黒蝶・蜜乙女―第2幕―
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#30 [向日葵]
その姿がとても愛しくて、抱き締めたくて、手が伸びた……けど戻した。
抱き締めるのは僕の役目じゃない。
目を瞑って、屋上の光景を思い出す。
あの愛しさで満ちていた目から、涙が流れている。
それは他でもない僕の為に。
それだけで充分じゃないか……。
断るんじゃなくて、「ありがとう」と言ってくれた。
それだけで幸せじゃないか……。
小川「本山。約束、破っちゃダメだよ?」
:07/08/14 02:38 :SO903i :BHHisEIE
#31 [向日葵]
その言葉に、本山は涙をゴシゴシ拭いて必死に堪えると、ぽそっと呟いた。
蜜「もう……破っちゃったよ。」
頭に?を浮かべて本山を見つめると、照れた様に笑った。
蜜「自分自身で……約束してた事があるの。…それ、破っちゃった!」
ヘヘッ!と笑う本山。
大丈夫。いつも通りだ。
小川「そっか…。……じゃ、そろそろ帰ろっか!俺戸締まりすかるから本山先に帰んな!」
蜜「あ……。…そう?!じゃあ、お言葉に甘えて!」
:07/08/14 02:43 :SO903i :BHHisEIE
#32 [向日葵]
小川「また明日!」
蜜「また明日。」
ガラガラ……
……。
終わった。
僕の恋に、終止符が打たれた。
ベタなシュチュエーションでの告白は、予想通りのフラレるので幕を閉じた。
でも僕は嬉しかった。
本山がちゃんと返事を返してくれた事。
前の本山ならば、絶対……。
:07/08/14 02:47 :SO903i :BHHisEIE
#33 [向日葵]
蜜『ウン!私も小川君好きだよ!』
って意味分からず返してただろうな。
それだけ彼女が変わったって事だ。
そして、彼女を変えたのは……紛れもなく彼だ。
ボタタタ
机に滴が落ちる。
ダサイ……。
失恋して泣くだなんて……。
でも僕はホントに好きで、大好きで、ダメだと分かっていても自分の知らない所で最後の1%に賭けていたんだ。
:07/08/14 02:51 :SO903i :BHHisEIE
#34 [向日葵]
ダメなら「ハイそうですか。諦めます。」と言う様な簡単な事は出来ないほど、僕は彼女が好きだった。
理由を聞かれても答えれない。
皆そうじゃないか?
何故好きになったと聞かれても、きっと何故か好きになっていたに違いない。
色んな本山を近くで、だけど遠くで見ていた僕は、彼女の何かに惹かれていたんだ。
セーターに、シミが広がる。
止まれ……止まれ……。
明日はきっと笑える。
:07/08/14 02:54 :SO903i :BHHisEIE
#35 [向日葵]
また「おはよう」と言って、友達に戻れる。
それでいいじゃないか。
小川「グスッ……あ゛ーくそっ!羨ましい!」
羨ましい……。
両想いになれる人達が、こんなにも羨ましい。
でも一番羨ましいのは、側にいなくても想ってもらってる彼だ……。
・・・・・・・・・・・・・・
一泣き終えて戸締まりをした僕は下駄箱へと向かった。
小川「……。アレ?」
:07/08/14 02:58 :SO903i :BHHisEIE
#36 [向日葵]
清「ぃよ!」
下駄箱にもたれながら、そこには西堂がいた。
小川「どうかしたの?」
清「私も委員会の帰りでさっ!さっき蜜と会ったら……大体予想ついて。」
苦笑いを浮かべる西堂の心遣いに、僕は嬉しくなって声をあげて笑った。
小川「なんか西堂には読まれっぱなしだな!」
清「そりゃラブビーム放ってるんだもん。分からない訳ないじゃない。」
僕が元気なのが分かったのか、西堂はニカッと笑ってみせた。
:07/08/14 03:03 :SO903i :BHHisEIE
#37 [向日葵]
小川「一緒に帰らない?途中まで一緒でしょ?送るよ。」
清「おージェントルマンだね〜ぃ。じゃあお姉さんが話を聞いてやろうじゃないかぁ!」
小川「フハッ!丸っきり同学年じゃん!」
他愛のない話で笑えた。
さっきの涙で、痛みは全部流せたらしい。
それでもまだ、好きの想いはくすぶってる。
しばらくはまだ無理そうだ。
でも僕には新しい目標が出来た。
:07/08/14 03:07 :SO903i :BHHisEIE
#38 [向日葵]
大好きな子が出来たら絶対に悲しませない。
嬉し涙で一杯にして、飽きる程の大好きを言うんだ。
大事に大事にして、ギュッて力強く抱き締めて……。どれだけ好きかを教えてあげるんだ。
いつかそんな子が出来ますように。
出会えますように。
その子も僕との出会いを、待っていますように……。
:07/08/14 03:10 :SO903i :BHHisEIE
#39 [向日葵]
――――
――――
キリます
これで小川編は終わりです。次はラフィーユとオウマ編に入ります。
その話はまた明日に書きます
:07/08/14 03:11 :SO903i :BHHisEIE
#40 [向日葵]
チャプター16:それぞれの想い 〜ラフィーユ・オウマ編〜
二人の大切の意味って違うとこの頃知った。
今回のナビゲーターは私、蜜です。
ついこの間、オウマ君のラフィーユに対する気持ち、ラフィーユがオウマ君に対する気持ちを聞いた私は、オウマ君がどうでるかを見ているんですが……。
:07/08/14 14:27 :SO903i :BHHisEIE
#41 [向日葵]
オウマ「ラフィー!」
ラフィーユ「やかましい。」
ご覧の通り。
変わりないんです。
まぁ、すぐ変わる訳でもないと思うんだけど……。
とりあえずはお互いに大切な存在だと言うのは分かってるらしい。
でも微妙な違いが……。
オウマ君は分かってるのかな?
―――――……
オウマ「蜜。告白のタイミングってどんなもん?」
蜜「へ?」
ある日オウマ君が尋ねた。私は丁度洗濯物を干していて、その様子を見学しながらの質問だった。
:07/08/14 14:32 :SO903i :BHHisEIE
#42 [向日葵]
蜜「さ、さぁ…。私は、なんだかせっぱ詰まった感じでしたんで……。」
オウマ「ってか蜜の場合はあと返事するだけだったもんなぁ。」
そーゆー訳でもないんだけど……。
よくは分からないけどそーゆーのってムードとタイミングが必要だから、どの?って言われても困る……。
蜜「!」
そうだ……っ!
蜜「いっそのこと二人で出かけたらどうですか?」
:07/08/14 14:36 :SO903i :BHHisEIE
#43 [向日葵]
オウマ「出かける?」
そうしたらムード、タイミング、二つが揃う時がきっと来る……ハズ!!
蜜「なら、言いやすい時が来ると思うの。」
オウマ君はむーっと考えた。その間に洗濯物をパンパンと伸ばして太陽にかざす。
オウマ「いいかもしれないな。おーいラフィー!」
え?!今誘うの?
ラフィーユはお風呂掃除を手伝ってくれてて、しばらくすると顔を見せた。
ラフィーユ「何だ。」
:07/08/14 14:40 :SO903i :BHHisEIE
#44 [向日葵]
オウマ君は勢いよく立ち上がると、ラフィーユの側に行って、目を輝かせながらラフィーユに言った。
オウマ「明日日曜だし、どっか行かないか?!二人で!」
ラフィーユは瞬きをパチパチ繰り返す。
何を言ってるかサッパリっと言った感じだ。
ラフィーユ「何を言ってる。」
オウマ「たまには出かけてもいいじゃん!な!蜜!」
いやコッチにふらないで!
:07/08/14 14:44 :SO903i :BHHisEIE
#45 [向日葵]
蜜「え?あぁ、まぁ、ウン。」
ラフィーユは眉を寄せてため息をつくと、オウマ君を一睨みした。
ラフィーユ「行かない。」
私とオウマ君は二人揃って「えっ?!」と言った。
オウマ「な、何で…?」
ラフィーユ「当たり前。私、オウマ、蜜の護衛。二人出かける、護衛の意味無い。」
その言葉にオウマ君はシュンとして「分かった…。」と呟く。
:07/08/14 14:47 :SO903i :BHHisEIE
#46 [向日葵]
それを見た私はおろおろして二人を交互に見る。
何か手だてを……。えっとー、えっとー…。
ラフィーユは私が考えている間にお風呂掃除に戻ろうてする。
あぁ行っちゃう!
えっと、えっと、えっとー!
蜜「じ、じゃあ、私も行く!!」
ラフィーユ「え?」
オウマ「えぇっ?!」
固まる。三人の間に、何とも言えない空気が漂ってきた……。
:07/08/14 14:51 :SO903i :BHHisEIE
#47 [向日葵]
オウマ「どーゆー事だよ蜜!」
ラフィーユがお風呂に入ってる間作戦タイム。
あと10分は大丈夫だろう。
蜜「どうもこうも、私が行った方がラフィーユが行く確率は高くなるじゃない!」
未だ出かけるか否かで討論中。
あの後は微妙な空気のまま会話は終了してしまったので、まだ行き先を考えることすら辿りついてない。
:07/08/15 02:54 :SO903i :/J6qFa6E
#48 [向日葵]
蜜「私は気をきかして途中でなんとなく離れたりします。その時を狙ってオウマ君が告白するんですよ。」
オウマ「あぁなるほどね。それなら想いを伝えやすいって事か……。」
とりあえず……ラフィーユを説得させる事が大切だ。お風呂からあがってきたら即効でラフィーユを説得しよう……。
蜜「私がラフィーユを説得する間、オウマ君は口出しちゃダメですよ。」
オウマ「なんで?」
蜜「私が言った方が、私が!出かけたいんだって思うでしょ?」
:07/08/15 02:59 :SO903i :/J6qFa6E
#49 [向日葵]
オウマ君はひらめいたようにポンッと手を叩くと「分かった」と言った。
さて……それじゃあ次は出かけると決まった場合の行き先。
蜜「どうしよう。」
ラフィーユ「何が?」
蜜・オウマ「うわぁっ!!」
いつの間にかお風呂から帰っていたラフィーユが、私達が座っているソファーの真後ろに立っていた。
驚いた私達はソファーから落ちてしまった。
ラフィーユはいぶかし気に私達を見ている。
:07/08/15 03:04 :SO903i :/J6qFa6E
#50 [向日葵]
ラフィーユ「一体、何。」
蜜「あ、あぁのね、ラフィーユ。明日、やっぱり出かけようよ!」
ラフィーユ「どこへ?」
お?いい感じ!
よしよし!
心の中でピースを作って、私はさも私が行きたいかのように話す。
蜜「この前、カワイイ雑貨屋さん見つけたの!それで、ラフィーユと一回行ってみたいなって!」
オウマ君は約束通り口にチャック。
私は演技がバレてしまわないかドキドキしていた。
:07/08/15 03:08 :SO903i :/J6qFa6E
#51 [向日葵]
ラフィーユはじっと私を見る。
それは私が怪しいのか、はたまた私の護衛について考えてるのか。
どっちにしても心臓に悪い。
自慢じゃないけど私は演技が上手い方ではないし、嘘をつくのも下手くそ。
良く言えば正直者。
悪く言えばバカ正直。
なんか変な汗が一筋顔をツー…と流れた所で、やってラフィーユが口を開いた。
ラフィーユ「蜜がそう言うのなら、仕方ない。オウマ、分かったな。」
:07/08/15 03:13 :SO903i :/J6qFa6E
#52 [向日葵]
なんと願ってもない!
ラフィーユからオウマ君を誘ってくれた!
蜜「オ、オウマ君も行くよね?……オウマ君?」
オウマ君は忠実に約束を守って未だお口にチャック状態。
蜜「オウマ君!もう喋っていいから!」
ラフィーユに聞こえるか聞こえないか程度の小声とチャックを開けろという仕草で、オウマ君に喋る事を促す。
オウマ君はもう喋っていいの?と言うように口を開く。
:07/08/15 03:16 :SO903i :/J6qFa6E
#53 [向日葵]
――――
――――
今日はここまでにします
:07/08/15 03:17 :SO903i :/J6qFa6E
#54 [向日葵]
オウマ「行こうぜラフィー!」
ラフィーユ「言っておく、遊び回る、それだけじゃない。じゃあ、私、寝る。」
そう言ってスタスタ寝所の客間へ行ってスターンと襖を閉めてしまった。
蜜「も、もしかして、怒ってる……?」
オウマ「あー違う違う。明日に備えて対策を頭の中で練ってるんだわアレ。」
ふーん……。
にこにこしながらオウマ君を見ると、オウマ君は少し照れているのか視線をずらした。
:07/08/15 13:30 :SO903i :/J6qFa6E
#55 [向日葵]
よく見てるんだなぁ……。
いいな…それだけ敏感に分かって……。
四六時中一緒にいたのに、私は分かってあげれる事は出来なかった……。
庭から見える夜空を見上げて、その空と同じような色の羽の生えた姿を思い出す……。
もうすぐ春がやってくる……。
未だ待ち続ける姿が見える気配は………………無い。
―――――……
オウマ「快晴――――――っ!!!!」
:07/08/15 13:39 :SO903i :/J6qFa6E
#56 [向日葵]
ビクッ!
まだ眠りについていた私はオウマ君の叫びに夢の世界から現実に一気に引き戻された。
ラフィーユ「オウマうるさい。」
ガチャ
ラフィーユ「蜜、朝だ。起きれるか?」
ラフィーユはソロッと私の部屋に入ってきて様子を伺う。
もう準備が出来てるみたい。
随分前に起きたみたいだ。
蜜「あ、ゴメンネ。私が言い出した事なのに。」
:07/08/15 13:50 :SO903i :/J6qFa6E
#57 [向日葵]
ラフィーユ「いいや。すまんな、オウマ、うるさい。」
私は苦笑いした。
蜜「すぐ着替えるから待っててくれる?」
・・・・・・・・・・・・
着替えを終えて下に行くと何だかいい匂いが……。
不思議に思ってリビングに行くと、テーブルの上に洋風朝ごはんが並べてあった。
蜜「これ……どうしたの?!」
ラフィーユ「私、作った。」
:07/08/15 13:58 :SO903i :/J6qFa6E
#58 [向日葵]
私は驚いてそのまま固まった。
家事をする私をラフィーユはよく手伝ってくれた。
物覚えのいいラフィーユはすぐにやり方をマスターしてくれたけど、今日みたいに朝ごはんを作ってくれるだなんて事は初めてだった。
ラフィーユ「口、合わない、ならスマン。」
蜜「そんな事ない。とっても美味しそう……。」
ラフィーユが紳士みたいに引いてくれたイスに座って、目の前にあるフレンチトーストを一かじりした。
:07/08/15 14:09 :SO903i :/J6qFa6E
#59 [向日葵]
!!!!!!
うっそ……。
蜜「めちゃめちゃ美味しい……。」
口を押さえて口の中に広がる味に感動した。
ラフィーユ「良かった。」
そう言いながらラフィーユはキッチンに立って片付けをしている。
そこで庭で太陽の光を一杯に浴びていたオウマ君が部屋に入ってきた。
オウマ「良かったなラフィー!」
:07/08/15 14:17 :SO903i :/J6qFa6E
#60 [向日葵]
蜜「すっごい美味しいよー!」
オウマ「へー。ラフィーはいいお嫁さんになるんじゃない?!」
おおっと大胆発言!
ラフィーユ「蜜、何時に出る。」
おおっとスルー!
それでもオウマ君は気にしていないのかはしゃぎまくっていて落ち着かないのか部屋中をウロウロしている。
蜜「ラフィーユ達は朝ごはん終わった?」
オウマ「おう!朝一で!」
:07/08/15 14:23 :SO903i :/J6qFa6E
#61 [向日葵]
片付けを一段落終えたラフィーユは私の目の前のイスに座った。
ラフィーユ「今丁度、桜咲きそう。桜は蜜、上手い。」
へぇ……。
やっぱり花によって美味しいとか不味いとかあるんだなぁ。
蜜「ちなみに一番不味いのは?」
ラフィーユ「私、タンポポ。」
オウマ「俺はタンポポ好きだよ。んー…俺は薔薇かな。トゲ痛いし。」
なんか分かる様で分からないその感覚……。
大体薔薇ってそんな簡単に生えてる?
:07/08/15 14:34 :SO903i :/J6qFa6E
#62 [向日葵]
最後の紅茶一口を飲み終えた私はティッシュで口を拭いて立ち上がった。
蜜「ぃよし!お待たせしました!行きましょっか。」
・・・・・・・・・・・・・・・
流石日曜日。
街中は人が沢山いた。
まだ春前だけど、わりかし外は温かかった。
もちろん私の隣を歩く二人はそこら辺にいる人とは違う雰囲気と容姿を持っているので、振り返らない人はいなかった。
しかも私は地味な普通の女の子。
余計に引き立って見える。
蜜「あ、ここだよ!」
指差したのは雑貨屋さん。雑貨屋さんの話は実はホントで、清と何回か来た事があった。
:07/08/15 14:44 :SO903i :/J6qFa6E
#63 [向日葵]
――――
――――
キリます
:07/08/15 14:45 :SO903i :/J6qFa6E
#64 [向日葵]
ラフィーユ「蜜、ここで何する。」
蜜「ん?勿論買い物だよ!二人も自由に回ってて!」
っと言いながらそそくさと二人から離れる事にした。しかし、ラフィーユは普通に私についてきた。
蜜「あ、あの…、ラフィーユ?いいんだよ?自由に見ても。」
ラフィーユ「いい。一緒に見る。」
だからねラフィーユゥゥゥ……。
それじゃあ作戦が……。
オウマ「すっげぇ!見たこと無い奴ばっかぁぁ!」
:07/08/15 17:12 :SO903i :/J6qFa6E
#65 [向日葵]
貴方も作戦を忘れてはしゃがない!!!
ったく……。
仕方ない。しばらくは雑貨屋さんを楽しもう。
蜜「ラフィーユ!見て。カワイイ!」
ラフィーユ「へぇ……。」
ブタのぬいぐるみを物珍しく角度を変えて観察するラフィーユがとても可愛い。
ラフィーユ「何、企んでる…?」
―――ドクン…
蜜「何……が?」
ブタのぬいぐるみを元の場所に戻して、ラフィーユが私に顔を向ける。
:07/08/15 17:18 :SO903i :/J6qFa6E
#66 [向日葵]
ラフィーユ「様子、変。」
ラフィーユの見透かす様な目が私を貫く。
平静を装う為、目線はそらさなかった。
蜜「何も?ラフィーユは……私と出かけるの……嫌だった?」
ラフィーユ「いや。違うが……。まぁ、いい。」
と言ってまた雑貨に目を向ける。
それなりにラフィーユも初めて見る物が新鮮で楽しんでいるみたい。
なら良かった……。
実はラフィーユと買い物するってちょっと憧れだったりしてたから。
:07/08/15 17:25 :SO903i :/J6qFa6E
#67 [向日葵]
そこへ何かの置物を持ったオウマ君が大はしゃぎでラフィーユと私の間に入って来た。
オウマ「ラフィーラフィー!なんかコレ面白ぇの!」
ラフィーユはオウマ君が持って来た置物の仕掛けに興味深々で、遊んでいた。
よし……今だっ!
蜜「私、ちょっとトイレ行ってくるからここで待っててね。」
そう言ってラフィーユが追いかけてこない内に私はトイレに行くフリをしながら陰でこっそり覗いた。
:07/08/15 17:37 :SO903i :/J6qFa6E
#68 [向日葵]
ラフィーユ「オウマ、あまりはしゃぐな、忠告したハズ。」
オウマ「まったく……。あのなラフィー、あんまりそーゆー意識に気向けてっと蜜ががっかりするだろ?」
あぁ……大丈夫かなぁ。
なんかちょっと険悪ムード……。
ラフィーユ「スマン…。」
反省した様にラフィーユは少しうつ向くと、オウマ君は優しく笑ってラフィーユの頭を撫でた。
オウマ「今から楽しんだらいいじゃねぇか!」
:07/08/15 17:42 :SO903i :/J6qFa6E
#69 [向日葵]
撫でられ終わってから、ラフィーユはオウマ君に微笑む。
あ!今!今いい雰囲気!
オウマ君言うんだ!
オウマ「そっれにしても蜜まだかな?もしかして……大かぁ?!」
んなっ!!!!
蜜「そんな訳ないでしょぉっ!!」
一斉に雑貨屋さんにいたお客さんの目が私に向けられる。
:07/08/15 17:47 :SO903i :/J6qFa6E
#70 [向日葵]
恥ずかしいついでに抗議の叫び。
蜜「オウマ君のバカ!!」
そう言って私は雑貨屋さんを大きな音を鳴らして出ていった。
ラフィーユ「ハァァ…。だから、言っただろ。」
そう言ってラフィーユは密を追いかけて行った。
・・・・・・・・・・・
あぁ!っもう私のバカ!
せっかくのいい雰囲気を自分で潰してどうすんのよぉっ!
でもだって!あれはオウマ君が悪いんであってー……。
:07/08/15 17:55 :SO903i :/J6qFa6E
#71 [向日葵]
雑貨屋さんから少し離れた所の花壇で座り、自己嫌悪に襲われて大きくため息をついた。
周りを見渡せば、友達や、家族連れ。……そして恋人同士。
私がいる所がどうやら待ち合わせ場所なのか、少し離れた隣には、さっきから鏡を何度も見直す女の子。
今からデートかぁ。
羨ましいなぁ……。
空を見上げる。
オウマ君が言った通り今日は雲一つ無い青空。
そりゃ、お出かけ日和な訳だよね……。
:07/08/15 18:04 :SO903i :/J6qFa6E
#72 [向日葵]
下を向くと、遥かに前より長くなった髪の毛が垂れてきた。
もうすぐ……3年生。
そして卒業。
蜜「あぁ…。やだなぁ。」
進路決めなくちゃいけない。
まだ自分のなりたい物なんか決めてないし……。
そしてやっぱり考えてしまう…。あの人が、帰ってくるかどうか……。
蜜「帰ってきたら……したたか殴ってやる!」
あのきっれぇぇぇな顔が腫れあがるまでしたたか殴って、一生分の馬鹿って言葉をお見舞いしてやる!
:07/08/15 18:11 :SO903i :/J6qFa6E
#73 [向日葵]
でも叩いてる途中できっと手を止められて言うんだろうな。
『俺の顔に傷をつけてどうする気だお前!』
あり得なくない言葉と、その言葉を安々と思い出せる自分が、なんだか笑えた……。
手に滴が落ちる。
あーぁ……また約束破っちゃったよ。
思い出さなきゃいいのに……。
ホント私は……
『馬鹿だ。』
懐かしさすら覚えるその声が、とても恋しかった。
:07/08/15 18:17 :SO903i :/J6qFa6E
#74 [向日葵]
名前をギリギリで出さないのは、なんとかこの約束だけでも守ろうと言う意地だ。
涙を拭いてると
ポン。
肩に手を置かれた。
蜜「あ、ラフィー」
「ねぇ君、さっきからここにいるよね?」
人生初のナンパ。
直ぐに分かった。
蜜「……失礼します。」
そこから去ろうとしたら、腕を掴まれた。
:07/08/15 18:21 :SO903i :/J6qFa6E
#75 [向日葵]
「待ってよ。もしかして誰か待ってるとか?」
―――ドクン
うるさい…。
「その割に全然来ないよねー。もしかしてすっぽかし?」
うるさい……。なんでナンパしてるアンタなんかに、そんな事言われなきゃなんないのよ。
「だとしたら悲しー(笑)君、忘れられてるじゃん。」
――――っ!
「それなら俺と一緒に…グアッ!!」
:07/08/16 02:09 :SO903i :xef4BwKY
#76 [向日葵]
奇声と共に手が離れたかと思うと、ナンパ男と私の間にラフィーユが立っていた。
男の状態から言ってラフィーユに殴られたらしい。
ラフィーユ「失せろ、馬鹿。」
「なんだとこのアマ…!」
反撃しようとした男の胸ぐらを先に掴み、細い腕からでは考えられない力で男をそのまま持ち上げた。
ラフィーユ「もう一度、言う。失せろ。」
「わ…っわかった……から、離っせ……!」
:07/08/16 02:13 :SO903i :xef4BwKY
#77 [向日葵]
それを聞いたラフィーユは男を雑に降ろす。
そのせいで男は尻餅をついてしまった。
そしてバツが悪そうにその場を去って行った。
ラフィーユ「蜜、平気?」
蜜「あ、ありがとう……。」
ラフィーユはそっと手を繋ぐと、多分オウマ君がいるであろう所に連れて行ってくれる。
さっきの騒ぎがあって、注目の数が倍になってしまった。
ラフィーユ「さっき、オウマ、すまなかった。」
:07/08/16 02:17 :SO903i :xef4BwKY
#78 [向日葵]
蜜「そんな。別にいいよ……。」
するとラフィーユがギュッと手に力をいれた。
女の子同士で手を繋ぐなんて、お母さんおばあちゃん以外で初めてだった。
ラフィーユ「大丈夫。帰ってくる。心配、ない……。」
優しく笑って告げてくれるラフィーユ。
もしかしてさっき殴ったのは私が傷付いたと思ったからかな?
それでも、ラフィーユが来てくれて良かった……。
蜜「ありがとう……。」
:07/08/16 02:20 :SO903i :xef4BwKY
#79 [向日葵]
私も笑って、二人仲良くオウマ君が待ってる場所まで行った。
・・・・・・・・・・・・・・・
オウマ「ホンットごめん!!」
ある公園のベンチで私は腰かけている。
その前でオウマ君は顔の前で両手を合わして謝ってきた。
蜜「もう、いいって!」
オウマ「でも、俺が余計な事言わなきゃ密も嫌な思いしなくてすんだのに……。」
シュンとした姿はまるで怒られた子犬。
ちょっと可愛らしい。
:07/08/16 02:24 :SO903i :xef4BwKY
#80 [向日葵]
>>79訂正
細かい間違いが……
×密
○蜜
――――
――――
蜜「もういいから。」
今はラフィーユがいない。
私がいない間に告白はないだろうけど、いささかオウマ君は間が悪いと言うか空気読めないと言うか……。
なのでもしかするかもしれないってことで、聞いてみようとしたら、先にオウマ君が口を開いた。
:07/08/16 02:27 :SO903i :xef4BwKY
#81 [向日葵]
オウマ「俺、ラフィーにいうのまた今度にする!」
蜜「へー…。…………えっぇ?!」
オウマ君はニカッと笑うと上着のポケットに手を入れたまんま私の隣に座った。
オウマ「今、蜜の護衛って言う指名がある限り、きっとラフィーは気持ちには答えてくれない。自分よりも与えられた事こなすのを最優先しちゃう奴だしね!」
私の……せい……。
うつ向いて、申し訳なう気持ちで一杯になっていると、オウマ君は私の頭をクシャクシャ撫でた。
:07/08/16 02:32 :SO903i :xef4BwKY
#82 [向日葵]
オウマ「もちろん蜜のせいじゃないって!ラフィーがそーゆー性分なだけ!だから良いんだ!」
苦笑してオウマ君を見ると、オウマ君はまだにこにこしていた。
すると、口元に笑みを残したまま、目が真剣になった。
オウマ「それに……蜜だって、目と鼻の先に恋人がいちゃあ、辛いだろ……?」
私は目を軽く見開いた。
蜜「……。まったく…あの人にしても、オウマ君やラフィーユにしても、優しすぎますよ貴方達は!」
:07/08/16 02:36 :SO903i :xef4BwKY
#83 [向日葵]
オウマ君はへへっ!と笑って「でも」と続けた。
オウマ「ラフィーが側にいてくれるだけで、ラフィーも側にいたいと感じてくれているなら、それだけで……いいやって。今はそう思う!」
私は眩しい彼の笑顔を受けながら微笑んだ。
蜜「そうですか……。」
オウマ「うんっ!」
すると、ラフィーユが私に買ってきてくれたジュースを持って帰ってきた。
ラフィーユ「蜜、はい。」
蜜「うん。ありがとう。」
:07/08/16 02:40 :SO903i :xef4BwKY
#84 [向日葵]
温かいコーヒーはとっても美味しくて、少し冷えた体の芯を温かくしてくれた。
あっという間に掌サイズのコーヒーを飲み終えた私。
蜜「ちょっと捨ててくるよ。」
ラフィーユ「なら私、行く。」
蜜「これくらい行きます。二人共休んでていいから。」
そして私はその場を少し離れてゴミ箱へと向かった。
・・・・・・・・・・・・・・・
オウマ「ラフィー…。今日、ごめんな。」
:07/08/16 02:43 :SO903i :xef4BwKY
#85 [向日葵]
ラフィーユはオウマの隣に座ると、一息つく。
ラフィーユ「まったくだ。だから言った。はしゃぐなと。」
オウマはまた子犬の様に小さくなる。
ラフィーユはそんなのを容赦せずまた言葉を被せる。
ラフィーユ「大体、お前は落ち着きない。遊び、すぐ熱中。だから悪い。今日も蜜、何も無い、良かった。」
それを聞き、オウマは更に小さくなり落ち込む。
このままじゃ、ラフィーユに嫌われてしまう……。
オウマは思った。
:07/08/16 02:49 :SO903i :xef4BwKY
#86 [向日葵]
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今日はここまでにします
:07/08/16 02:50 :SO903i :xef4BwKY
#87 [向日葵]
オウマ「ラフィー俺!」
ラフィーユ「でも。」
ラフィーユはオウマの言葉を遮る。
そして目を細めて優しく微笑んだ。
ラフィーユ「私、オウマの側、いたい。駄目か?」
オウマの時間が止まってしまった。
まさかラフィーユが自分にこんな事を言うだなんて思っても見なかった。
ラフィーユ「オウマ…?」
呼びかけられて、オウマの時間が再び動き出した。
:07/08/18 03:04 :SO903i :bITymfKA
#88 [向日葵]
オウマ「ラフィーは……それでいい?」
ラフィーユ「…………。オウマ、嫌か?」
ずっと……特別な気持ちが欲しくて。
でもそれは容易に手に入るものじゃなくて……。
それでも側にいてくれると言うのならば……。
オウマ「嫌な訳……ないだろ!!めちゃくちゃ嬉しい!!」
ニカッとラフィーユに笑いかけると、ラフィーユもホッとして顔が緩んだ。
ラフィーユ「そうか……。」
:07/08/18 03:08 :SO903i :bITymfKA
#89 [向日葵]
それでも側にいてくれると言うのならば…………
ずっと側にいてくれるだけで、十分だと思った。
・・・・・・・・・・・・・・・
なぁんだ。
蜜「結局、私がいなかった方が良かったみたい。」
ゴミ箱に空き缶を捨てに行って帰ってきた私は、植木に隠れて二人を見ていた。
オウマ君、嬉しそう。
ラフィーユも……。
……。もしかして。
ラフィーユは気づいてないのかもしれない。
:07/08/18 03:11 :SO903i :bITymfKA
#90 [向日葵]
自分の気持ちが、“恋”だとは分かってないのかもしれない……。
蜜「でなきゃあんな表情見せないよね……。」
そういえば、前に言ってた。
ラフィーユ[同じ事、言う。]
私がラフィーユに自分の話し方が変だろう?と問われた時だ。
あの時のラフィーユは、目が優しさで揺らいでいて、声音もなんだか愛しさで満ちていた気がする。
そっかぁ……ラフィーユ、自分には鈍感なんだね……。
:07/08/18 03:15 :SO903i :bITymfKA
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