.。改]恋愛成就の洞窟で。.
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#161 [桔妁]
部屋の外も、薄暗い部屋だった。…言うなれば地下室。
「今日、皆に集まっていただいたのは他でもない。」
二人の男に取り押さえられていた私には、いつの間にか猿轡がされていた。
つまり何も喋れず、何事かと聞く事もできない。
そのうちに、上擦った声のナギさんが話し始める。
「今日は、私自らが出向いて会得した代物だ。」
(何……?)
二人の男たちを見ると、ニヤッと笑っている。
:07/12/26 22:44 :SH903i :TpUAuREM
#162 [桔妁]
「さぁ、大判三枚との交換だ!」
(…大判三枚……?)
皆、一様に息を呑むのが聞こえた。
今まで意識に止めなかったが、部屋には所狭しと目つきの悪そうな男が居る。
(どういう、こと……)
拘束されて、訳のわからない所に連れられて、あやしいおじさん達が居るのだ。
いいところではないだろう。
:07/12/26 23:02 :SH903i :TpUAuREM
#163 [桔妁]
「せめて大判一枚にしておくれよ。高すぎだろうね。」
「いくらなんでも三枚は無理じゃろうね、遊女よりもお高いだろう。」
しばらく静かだった空間がざわめきだした。
と、同時に繭は状況も掴めてきた。
(売られようとしてる?)
そ、そんなの!冗談じゃないっ!!
繭は急にテンパり始めた。ものすごく、あがいた。
:07/12/26 23:07 :SH903i :TpUAuREM
#164 [桔妁]
「……ほう…あの女、まだ動く元気があると…。不良品だな…?」
ひとりの男が呟いた気がする。
と、同時に周りが値下げコールをしてきているではないか。
「ええい!仕方のない!!…大判一枚、小番三枚で手を打とう!!」
(は!!??ななナギさん!?)
:07/12/26 23:10 :SH903i :TpUAuREM
#165 [桔妁]
私が驚く間に、三人の男が前に出た。
…私を買おうとする奴か……。
「ほほう…久しい顔ぶれだな。」
ナギさんは三人を目下に見ながら言っていた。
ああ、こんな訳のわからない連中に売られてしまうんだ…。
さっき、天弥は行くなって言ってたっけ…。言う事を聞けばよかった……。
:07/12/26 23:15 :SH903i :TpUAuREM
#166 [桔妁]
今更になり、後悔が頭中を駆け巡った。
涙も出た。
甘く見た自分が馬鹿だったなと…。今更では遅いとも。
(天弥、呆れてるだろうな。…俺が折角忠告したのによー、とか言って……)
と、悟り始めた時であった。
:07/12/26 23:20 :SH903i :TpUAuREM
#167 [桔妁]
部屋の奥…(否、恐らく入口部分だろう)から、火の手が上がった。
「な、なんだ……!!」
ナギさんも想定外らしく、慌てふためいている。
そして入口の男達から、じわじわと焼かれていく。
逃げる者も居ない。
入口も出口も、あそこのみなのだということだろうか…。
「だ、誰だ!?役人か!?」
ナギさんがそう言う頃には、異臭が漂って、周りは火の海だった。
:07/12/26 23:24 :SH903i :TpUAuREM
#168 [桔妁]
煙が、苦しい…。
というより、意識がまた薄れていくような気持ちだ。
目がチカチカして、なおかつ室内温度が高くて、釜戸の中ってこんな感じなのか。
と、次の瞬間。
(………っ!?)
目の前に居たナギさんから、赤い液体――もとい、血が飛び散り、首が消えた…。
時代劇もびっくりである。そして後ろには人影。
こいつが切った事は明白だろう…。誰かは、判らないが。
:07/12/26 23:28 :SH903i :TpUAuREM
#169 [桔妁]
そして、びっしょびしょの布が被せられる。
………と、いう所から、繭の意識は途絶えた。
気付いた時には、見たことのない部屋に居た。
:07/12/26 23:31 :SH903i :TpUAuREM
#170 [桔妁]
「…頼仲ー。こい。」
ぼんやりした意識の中、知らない男の人が頼仲を呼んでいることだけが分かった。
しばらくすると、頼仲が私の顔を覗きこんでいる。
「繭!よかった!!生きとってくれた!!」
そんなことを、いいながら。
ああ、そっか…私――。
あの時の状況が私の中にあらわれた。
:07/12/26 23:35 :SH903i :TpUAuREM
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