―温―
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#611 [向日葵]
「情けな……。」
自分はどうして、いつも気づくのがこうも遅いんだろうか。
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夕方になり、海に太陽が沈んで行くのを砂浜で見ていた。
砂浜はゴミが全然なく、とても綺麗だった為普通に座った。
あぁ……やっと一日が終わった。
なんだか長く感じた。
きっと朝早くから動いてるせいだろう。
意味もなく、砂を掴んでサラサラと落とすのを何回も繰り返した。
:07/10/07 20:23 :SO903i :vgFsuTWk
#612 [向日葵]
こんな風にサラサラになって、どこかへ飛んでいけたなら、私は何に気負う事もなく生きていけただろうに……。
どこで歯車がズレてしまったのだろう。
「く―――れは―――!」
どこからか私を呼ぶ声が聞こえた。
すると私の部屋の窓から渚さんが身を乗り出して手を振っていた。
「ご飯だよ―――!」
私はそこまで叫ぶ元気などなかったから、立ち上がり、旅館の方へ行く事で肯定の意味を示した。
:07/10/07 20:29 :SO903i :vgFsuTWk
#613 [向日葵]
ご飯って言っても私の食べる物は限られていた。
いくら前に静流宛てのケーキを食べてのけたと言ってもまだ体調事態は完璧ではない。
寧ろあのあと2、3日胸やけと吐気に襲われたぐらいだ。
渚さんは私と一緒に食事をとった。
お世話と言うより友達の様な感じで。
「血液型は?」とか「好きな漫画は?」とか他愛のないことを話してきた。
私は短文でしか返せなかったけど、渚さんは満足してくれたのか話ははずんでいった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
布団を敷いて、寝る準備が出来た。
:07/10/08 01:17 :SO903i :vo1b5URk
#614 [向日葵]
これからこんな生活が続くのかと思うと、あまり悪くないと思った。
ベランダがわりとなる海があるのが救いなのかもしれない。
電気を消そうとしたら、また最初みたいに渚さんが布団を抱えてやって来た。
「え……。まさか……一緒に?」
「そうよっ!悪い?」
悪いって言うか……。私は出来れば一人でいたい。
「だってアンタ一人にしとくとなんだか危ないんだもん。」
まるで私の心を読んだみたいに渚さんはそう言った。
:07/10/08 01:21 :SO903i :vo1b5URk
#615 [向日葵]
電気を消して、私は布団へ潜りこんだ。
「アンタさ、悩みでもあるわけ?」
「なんで?」
「んー。暗いからっ。」
「ふーん。」
暗いっ……かぁ。
「若いくせに何うだうだ悩んでんだか!」
「……うるさい。黙って。」
これにはカチンと来てしまった。
何も知らないくせに、軽い事なんて言ってほしくない。
:07/10/08 01:24 :SO903i :vo1b5URk
#616 [向日葵]
黙ってと言ったのに、渚さんは黙ってはくれなかった。
「不幸面してても幸せなんかやって来ないんだよ。それとも不幸を同情して欲しい?」
「黙ってって言ってるの!日本語通じないのっっ?!」
シーンと部屋が静まりかえる。
部屋は月明かりで少し明るく、耳をすませば波の音がザザーって聞こえた。
「じゃあ最後にひとつ。」
そう言って渚さんは私に背を向けて寝る体勢にはいった。
:07/10/08 01:28 :SO903i :vo1b5URk
#617 [向日葵]
「私、ここんちの本当の娘じゃないから。」
……っ!
「え?!」
「おやすみー。」
驚く私をそのままにして、渚さんは一人で先に寝てしまった。
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父さんが帰ってきたのは次の日の夕方だった。
ヘロヘロになってる父さんを早く休ませてあげたいけど、その前にどうしても聞きたい事があった。
「紅葉ちゃんの事かな?」
:07/10/08 01:32 :SO903i :vo1b5URk
#618 [向日葵]
しばらく間を開けて俺は頷いた。
父さんはにこぉっと笑って俺の頭を撫でた。
「ゴメンネ。それは教えてあげられないんだ。」
「――っ!!どうして……っ!!」
「紅葉ちゃん。しばらく一人になりたいから旅に出たんだ。なのに静流君が早々と連れ戻しちゃったら、旅に出た意味がないでしょ?」
それは……そうだけど、と言葉を失う。
父さんはそんな俺の頭をポンポンと叩いてから部屋に入った。
:07/10/08 01:35 :SO903i :vo1b5URk
#619 [向日葵]
しばらく父さんの部屋前へ立たずんでいた。
やっぱり待つしかないのか?
俺には……何も出来ないんだな……。
フラリと歩きながら、俺は部屋へ戻って行った。
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渚さんの衝撃発言を聞いてから四日が経ったのだけれど、あれ以降、渚さんが姿を現さなくなった。
何故か自分のせいかと責任を感じていた私は、外に出ることもなく、ただ部屋をそわそわと動き回っていた。
「……って何で私が責任感じなきゃならないのよっ!」
:07/10/08 01:41 :SO903i :vo1b5URk
#620 [向日葵]
イライラしつつい独り言を言ってしまった。
もちろんこれに答えてくれる人などいなかった。
……そういえば。
机の上に置いてある携帯を見た。
新幹線に乗った時のまま。なので電源を入れておくのを忘れていた。
とりあえず何かあってはと思い、電源スイッチを長押しする。
画面が出て数秒後、メール受信のマークが入り、メール受信が行われた。
そしてメールの数に驚く。なんと15件。
何この数字……と思わずツッコミを入れる。
:07/10/08 01:49 :SO903i :vo1b5URk
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