.。改]恋愛成就の洞窟で。.
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#148 [桔妁]
その頃…息を切らした天弥は町中に居た。
天弥の脚力は、並外れていた。だが、さすがに馬に追い付く事は不可能で…
「くそ…見失った……」
町に入った所で、馬を見失った。
「なんで繭を……………ん?」
急に、後ろから気配を感じた。
「天弥殿!!!!」
それはひとりの侍格好をした男だった。そして、天弥のよく知る人物…
「頼仲の兄上…?」
:07/12/25 21:18 :SH903i :ooso8LXg
#149 [桔妁]
頼仲とは打って変わった真面目な人柄の彼は、いつも何かと力になってくれる。
「弟から聞いたよ。今日"奴ら"が動いたんだって…。」
「…頼仲が?」
呼吸を直しながら俺は天弥は聞く。
「まぁ、正確には遊郭のお雪の客が漏らした話だが……今晩、娘を売って一儲けするらしい。」
娘…いわずと知れた、繭だろう。
「有り難うな…」
:07/12/25 21:31 :SH903i :ooso8LXg
#150 [桔妁]
場所の目星はついていた。
繭に出会ってしばらくのとき、村に現れた不貞な奴らの処理任務についた。
そのときに突き止めた場所は、町の端にある賭博場の地下だ。
取引はそこで行われるに違いない。待ち伏せればいいだろう。
「…じゃあ、俺は行く。」
そう頼仲の兄に別れを告げようとすると、彼は言った。
:07/12/25 21:37 :SH903i :ooso8LXg
#151 [桔妁]
「天弥殿は…変わったな。あの、繭殿のお陰だろうが……。余り、見失うなよ。」
それを聞いた天弥が、頼仲の兄の方を振り向いた時の眼は、冷えていた。とてもとても暗く…………。
年上の彼から見ても身震いをするような。
"これ"が天弥の職業なのだと、余計に実感させられる。
「……息を切らしていくな。負けるぞ。」
それだけを言うと、頼仲の兄は戻っていった。
:07/12/25 21:46 :SH903i :ooso8LXg
#152 [桔妁]
「………………。」
町の端の賭博場に急いだ。
まだ、間に合うか。奴らより先に繭を救わなくては。
過去世界での自分の苦しみを変えたのは繭だ。
いつの間にか、俺にとってかけがえのない人になった。
そう。とにかく、繭を…………
そんな気持ちとは裏腹に、冷酷な眼が言う。
:07/12/25 21:50 :SH903i :ooso8LXg
#153 [桔妁]
お前に幸せなどはない。
ささやかな自分の幸せさえも犠牲にしなくては、この職業はままならない。
でなければ、迷い死ぬ。
ただ頼まれた通りに、どんな奴らだろうと殺す…
それが"天弥"の新しい生き方であり、きれいごとに染まる事はもうできない、と。
過酷な生活の中で生き残るためには、リスクを背負わなくてはならないのだ、と。
:07/12/25 21:55 :SH903i :ooso8LXg
#154 [桔妁]
生活のために、ささいな幸せを、明け渡したのだ。
父も母も兄弟も友達も諦めた。
もう、自分が生きる事に全てを捧げようとした。
"神隠し"。
神がそう自分を定めたのは何故だろう。なぜ自分が。
通常の居るべき次元から離されて、そこに生きていたという跡を消された。
なら、ここで作ろう。自分は此処に居たのだと。
:07/12/25 22:03 :SH903i :ooso8LXg
#155 [桔妁]
たしかに自分は存在していたと、たくさんの魂にしらしめる。
間違いだ、分かっているのに。
過去に来た自分、此処に居る自分を認められない。
もはや自分が何なのかと、わからない。
だから、そうするしかない。
例え、嫌われても、かけがえのない者の前で血が舞おうとも。
:07/12/25 22:09 :SH903i :ooso8LXg
#156 [桔妁]
―――――
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「……?」
ざわざわと、周りがうるさい。これが目が覚めた時の印象だ。
そして、暗い部屋のひんやりとした土の上に座っているような感覚で、なおかつ腕は縛られていた。
「なんでこんな…確か…」
そう、この場は間違いなく、天弥が読んだ場所である。
:07/12/25 22:40 :SH903i :ooso8LXg
#157 [桔妁]
「ナギさん……」
そうだ。ナギさんの小屋に入ったら…
意識がなくなったんだ…。
(腕が拘束されてるのは気分悪いなぁ…。
ていうかまさか……ナギさんが私を…?)
過去に来たんだから、ある程度の変な出来事は想定していたが…
:07/12/25 22:47 :SH903i :ooso8LXg
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