Castaway-2nd battle-
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#181 [◆vzApYZDoz6]
ロモは吸っていた煙草を地面に捨て、再び新しい煙草に火をつける。
「そぉーんなに警戒するってこたぁ…やっぱり誰か告げ口しちまったなぁ? セリナの姐さんは向こうにいる筈だし…クルサの坊っちゃんかぁ? ま、落ち着けよーう」
「…襲って来ないのかよ?」
「危害を加えるつもりはねぇよぅ。とりあえず落ち着けってぇ」
確かに見たところでは武器も持っているようには見えないし、戦う意思も感じられなかった。
だが、ロモがレンサーである可能性は高い。レンサーである以上、気は抜けない。
何より、スキルを持たない今の自分では満足に戦えるか分からないのだ。
:08/08/29 22:07 :P903i :saOknxQ2
#182 [◆vzApYZDoz6]
「身柄を頂きにきたわりに、危害は加えない? どういうつもりだよ」
何かしてきてもすぐに対応できるように警戒しながら、構えだけ解く。
ロモはさっき火を着けたばかりの煙草を中程まで吸い、京介の右斜めあたりにポイ捨てた。
再び新しい煙草を一本取り出し、火を着ける。
「俺ァ争い事が嫌いなんでさぁー。できれば平和的についてきてほしいわけよぅ」
「それは無理な相談だな」
「だよなぁー、そうだよなぁー。じゃ、諦めるわぁ」
「…!?」
ロモはそう言うと、手にしていたリアルキアイダーを飲み干して地面に置き、京介の方へ向かって歩き出してきた。
:08/08/29 22:07 :P903i :saOknxQ2
#183 [◆vzApYZDoz6]
ロモが動き出したのを確認して、素早く身構える。
その時に、ドリブルしていたスチール缶に足が当たりロモの前に転がった。
だがロモはスチール缶や京介をまったく気にもせず、当たり前のように隣を通りすぎる。
京介が慌てて振り返ると、ロモはまた煙草をポイ捨てしていた。
「…本気で帰る気か? 一体何しに来たんだ?」
「だぁから平和的に、っつうのが好きなんだよぅ。あんたぁ、戦いたいのかい?」
「いや…そういうわけじゃねーけど…」
そうだろう、と言いながらロモはまた煙草を取り出す。
呆れたヘビースモーカーだ。
:08/08/29 22:08 :P903i :saOknxQ2
#184 [◆vzApYZDoz6]
まったく何を考えているのか分からなかった。
本当についてこいと言いにきただけなのか、それとも偶然会っただけで、武器を持っていないのか。
確かに、今遭遇したのは偶然だろう。
わざわざウォルサーの人間だと名乗ったのも、出鼻をくじいて主導権を握ろうとしたからなのかもしれない。
そう考えると、さっさと帰ろうとしているのも納得できなくはない。
(帰るって言ってるし、無理に突っかかる事もないか…?)
そう考えたのが甘かった。
ほんの少し、意識しない程度に緊張が解け、力が抜ける。
些細な無意識下での油断。
ロモはそれを見逃さなかった。
:08/08/29 22:09 :P903i :saOknxQ2
#185 [◆vzApYZDoz6]
「あんたぁ…甘いねぇ」
ロモは鼻で笑い、京介に向かって吸いかけの煙草を指で弾く。
京介は視界こそロモに向けていたが、突然飛んできたために反応が遅れる。
自分に向かう煙草が、なぜかスローモーションに見えた。
その遅れた視界は、久しぶりに味わう命に関わる緊張感。
ただの煙草だというのに、距離が縮まるほどに心臓の高鳴りが早まっていく。
直感は、すでに己の敗北を認識していた。
「平和的にって話、ありゃ嘘だ」
ロモが捨てた煙草は計3本。京介の背後、右、前方に1本づつ。
今飛んできた4本目が、京介の左側。
それらが全て、爆発した。
:08/08/29 22:10 :P903i :saOknxQ2
#186 [◆vzApYZDoz6]
「しまっ――!」
四方を囲まれ逃げることもできず、京介の体が爆炎に包まれる。
炎は大したことはないが、指向性を持った爆発の衝撃が京介を四方から押し潰した。
崩れ落ちる京介の目に映るのは、余裕で煙草をふかすロモの姿。
その煙草はまだ火を着けたばかりだったが、ロモは最後にそれを放り投げた。
放物線を描いて、京介の眼前に煙草が落ちる。
火の着いたばかりの煙草は小さな爆発を起こし、その衝撃はピンポイントに京介の顎を打ち抜いた。
(藍……くっ…そ…)
:08/08/29 22:11 :P903i :saOknxQ2
#187 [◆vzApYZDoz6]
程なくして爆音を聞き付けたコンビニの店員が様子を見にきたが、そこにあったのは焦げた跡と煙草の吸いがら。
そして、コンビニに並べられている新商品のジュースの空き缶が2つ、転がっているだけだった。
:08/08/29 22:12 :P903i :saOknxQ2
#188 [◆vzApYZDoz6]
時間軸は元に戻る。
午後11時半。ハルトマン達が内藤からの連絡を受けて、急ぎ足で内藤宅へ向かっているちょうどその頃。
歌箱市内のとあるホテルの最上階の一室に、窓から夜景を眺める1人の人間がいた。
男か女かはよく分からない。
というのも、体は細く小さくて、髪はさながら貞子のように長いため、見た目からは判断できないからだ。
その人間は窓辺からの景色に飽きる事なく、まるで何かを探しているかのように、ひたすらに外を眺めていた。
ちょうどその時、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
:08/09/17 23:57 :P903i :PrwlaPVk
#189 [◆vzApYZDoz6]
窓辺から離れ、緩慢な動作で扉を開けてやる。
ハンチング帽を被り、大きな荷物を担いだ男が入ってきた。
「いよーう、ただいま帰ったぜトビーちゃん。ほれ、オレンジジュース」
「……ん…お…かえり…」
入ってきたのはロモで、それを迎えた髪の長い人間はトビーだった。
トビーはロモからオレンジジュースを受け取りつつも、視線は大きな荷物に向けられていた。
ロモはそんなことお構いなしに、コンビニで買っておいたコンビーフにかぶりつく。
「コンビーフってなぁー男の味だよなぁー」
「………ねぇ…」
「んん?」
「…なに…それ…」
:08/09/17 23:57 :P903i :PrwlaPVk
#190 [◆vzApYZDoz6]
当然コンビーフのことを訊いたのではない。
トビーが指差しているのは例の大きな荷物で、その荷物はモソモソと動いていた。
というか、普通に人だった。
後ろ手に縛られ猿轡をされているが、呻きすらしないところを見ると相当弱っているらしい。
見れば服の所々に焦げ跡がつき、破れている。
そのことからロモと交戦したんだろうということはわかるが、わざわざ連れ帰ってくるとは、一体何者なのだろうか。
「なにっておめぇ、こちらに転がっておわすのが地球人レンサーの川上京介くんよ」
「……なん…で…連れてきた…の…?」
:08/09/17 23:58 :P903i :PrwlaPVk
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