.。改]恋愛成就の洞窟で。.
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#228 [桔妁]
繭は、耳を、天弥を疑った。
「頼仲くん…?え、ま、まさか…」
冗談っぽく笑うと、視界が暗闇に慣れた。
雪の上に、確かに見たのは…
本当に頼仲くんだった。
:08/01/05 16:11 :SH903i :☆☆☆
#229 [桔妁]
「え、な、なんで…」
一日の朝方、確かに気持ちがよさそうに眠る頼仲を見たのに。
「ただ、酔っ払いに絡まれたんだよ…母親の、墓参りの途中だと、思う…。………ごめん、ごめん頼仲…」
天弥が頼仲を抱きかかえて謝るとき、繭は顔を反らさずにはいられなかった。
:08/01/05 17:10 :SH903i :☆☆☆
#230 [桔妁]
――――
―
それから天弥は動かない頼仲を背負い、繭と山を下りた。
時は既に深夜に回っていたので余計に寒く、指はかじかんで、足は霜焼けで酷かった。
でも天弥はそんな事など頭中に無いだろう。
ただ、悔しさだけが腹を巡っていた。
繭は何も、励ましも、ましては話し掛ける事すらも出来なかった。
:08/01/05 22:55 :SH903i :☆☆☆
#231 [桔妁]
天弥の涙は、渇いていた。
繭の涙は、出なかった。出す事さえも出来なかった。
ただ、隣で天弥におぶられている頼仲くんは、本当に眠っているようだった。
天弥の歩くリズムの振動が息遣いによく似ていたからだろうか。
二人は、何の会話も交わさずに町へと着いた。
:08/01/05 23:01 :SH903i :☆☆☆
#232 [桔妁]
――――
―
頼仲の家に戻ったけれど頼弦は寝ていて、繭は起こすのが嫌だった。
それでも天弥が繭に起こせと言うので、泣きそうなのを堪えながら頼弦を起こした。
「――…繭殿??」
寝ていたらいきなり女が目の前に居たとなればびっくりだろう。
いかにも何も知りませんという顔の頼弦を見ると、繭はさらに心が痛んだ。
:08/01/06 10:42 :SH903i :☆☆☆
#233 [桔妁]
「よ、頼弦さ-…ん……」
とうとう繭は泣き出してしまった。
「どうした、?」
繭の涙にただ事ではないと感じたが、また大形、天弥から逃げて来たのだろうというところだった。
「繭、お前……」
繭の泣き声を聞き、天弥が頼弦の部屋に来た。
頼弦はさらに目を丸くして二人を見た。
「二人共、こんな夜にどうした?」
:08/01/06 10:47 :SH903i :☆☆☆
#234 [桔妁]
頼弦は部屋に明かりを燈した。
そこで頼弦の目に浮かび上がるのは、血に服を濡らした天弥と、泣きじゃくる繭だった。
これはやはり、ただ事ではないと感じた頼弦は言った。
「…今、父上が帰ってきているから話しを聞こう。……頼仲も呼ぶか?」
正月休みだから、父親が出稼ぎから帰っているのだ。
「…頼仲の兄上……そ、そのな…頼仲なんだけど、さ…」
:08/01/07 13:04 :SH903i :☆☆☆
#235 [桔妁]
「ん?」
「頼仲…死ん…死んだ…」
頼弦は、天弥の言葉に目を丸める。
その、天弥の服に付く赤が頼仲のものかと言った。
「いや、数人の奴に、喧嘩を売られてたんだと、思う…」
天弥が頼弦の前で土下座をした。
繭も、頼弦もびっくりだ。
:08/01/07 13:09 :SH903i :☆☆☆
#236 [桔妁]
「俺が行った時にはまだ、息があったんです!!…喋って、俺に、
"人は殺しちゃ駄目じゃ、酒に酔ってるだけじゃ、こ奴らは何も悪い事はない"
そうやって、言ってたんです。でも、
頼仲を救うためには、酔っ払いを消す他なかった…
でも、皆居なくなったとき…頼仲の息は、もう……
すいません…!!!すいません、すいません!!」
:08/01/07 13:14 :SH903i :☆☆☆
#237 [桔妁]
天弥の話を聞く繭は、はっと気がついた。
足に当たった、あの小刀を。
あれは確か、頼仲のだ。
いつか一緒に遊んだ時、変な侍に向けていた。
繭がいるから、無駄な殺生はしないよ
そのときの、小刀だ。
そして気がついた。
頼仲は、本当に無駄な殺生はしない人なんだ。
:08/01/07 13:18 :SH903i :☆☆☆
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