.。改]恋愛成就の洞窟で。.
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#268 [桔妁]
――
がらりと、扉が開き冷たい風とともに天弥が立っていた。
「ああ!天弥!!…本当、寒かったんだから…っ……どしたの?」
ぽかーんと、何か大切なものを抜かれたような顔をしている天弥が気になり、繭は言った。
「旅人兄さんが…美女に……兄さんがァアア」
この狭い空間を走って繭の前へと行き、天弥は叫んだ。
:08/02/01 11:43 :SH903i :☆☆☆
#269 [桔妁]
「…??旅人のお兄さんがどうかしたの?」
多少呆れ顔で見る繭に、天弥は少し気持ちを落ち着けたのか、囲炉裏の火に当たり始めた。
「いや、それが…あの人、兄さんじゃなくて…。」
何故か、もじもじしている天弥。と、そこに旅人が帰ってきた。
:08/02/01 23:25 :SH903i :☆☆☆
#270 [桔妁]
「む、天弥は帰ってたか…」
繭は旅人の方を見る。これと言って異変はない。
「あの…なんかでも天弥が変なんですけど……」
繭は客間を指さして苦笑いをする。
天弥はというと、先程扉が開いた時点で、"嘘だーーーァ"と叫んで自室である客間に隠れてしまっていた。
「いや、なんか私を男だと勘違いしていたらしくてな…」
:08/02/03 07:29 :SH903i :☆☆☆
#271 [桔妁]
旅人は笠を取って、髪を解いた。
そしてニッと笑う。
「改めて、私は東家 暁(トウヤ アキ)と言う者だ。」
切れ長の目、揺れる黒髪、白い肌、華奢な体………ああもう、いうならば美人という他にないということである。
「暁さん…ですか。でも、なんでこんな…洞窟なんか気にしてるんですか?」
:08/02/04 22:24 :SH903i :☆☆☆
#272 [桔妁]
こんなに綺麗な人なのだ。洞窟に恋するよりも、もっといい事があるだろうに。
「いや、私は旅人というか…書物におさめたくて来たのだが…。」
「そうなんですか…」
つまり、今の時代でいえば"駆け出しの作家"みたいな感じなのだろう。
すると旅人…もとい暁は立ち上がり、荷物を纏めた。
「天弥に伝えておいてくれ。…明日は寒いだろうから休んでくれと。」
:08/02/05 11:46 :SH903i :☆☆☆
#273 [桔妁]
返事をする前に旅人は去って行った。
しばらくすれば天弥が出て来た。
「…ああ、暁さんね、うん。」
何かを一人で納得している。その姿はまさに生気が抜けたっていう感じで、見てて笑えた。
「んでも、天弥、急にどうしたの?暁さんが女だから何だっていうの……。」
はぁ、と繭はため息をつく。
:08/02/05 11:51 :SH903i :☆☆☆
#274 [桔妁]
ため息をついたまま天弥の耳に、目を向けた。
赤い。赤いッ!!
そうか。と、繭はそこで全てを確信した。女の勘は鋭いものだ。
ことに、恋愛事となれば尚更である。
「そっかー、暁さんに恋しちゃったか♪」
:08/02/05 11:54 :SH903i :☆☆☆
#275 [桔妁]
天弥は瞬間に目を見開いた。ほんの冗談(でもないけど)だったのに面白い反応。
確かにあの容姿では、女の私でも緊張してしまう。
笠に隠れていて今まで分からなかったが、そうとうな美人だった。
それは天弥が惚れてしまうのも無理は無いな、と繭は胸の内で思ってから、自室にこもった。
少し、苛立って。
:08/02/09 15:34 :PC :1P02R/pA
#276 [桔妁]
―
――――
「部長ー。――吉原部長―!」
三年生の教室に、少し幼い声が響く。
吉原は教室の外から呼びかける柳園の方へ笑顔で向かった。
「部長、調べ終わりましたよ。」
そう言って柳園は資料を吉原に渡した。
:08/02/09 15:40 :PC :1P02R/pA
#277 [桔妁]
「おお!沢山調べたね。」
そう言いながら、束になった資料をパラパラと見る。
と、ある写真の付いているページで手を止めた。
「二人の人間が神隠しに遭った村か…。成程、古い家屋ばっかりだね…。」
:08/02/09 15:44 :PC :1P02R/pA
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