.。改]恋愛成就の洞窟で。.
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#192 [桔妁]
 


ただ一直線に、目指すのは崖の下へ――…。


降りしきる雪の寒さは、現代の北風よりも冷たく、身体に染みていった。

ひとつひとつの雪が、涙を流す言い訳となった。



だが、どの雪も繭の心にはかなわなかった。

⏰:08/01/01 02:18 📱:SH903i 🆔:a.l0GRvc


#193 [桔妁]
 

気が付けば、正面が壁…。

そう、崖の下だ。

繭は、崖を素手の拳でなんども殴るようにしていた。

ここ数日、繭はあることを思っていた。


(天弥は、ここで私を救ってくれて…ご飯もくれたし、現代同士で仲良くしてくれた……。

野蛮な連中とかエロ親父からもかばってくれてた…

⏰:08/01/01 02:24 📱:SH903i 🆔:a.l0GRvc


#194 [桔妁]
 
ただ、まさか人を殺すような人だとは思わなかった。

性悪なんだろうけど優しくて、どっか幼稚だけど暖かくて大きくて、そんな天弥が…。)

「……っ。…――帰してよぉ―。…いやだよいやだよ…私は、私は…」

そこへ、走って追い掛けた天弥の姿が崖の前に現れたが、繭の目に映る事はなく。

「いやだよ…。時代に流されて、人殺しになりさがるのは、嫌だよ……っ…。私も、変わる前に、帰してよ………!!」

天弥は、その場から動けなかった。

⏰:08/01/01 02:30 📱:SH903i 🆔:a.l0GRvc


#195 [桔妁]
 
気が付いたときに繭は、頼仲の家に居た。

意識を失った訳ではなく、うっすらしか記憶にないだけで、声をあげて泣いていたようだ。

しかも家に頼仲は居なく、その兄だったのだから迷惑極まりないだろう。


「……あ、あの…なんかすみませんでした…頼弦さん…」

落ち着いた時の繭は、隣に居た頼弦に深く謝った。

⏰:08/01/01 19:43 📱:SH903i 🆔:a.l0GRvc


#196 [桔妁]
 
「いや、いい…。だが、一言言わせてもらう…いいか?」

しゃくりがおさまり、自分の息遣いしか聞こえないことが少し恥ずかしいと思いながら、繭は頼弦の方を向き、頷いた。

「奴の…天弥殿の気持ちを、分かってやってはくれぬか…?

天弥殿は、生活のため、仕方なく…人斬りをしていたんだ。身寄りもなく、だからどうしようもなく…

幸せと引き換えにな…。」

⏰:08/01/02 00:04 📱:SH903i 🆔:V3Yv/f4g


#197 [桔妁]
 
隙間風が余計に寂しさを煽った。

繭には、その意味がよくわからなかった。


「仕方ない……。…天弥殿―。」

頼弦は扉に向けて天弥を呼んだ。

すると、外から雪を被った天弥が現れた。

それと同時に少し吹雪が入って来て、その寒さが伝わった。

⏰:08/01/02 17:02 📱:SH903i 🆔:V3Yv/f4g


#198 [桔妁]
 
「繭、っ…」

天弥は、繭の方に駆け寄った。


「俺、もう帰れないと思ったから……だからヤケになってた。

でも、もう…繭が来てからは…やめようと思って、上の方に言いにいったんだ…。

だけど、最後に極悪事件を任されて…。」

⏰:08/01/02 17:08 📱:SH903i 🆔:V3Yv/f4g


#199 [桔妁]
 
「言い訳は、いらない!!」

繭は、一生懸命に話す天弥を蹴飛ばした。

と、天弥の胸元から布の包みが落ちた。――簪だ。

繭は静かに、胸元から落ちた物を拾った。

「あ、ごめ……これ、何―…?」


いつの間にか、頼弦は部屋から居なくなっていた。

⏰:08/01/02 22:08 📱:SH903i 🆔:☆☆☆


#200 [桔妁]
 
「…や、これは、その……」

今出すべきではないことは承知であるそれは、繭の手へと渡り、布を開けられて、中身が見えてしまった。

「簪、何するつもりで…」

「いや、今日、現代でいうとクリスマスで…で…」

天弥は下を向いたまま答えた。

「つまり、クリプレ?……天弥が買ったの?」

⏰:08/01/02 22:13 📱:SH903i 🆔:☆☆☆


#201 [桔妁]
 
「あ、あぁ…うん。」

繭の空気が明るくなりつつありそうだと、天弥は顔を上げた、が。

「人殺しの、給料?」


それはそれは綺麗な簪であったのだ。

それが、天弥の給料だとしたら…つまり人殺しをした分の給料ということだ。

「受け取れない…」

⏰:08/01/02 22:16 📱:SH903i 🆔:☆☆☆


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