったと言いたいらしい。

そしてその手にはピンク色の欠片が。
私にくれるらしい。

蜜「フフ。ありがとうございます。」

手にこんもりと桜の花びらが積もると、風さん達が風をふわりとおこした。

⏰:07/08/19 03:07 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#132 [向日葵]
蜜「わぁっ!ハハ、きれー…。」

私の周りだけ、花吹雪。

沢山のピンク色の欠片が私の周りを舞う。

蜜「風さんったら、やり過ぎですよ!」

笑いながら、風でなびいた長くなった髪を手で抑えた。

さて……ラフィーユ達も待ってるし、ボーリングとかも待ってるし、そろそろ帰ろう!

……その前に……。
最後の最後、これがホントに最後。

⏰:07/08/19 03:11 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#133 [向日葵]
思い出が詰まったこの学校に、全てを置いて行こう。

私は深呼吸を何度も繰り返して、胸に手を当てる。

自分の鼓動に耳を傾けながら落ち着いて、また、息を大きく吸った。


蜜「……セ……セ……セツナ……。」

言い終えて、目を瞑った。これで良し。

さぁ、二人の元へ帰ろう。

蜜「ん?あれ?風さん?」

どこ行ったんだろう。

⏰:07/08/19 03:15 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#134 [向日葵]
 





「ただいま。」
 
 
 
 
 
 

⏰:07/08/19 03:16 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#135 [向日葵]
目を……見開いた。

記憶にある声は、もう遥か遠くにあって、思い出せるか不安だけど、確かにわかる。

私は、ゆっくりと振り返る。
振り返る時、いくつもの忘れたいと願っていた思い出が逆流してきた。
そして、声の主を、私は捕らえる。

蜜「嘘……。」

青空に似合わない、漆黒の羽、髪。
そして驚く程の美貌。

そこにいたのは……………………


セツナだった

⏰:07/08/19 03:21 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#136 [向日葵]
セツナ「ただいま。随分と変わったじゃないか。」

蜜「……ぇ……な……。」
そうだ私、白昼夢見てるんだ……。
これは夢なんだ……。

試しに、お決まりのほっぺを力一杯つねってみた。

蜜「……!いったー!!」

セツナ「お前は何をやってるんだ……。」

痛い…。夢……じゃない。私はまたゆっくりセツナを見た。

大きな羽はもうしまわれていて、黒の服に身を包んで、そこに確かにセツナはいた。

⏰:07/08/19 03:26 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#137 [向日葵]
セツナは大きく溜め息をつくと、不満げに私を見つめる。

セツナ「ただいまと言ってるのだからおかえりくらい言ったらどうだ。」

蜜「貴方そんな……近くのコンビニ行ってきたみたいに……。」

って……そうじゃない。
決めてたじゃない。

次会った時には、その美貌が腫れあがるまでぶん殴るって……。

でも手に力が入んなくて……。

蜜「遅い……ですよ。」

声が震える。

⏰:07/08/19 03:29 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#138 [向日葵]
怒りたいのに。
涙が出そうで。
言いたい事一杯あるのに、頭ん中ぐちゃぐちゃになって、何から言えばいいか分からない。

セツナ「思ったより時間がかかってなぁ。それはそれは疲れたぞ。」

蜜「私は……っ。例え私の為でも勝手に行って欲しくありませんでしたっ!」

泣くな。
泣いたらきっとその腕にすぐ飛び込みたくなる。

言いたい事、この二年、どれだけ寂しかったかを、伝えなきゃ……。

蜜「寂しくて、頭おかしくなりそうで、私は貴方を忘れる事に結論づけたのに……っ。」

⏰:07/08/19 03:34 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


#139 [向日葵]
セツナ「なんだって?」

セツナの少し怒った声が耳に届いた。

蜜「絶対、私の事なんかどうでもよくなったんだって思って、帰ってくる気配すらないのに待つのはもう疲れてて……えっと。」

涙が出そう。
瞬きを何回もして抑える。

蜜「とにかくもう疲れたんです!セツナの帰りを待つことに……キャッ!」

体を、力強い腕が抱き締めた。

セツナ「相変わらず馬鹿だな蜜。」

⏰:07/08/19 03:38 📱:SO903i 🆔:NfUWlfOw


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