.。改]恋愛成就の洞窟で。.
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#218 [桔妁]
が、ひっつかられると中々嫌なものなので、思わず繭得意の蹴りが飛び出してしまった。
「………ぐへ…っ」
何かが出たような音がしたが、気持ちが良さそうに眠る姿を見て安心した。
と、頼弦さんが戻って来た。
:08/01/04 18:05 :SH903i :☆☆☆
#219 [桔妁]
「あ、外は寒かったんじゃないですか?」
繭は頼弦に柔らかい笑みを向けながら、ぬるくなった玄米茶を一気飲みした。
「や、寝正月だとあんまりだから、みんなを起こしに来たのだが…それ…」
「あひゃれ?」
頼弦が見たときには遅かった。
:08/01/04 18:11 :SH903i :☆☆☆
#220 [桔妁]
「そ、そりゃあ頼仲が飲んでた酒だぞ……」
酒好きの頼仲が持ってきた中でも、自分専用だと言いはっていた強い酒を一気飲みしてしまったのだ。
運の悪い事に、玄米茶の隣にあったので仕方ないといえば仕方ないが…
そうこうしている間に、繭は意識を手放してしまった。
「結局皆……寝正月か…」
頼弦は繭の飲んでいた玄米茶を飲み干し、自分は壁によりかかり、眠りについた。
:08/01/04 19:47 :SH903i :☆☆☆
#221 [桔妁]
次に繭が目覚めたのは、二日の夕方であった。
寝室で寝ているあたり、誰かが運んでくれたのだろう。
「頼弦さんかな…お礼言わなくっちゃ……」
と、半身を起こしたところで、家に人の気配がないことに気がついた。
戸が半分開いていて、居間の様子がわかった。
勿論、正月の後片付けはしてある居間は、誰も居なく、囲炉裏の火が寂しそうに瞬いていた。
:08/01/05 00:16 :SH903i :☆☆☆
#222 [桔妁]
居間に出ると、微かながらに白粉と香袋(多分お雪さんのだろう)の匂いが鼻をくすぐる。
「何か、あったのかな…」
とりあえず、天弥の部屋である客間を覗く。
やはり居ない。
そして、確かに部屋の奥に立て掛けてあった刀がなかった。
念のために部屋を見回したが、やはりない。…余計に、嫌な予感がした。
:08/01/05 00:21 :SH903i :☆☆☆
#223 [桔妁]
「……天弥…」
そのまま表に出て、宛も無く走った。ただ身体が進むままに走った。
気がつくと山に居た。
日はまだ冬で短く、もう西の地へと落ちていた。
東を見ると、暗闇が追い掛けて来ている。…星が、それこそ宝石のように輝いていた。
と、近くから金属が混じり合う、リアルな音が聞こえる。
:08/01/05 00:27 :SH903i :☆☆☆
#224 [桔妁]
少し近くまで歩みよると、カチンと足に何かが当たった。
「…ん?」
拾い上げればそれは、小刀。血も何もついていない、輝く小刀だった。
そして、暗くなりつつあった視界が慣れてきた頃と同時に、目線を金属音の方へ向けた時、繭はその場に固まった。
「……!!」
そこには、生臭い臭いを漂わせて、一人の男を後ろに庇い複数の人と戦う天弥の姿があった。
:08/01/05 01:22 :SH903i :☆☆☆
#225 [桔妁]
白い雪は多分、紅く染まっているんだろう。
庇われている人は動かない。
しばらく見ていると、一人が天弥にやられた。
それに恐れて、あとの人達は逃げて行った。
「………」
:08/01/05 13:39 :SH903i :☆☆☆
#226 [桔妁]
繭はすかさず駆け寄る。
そして、天弥の目の前まで行った。
頬を思いきり叩こうと思った。
けど、天弥は泣いていて叩く気は、何故か失せた。
「…どうしたの?」
天弥の涙は、自分の涙も誘った。
:08/01/05 13:48 :SH903i :☆☆☆
#227 [桔妁]
ふと、さっき庇われていた人の方に目が向いた。
天弥もそちらを向き、冷たい雪の上に、何の躊躇もなくしゃがんだ。
そして、庇われていた人からは息がもうないようで、ピクリとも動かない。
先程より暗いので、繭には誰かも解らない。
そこで、やっと天弥が口を開いた。
「…繭、これ、な…頼、仲…」
:08/01/05 16:07 :SH903i :☆☆☆
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