.。改]恋愛成就の洞窟で。.
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#181 [桔妁]
「ど、どさくさに紛れて逃げるつもり!?」
まだ喚く繭の横を風のように走って通り抜ける天弥。
「ちょ…待って、よっ!」
間一髪、横を過ぎ去る前に繭は天弥の腕を掴んだ。
「……痛いぃッ!!!!」
ゴトン、と天弥の腕から木箱が落ちた。
:07/12/31 14:27 :SH903i :ioR6Y8w2
#182 [桔妁]
「あ、ごめ…」
掴まれているのとは逆の手で、地面に爪を立てる天弥。
その痛さを物語るには十分だった。
そこから繭が視線を掴まれた腕に移すと、そこに巻いてあった包帯(真っ白でなくて黄ばんでいる)が、ひらひらと外れていった。
「あ……」
天弥がそう一声、発したときにはもう、繭は見てしまっていた。
:07/12/31 14:35 :SH903i :ioR6Y8w2
#183 [桔妁]
痛々しい、火傷を負った腕を。
(火傷…?嘘、だって天弥は山菜を………)
はっと、繭は思い出した。
いつだったか。頼仲と遊んだ日の帰り道に、盗賊が死んでいて、その先に刀を持った天弥がいて。
そのときも、天弥は"山菜採り"と言っていた、と。
:07/12/31 14:40 :SH903i :ioR6Y8w2
#184 [桔妁]
(じゃあ、まさか…天弥は嘘をつくときに"山菜採り"って言うんだとしたら……)
では、この火傷はつまり…
「いや、や…違くて…な…」
苦笑いで弁解する天弥の事を、繭の目にはどう映っただろうか。
「ナギさんを斬ったのも、何人の人も焼いたのも、私を助けたのも……天弥、?」
否、多分、何も見えてはいないだろう。だって繭の目は、水で滲んでいたのだから。
:07/12/31 14:46 :SH903i :ioR6Y8w2
#185 [桔妁]
それを、後から見る影があった。
頼仲の兄だ。
繭が家に辿り着けるか心配で、こっそり後をつけていたのだ。
「……繭殿に、気付かれてしまいましたか…。繭殿がどう心変わりしてしまうか…。天弥殿、残念だったな…」
ぽつりとつぶやいた頼仲の兄は、町の方に向くと歩きだした。
後ろに感じる空気は、耐えられるようなものではなかった。
:07/12/31 15:04 :SH903i :ioR6Y8w2
#186 [桔妁]
―第5章―
――見えなくて、大きくて
抱えきれない大切なもの。―
.
:07/12/31 15:09 :SH903i :ioR6Y8w2
#187 [桔妁]
「…繭が、おかしいんだ!」
ここは頼仲の家である。
そこに押しかけたのは、天弥だ。
雪降る中を走って来た天弥はあまりに寒々しく見えて、
普段は家に上がっても挨拶ひとつしない頼仲の兄が、今回ばかりは手ぬぐいを差し出してくれた。
「…で、繭がどうしたのじゃ。」
:07/12/31 15:18 :SH903i :ioR6Y8w2
#188 [桔妁]
「繭、なんか…寝てないみたいで……。体調が悪そうで…」
本気で心配しているようであったが、頼仲の兄がぽそりと言った。
「それは、天弥殿が殺し屋だってばれたから、だろう。」
「え、なんで頼弦(ヨシツル)がそんなこと言えるんだ?」
天弥は膝を抱えて、そこに頭を入れた。「兄上と呼びなさい」という頼仲の兄の声は、天弥に遠く聞こえた。
(…やっぱり、ばれたらやべーよな……。)
頭の中は数日前から、繭の潤んだ目の像を鮮明に映し出す。
:07/12/31 15:34 :SH903i :ioR6Y8w2
#189 [桔妁]
「………」
「……………すまん…」
頼弦が謝るが、空気はよどんだままだ。
「…や、でも!あれじゃ、そらやが言っていた"くらすめす"?のときに簪渡したら、機嫌もよくなるじゃろ?」
「…クリスマス、な。…でも、頼仲の言うことも一理あるかもしれねーな…」
天弥の目に、生気が戻りつつあった。
:07/12/31 15:47 :SH903i :ioR6Y8w2
#190 [桔妁]
来年もよろしくお願いします!!
紅白は見てませんでしたが
白組が勝ちましたね!!
私はよゐこの無人島SPを
見ていました!笑
本当、来年はさらに成長を
遂げて、皆様に小説を
お送りしたいと思います!
では、残り少し!!よいお年を!!
:07/12/31 23:46 :SH903i :ioR6Y8w2
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