―温―
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#341 [向日葵]
「自分自身に約束したの。静流がもしも私を好きになる様なことがあればこの家を出て行くって。」

信じられないと言った風に眉を寄せ、香月さんは私を見つめる。
それでも私は続けた。

「私が来てしまったせいで、今の彼女さんの幸せを奪うことがあるなら、私は自分が許せない。私は…………必要以上の幸せを貰うのは苦しい。」

そんな権利すら……きっと無いのだから……。

「手、離して。」

一瞬力が入ったけど、直ぐに手を解放してくれた。
そして私はまた胃に流し込む。

⏰:07/09/14 02:46 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#342 [向日葵]
あと三口くらい。

自分でも短時間でよくここまで頑張ったと思う。

すると、私の三口分を手で一掴みして、香月さんが食べてしまった。

「もう気分悪くならなくていいだろ?」

ニヤッと笑いながら口元の生クリームを指で取って舐める。

私は「そうね。」とだけ言って着替えを持ってシャワーを浴びに行った。

シャンプーのいい匂いで包まれるかと思ったけど、どこか自分が生クリーム臭い気がしてならなかった。

⏰:07/09/14 02:50 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#343 [向日葵]
シャワーを終えて、歯磨きをし、部屋で寝ようとドアノブに手をかけたけどまた引っ込めた。

今日はここで寝る気分じゃない。

リビングに向かうと、ケーキが無くなった箱を香月さんが処理していた。

私は黙ってソファーに座る。

「もう私寝るから帰っていいわよ。」

「んじゃ俺も泊まるわ!」

と言いながら私の隣に座った。
何故と言う気持ちが隠せない顔で香月さんを見ていると、頭を持たれて強制的に膝枕をしてくれた。

⏰:07/09/14 02:55 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#344 [向日葵]
「ハイ、ね〜むれ〜。」

「子守唄歌ってんじゃないわよ!何で私が貴方の膝枕で寝なきゃいけないのよ!ってか帰りなさいよ!」

「今帰っちゃったら、また君泣くんじゃない?」

頭を撫でられながら言われた。
そんな事ないって否定したかった。
でも出来なかった。

「膝枕されてあげてもいいけど私の寝顔見るのだけはやめて。」

「りょーかい。」

言い方が軽かったんでハッタリをかましてるんじゃないかと目を動かすと、口に笑みを残したまま目を瞑っていた。

⏰:07/09/14 03:00 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#345 [向日葵]
そこでようやく私は目を瞑った。

外は、相変わらず雨だ。

*****************

――――――――……

「ん、んー……。あれ?」

狭いベッドに寄り添って寝てた事に気づいた静流は、隣に寝ている双葉を起こさないようにそっとベッドを出た。

カーテンを開ければ夜明け前。
そろそろ帰ろう。近所の目が光ってない今がチャンスだ。

「……ん。……静流?」

「ゴメン。起こした?双葉、俺帰るな。」

⏰:07/09/14 03:04 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#346 [向日葵]
「そっか……。」

双葉は静流の隣に来ると、キュッと抱きついた。

それを見て静流は双葉をからかう。

「なぁーに双葉さん。甘えてんの?」

「ウン。ダメ?」

素直な双葉に穏やかな笑みを返して、静流も双葉を抱き締めた。

「また電話すんね。」

「うん。待ってる。」

そう言葉を交した後、軽く唇を触れて、静流は双葉宅から出て行った。

⏰:07/09/14 03:08 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#347 [向日葵]
帰る時には雨が小雨になっていたので、カバンで雨を防ぐ事なくなんなく帰れた。

実は双葉宅から静流宅までは歩いて30分くらい。

きっと今帰ったら紅葉びっくりするだろうなと想像して、誰もいない道で静流は笑った。

そして自分の家が見えてきた。
鍵を開けて、誰も起こさないように静かにドアを開ける。

心境は寝起きドッキリの気分だ。

「ただーいまー……。」

⏰:07/09/14 03:12 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#348 [向日葵]
後ろ手にドアを出来るだけ音を立てないように閉めた。

靴を揃えて自分の部屋に向かおうと足を進めかけた時だった。

ふと違和感を感じた。
その違和感を感じたのは、さきほどの玄関。

戻って見ると見慣れない靴が……。

……父さんのか?

疑問を抱いたまま二階へ。
あ、寝る前に何か飲もう。そう思いリビングへ足を運んだ。

そして……入口の前で止まる。

⏰:07/09/14 03:17 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#349 [向日葵]
明らかに、父さんでも、紅葉でもない影がそこにはあった。

もしかして……

頭をよぎった人物にまさかと投げかけながら、静流はリビングの電気を点けた。

パチッ

*******************

眩し!

暗闇からいきなりの光は、まだ眠りが浅い私を目覚めさすのには十分だった。

香月さんが点けた?
いやでも自分の頭の下にある物は香月さんのだ。

⏰:07/09/14 03:20 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#350 [向日葵]
香月さんを見ると、香月さんも目を覚ましたらしいのか目をショボショボさせていた。

あ、もしかして源さん?

人物を確認する為に、私は体を起こして電気を点けた本人を発見する。

「……?静流?」

静流は何かに驚いている。多分香月さんだろう。

ソファーから離れて、静流の元へ行く途中時間を確認した。

―――まだ五時……。

「こんな時間にどうしたの?」

⏰:07/09/14 03:24 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


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