「純也」
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#400 [あぃみ]
「なんだよ、お前彼氏いたのか、知らなかった」

小さく笑った。
だけど、最後まで負けたくなかった。
ゲームオーバーは俺が勝つ。

「まぁ所詮俺はお前のこと金としてしか見てねぇし、これで終わりでいいんじゃねぇ?」


久しぶりに使ったこのセリフ。あいみに使うなんて考えもしなかった。
俺は、純粋にただあいみが好きになった。あいみを守りたいと思った。
一緒にいたいと思った。

⏰:09/05/12 09:23 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#401 [あぃみ]
「金…」

そうつぶやいたあいみは
更に目を赤くして
俺を睨みつけた。


「降りる!」

あいみは叫んだ。


まさか本気ではないだろう、こんな道路の真ん中で降りたら危ない事くらいはわかるだろう。

⏰:09/05/12 19:46 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#402 [あぃみ]
しかし次の瞬間、あいみは本当に車のドアを開けた。


「おま…まじ危ねーから」


俺が止めたのと、あいみが飛び降りたのはほぼ同時だった。

⏰:09/05/12 19:49 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#403 [あぃみ]
着地は転がって、立ち上がったあいみ。


一度こちらに振りむいた。
なぜだろう。
穏やかな目をしていた。


俺はそこに向かい無意識に叫んでいた。

「あいみーーー!」


そのあとすぐに大きなクラクションが聞こえて、
大きなトラックが爆音とともにあいみを吸い込んだ。


あいみが消えた。

⏰:09/05/12 19:54 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#404 [あぃみ]
かすかに聞こえた救急車の音。


ざわめきの声。


叫び声。


俺の知らない世界の映像を遠くから眺めているような感覚を失った俺がいた。


身体中がガタガタと奮え、
心臓が早過ぎて痛い。

⏰:09/05/12 20:03 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#405 [あぃみ]




いきなり携帯がなって、
俺は飛び跳ねた。


音のない空間に
携帯のメロディーだけが響いている。



白い壁。
白いソファー、
白い棚。



そして 玄関に用意された二つのスリッパ

⏰:09/05/12 20:14 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#406 [あぃみ]
俺は 何も考えることができないまま 新居でただひたすら、 流れ出てくる涙が終わるのを待っていた。


携帯はなり続けた。



「はい、」



俺は携帯を耳に当てた。

⏰:09/05/12 20:17 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#407 [あぃみ]
「もしもし?りんだよ、あんた今どこにいるの?」


りんに居場所を伝えると 10分もしないうちに現れた。


目の前に立つりんは
化粧をしておらず、目の回りを赤く腫れさせていた。


「純也、大丈夫?」


なんで一緒に救急車に乗らなかったのか、なんであんな場所であいみが事故に合うのかなど、りんは聞いて来なかった。

⏰:09/05/12 20:23 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#408 [あぃみ]
「純也、あいみが死んじゃったよ。」


腫れあがった目からは大粒の涙が流れ出した。


俺はあいみはもう駄目なんじゃないかってどこかでわかっていた。
わかっていたくせに、その事実を改めてつき付けられて 絶望した。


「俺のせいだ。なんでだよ、なんであいみなんだよ、俺が死ねばよかったのに 畜生!」


俺の目からも涙が溢れて止まらない。
床を何度も叩きつけて、引越しの荷物の段ボールを蹴り飛ばして、スリッパを外に投げ捨てた。

⏰:09/05/12 20:40 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#409 [あぃみ]
りんはしくしくと泣いていたが、我慢していたのか、やがてしゃがみ込み、大声で子供のように泣きだした。


俺も泣き続けた。


新しい匂いがする広く虚しい部屋で、二人はただ泣く事しかできなかった。

⏰:09/05/12 20:48 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#410 [あぃみ]
あいみの実家。
通夜。
葬式。


りんが俺を連れていこうとしたが、行く気になれない。しかもあいみの「彼氏」がいたらどんな顔をしたらいいのかわからない。

俺は三日間 ただ呆然と過ごした。
それでも、あいみから連絡が来る時間、あいみが仕事終わる時間などはつい携帯を手にとってしまう。それが嫌で悔しくて、力任せに二つに折った。

仕事も行かず、家から出れなかった。

⏰:09/05/13 08:52 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#411 [あぃみ]
ふと ハローキティーの縫いぐるみが目にとまった。あいみが大好きだったキャラクター。


「ねぇ純也ー、これ二個とれたんだよ!可愛いから一個あげるよ」


「なんでそんなにカッコイイのー?」


「あいみの番号は〜」


「このイカリングおいしい!」


「あげるね!」


「楽しいねー」


「おいしかったね!」


「ねぇ純也?」


「…キレイ。」

⏰:09/05/13 09:03 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#412 [あぃみ]
自分の欲望を押し付けて
やりたい放題だった俺。

すでに負けていたのに負けまいとあいみを傷つけた。

俺は何かしてやれたか?

これからと言う時だったのに…

なんでもっと早く素直になれなかった?


帰ってきてくれよ…



あいみ……



後悔しか残らない。

⏰:09/05/14 08:57 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#413 [あぃみ]
突然家のドアがノックされた。喪服のりんが上がりこんできた。


気力のない俺は
「おう」
とただ振り向き目を背けた。


「あんた、本当に来なかったね。」


俺の目の前に来て腰を下ろしたりん。


「俺だって行こうかと思ったよ。ちゃんと死を受け入れなければいけないって。
でもあいつの彼氏が来てたらなんか悪いし、気まずいから…これでよかったんだよ。」


俺はいつも、りんには素直に話せる。

⏰:09/05/14 10:20 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#414 [あぃみ]
「彼氏?あいみが言ったの?」


りんは、一瞬だけ驚いた表情を見せて すぐに切ないため息をはいた。


「とりあえず、純也に宛てたあいみからの手紙が部屋にあったから、渡しに来た。」


受け取った紙は、封筒には入っていなく、キティーのメモ用紙のような紙だった。

⏰:09/05/14 10:32 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#415 [あぃみ]
『純也。
私は一目惚れなんて信じていなかった。
どんな純也も好き。
最初はそばに居られるだけていいって思ってた。
でも、今は純也が欲しい。もっとたくさん優しさに触れたい。特別でいたい。ねぇ私をみて?

私、実は彼氏がいるの。
病院にね。もう二年も目を開けていない。
彼氏以上に好きになれる人なんて現れないはずだった。私は彼氏が目を覚ますのを待ってた。
私は楽しい思いをしちゃいけないんだって思い込んでた。
だけど最近は純也であいみの頭いっぱいになっていてどうしようもない。
純也が好き。だから 』

⏰:09/05/14 10:41 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#416 [あぃみ]
そこまでで止まっていた。
流れる涙をりんがそっと拭いてくれた。


「純也、あいみの気持ち伝わったよね?あいみは人を見る目があるの。幼なじみの私が言うんだから間違えないよ。
そんなあいみがあんたを好きになった。あんたの優しい所。思いやりを持てる所。あいみはわかっていたんだと思うよ。」

自分の涙を拭き、りんは続けた。


「あんた男でしょ?いつまでも後悔したことにうじうじしてないで前をみなさいよ!」

⏰:09/05/14 10:48 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#417 [あぃみ]
最後にりんは俺の頭をポンと撫で、「一緒に頑張ろう!あいみはそばにいるから」とブイサインを向けた。
切ない笑顔を見せて玄関を出て行った。




その日
久しぶりに睡魔が遅ってきた。


俺は 夢を見た。






⏰:09/05/14 10:53 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#418 [あぃみ]
霧のかかる
不思議な空間にいた。


少し遠くにあいみがいる。


白い、長いウエディングドレス。


優しい微笑みをむけている。


俺は、そばまで行きたいのに 思い何かが邪魔をして身体が全く動かない。

⏰:09/05/14 19:11 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#419 [あぃみ]
次の瞬間、


後ろから白い影が現れ、


あいみを優しく包みこんだ。


やがてその影は人の形になった


あいみはその人影の腕をそっと取り、連れていかれる。


一度振り返り、
穏やかな微笑を浮かべて俺に手を振った。


最後に見せたあの穏やかな表情と同じ顔だ。

⏰:09/05/14 21:33 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#420 [あぃみ]
そして


ゆっくり ゆっくりと


二人は消えてなくなっていった。








そして俺の身体が軽くなり、目が覚めた。

⏰:09/05/14 21:37 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#421 [あぃみ]
冷たい汗をかいていた。


ふと時計を見ると、1時間くらい戻っていた。
りんがいた時間だ。
外は暗い。




まる一日たっていた。



何か違和感を感じ、
台所に足を運んだ。するとカレーライスと現金が置いてあった。
メモが一枚。

⏰:09/05/14 21:51 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#422 [あぃみ]
『純ちゃん、捜したんだよ。りょうくんから何度も連絡きたよ。
お金、置いておくから』



何でも金で解決させようとする俺の母親。


金でしか現せない愛。


それも愛。


優しさ。


不器用だけど
心配してくれる。

⏰:09/05/15 19:22 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#423 [あぃみ]
りょうさんも


りんも


こんな時だからか?
人の優しさが痛いほど伝わる。今更、ありがたみを実感する。



俺は…



⏰:09/05/15 19:25 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#424 [あぃみ]






俺は何をやっているんだ?






あいみ、


あいみ、ありがとう。





⏰:09/05/15 20:10 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#425 [あぃみ]
優しさを教えてくれた。



愛しい気持ちも



寂しい気持ちも



嬉しい気持ちも




あいみに教えてもらった

⏰:09/05/15 20:14 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#426 [あぃみ]







ここから
歩きだそう!





⏰:09/05/15 20:17 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#427 [あぃみ]
もう一度 生まれ変わってみせる。



あいみに天国から
悲しまれないように。



俺は 歩きだす。





〜『純也』〜END

⏰:09/05/15 20:20 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#428 [あぃみ]
あとがき〜

完結しました
純也sideのリクエストくれたかた、ありがとうございました…無事?完結しました
なんかこれでいーのかなって感じするけど…

読んでくれたかた、感想やアドバイスありましたらお願いします☆

⏰:09/05/15 20:23 📱:911SH 🆔:☆☆☆


#429 [我輩は匿名である]
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⏰:09/05/16 16:41 📱:W45T 🆔:☆☆☆


#430 [にャンちュ〜(=´ω`=)]


この小説
凄い好きでした.

胸が締め付けられる
感じになリます

完結おめれと

⏰:09/05/18 09:31 📱:D904i 🆔:☆☆☆


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