.。改]恋愛成就の洞窟で。.
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#262 [桔妁]
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―――
寒い――…
この言葉が切実に伝わるかは定かではない。が、実際に繭には辛いものであった。
囲炉裏はあるが隙間風は体の部分を冷やして、それがまた辛いものであった。
春始めになったといつか告げていたが、それはつかの間の晴れ続きだったに過ぎないようだった。
「天弥は旅人と村長の所だしな…うう、寒い…」
:08/01/26 21:13 :SH903i :☆☆☆
#263 [桔妁]
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――――
「村長――…」
「おっさん…」
旅人と天弥は村長を丸い目で見た。
「…ま、昔の話だがな…」
村長はキセルを吹かしながら七輪を突いている。
「兄さん!!凄い話じゃないですか!!!!」
:08/01/27 22:17 :SH903i :☆☆☆
#264 [桔妁]
天弥は異世界への思いを深く馳せていた。
「そうだな…。村長、ありがとう!!」
二人はお辞儀をして家を出た。外に出ると雪が降ってきそうな風が吹いていた。
「風強い…早く帰って暖まりましょう、兄さん!」
天弥は親しみをこめ、旅人を兄さんと呼んでいた。
旅人は頷くと、天弥の手を引き走った。
:08/01/27 22:22 :SH903i :☆☆☆
#265 [桔妁]
手を握られた天弥は驚いた。旅人の手は冷たく華奢だったからだ。
(兄さん、寒いんだ…)
天弥はそんな風に思い、早く囲炉裏に当たらせてあげたくて、走るスピードをあげた。
「!?ちょ、天弥!!」
その早さに戸惑う旅人。
と、ふいに向かい風が吹いた。
:08/01/31 23:55 :SH903i :☆☆☆
#266 [桔妁]
ばさっ…と取れたのは旅人のかぶっていた笠である。
同時に、旅人の頭に束ねられていた長い黒髪が姿を現した。
切れ長の目も光を浴びていた。
そういえば旅人の頭、さらには表情までもを見た事がない天弥であるが、驚いた。
まさか、まさか。
「え…に、兄さん……!」
どこからどこを見ても、旅人は女でしかなかった。
しかも、美人ではないか!
:08/02/01 11:33 :SH903i :☆☆☆
#267 [桔妁]
「!!!」
驚いた天弥は、何やら聞き取れない事を言い、走りさってしまった。
旅人は、ぽかんと天弥を見ていた。
「…いつ私が、男だと申したろうか…。」
笠を拾いかぶると、とぼとぼと天弥の家へ向かうのであった。
:08/02/01 11:39 :SH903i :☆☆☆
#268 [桔妁]
――
がらりと、扉が開き冷たい風とともに天弥が立っていた。
「ああ!天弥!!…本当、寒かったんだから…っ……どしたの?」
ぽかーんと、何か大切なものを抜かれたような顔をしている天弥が気になり、繭は言った。
「旅人兄さんが…美女に……兄さんがァアア」
この狭い空間を走って繭の前へと行き、天弥は叫んだ。
:08/02/01 11:43 :SH903i :☆☆☆
#269 [桔妁]
「…??旅人のお兄さんがどうかしたの?」
多少呆れ顔で見る繭に、天弥は少し気持ちを落ち着けたのか、囲炉裏の火に当たり始めた。
「いや、それが…あの人、兄さんじゃなくて…。」
何故か、もじもじしている天弥。と、そこに旅人が帰ってきた。
:08/02/01 23:25 :SH903i :☆☆☆
#270 [桔妁]
「む、天弥は帰ってたか…」
繭は旅人の方を見る。これと言って異変はない。
「あの…なんかでも天弥が変なんですけど……」
繭は客間を指さして苦笑いをする。
天弥はというと、先程扉が開いた時点で、"嘘だーーーァ"と叫んで自室である客間に隠れてしまっていた。
「いや、なんか私を男だと勘違いしていたらしくてな…」
:08/02/03 07:29 :SH903i :☆☆☆
#271 [桔妁]
旅人は笠を取って、髪を解いた。
そしてニッと笑う。
「改めて、私は東家 暁(トウヤ アキ)と言う者だ。」
切れ長の目、揺れる黒髪、白い肌、華奢な体………ああもう、いうならば美人という他にないということである。
「暁さん…ですか。でも、なんでこんな…洞窟なんか気にしてるんですか?」
:08/02/04 22:24 :SH903i :☆☆☆
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