.。改]恋愛成就の洞窟で。.
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#151 [桔妁]
「天弥殿は…変わったな。あの、繭殿のお陰だろうが……。余り、見失うなよ。」
それを聞いた天弥が、頼仲の兄の方を振り向いた時の眼は、冷えていた。とてもとても暗く…………。
年上の彼から見ても身震いをするような。
"これ"が天弥の職業なのだと、余計に実感させられる。
「……息を切らしていくな。負けるぞ。」
それだけを言うと、頼仲の兄は戻っていった。
:07/12/25 21:46 :SH903i :ooso8LXg
#152 [桔妁]
「………………。」
町の端の賭博場に急いだ。
まだ、間に合うか。奴らより先に繭を救わなくては。
過去世界での自分の苦しみを変えたのは繭だ。
いつの間にか、俺にとってかけがえのない人になった。
そう。とにかく、繭を…………
そんな気持ちとは裏腹に、冷酷な眼が言う。
:07/12/25 21:50 :SH903i :ooso8LXg
#153 [桔妁]
お前に幸せなどはない。
ささやかな自分の幸せさえも犠牲にしなくては、この職業はままならない。
でなければ、迷い死ぬ。
ただ頼まれた通りに、どんな奴らだろうと殺す…
それが"天弥"の新しい生き方であり、きれいごとに染まる事はもうできない、と。
過酷な生活の中で生き残るためには、リスクを背負わなくてはならないのだ、と。
:07/12/25 21:55 :SH903i :ooso8LXg
#154 [桔妁]
生活のために、ささいな幸せを、明け渡したのだ。
父も母も兄弟も友達も諦めた。
もう、自分が生きる事に全てを捧げようとした。
"神隠し"。
神がそう自分を定めたのは何故だろう。なぜ自分が。
通常の居るべき次元から離されて、そこに生きていたという跡を消された。
なら、ここで作ろう。自分は此処に居たのだと。
:07/12/25 22:03 :SH903i :ooso8LXg
#155 [桔妁]
たしかに自分は存在していたと、たくさんの魂にしらしめる。
間違いだ、分かっているのに。
過去に来た自分、此処に居る自分を認められない。
もはや自分が何なのかと、わからない。
だから、そうするしかない。
例え、嫌われても、かけがえのない者の前で血が舞おうとも。
:07/12/25 22:09 :SH903i :ooso8LXg
#156 [桔妁]
―――――
――
―
「……?」
ざわざわと、周りがうるさい。これが目が覚めた時の印象だ。
そして、暗い部屋のひんやりとした土の上に座っているような感覚で、なおかつ腕は縛られていた。
「なんでこんな…確か…」
そう、この場は間違いなく、天弥が読んだ場所である。
:07/12/25 22:40 :SH903i :ooso8LXg
#157 [桔妁]
「ナギさん……」
そうだ。ナギさんの小屋に入ったら…
意識がなくなったんだ…。
(腕が拘束されてるのは気分悪いなぁ…。
ていうかまさか……ナギさんが私を…?)
過去に来たんだから、ある程度の変な出来事は想定していたが…
:07/12/25 22:47 :SH903i :ooso8LXg
#158 [桔妁]
まさか、絶対いい人だと思ってた人がこんなことを……
っていうか結んで何しようとしてるの!?
繭が余裕をこいてめくるめく妄想をしていると、左側が明るくなった。
扉が開いたようだ。
:07/12/25 22:51 :SH903i :ooso8LXg
#159 [桔妁]
「目が、覚めたようだね?」
一瞬眩しくて分からなかったが、確かに早…じゃなくて、ナギさんだった。
「ナギさん、あのこれ…」
聞こうとした瞬間だった。
ナギさんの両脇から二人の男が現れた。
「出せ。」
二人の男に命じたナギさんは、一足先に部屋を出た。
:07/12/25 22:55 :SH903i :ooso8LXg
#160 [桔妁]
一抹の不安を感じずには……?
いいえ一抹なんて、そんな小さくない。
本能が、第六感が…?
分からないけれど。
私からは、汗が一滴垂れた。…じめじめした涼しい空間なのに……。
:07/12/25 22:58 :SH903i :ooso8LXg
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